237 / 260
第19章 再会の時
23.お買い物デート(1)
しおりを挟む
■■■前書き■■■
お気に入りや感想、web拍手、コメントをありがとうございます。
頂いた応援は更新の励みになっております。
更新お待たせしました。今回はシェニカ視点のお話です。
■■■■■■■■■
「街の中が森になってるって、すごく変わってるね」
「木々に阻まれて見えませんが、ここは新緑と紅葉の季節が素晴らしいということで、貴族たちの別荘が建っているんです」
「そうなんだ。すごく素敵ね。紅葉の時季にもまた来たいな」
「えぇ。もちろんです。景色がキレイな場所は他にもあるので、そこにも行きましょう」
昼の時間を少し過ぎた時刻に、ファンゼオンという街に到着した。
今までは建物が立ち並ぶ街が城壁で囲まれていたけど、この街は緑の木々に覆われた高台の麓部分をグルリと一周囲んでいる。大きな門を潜ってこの街に入ると、麓から頂上に向かって真っ直ぐ伸びる広い坂道と、キレイな石畳が目を引いた。宿は坂道の上の方にあるらしく、緩やかな坂道を騎乗したままゆっくり進んでいけば、この街は土産物屋よりも服屋や宝石店が多いらしく、ショウウィンドウに飾られたオシャレなワンピースや豪華なドレスなどがよく目についた。
低木で隔てた歩道を身なりの良い人がちらほら歩いていて、その人の後ろには荷物を抱える従者がいる。貴族の別荘地だから、きっとオシャレなお店が多いのだろう。
ーー静かで緑が豊かで、こういう森の中にある街に住むのも良いなぁ。
建物と建物の広い空間には視線を遮るように生えた木々があって、建物の裏は森。風には緑と土の匂いが混ざり、遠くの小鳥の囀りが聞こるほど静かで、とても素敵な場所だ。大通りから森の中に続く道があちこちあって、その先は木々に覆われて見えないけど、きっと貴族の別荘があるのだろう。
坂道を上りきった場所にある宿の前で私達は止まったけど、先を行っていたバルジアラ様達は、もっと向こうにある大きな建物前で馬から降りていた。
「お部屋にご案内いたします」
ファズ様の先導で案内された部屋は最上階の3階で、外に出られるテラスはなく、数枚の窓はすべて腕が出るくらいしか開かなかった。静かで緑あふれる空気を浴びたかったけど、窓から入ってくる涼しい空気と緑の景色だけがあれば十分か、と思って窓を閉めた。
背負っていた荷物を下ろしてベッドの脇に置くと、広い部屋の中を見て回ってみた。ソファーとテーブルのセット、キングサイズの大きなベッド、たくさん入るクローゼット、大理石で作られたトイレとお風呂、紫色のすみれが主役のミニ盆栽がある洗面台。壁にはウィニストラの地図、戴冠式の国王陛下、青碧色の尖った屋根が特徴の白い王宮が描かれた絵画が飾ってある。すっきりとしていて、清潔感溢れるお部屋だ。
「おまたせ」
「では行きましょうか」
廊下で待っていたディズと一緒に宿の外に出ると、ディズの追っかけの人はいなかった。今まで追っかけて来ているから、きっと私達が出発した後に彼女たちも出発したと思うけど、貸馬屋の馬では足の早い軍馬には追いつけなかったようだ。
「このお店を見てみませんか?」
「うーん、もうちょっと敷居が低いお店がいいな」
「こっちのお店は品揃えが良さそうですね。入ってみませんか?」
「ちょっと私には入りにくい…かな」
手を繋ぎ、洋服店が並ぶ坂道を下へ下へと歩いているけど、彼が入ろうと言ってくれるのはどれも高級店ばかりだ。どのお店も大きなショウウィンドウには舞踏会用のドレスやお出かけ用のワンピースが飾ってあるけど、私には眩しすぎるような綺羅びやかさだったり、着こなせないと確信できるセクシーなワンピースだったりと、とてもじゃないけど入る気にならなかった。
どこにも入らないまま中腹あたりまでくると、お土産屋さんやお手軽価格なレストラン、お菓子屋さんなどのワクワクするようなお店が増えてきた。でも私が入りたくなるような服屋さんはなかったから、あっという間に麓まで下りてきた。
「あ、このお店行ってみようよ」
「分かりました」
門に一番近い店の前にあった街の案内図を見ると、坂道の上の方は高級店が揃っていて、麓に行くほど庶民向けのお店が揃っているらしい。服屋さんはこの近くにはないけど、城壁に沿った道を少し歩いた先に1軒あるようだ。
「なんだか街の中ってことを忘れちゃうね」
「そうですね。シェニカと一緒に旅をしている気がします」
城壁に沿って整えられた道は砂地になっているだけでお店はなく、道の両脇には木々が生えているから、街の中というのを忘れてしまう。
「あ!ユーリくんっ!」
「人の気配がなくなったので、出てきたようですね。シェニカの方に行きたいようです」
「ボタンになってくれるの? ありがとう~!」
ディズの肩にいるユーリくんに手を出すと、彼はピョン!と飛び移って、私の旅装束の合わせ部分をグイグイと鼻先で押してくる。心のなかで歓喜の声を上げながらボタンを外すと、ユーリくんは可愛いボタンになってくれた。
「本当に可愛いなぁ。可愛いなぁ…」
ユーリくんの小さな頭を撫でていると、近くでカァ!というカラスの鳴き声が聞こえた。ユーリくんの大きな耳がピクピク動いているけど、胸元は安全と思っているようで隠れることはなかった。森の中を歩いていることもあって、ユーリくんと旅をしている気分になる。あぁ、ユーリくんと旅がしたい。可愛い相棒が欲しいっ!
