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後後276 プスコの2日目

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武官と泉は昼から食堂で飲み始め、二軒目はケーキ屋。そして酒蔵にケーキを持ち込んで肴にしてどぶろくを飲み、ケーキがなくなると清酒に変え、夜まで飲んでいた。

ガクとアニャータは、清酒に変わった頃に離脱した。
夕方に入り始める頃であった。
「早めに風呂に入って、それからのんびり街を見てみないか?」
と提案してみると、楽しそうに了承するアニャータ。

「自国民の私が知らず、他国民のガクさんに案内してもらうのって、なんか面白いですね!」
そこなんですか。可愛いですね。

酒蔵は市場の近くなので、銭湯もすぐ近く。
銭湯はすいていた。
隠居連中がすいているので早めに来ているのだろう、数人居り。暇なのか珍しいのか皆に話しかけられ、なかなかおもしろかった。獣人もいたし!


風呂から上がって外で、どこかに座って待とう、と思って座るとこを・・と思ったらアニャータが出てきた。
「お?早いね?」
「そうですか?」
「・・・いや、俺が中で結構話をしていたから遅かったのかな?」
「ああ、私もお年寄り達と話してました。話したがりみたいですねー。」
何十年も話す相手は似たような者達ばかりで、飽きてるんじゃないかな?

のんびりと裏道を歩きながら、
「ここの銭湯、獣人が獣姿でも入っていいんだな。以前は見なかったので知らなかった。良いとこだね。」ガク
「ええ、私もおばぁさんから、誕ちゃん獣姿で入って良いんだよ?って言われて。」
「へぇ、そのオバァさんよくわかったね。」
「周囲に獣人がいるんでしょうね」
毎日獣人と接触していると、なんとなく人の姿していても獣人と分かるようになるのだ。

のんびり散策するように裏道を歩いていると、前回は気づかなかった?か、やはりこの街にも小さな寺が多い。何種類かの神さまが居るようだ。が、モフ神の寺は今の所見ないw。ありゃ自宅で神棚作ればいいだけだからなー。

「アニャータ、農国って、どういう神様がいるの?」
「・・・私が知ってるのは、」
と説明してくれた。

結構多い。
ひと族にはムーサリムの神と、天の神、大地の神。そのときに、あれがムーサリムの寺(祈りの場だけど寺と呼ぶようだ)で、あれが天の神の寺です。と近くにちいさなそれらがあったので教えてくれた。俺の知ってる部分だ。
で、大地の神はいなかに多いので、街なかにはめったに寺は見ません、と。あとあまり見ない神様がいくつかあるという。それらの寺は見ないですね、とのこと。

獣人達はあまりそういうの無いが、森の神、大地の神が各族共通で、それに加えて獣人の種類で、例えば人狼なら狼神とかがいるとのこと。種族によっては海の神、湖の神、川の神、みたいのも居るようだ、とも。
「ねこ人は?」
「そういうの無いですねー」
ねこは自由だからかな?神からも自由?
当然と言えば当然なんだろうが、寺は無いという。少なくとも見たこと聞いたことはないです。と。

「俺が居た前の世界では、宗教ごとに反目して戦争とかしていたんだよね。特に最もデカイ宗教が侵略欲がすごく強くて、大昔から各地で宗教を広めて侵略していた。そういうの、無いの?」

「あはは、そんなのあったら即そういう神を信じて加担する者達は皆滅ぼされますよ。」
とアニャータ。
こっちの世界の者達は、聡明なんだなぁ、と改めて思った。

「神様って、そういんじゃないでしょう?」アニャータ
「そうなんだけどさ、そういうのに利用しまくるのがすごく多いんだよ、あっち・・・」
「ごめんなさい、正直に言うけど、嫌な世界ですね。」
すみません・・・

