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第八十八話 占領解除
しおりを挟む占領軍は、流石に王宮を使っていなかった。わざわざ反発させるようなことをしない思慮くらいは持ち合わせているようだ。
こりゃ、話し合い可能かもな、とドーラは思った。
占領軍は王宮敷地内にある騎士団本部を使っていた。軍と騎士団を解散させていたので空いたから。
軍を解散させれば軍の装束はない。なので戦おうとしたら一般人の姿で。
そうなると、敵は一般人をも攻撃するようになる。なので、敗戦側は闘うことはなかなかむずかしくなる。
という思惑が、占領軍の幹部にある、ということだろう。
ドーラは賢い者も好きだった。話ができるから。アホウも好きだ。話しにならないので実力のみでいいから。
中途半端な小賢しいのがうざくて面倒くさく、一番多い。これも一挙に武力で終わらせるけど。
王と3人でてくてく歩いて元騎士団本部まで行く。
王と子供2人。武装はしていない(ユータとドーラは剣をストレージに入れている)。なのですんなり中に入り、司令官に面会を求める。
内容は?と聞かれたから、ドラゴニアからの使者だ、と答えるドーラ。
すんなり司令官室に通された。やはりバカではないな、かなりマシかも、とドーラは思った。
無駄でつまらん話を部下にさせず、直に自分が聞くのが最も正確な判断ができるとわかっているのだろう。
元騎士団団長室のソファに促された。
座ってから名乗った。座らせられると動きにくい。これも、賢いやり方だ。
「ドラゴニアって知っているか?」ドーラ
「ああ、幾つかの国の王家を滅ぼしているな」司令官らしき男。
「だけじゃないぞ、軍も潰しているがな、指一本で」
「・・・よく知っているな」
「そりゃそうだ、当人だからな」
「・・・・・・・そうか、、、で、要件は?」
「お前の国の王都は無い。南の国境の領都もなくなった。おまえらは早く国に帰り、まともな領主の戦力になり、そいつを国王にしろ。まともな国になれば、滅ぼさない。
侵略をしない、国内に孤児が出るような環境にしない。それさえ守ってりゃ、お前の国は、少なくともドラゴニアには滅ぼされないだろう。」
「・・・保証など無いのに?」
「聞かなかったことにしてもいいが?そこまでバカなはず無いよな?王宮を占領していない。この国の軍を武装解除しただけ。しかも、俺らをすんなり通した。バカならどっかで躓く」
「・・・・わかった。お前がドラゴニアの王族だという証明が欲しい。俺が信じられればいい。」
ドーラ達と司令官が練兵場に行く。
ドーラが上空高く飛び上がる。
ユータが魔力をドーラに注ぎ込む。
ドーラがどんどん大きくなる
「・・・わかった、もうそこまででいい、これ以上大きくしないでくれ、、不穏になる」司令官
その後、ユータが全兵力を、司令官が言う場所に転移させることになった。
「お前が成功させないとお前の国は滅ぶぞ?心して掛かれよ」とドーラは司令官に言う。
「わかってる。うまく国をまとめたら、同盟を結んでくれ。」
「おまえと俺の間というのであれば、良い。お前が心変わりせず、そして生きていれば、俺はお前の味方になろう」
「わかった、それでよい。」
「俺は、ドラゴニア国王ドーラだ。」
「俺は、元リターニア国軍司令官ミカロユス・チュルリョーニスだ」
二人はしっかりと握手した。
練兵場にギュウギュウに押し込められた1万人ほどの兵達とともに、ユータは遠視で確認した先に転移した。
転移先はユータ達が以前居た国の北西僻地領都郊外。
全員到着したことを確認し終わった四半時後に、ユータはドーラが居る場所に戻った。
ドーラは王宮で王と茶を飲んでいた。
「おう、おかえり、ご苦労さん」
「うん、うまくいったよ」
「ありがとうござました。」王
いえいえ、と手を振るユータ。
ユータも茶とケーキをもらう。
「で、この国をしっかり治めるための人材は居るのか?」ドーラ
「まぁ、ギリギリ足りるかどうか、くらいはいるな。」王
「条件は、先程あの司令官に言ったのと同じだ。」
「わかった。軍備がなくなっている。あと、食料を初めとする物資も不足気味だ。かなり取られた」
ほんとかぁ?
「まぁ、この際だ、うちを見せちゃる。お前の腹心、全て任せられるほどの、いるか?」ドーラ
「まぁ、一人二人は、、」王
「完全に任せても安心なやつだけ呼べ」
王は侍従に呼ばせた。ほどなく一人の男が来た。
ユータが皆をドラゴニアに転移させた。
ちょうど夕食時。
向こうに泊まって明日朝戻って来ても良かったのだが、面白くなさそうだし、と、すぐに帰ってきたのだ。
食事も数人増えるくらい誤差程度でしかないので、問題ない。
王も側近も一緒に席に着き、皆同じものを食う。
全員同じ席に着く、ということに違和感しか無い王とその側近だが、流石に何かいうようなアホウではなかった。
これがドラゴニア国王のやり方なのだ、とくらいわかったわけで。
そして、誰もドーラが連れてきた者に警戒する者もいなかった。
それだけドーラの判断力が信頼されているということがわかる。
王とその側近は、食事は質素だけど量があり、美味く、新鮮で栄養もありそうだと思った。
食事中の雑談で、ここの子どもたちがどの程度優秀なのか、どのくらい責任を持って仕事をしているのかが、推測された。それにはびっくりするしかなかった2人だった。
食後のお茶は隣に見えている広いリビングでされた。
話を聞いていると茶葉も自家製らしい。新興国のはずだったが、、と訝しむ側近。
彼は、ここにはもともと集落が在り、最近国家になったのならばそれも納得行くと思えた。
ドーラが王を紹介。
名乗っていなかったので、王は自己紹介をした。
「ラットビア国王ハムス6世。ドーラ国王から、軍と経済的に援助をいただけることになった。誠に感謝する。」
「私はハムス国王の側近でモルモートです。宜しくお願いいたします」
ドーラが経緯を説明し、明日はもう一つの国に行くので、ハムスとモルモートのことを誰か頼む、と押し付けた。
ガンダが、んじゃゴンザール王が来ているので、会わすか、と、請け負ってくれた。
その後、ドラゴニア側のメンツを紹介した。
王と側近に邸の部屋を用意してやり、数日泊まらせることになった。
その後、王と側近から、北側の国のこと、知る限りのことを聞いた。
悪くはなさそうだった。
イスターニヤ王国。
「なんか、放射能除去装置をくれそうな感じだね?」ユータ
「そりゃ人の名前だろ?」
そこまでよく知っているなドーラ、、、
同盟こそわからないが、少なくとも他国に侵略はしなさそうだった。
北部を西の端から東の端まで領土にしている国なので、その広大な国の経営はどうやってるんだろう?と、ドーラは少し興味を持った。
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