「ディズ、なんだかいつもよりニコニコしてるね」
「シェニカと一緒に旅をすると、こんな感じなのかなと思うと嬉しくて…。こうして隣を歩きながら世界中を回る日が来たら良いなと思って」
「そうだね。いつか一緒に旅ができたら良いね。もちろんユーリくんも一緒だよ!」
リスボタンのユーリくんを撫でたり、ディズと他愛のない話をしながら歩いていると、木々が途切れた場所に建物が見えてきた。周囲の木が切られているから日当たりが良いようで、赤い屋根とその上に乗っている看板の黒文字は褪せてしまっている。
「あ!あのお店だ!」
「あれは八百屋では…?」
「ドルニオ洋服店って書いてあるよ」
「ですが軒先に大根が…」
「見てみよ、見てみよ!」
ディズをグイグイと引っ張って、軒先に葉っぱ付きの大根がズラーっと干してある洋服屋さんに向かって歩いた。立派な大根だな~とウキウキしながら、開け放たれた入り口に近付こうとすると、人の気配を警戒したのか、胸元から出てきたユーリくんはディズの腕にピョンと飛んで張り付くと、器用に軍服を伝って裾から服の中に入ってしまった。ぽっかりとした喪失感に襲われながら胸元のボタンを留めていると、中からなにやら話し声が聞こえてきた。
「お前はまた大根干して! あの場所は大根じゃなくて、ハンガーを掛けろと何度言ったら分かるんだ!」
「そんなに怒りなさんな。こんな外れの服屋にお客さんなんて来ませんよ。来ないお客さんを待つよりも、大根を干したほうが現実的ですよ」
「いくら売れない服屋だからって、大根干すアホはいねぇだろ! だから八百屋だと思われるんだよ!」
「店の看板にちゃんと洋服店って書いてありますし、八百屋だと勘違いしたお客さんが来てくれるから大丈夫ですよ。私をアホと言うのなら、アホに目くじらを立てるあなたもアホというんですよ。アホ、アホ言ってると本当にアホになってしまいますよ。おや、いらっしゃいませ」
おばあちゃんの飄々として楽しそうな話に惹きつけられるように入り口に立つと、顔を真っ赤にしたおじいちゃんと、カウンターの上で大根の葉っぱを束ねているおばあちゃんが見えた。
「あらまぁ~! 立派な方に来ていただけるなんてねぇ。たいしたものはないですが、ごゆっくりご覧下さい」
店内はハンガーラックがズラーっと並んでいて、人1人が通れるくらいの通路しかない。でも、色とりどりの服には値段のついたタグが見えていて、とても安心するしワクワクしてきた。
「ディズってどんな服が好き?」
「ゆとりのあるデザインが好きですね」
「この前着てた感じ?」
「えぇ。昔からダボッとしたゆるい感じのものが好きなんです」
「そうなんだ。じゃあ、ディズの服も探してみようよ」
「では私はシェニカの服を探してみますね」
お店の中に入ると、ディズと二手に分かれて服を探し始めた。
男性物の旅装束やジャケット、シャツ、ローブなど種類もデザインも多く、選ぶだけでも楽しいけどお手軽価格なのがとても嬉しい。
ーーこの青いズボン、裾とポケット口にビッシリついている鱗みたいな銀色のスタッズがオシャレ! ディズに似合うと思うけど、ダボッとしたゆるい感じじゃないのが残念。
誰かのために何かを選ぶのは楽しいな~と思いながら選んでいると、いつの間にか近くにディズが居て、微笑みながら私を眺めていた。
「ねぇねぇディズ。こんなのどう? 可愛いからユーリくんも喜びそうだし、なによりディズに似合うと思うんだ」
ディズに選んだのは、ハチさんをイメージさせる黄色と黒の横縞が素敵な、試着しなくてもゆるいのが分かる、すごくダボダボっとしたズボンだ。
「…ユーリが喜びそうな可愛いサルエルパンツですね」