こっちの、他者の神をも尊重する人々、ってのが「極当たり前で当然のこと」となっているのが、彼らには当たり前なのだろうが、スゲーな、と今更のように思う。

「それと、」
とアニャータは続ける。
モフ神様も、獣人達の間では広まっているとのこと。アニャータが小館に来る前にはもうアニャータの家にも広まっていて、各人の部屋には御札がどっかに貼ってあるそうだ。

「あれ?アニャータの部屋にあった?」
「ええ、ベッドの頭の部分にある小さな扉の中にあります。」
そりゃわからんな。
お守り位の立場みたいだな、モフ神の御札。


いかにも茶屋ってのが目に入ったので、表の席に座り、飲み物と茶菓子を頼む。

「モフ神様って、毛のある獣人のみではなく、爬虫類系の皮とか、トリの羽のほうとかもご利益ある見たいですね。」
「そうなの?」
で、アニャータの知り合いや邸の使用人達から聞いた話をしてくれた。
まぁ、信じる者が自分で努力して美しい皮や羽にしていった、みたいな感じなんだろうけど・・、本人達がそのように頑張ることを始めたきっかけがモフ神なのだから、まぁいいんだろう。
当然、そのようなことは言わないで良いことなので言わない。

「表には見えないけど、地味に広まってるんだね?」
「はい。獣人でモフ神の御札を持っていない(作っていない=自分で作ってよい)者はいないんじゃないでしょうか」
それほど?!!

「そう言えば、小館はどこの家にもモフ神様の神棚ありますね?そんちょさん、人間なのにありますね?」
「・・・・あれは、・・頭の髪がもさもさになりますように、とかお願いしているようだけど・・ムリだから・・・」
「・・・・お気の毒ですね、でも、そういうのは違う方向ですよね。」
うん、多分彼にはわかっていなんだよ、わかりたくないのかも・・・

洋風の味付けの団子と甘くない紅茶で一休みを終えて、また街を散策する。

「そいえば、この街も武官さんとこ除けばケーキ屋回っただけだったなー」
「食べ歩きですか。それもいいですよね。」
「泉さんのケーキ好きがここから始まったからなぁ、いきなり火が着いたように。」
「味を忘れることはないんですねぇ」
「だねぇ」
泉さんの本体のことを言っているのだろう。


乾物屋があったので入る。
みりん干しは各種合った。
試しに少しさべさせてくれた。
アニャータも大好きだと言うので、大きいものとタタミイワシ様のものを袋いっぱいづつ買った。
アニャータはほくほくになった。

「アニャータはみりん干し好きなの?」
「大好きですっ!!」
「俺も大好きだ。奇遇だねー。」
「では、うちでは食事はみりん干しだけでいいですか?」
「・・・そうだな、それでも多分、俺、飽きないと思う・・・」
想像してみたらそれほど悪くないじゃないか?朝昼は畳鰯のやつで、夜は大きい肉厚のを。それを毎日。味噌汁と漬物が一緒に有れば・・・・・何年でも行けるんじゃねーの?と思った。

「アニャータ、毎日でも飽きない?」
「もしかしたら飽きるかもしれませんね、数年後くらいには」
同レベルだな・・

みりん干しを仕入れるルートを確保しなければならないなぁ、、
でもせっかくならブートッチのみりん干しがいいなぁ。
いやいや、南の港か・・・西のあの最初の港でもいいかな、あそこらからなら定期的に・・・。
などと想像していると、

「あっ!」
アニャータがコケかけた!
さっと片手を回して後ろから服をつかみ・・
同時にさっと人がアニャータの前に出て倒れかけたアニャータを受け止めた。

「大丈夫ですかおじょうさん。」
あ、
あ、
「いやいや、こんな所で奇遇だなっつ!!!」
ばばぁ、、つけていたな?
公爵である!グレイスである!

見ると一人らしい。
「・・・お久しぶりです。で、小館の離宮のほうはいいんですか?王様のお仕事でしょう?」
「ああ、ある程度進んだのであとは最後に行けば良い。それまで私は自由なのだ!自由なのだっ!!」
ノリはもうばばぁじゃねーよねこの人・・・

あれ?
「あの、誰かに、農国案内するとか、約束してませんでしたっけ?」
「あ?そうだっけ?」グレイス
・・・・・こういう所だけは年齢相応のばばぁかな?

