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ままならない恋6
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「僕は、そんなことのために、君に、君が努力すれば何でも叶う、なんて言ったわけじゃない……ッ」
フェリクスは、吐くように言った。ええ、わかっている。ちゃあんと、アンリエッタはわかっていた。わかって、口を閉ざしたまま首を横に振った。
あの、生垣の君のことは、成長すればなんのことなく簡単に調べられた。
城にいる、同じ年くらいの子供で、国を変える、なんて言える人間はそういない。
フェリクス――初恋の相手――彼は、苦し気に呻いた。
アンリエッタは、だから笑って「大丈夫よ」と口にした。
「私はなにも聞かなかったわ、フェリクス。私は相変わらず初恋の君のことが好きで、あなたは私のライバル。最初から、そういう関係にはなれないものと決まっているの」
なんどだってごまかして、気づかないふりをして。
アンリエッタは、聞こえないように耳をふさいでフェリクスの想いを交わし続けて来たのだ。フェリクスは、そう遠くないうちに婚約者を作るだろう。
隣に並べるのは、彼の子をたやすく生むことのできるオメガだ。
博識で、明るくて、フェリクスをいやせるようなひとがいい。そうだったら、応援できる。
この想いを大切にしまいこんで祝福できる。
「アンリエッタ……」
「ごめんなさいね……フェリクス。……でも、そういう関係にならなくたって、あなたは私が困ったら助けてくれるんでしょう?」」
アンリエッタは、明るく振舞った。少なくとも、気にしていない風に見えるように。
フェリクスの顔がくしゃりとゆがむ。「もちろん」と言葉にされる。握られた手がひどく熱い。
手でしか繋がれぬこの距離が、ひどく遠い。
アンリエッタは笑って、フェリクスの手をそっとほどいた。
「行きましょう、フェリクス。もうすぐ午後の授業が始まってしまうわ」
オメガなら。もし、自分がオメガに生まれていたら、なにか変わっていただろうか。
……いいや、そうしたら、きっと自分はフェリクスに出会うことなく生きていただろう。
だからきっと、今が一番近い。
「ままなりませんわね、フェリクス」
「まったく、本当にそうだね……」
二人とも、声は少しだけ濡れていた。教室につくまで、二人は少しの距離をあけて、それ以上、ひとことも何も言わずに歩いていた。それがこんなにも苦しい。
そう、ままならない。結ばれることはありえない。
だから、これよりひどいことが起きるなんて、アンリエッタはまったく考えていなかったのだ。
■■■
フェリクスは、吐くように言った。ええ、わかっている。ちゃあんと、アンリエッタはわかっていた。わかって、口を閉ざしたまま首を横に振った。
あの、生垣の君のことは、成長すればなんのことなく簡単に調べられた。
城にいる、同じ年くらいの子供で、国を変える、なんて言える人間はそういない。
フェリクス――初恋の相手――彼は、苦し気に呻いた。
アンリエッタは、だから笑って「大丈夫よ」と口にした。
「私はなにも聞かなかったわ、フェリクス。私は相変わらず初恋の君のことが好きで、あなたは私のライバル。最初から、そういう関係にはなれないものと決まっているの」
なんどだってごまかして、気づかないふりをして。
アンリエッタは、聞こえないように耳をふさいでフェリクスの想いを交わし続けて来たのだ。フェリクスは、そう遠くないうちに婚約者を作るだろう。
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博識で、明るくて、フェリクスをいやせるようなひとがいい。そうだったら、応援できる。
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「アンリエッタ……」
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アンリエッタは、明るく振舞った。少なくとも、気にしていない風に見えるように。
フェリクスの顔がくしゃりとゆがむ。「もちろん」と言葉にされる。握られた手がひどく熱い。
手でしか繋がれぬこの距離が、ひどく遠い。
アンリエッタは笑って、フェリクスの手をそっとほどいた。
「行きましょう、フェリクス。もうすぐ午後の授業が始まってしまうわ」
オメガなら。もし、自分がオメガに生まれていたら、なにか変わっていただろうか。
……いいや、そうしたら、きっと自分はフェリクスに出会うことなく生きていただろう。
だからきっと、今が一番近い。
「ままなりませんわね、フェリクス」
「まったく、本当にそうだね……」
二人とも、声は少しだけ濡れていた。教室につくまで、二人は少しの距離をあけて、それ以上、ひとことも何も言わずに歩いていた。それがこんなにも苦しい。
そう、ままならない。結ばれることはありえない。
だから、これよりひどいことが起きるなんて、アンリエッタはまったく考えていなかったのだ。
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