「これってサルエルパンツっていうの?」
「えぇ、そうですね。着こなせる方であれば素敵だと思いますが、私では着こなせないようです」
「似合いそうなのに…。試着してみない?」
「一度試着したことがあるんですが、しっくり来ませんでした」
「そっか~」
ハチさんのズボンは可愛いし、ゆるい感じがいいな~と思ったけど、ちょっとダボダボすぎたらしい。惜しかったな~と思いながらズボンをハンガーラックに戻すと、店の奥まで続くハンガーラックを細かく見続けた。そして、ようやく見つけた良い感じのズボンを手に取り、ハンガーラックの向こう側にいるディズへと近付いた。
「ねぇディズ。これはどう? ねじり鉢巻用タオルとセットでお得だし、すごく似合うと思うんだ!」
彼に渡したのは、薄茶の生地に白い手形がいっぱい押された、足首に向かってダボッと膨らんでいるズボンだ。さっきのズボンよりダボダボ感は控えめな感じだし、紫の生地に白いドクロとトンカチが小さくたくさん描かれた、かわいいタオルとセットになっているから、絶対気に入ってくれるに違いない!
「それは…。とび職用、です…」
「試着してみない?」
「試着したい気持ちはあるのですが、今は軍服を脱げなくて。首都に戻った時に城下で探してみたいと思います。先程、ショウウィンドウ越しに素敵な服を見かけたので、そのお店に行ってもいいですか?」
「分かった」
ディズが連れて行ってくれたのは泊まる宿の近くにあるお店で、クルクルの縦巻きヘアが似合う令嬢じゃないと着こなせない、豪華な舞踏会用のドレスがショウウィンドウに飾られた立派なお店だった。こんな高級店に入ったら、まともに呼吸が出来なくなって、私の寿命は削られるに違いない。
「このお店はなんかちょっと高そうな…」
「そんなことないと思いますよ」
「やっぱりさっきのお店で探さない? さっきはディズの服ばかり見てたから、今度は自分の服を探してみようと思うんだけど」
「先程のお店も味があって良いと思いますが、フェアニーブに来るのは国王や女王、王太子といった顔ぶれです。そういう方々は良い物を見分ける目を持っているので、シェニカが軽んじられないよう、質の良い服を着たほうが良いと思います。こういうお店であれば問題ないので、ここで選んでみませんか?」
「そ、そっか…。じゃあとりあえず、見てみようかな」
ーー王族がいる場所なんて最低限しか行かないし、長居しないから気にしてもなかったけど、錚々たる顔ぶれとお茶会となると、高級店で売ってる服じゃないと見くびられてしまうのだろう。そういう席の経験があるディズが言うのなら、1着くらい覚悟を決めて買ってみるのも良いのかもしれない。
ハンカチを口に当てながらお店に入ると、ディズは出入り口に近いハンガーラックで服を探し始めた。
私はその後ろにあるハンガーラックにある服をいくつか手にとってみたけど、どの服にもやっぱり値札がついていない。多分払える額だと思うけど、普段と比べ物にならないほど高いお値段となると、やっぱり二の足を踏んでしまうし、選ぶ気が起きない。
「こういうのはどうですか?」
「私にはちょっと上品すぎるような…」
「シェニカの服選びの参考にしたいので、ひとまず試着してみませんか?」
「う、うん。わかった」
ディズが選んでくれたのは、薄い水色のスカートがふわりと広がる半袖ワンピースだ。腰から上は白地に青い小花が所々に刺繍されていて、爽やかな感じがする。汚さないよう、シワを作らないようにと慎重に着て、鏡を見てみたけど。不釣り合いな私が着てしまっては、この上品な服に失礼だと思えた。暗い気持ちのまま試着室のドアを開くと、ディズの顔がふわりと綻んだ。