「あれ?泉は?泉はどこだ?!!」
「酒蔵で飲んでますよ?」
「ふむ、んじゃそこへ行こう。連れて行け。」
ばばぁ・・
「おばさま、私達はいまデート中なんですよ?」
・・・・・「むう、ではその場所を教えてくれ。」

で、場所を教えたら次に今の宿がどこか教えろときて、仕方ないから教えた。教えないと探すだろうし、下手したら大事になるかもしれないので教える方が良いと。

で、グレイスは酒蔵に向かった。
夜だけど、この街は治安良いし、ばばぁでもあの人すげー強いし、一人でも俺より安心だろう。

俺らはまた散策を始めた。
「おばさま、出番を探していたんじゃないですか?」
「ずっとつけていたって?」
「やりかねません」
まぁ、姪っ子可愛さ、ってとこで許容範囲だろう。多分。

「あれだね、アニャータだけが常識持っているようだね。」
もちろんアニャータ一家等含めてである。
「・・・・・すみません・・・」
「いや、あんなんのが周囲に溢れてるのに、よくこれだけ素直で優しい子になったなぁ、って思ってさ。」
「・・ありがとうございます。なんでですかね。」
「反面教師?」
「・・・・・・・・・・・・」
「思い当たること多そうだねー」
ははは、と乾いた笑いをこぼすアニャータ。

裏通りを歩く人も減ってきた。
「そろそろ宿に帰ろうか」
「そうですね」


宿に戻り、
「あ、お客さん、部屋が変わりましたよ。」宿の人
「「え?」」
どういうこと?

「おばぁさん?が来て、一緒に泊まるからも少し大きな部屋にって。荷物も移動して、手前隣の部屋になりました。」
「おばさん・・・」
まぁ、俺の代わりにアニャータが怒ってくれてるからいいか。もうあのばばぁには疲れたので、いいや、ってなっちゃったw

部屋に戻ったらベッド4つ。俺のパーティーは、俺と幼女(泉さん)、アニャータ(ヨメ)、グレイス(ばあさん)のハーレムwwwwwwパーテーになったとよwwwwww
誰も羨ましがらないねっつ!!!

「あれ?、おばさんあれだよね?ずっと付けていたんだよね?んじゃ最初からこの宿知ってて、俺らが出たらすぐに部屋変えたんじゃね?」
「・・・確信犯ですね?」
まぁ、意味はわかるけど・・・

ーー翌朝ーー

俺とアニャータが朝食を食べているところにグレイスが降りてきた。
「おう、早いな」
「明け方まで飲んでたのに、早いですね?」俺
アニャータ無言。

グレイスは朝食を頼んでから
「アーニャ、勝手にやったのは悪かった。でもそうしないと一緒に泊まらせてくれないだろう?」
まぁそうだな、拒否したなっ!!

「アニャータ、許してあげようよ。おばさんの言うとおり、あの時俺らに言われても拒否したろう?」
「・・・・二度としないでくださいね。」アニャータ。
「お、おう、すまん、わかった。二度としない!!」
ほんとかよ?

このばばぁひとが居ないところを狙って、ってのが得意だからな。小館の邸を村側に作らせるのも俺とアニャータが居ないときを狙ったし。
「前科二犯」俺
「そうですよ?忘れてませんよ?小館の邸」アニャータ
「・・・うむ、すまん。貴族の常識はよくないのだな・・・」
・・・・・まっ!!貴族の常識らしいですよ奥様!!(ガク)
・・・・・まっ!!!私も知りませんでしたわそんな常識っつ!!!(アニャータ)

「・・・そうみたいだな・・・。お前たちの中に入っていくのだ、お前たちの常識を教えてくれ。」
「ようこそ!私達まともな者達の世界に!」アニャータ
・・・・・許容してるのに容赦ないなアニャータ
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