アルファの私がアルファの皇太子に溺愛執着されていますっ！

うなじを噛まれて５

「はぁ、あ」
　痛みはある。けれど、アンリエッタは、自分でも信じられないくらいに甘い声をあげてしまった。じわじわとしびれるような痛みは、アンリエッタの感じたことのない甘さを孕んでいた。ともすれば、ずっと噛まれていたいと思うほどに。
　うなじから頭へ、うなじから背筋へと広がるじんわりした感覚は、アンリエッタの脳を溶かすようだった。くらくらする。酩酊感にも似た感覚は、心地よかった。
　わずかに血が流れたのだろう。血のにおいが新しく漂う。なにかを注がれている感覚がして――瞬間、アンリエッタの体はびくん、と跳ねた。
「な、に……」
「は、は、フー……」
「フェリクス、なにかきちゃう、くる、なに、なにか私、かわっちゃ……！」
　アンリエッタは体をよじった。初めての感覚が信じられなかった。こんなの知らない。わからない。
　けれど、フェリクスは獣のようにアンリエッタを押さえつけたままで、だからこの体の中を暴れまわる熱を逃がせなかった。
「あ、ぁ――……」
　アンリエッタの視界が白んでいく。何かが決定的に変わってしまったことは理解できるのに、それが何なのかはわからない。
「ふぇり、くす……」
　アンリエッタは、小さくその喉を鳴らしながら、その意識をゆっくりと、フェリクスの腕の中でうずもれさせていったのだった。

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