「あぁ…。素敵です…」
「私には無理な気がするけど…」
「とても似合っているので、1着目はそれにしませんか?」
「うーん…。別のお店で探してみてもいい?」
試着した服に浄化の魔法をかけ、隣りにあった高級店に入ったけど、やっぱりこのお店にも値札はない。ディズは値札がないことに不安を感じないのかな…と思いながら、二手に分かれて探してみたけど。値段が分からないと、心配と不安で選ぶ気にもならない。高級なお値段であっても、せめて値札はつけてくれないだろうか。
いくつかのワンピースを見比べるディズを見ていると、私の視線に気付いたのか、ワンピースを3着持ってこっちに歩いてきた。
「こういうのはどうでしょう」
「ちょっと私には可愛すぎる、かな」
「これは?」
「うーん…」
ディズに渡された1着目は、腰から上部分は青みが強い部分がある水色の生地に、白い小花模様が等間隔で細かく刺繍されていて、ところどころに小さなパールが縫い付けられている。スカートは青地に白と黄色のチェック柄で、涼し気な印象を受けるワンピースだ。着る人が着れば可愛いと思うけど、私には似合いそうにない気がする。
2着目はアイボリーの生地のワンピースで、胸からお腹にかけて金と銀の糸で縁取った大きなバラの模様が刺繍されていて、花びらの水滴を表すようにところどころにピンクパールが縫い付けてある。膝下のアイボリーのフレアスカートの裾からは、二重になった真っ白なフリルが覗いている。
他のワンピースに比べれば華美さはないけど、存在感のある大きなバラの刺繍がちょっと好みじゃない。
「気に入りませんでしたか…」
「そういうわけじゃないんだけど。こういうお高いものを身につけると、穴を開けてしまったり、ほつれたり、汚してしまわないかとか思って、すごく緊張するんだ。だから、もう少し手軽な服が良いんだ」
「私からプレゼントしますから、値段は気にしなくて大丈夫ですよ」
「ううん、自分で買うよ。普段高い物を買わないから、緊張するというか。これにしよう!って踏ん切りがつかないんだ」
「では、これはどうでしょうか。この中でも一番似合うと思うのですが、試着だけでもしてみませんか?」
彼が選んだのは白のノースリーブのワンピースで、スカート部分には藍色の蔦と水色の小鳥が小さく、さり気なく刺繍されている。ワンピースの上に羽織るためか、薄ピンク色のボレロもセットになっている。
キレイなワンピースだと思うけど、試着してみたいとは思わない。でも、ずっとディズのオススメを断り続けるのも申し訳ない。
「じゃあ、試着してみるね」
爪を引っ掛けないように、シワを作らないように慎重に着て、鏡を見ると。そこには、背伸びして大人になっているような子供が映っているように感じた。すぐに脱ぎたくなったけど、とりあえずディズに見てもらおうと扉を開けると、彼は嬉しそうに破顔した。
「あぁ…。すごく似合っています。シェニカは白とピンクが似合いますね」
「ちょっと私には大人っぽすぎない?」
「とても似合っていますよ。是非これにしたいです。ダメですか?」
「ディズがそう言ってくれるなら…」
ディズの「ダメですか?」と言った時の切なそうな目を見ると、否定の言葉を言いづらくなってしまった。もう一度扉を閉め、着替えながら一体いくらなのだろうかと考えた。こういう服を買うことなんてないから、相場はちっとも分からない。金貨5枚とか? いや金貨8枚くらい? そんなことを心のなかで呟きながら、店員さんのいるカウンターへと持って行った。するとディズがお金を払おうとしたけど、首を横に振って断った。
「金貨15枚でございます」
じゅっ、じゅっ…! じゅうごまいっ!!
