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後後270 出立2!!

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「それでは行ってくる」
泉さんがそう言い、
「行ってきます!皆さん元気でいてくださいね!!特に毛並みに気をつけてねっつ!!」
俺はこう言った。

「ここを離れるのは寂しいですが、行って参ります。皆さん、どうかお元気で!」
アニャータ、やっと慣れた地、というか、皆がアニャータを頼りにしてる土地を離れ辛い感じ。
実家じゃ皆に好かれてたけどペット並の好かれ方で、こっちの対等な扱いじゃないからな。アニャータはここに居場所を見つけられたんだと思う。

荷物は無い。すべて泉さんのストレージにしまっても貰っている。
今は袋みたいのを使わず、泉さんが手を伸ばして口に出さずにでも心の中で言えば、その手を突っ込んだ所がストレージの口になる。盗られる心配は無くなった。

シューレが泉さんを鍛錬して会得させたとのこと。
「どんどん、ひとではなかなか出来ないことができるようになってくるな!あっはっは!!」シューレ
その時の泉さんの嫌な顔と言ったら。


俺達は歩き出した、わけではなく、荷馬車の荷台にいたのだ。
馬車はぱかぽこぱかぽこと進みだした。

ほどなく見送りのそんちょがくりっと向こう向いて歩きだしたら、熊たちも。
残るは領主様だけだ。やっぱ親代わりは違うなー・・
「おとうさまー」
あ、響子も来てたんだ?見送りなしかい、お兄様のお見送りっ!!
あ、
呼ばれた領主様も響子の方に小走りで行ってしまった・・・・

「・・・なんか、薄情?」
ポツリと言うと
「あっはっは!二度目だからなあ!」泉さん

そんちょが元凶だな?

小一時間ほどで上村の上側に到着。あとは歩きで峠越え。


小一時間山道を登っていく。
あれ?
前回はここらでへばってなかったっけ?
今回は全く平気。なんとも無い?

「俺も強くなったのか?」
思わず口からこぼれた。

「そうだな、前回はここらで・・・。ふむ、お前も、あれか?シューレ系に?」
「ねーっすよ。魔法の気配もないんだから」
そらそーか、と泉さん。

巻き込みたいんだな?
いやだよ、俺はアニャータと一緒に同じく歳とっていくんだよ。

大洋が中点を超えて少し経ってから俺達は峠にたどり着いた。
ゆっくり登ってきたと言え歩きづめ、汗をかいている。
まだ陽の光はそれほど弱くなく、秋の風は心地く汗を乾かしてくれた。

見晴らしはよく、眼下にはうちの村のある平野が広がる。その色合いは秋の色。

「おお、見晴らしがいいなぁ。モフ祭りの前くらいだったら全体的に霞がかって幻想的でもっとよかったかもな。」
と泉さん。田んぼや野焼きのことだろう。

ここで昼飯だ。これからは降るだけで時間はかからない。夕方早くには向こうの村に到着できるだろう。
泉さんがストレージからむしろを取り出して敷き、握り飯の包を取り出してそこに置いて包を開く。
シューレが持たしてくれたもの。握り飯以外にも漬物と卵焼きが多めに入っていた。

座ってるここからでも眺めが良い。
「あ、領都の方も見えますよ。」アニャーたが言う。
「お?・・・ほんとだ、霞んでるが領都だな。あんな先も見えるんだなぁ。」泉さん
だがしかし!
あいにく俺はフツーの人間である。どんなに目を凝らしても、まったくもってっつ!!

「・・・残念ながら俺には見えない。ごめんよ、フツーの人間で」
泉さんムッとしているよ?
アニャータ焦り出すので、
「うん、冗談だから。見えないけどそんなの個人差程度。目がいい人とそうでない人の差くらいでしょ」
と言っておく。

だが、何かの時に俺がお荷物や足かせにならないように気をつけなきゃな、とは自覚できた。


飯を食い終え、茶をすすり、少しの間休んでからゆっくり降る。
降りになると心にもゆとりが出るので、秋の匂いを感じたり、きのこをみつけることができたり、楽しみながら山を降りていけた。

日がまだ沈んでいないうちに村に到着。
宿に行き、風呂に入り、夕食を食べる頃にはとっぷりと日が暮れていた。
虫の音がまだ多く聞こえる。
宿の入り口の扉は開け放って、風を入れている。
酒は、燗にするかしないか、を迷うくらいの気温だった。

「・・・・泉さん、こっちの世界って、蚊がいなくないですか?」
「お?そうか?そうだな。気にしないくらいに居ないな。気になったこと無かったからな。」
面白い検証方法だなw

「んだったら、ひとに着くノミとかダニもあまり見ないんじゃないか?俺は見たこと無いし食われたこともないが」
「・・・俺も?無いっすね?。アニャータ、は、いいトコのお嬢さんだから無いだろうし・・。」
「ええ、私は無いですけど、山にでも住んでいなければまず毛皮に入ってこないって聞いたことあります。」

「へぇ、街暮らしなら大丈夫程度なんだ。」
「おまえ、人狼にダニがたくさんくっついてた時、ブチギレしていたな」
「まぁ、ありゃー、風呂に入らないあいつらが悪い!汚れたらさっさと落とせよ!ってねー。」

「狩りかなんかですか?」
「うん、狩りの部隊やつで風呂を面倒臭がるのがいてさ、獲物のダニが移って。」
「たまに聞きますね。でも暖かいお風呂を知れば、それほど嫌がることはないんですけどねー」
「なーんか、風呂に入るのを面倒、って思ってた奴みたいで。」
「いるな、ひとにもそういうの」
「病気や禿に成りやすくなるんですけどねー」

「禿、か・・・」泉さん

「泉さん、元の世界では禿だったんですか?」
「ん?いやいや、でも兆候はあったかもなー」
「もし薄くなり始めたら?」
「剃ってつるっぱげにするのもいいな、とも思ったことあったんだが、毎日剃るのが面倒でな。多分そのまんまだったんじゃねーか?」
ですよねー

泉さんは「今度は燗にしていいか?」と断りを入れてからおかわりをたのんだ。

初日。のんびりした良い夕べである。
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