上 下
380 / 409

後後249 博子と薙刀とナノビッチ

しおりを挟む

学園での授業中。
ジゴローとナノビッチは、後ろの壁際に席を置いて座って授業風景を見ている。勿論制服は着ていない。
学園の教師の授業を、華子と博子がどう受けるのだろうか?の観察だ。

今は数学の時間。特に頭を使い集中を必要とするはずなのだが・・
後ろから見てると、落ち着きの無さがよく判る。
博子は寝ているようだ。
数日は様子見して、どの授業がどうなのかを確認するつもりの治五郎とナノビッチ。

次の時間は武芸。
華子は元気になり、博子は鼻息荒い。
得物は薙刀の授業。

最初は型を一通りやって、そのご生徒どうして防具を着て打ち合う。
皆うまい。変に力を入れいる者はいない。薙刀は剣道と違って力任せはいけない。だから男が不得意とする武芸だ。

ナノビッチが知っている薙刀で最強の者は、ふわふわっとしていた。すり足さえ浮いているような、全身に全く力がないんんじゃないか?と思えるほど、だが体勢だけはきれいにまとまっていた。が、どうやって負けたのか今でも不明なくらいに翻弄された。

そこまで、というか、雰囲気さえそういう者は今ここには一人も居なかった。
ナノは教官に言って混ぜさせてもらった。
教官も生徒たちの中に入り、指導を始めた。

ナノは博子の前に行く。
博子は闘気を出してナノに斬りかかる。半歩で避ける。それにムカッとした博子は冷静になり、間合いを開け、中段に。
ほう、とナノは感心した。

ナノが浮くようなすり足で接近、博子は近づいているのに気が付かない。リアルなレベル差。
パン!
面を打たれるまで身動きしなかった、できなかった博子。

が、気を取り直して構え直した博子。
ほほう、とナノ。
次に横に移動するナノ。これならわかりやすいだろう、と。
博子はそれに追随して僅かに体を回す。が、すり足はごく一般的な練習生のそれ。

だが、
(コヤツには言わんほうがよいだろう。脳でわかるのではなく体でわかるタイプだ)ナノ
と思い、言葉での指導はしないナノ。

博子は集中は今まで無いほどに成っているから気づかなかったが、周囲の者達は打ち合いをやめ、ナノと博子を見ていた。物音一つたてずに。
今まで博子が打たれるなんて一度もなかったのだ。教官にさえも。

ナノが切っ先を僅かに振るう。挑発。
博子が乗って飛び出した。ナノは動く必要もなく、博子はなぜか放り投げられてナノの後方に飛んで行った。

「いて、てててて・・。ダメだ、全く勝てる気がしねー、イメージなんぞもありえねぇ」
とひっくり返ったままの博子。

見ていた者達は、まだできるんじゃね?としか思えなかったが、桁外れに強い博子がそういうのだ。そうなのだろう。

ナノは博子の側に行き
「ふむ、おまえ、素質はあるかもな」ナノ
・・・・
「まじか?あんたみたいに成れるのか?」
「それは知らん。お前の努力次第だろ?私はおまえには素質があるかも知れんと見ただけだ。あとはお前がその芽を出すことができるかどうか?だけだ。」

博子。この世界に来てはじめて目が変わった。

ちなみに、以前小館に居たときも泉に翻弄されていたのだが、泉は博子に合わせていたのでこれほどの差を見せてもらったことはなかった。泉にしてみれば子供相手だったということだ。
また、もし、泉が本気を見せていても、博子はその差を感じられなかったろう。全く理解できないで終わっていたことだろう。
差がありすぎるのだ。