心のなかでチャリーン、チャリーンと金貨が落ちる音が響き渡るのを感じながら、お金を払ったものの…。15回分のチャリーンを聞ながら、私の心の中では『確かに素敵な服だと思う。でも、金貨15枚を払ってまで買うものだろうか』という後悔のような、罪悪感のような変な気持ちが渦巻いた。
「ありがとうございました」
「ありがとう…ござい、ました…」
美しい笑顔のお姉さんからキレイな布で包まれた服を受け取ると、抱き潰してシワを増やさぬよう、息を押し殺しながら慎重に歩いて外に出た。
■■■後書き■■■
軍服を脱げないから、という理由で無事難を回避出来ました。今回はオシャレな街だったのでそこまで変なものはありませんでしたが、シェニカの服選びはちょっと自分と違うな程度で実感したようです。笑
お気に入りや感想、web拍手、コメントをありがとうございます。
頂いた応援は更新の励みになっております。
更新お待たせしました。今回はシェニカ視点のお話です。
■■■■■■■■■
「街の中が森になってるって、すごく変わってるね」
「木々に阻まれて見えませんが、ここは新緑と紅葉の季節が素晴らしいということで、貴族たちの別荘が建っているんです」
「そうなんだ。すごく素敵ね。紅葉の時季にもまた来たいな」
「えぇ。もちろんです。景色がキレイな場所は他にもあるので、そこにも行きましょう」
昼の時間を少し過ぎた時刻に、ファンゼオンという街に到着した。
今までは建物が立ち並ぶ街が城壁で囲まれていたけど、この街は緑の木々に覆われた高台の麓部分をグルリと一周囲んでいる。大きな門を潜ってこの街に入ると、麓から頂上に向かって真っ直ぐ伸びる広い坂道と、キレイな石畳が目を引いた。宿は坂道の上の方にあるらしく、緩やかな坂道を騎乗したままゆっくり進んでいけば、この街は土産物屋よりも服屋や宝石店が多いらしく、ショウウィンドウに飾られたオシャレなワンピースや豪華なドレスなどがよく目についた。
低木で隔てた歩道を身なりの良い人がちらほら歩いていて、その人の後ろには荷物を抱える従者がいる。貴族の別荘地だから、きっとオシャレなお店が多いのだろう。
ーー静かで緑が豊かで、こういう森の中にある街に住むのも良いなぁ。
建物と建物の広い空間には視線を遮るように生えた木々があって、建物の裏は森。風には緑と土の匂いが混ざり、遠くの小鳥の囀りが聞こるほど静かで、とても素敵な場所だ。大通りから森の中に続く道があちこちあって、その先は木々に覆われて見えないけど、きっと貴族の別荘があるのだろう。
坂道を上りきった場所にある宿の前で私達は止まったけど、先を行っていたバルジアラ様達は、もっと向こうにある大きな建物前で馬から降りていた。
「お部屋にご案内いたします」
ファズ様の先導で案内された部屋は最上階の3階で、外に出られるテラスはなく、数枚の窓はすべて腕が出るくらいしか開かなかった。静かで緑あふれる空気を浴びたかったけど、窓から入ってくる涼しい空気と緑の景色だけがあれば十分か、と思って窓を閉めた。
背負っていた荷物を下ろしてベッドの脇に置くと、広い部屋の中を見て回ってみた。ソファーとテーブルのセット、キングサイズの大きなベッド、たくさん入るクローゼット、大理石で作られたトイレとお風呂、紫色のすみれが主役のミニ盆栽がある洗面台。壁にはウィニストラの地図、戴冠式の国王陛下、青碧色の尖った屋根が特徴の白い王宮が描かれた絵画が飾ってある。すっきりとしていて、清潔感溢れるお部屋だ。
「おまたせ」
「では行きましょうか」
廊下で待っていたディズと一緒に宿の外に出ると、ディズの追っかけの人はいなかった。今まで追っかけて来ているから、きっと私達が出発した後に彼女たちも出発したと思うけど、貸馬屋の馬では足の早い軍馬には追いつけなかったようだ。
「このお店を見てみませんか?」
「うーん、もうちょっと敷居が低いお店がいいな」
「こっちのお店は品揃えが良さそうですね。入ってみませんか?」
「ちょっと私には入りにくい…かな」
手を繋ぎ、洋服店が並ぶ坂道を下へ下へと歩いているけど、彼が入ろうと言ってくれるのはどれも高級店ばかりだ。どのお店も大きなショウウィンドウには舞踏会用のドレスやお出かけ用のワンピースが飾ってあるけど、私には眩しすぎるような綺羅びやかさだったり、着こなせないと確信できるセクシーなワンピースだったりと、とてもじゃないけど入る気にならなかった。
どこにも入らないまま中腹あたりまでくると、お土産屋さんやお手軽価格なレストラン、お菓子屋さんなどのワクワクするようなお店が増えてきた。でも私が入りたくなるような服屋さんはなかったから、あっという間に麓まで下りてきた。
「あ、このお店行ってみようよ」
「分かりました」
門に一番近い店の前にあった街の案内図を見ると、坂道の上の方は高級店が揃っていて、麓に行くほど庶民向けのお店が揃っているらしい。服屋さんはこの近くにはないけど、城壁に沿った道を少し歩いた先に1軒あるようだ。
「なんだか街の中ってことを忘れちゃうね」
「そうですね。シェニカと一緒に旅をしている気がします」
城壁に沿って整えられた道は砂地になっているだけでお店はなく、道の両脇には木々が生えているから、街の中というのを忘れてしまう。
「あ!ユーリくんっ!」
「人の気配がなくなったので、出てきたようですね。シェニカの方に行きたいようです」
「ボタンになってくれるの? ありがとう~!」
ディズの肩にいるユーリくんに手を出すと、彼はピョン!と飛び移って、私の旅装束の合わせ部分をグイグイと鼻先で押してくる。心のなかで歓喜の声を上げながらボタンを外すと、ユーリくんは可愛いボタンになってくれた。
「本当に可愛いなぁ。可愛いなぁ…」
ユーリくんの小さな頭を撫でていると、近くでカァ!というカラスの鳴き声が聞こえた。ユーリくんの大きな耳がピクピク動いているけど、胸元は安全と思っているようで隠れることはなかった。森の中を歩いていることもあって、ユーリくんと旅をしている気分になる。あぁ、ユーリくんと旅がしたい。可愛い相棒が欲しいっ!
「ディズ、なんだかいつもよりニコニコしてるね」
「シェニカと一緒に旅をすると、こんな感じなのかなと思うと嬉しくて…。こうして隣を歩きながら世界中を回る日が来たら良いなと思って」
「そうだね。いつか一緒に旅ができたら良いね。もちろんユーリくんも一緒だよ!」
リスボタンのユーリくんを撫でたり、ディズと他愛のない話をしながら歩いていると、木々が途切れた場所に建物が見えてきた。周囲の木が切られているから日当たりが良いようで、赤い屋根とその上に乗っている看板の黒文字は褪せてしまっている。
「あ!あのお店だ!」
「あれは八百屋では…?」
「ドルニオ洋服店って書いてあるよ」
「ですが軒先に大根が…」
「見てみよ、見てみよ!」
ディズをグイグイと引っ張って、軒先に葉っぱ付きの大根がズラーっと干してある洋服屋さんに向かって歩いた。立派な大根だな~とウキウキしながら、開け放たれた入り口に近付こうとすると、人の気配を警戒したのか、胸元から出てきたユーリくんはディズの腕にピョンと飛んで張り付くと、器用に軍服を伝って裾から服の中に入ってしまった。ぽっかりとした喪失感に襲われながら胸元のボタンを留めていると、中からなにやら話し声が聞こえてきた。
「お前はまた大根干して! あの場所は大根じゃなくて、ハンガーを掛けろと何度言ったら分かるんだ!」
「そんなに怒りなさんな。こんな外れの服屋にお客さんなんて来ませんよ。来ないお客さんを待つよりも、大根を干したほうが現実的ですよ」
「いくら売れない服屋だからって、大根干すアホはいねぇだろ! だから八百屋だと思われるんだよ!」
「店の看板にちゃんと洋服店って書いてありますし、八百屋だと勘違いしたお客さんが来てくれるから大丈夫ですよ。私をアホと言うのなら、アホに目くじらを立てるあなたもアホというんですよ。アホ、アホ言ってると本当にアホになってしまいますよ。おや、いらっしゃいませ」
おばあちゃんの飄々として楽しそうな話に惹きつけられるように入り口に立つと、顔を真っ赤にしたおじいちゃんと、カウンターの上で大根の葉っぱを束ねているおばあちゃんが見えた。
「あらまぁ~! 立派な方に来ていただけるなんてねぇ。たいしたものはないですが、ごゆっくりご覧下さい」
店内はハンガーラックがズラーっと並んでいて、人1人が通れるくらいの通路しかない。でも、色とりどりの服には値段のついたタグが見えていて、とても安心するしワクワクしてきた。
「ディズってどんな服が好き?」
「ゆとりのあるデザインが好きですね」
「この前着てた感じ?」
「えぇ。昔からダボッとしたゆるい感じのものが好きなんです」
「そうなんだ。じゃあ、ディズの服も探してみようよ」
「では私はシェニカの服を探してみますね」
お店の中に入ると、ディズと二手に分かれて服を探し始めた。
男性物の旅装束やジャケット、シャツ、ローブなど種類もデザインも多く、選ぶだけでも楽しいけどお手軽価格なのがとても嬉しい。
ーーこの青いズボン、裾とポケット口にビッシリついている鱗みたいな銀色のスタッズがオシャレ! ディズに似合うと思うけど、ダボッとしたゆるい感じじゃないのが残念。
誰かのために何かを選ぶのは楽しいな~と思いながら選んでいると、いつの間にか近くにディズが居て、微笑みながら私を眺めていた。
「ねぇねぇディズ。こんなのどう? 可愛いからユーリくんも喜びそうだし、なによりディズに似合うと思うんだ」
ディズに選んだのは、ハチさんをイメージさせる黄色と黒の横縞が素敵な、試着しなくてもゆるいのが分かる、すごくダボダボっとしたズボンだ。
「…ユーリが喜びそうな可愛いサルエルパンツですね」
「これってサルエルパンツっていうの?」
「えぇ、そうですね。着こなせる方であれば素敵だと思いますが、私では着こなせないようです」
「似合いそうなのに…。試着してみない?」
「一度試着したことがあるんですが、しっくり来ませんでした」
「そっか~」