見ていた華子もナノと博子の差に幾分気がついた。
勿論教師も。

ただ、教師は(これは子どもたちに指導するレベルとか違う。弟子に教えるタイプだ)と感じた。

こういうのを、1年以上遊ばしておいた学園長。そのことに気づく者はいなかったw


その件から、皆がナノビッチと治五郎を見る目が変わった。
なんだか知らない人が居る → すげー使い手の人たちなんだ?
近寄りがたさは同じだったが。


その後、ダンス、刺繍、生花、などでも一度だけはナノは参加した。ダンスは治五郎をパートナーとして。
全て桁外れの素晴らしいものだった。

博子はわかった。全て自分に見せつけたのだ、と。
あそこまでの使い手になるのは、このくらい出来なければ成れないものだ、と見せつけたのだ。

僅かにダンスだけだったが、治五郎もその力量のほんの一部を見せられ、彼も本物なんだろう、と皆は理解した。

学園長がこの2人を選んだのは間違いではなかった。1年以上放置していたのが大失敗だったが。

逆に困った者がいる。
華子だ。
今まで教わってきた教師達より格段に上の2人。彼等が華子専属の指導者になっているのだ、今現在。
「あそこまでなれと言うの?」
など勘違いしていた。

どうやって逃げようか?どこに逃げようか?
そういう方向にムカッてしまっている華子。
でもそれは博子を巻き込んでこそ可能な事。なので、
どうやって博子をそそのかすか?
に腐心していた。

ーー

王宮。華子の部屋。
博子もいる。

「博子、逃げない?どっか自由なところ!二人だけで自由に生きるの!!好きなことをやって生きるのよ!!」
料理も洗濯も掃除も仕事もなんにもできないのに、どうやって2人で?と突っ込んではいけない。
華子はまじでそう思っているのだ。
凄いよね?!!

「私は逃げない。あの人に追いつくまでしがみついていく」博子
「どうしたのよ博子?洗脳されちゃったの?あなたなら、あなたは面白おかしく生きて行きたいんでしょ?博子らしくもどりなさいよ!!」華子

「うーむ、なんと言っていんだろう?今までいなかった、なかった、というか、そんなのあるとも思えなかったものが現われて、私が素人の上の方だったと知ったのだ。プロにならなきゃいけないんだ。」

「まじめなんか博子に似合わないわよ!」
「まじめとかと違う。わたしの行くべき道?な、だけだと思う」
「どー違うのよ!」

「悪いね、でもケーキ屋とかカレー屋とか脳国レストランとか、ちゃんと付き合うからさ!」
「仕方ないわね、んじゃ、明日午後はカレー屋ね!」
「カツカレー食いたい」
「あーいいわねぇ、じゃ目玉焼きも乗せるわ私」
「んじゃ私はソーセージを載せよう」
「じゃ全部のせで」
「だなー」




物事は今まで無いようなシリアス展開に向かい始めた?
とても問題である!!
これはギャグなはずなのだぞ?
とっても困った問題だ!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

異世界転生はうっかり神様のせい⁈

りょく
ファンタジー
引きこもりニート。享年30。 趣味は漫画とゲーム。 なにかと不幸体質。 スイーツ大好き。 なオタク女。 実は予定よりの早死は神様の所為であるようで… そんな訳あり人生を歩んだ人間の先は 異世界⁈ 魔法、魔物、妖精もふもふ何でもありな世界 中々なお家の次女に生まれたようです。 家族に愛され、見守られながら エアリア、異世界人生楽しみます‼︎

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

神獣に転生!?人を助けて死んだら異世界に転生する事になりました

Miki
ファンタジー
学校が終わりバイトに行く途中、子供を助けて代わりに死んでしまった。 実は、助けた子供は別の世界の神様でお詫びに自分の世界に転生させてくれると言う。 何か欲しい能力があるか聞かれたので希望をいい、いよいよ異世界に転生すると・・・・・・ 何故か神獣に転生していた! 始めて書いた小説なので、文章がおかしかったり誤字などあるかもしてませんがよろしくお願いいたします。 更新は、話が思いついたらするので早く更新できる時としばらく更新てきない時があります。ご了承ください。 人との接し方などコミュニケーションが苦手なので感想等は返信できる時とできない時があります。返信できなかった時はごめんなさいm(_ _)m なるべく返信できるように努力します。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...