ハチさんのズボンは可愛いし、ゆるい感じがいいな~と思ったけど、ちょっとダボダボすぎたらしい。惜しかったな~と思いながらズボンをハンガーラックに戻すと、店の奥まで続くハンガーラックを細かく見続けた。そして、ようやく見つけた良い感じのズボンを手に取り、ハンガーラックの向こう側にいるディズへと近付いた。
「ねぇディズ。これはどう? ねじり鉢巻用タオルとセットでお得だし、すごく似合うと思うんだ!」
彼に渡したのは、薄茶の生地に白い手形がいっぱい押された、足首に向かってダボッと膨らんでいるズボンだ。さっきのズボンよりダボダボ感は控えめな感じだし、紫の生地に白いドクロとトンカチが小さくたくさん描かれた、かわいいタオルとセットになっているから、絶対気に入ってくれるに違いない!
「それは…。とび職用、です…」
「試着してみない?」
「試着したい気持ちはあるのですが、今は軍服を脱げなくて。首都に戻った時に城下で探してみたいと思います。先程、ショウウィンドウ越しに素敵な服を見かけたので、そのお店に行ってもいいですか?」
「分かった」
ディズが連れて行ってくれたのは泊まる宿の近くにあるお店で、クルクルの縦巻きヘアが似合う令嬢じゃないと着こなせない、豪華な舞踏会用のドレスがショウウィンドウに飾られた立派なお店だった。こんな高級店に入ったら、まともに呼吸が出来なくなって、私の寿命は削られるに違いない。
「このお店はなんかちょっと高そうな…」
「そんなことないと思いますよ」
「やっぱりさっきのお店で探さない? さっきはディズの服ばかり見てたから、今度は自分の服を探してみようと思うんだけど」
「先程のお店も味があって良いと思いますが、フェアニーブに来るのは国王や女王、王太子といった顔ぶれです。そういう方々は良い物を見分ける目を持っているので、シェニカが軽んじられないよう、質の良い服を着たほうが良いと思います。こういうお店であれば問題ないので、ここで選んでみませんか?」
「そ、そっか…。じゃあとりあえず、見てみようかな」
ーー王族がいる場所なんて最低限しか行かないし、長居しないから気にしてもなかったけど、錚々たる顔ぶれとお茶会となると、高級店で売ってる服じゃないと見くびられてしまうのだろう。そういう席の経験があるディズが言うのなら、1着くらい覚悟を決めて買ってみるのも良いのかもしれない。
ハンカチを口に当てながらお店に入ると、ディズは出入り口に近いハンガーラックで服を探し始めた。
私はその後ろにあるハンガーラックにある服をいくつか手にとってみたけど、どの服にもやっぱり値札がついていない。多分払える額だと思うけど、普段と比べ物にならないほど高いお値段となると、やっぱり二の足を踏んでしまうし、選ぶ気が起きない。
「こういうのはどうですか?」
「私にはちょっと上品すぎるような…」
「シェニカの服選びの参考にしたいので、ひとまず試着してみませんか?」
「う、うん。わかった」
ディズが選んでくれたのは、薄い水色のスカートがふわりと広がる半袖ワンピースだ。腰から上は白地に青い小花が所々に刺繍されていて、爽やかな感じがする。汚さないよう、シワを作らないようにと慎重に着て、鏡を見てみたけど。不釣り合いな私が着てしまっては、この上品な服に失礼だと思えた。暗い気持ちのまま試着室のドアを開くと、ディズの顔がふわりと綻んだ。
「あぁ…。素敵です…」
「私には無理な気がするけど…」
「とても似合っているので、1着目はそれにしませんか?」
「うーん…。別のお店で探してみてもいい?」
試着した服に浄化の魔法をかけ、隣りにあった高級店に入ったけど、やっぱりこのお店にも値札はない。ディズは値札がないことに不安を感じないのかな…と思いながら、二手に分かれて探してみたけど。値段が分からないと、心配と不安で選ぶ気にもならない。高級なお値段であっても、せめて値札はつけてくれないだろうか。
いくつかのワンピースを見比べるディズを見ていると、私の視線に気付いたのか、ワンピースを3着持ってこっちに歩いてきた。
「こういうのはどうでしょう」
「ちょっと私には可愛すぎる、かな」
「これは?」
「うーん…」
ディズに渡された1着目は、腰から上部分は青みが強い部分がある水色の生地に、白い小花模様が等間隔で細かく刺繍されていて、ところどころに小さなパールが縫い付けられている。スカートは青地に白と黄色のチェック柄で、涼し気な印象を受けるワンピースだ。着る人が着れば可愛いと思うけど、私には似合いそうにない気がする。
2着目はアイボリーの生地のワンピースで、胸からお腹にかけて金と銀の糸で縁取った大きなバラの模様が刺繍されていて、花びらの水滴を表すようにところどころにピンクパールが縫い付けてある。膝下のアイボリーのフレアスカートの裾からは、二重になった真っ白なフリルが覗いている。
他のワンピースに比べれば華美さはないけど、存在感のある大きなバラの刺繍がちょっと好みじゃない。
「気に入りませんでしたか…」
「そういうわけじゃないんだけど。こういうお高いものを身につけると、穴を開けてしまったり、ほつれたり、汚してしまわないかとか思って、すごく緊張するんだ。だから、もう少し手軽な服が良いんだ」
「私からプレゼントしますから、値段は気にしなくて大丈夫ですよ」
「ううん、自分で買うよ。普段高い物を買わないから、緊張するというか。これにしよう!って踏ん切りがつかないんだ」
「では、これはどうでしょうか。この中でも一番似合うと思うのですが、試着だけでもしてみませんか?」
彼が選んだのは白のノースリーブのワンピースで、スカート部分には藍色の蔦と水色の小鳥が小さく、さり気なく刺繍されている。ワンピースの上に羽織るためか、薄ピンク色のボレロもセットになっている。
キレイなワンピースだと思うけど、試着してみたいとは思わない。でも、ずっとディズのオススメを断り続けるのも申し訳ない。
「じゃあ、試着してみるね」
爪を引っ掛けないように、シワを作らないように慎重に着て、鏡を見ると。そこには、背伸びして大人になっているような子供が映っているように感じた。すぐに脱ぎたくなったけど、とりあえずディズに見てもらおうと扉を開けると、彼は嬉しそうに破顔した。
「あぁ…。すごく似合っています。シェニカは白とピンクが似合いますね」
「ちょっと私には大人っぽすぎない?」
「とても似合っていますよ。是非これにしたいです。ダメですか?」
「ディズがそう言ってくれるなら…」
ディズの「ダメですか?」と言った時の切なそうな目を見ると、否定の言葉を言いづらくなってしまった。もう一度扉を閉め、着替えながら一体いくらなのだろうかと考えた。こういう服を買うことなんてないから、相場はちっとも分からない。金貨5枚とか? いや金貨8枚くらい? そんなことを心のなかで呟きながら、店員さんのいるカウンターへと持って行った。するとディズがお金を払おうとしたけど、首を横に振って断った。
「金貨15枚でございます」
じゅっ、じゅっ…! じゅうごまいっ!!
心のなかでチャリーン、チャリーンと金貨が落ちる音が響き渡るのを感じながら、お金を払ったものの…。15回分のチャリーンを聞ながら、私の心の中では『確かに素敵な服だと思う。でも、金貨15枚を払ってまで買うものだろうか』という後悔のような、罪悪感のような変な気持ちが渦巻いた。
「ありがとうございました」
「ありがとう…ござい、ました…」
美しい笑顔のお姉さんからキレイな布で包まれた服を受け取ると、抱き潰してシワを増やさぬよう、息を押し殺しながら慎重に歩いて外に出た。
■■■後書き■■■
軍服を脱げないから、という理由で無事難を回避出来ました。今回はオシャレな街だったのでそこまで変なものはありませんでしたが、シェニカの服選びはちょっと自分と違うな程度で実感したようです。笑
0
お気に入りに追加
178
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる