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第19章 再会の時
21.熟れる魅力
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■■■前書き■■■
お気に入りや感想、web拍手、コメントをありがとうございます。
頂いた応援は更新の励みになっております。
更新おまたせしました!今回はシェニカ視点のお話です。
※人を罵る表現がありますので、ご注意下さい。
■■■■■■■■■
「あぁ~。飲みすぎた」
「大丈夫? 治療の魔法かける?」
「いらん、いらん。あの酒はな、余韻が大事なんだ。大衆酒だからって高級宿には置いてないこともあるんだぞ。俺はあの酒が好きなんだよ。特にあの干物との相性は最高だった」
レオンが言う『あの酒』というのは、『ワルキューレ』という度数の高いお酒のことだ。結構出回っているお酒らしいけど、店に出すとすぐ売り切れてしまう人気なお酒らしい。実際、店主が『ワルキューレ1樽仕入れてきたぞ!』と叫ぶと、その場にいた人たちが次々に注文していたくらいだ。私も一口飲んでみたけど、度数が高すぎるし、舌がピリピリして全然飲めなかった。
酒に強いと豪語する人も一杯で満足するお酒の話とか、悪酔いしやすいお酒のことなど、レオンから色々なことを教えてもらう間、クラゲの干物を飲み込むのに時間がかかるからか、彼は5杯もワルキューレを飲んでいた。
レオンは「宿に戻ったら、これを食べながらまた飲む」と言って、クラゲの干物をテイクアウトした。彼はこの干物をすごく気に入ったらしく、タバコを一切吸わなかった。
本当にお酒が好きなんだな~と思いながら、生み出した光で照らしながら誰もいない路地裏を歩いていると、1軒先の建物の裏口がガチャリと開いた。その中は酒場のようで、ドアが開いた瞬間大きな笑い声や話し声が聞こえてきた。
出てきた女性の3人組は、ドアを閉めた次の瞬間、私を指差して「あ!!」という大きな声を上げた。
「イモ娘っ!!!」
その言葉に思わず足を止めると、隣を歩いていたレオンも立ち止まった。面倒なことになりそうだと思いながら彼を見ると、その目は今にも閉じて眠ってしまいそうだ。お酒が入っているのか、顔が赤い彼女たちはドカドカと大きな足音を立てながら近付いてきた。
「ねぇあんた!どうしてディスコーニ様と一緒にいるの? どういう関係なわけ?!」
「今は他の男と一緒なわけ~?」
「大した顔でもないのに、なんで男がいるのよ」
大柄なレオンが横にいるからか、彼女たちは少し距離を開けた場所で立ち止まっているけど…。喧嘩腰の相手に何を言ってもダメそうだし、横を通り過ぎようにも素直に見逃してくれなさそうだし。どうしようかと黙っていると、それが余計に彼女たちの怒りを刺激してしまったようで、綺麗な顔がどんどん怖くなってきた。
「黙ってないで答えなさいよ!」
「英雄を独り占めなんて許されないのよ」
「ほらほら、どうやって取り入ったのか教えなさい」
お酒が入っているし、怒っているし、何を言っても面倒な状態は変わらないだろうな、と対応に困っていると。彼女たちは足先から頭の先まで眺めて、私を値踏みし始めた。
「服はまぁまぁだけど、田舎臭さが滲んだ冴えない顔ね。こんな地味な女が好きなのかしら」
「あんたはキレイな花にたかるハエみたいなもんなのよ。ディスコーニ様の前から消えて頂戴」
「痛い目に遭いたくなかったら、さっさと引いたほうが身のためよ?」
女性たちの目が鋭くなって怖さが増した時。
「おいブス」
レオンが怒ったような低い声を出した。短い言葉だったけど、場を圧倒するような空気に彼女たちの動きが止まった。
「お前らの今の顔、鏡で見てみろよ。すっげー醜悪だぞ」
「何言ってんのよ。あんたのほうが醜悪よ!」
「そうよ、そうよ!図体でかいばっかりのオッサン!」
「あんたとそのイモ娘、すっごくお似合いよ~!」
「特技は自慢と悪口ばっかりか? お前らは日に日に衰え醜くなるばっかりの顔だから、毎日厚化粧で仮面作ってんだろ?
てめぇらみたいな外見にしか取り柄のない奴は、年食ったら何にも残んねぇんだよ。いつまで経っても飲み込めねぇ、味のない不味いホルモンと同じだ」
「はぁ?!」
「お前らみたいな奴は、熟れた時には意地汚ねぇ顔になってて、誰も構ってくれねぇ。そしたら過去の自分はどうだったとか言い出し、不満を口汚く喚くだけ。そんな腐った奴は、金を積まれてもだ~れも見向きもしねぇんだよ。
嬢ちゃん良いか。他人の悪口ばっかり言ってる奴はな、自分に自信がない上に、常に誰かのせいにしてぇんだよ。そういう奴の戯言なんざ、なーんにも身にならないから、耳を傾ける必要なんてないぞ。
こういう連中は、悪口を言うしか能がないから、遅かれ早かれ中身がスッカラカンの人間になる。干物やドライフルーツは熟成されて美味いだろ? だから嬢ちゃんは芯までしっかり味がついた、かみ続けても味が出る美味い熟女になるんだぞ」
「はぁ?!何様のつもり!!」
「ふざけんじゃないわよっ!」
「若くてキレイな女に相手にされないから、ひがんじゃって。寂しい男!」
「お前らは自分が男を選べる立場と思ってるかもしれねぇがな、選ばれてないから今付き合ってくれる男がいないんだろ? 現実見ろよ」
「なっ!」
「お前らの周りにも1人や2人、なんでモテるんだって奴いるだろ? そういう奴は、お前らが悪口叩いたり、見かけに金と時間をかけてる間に、自分の内側に味付けしてるんだよ。年取るとな、そういう味付けが熟成されて唯一無二の味になるんだ。そうなったら、どんだけ噛んでも味が出続けて美味いんだよ。
外だけ上等でも味が悪けりゃ、誰も食べやしねぇ。それがお前らだ」
「なによ!そういうあんたも独り身でしょうが。大口叩いてんじゃないわよ!」
「モテない男の言い訳なんて見苦しいわ!」
「私達はあんた達と違って、引く手数多なのよ。一目瞭然なのにそれが分からないなんて、ほんと見る目ないわね」
「金も地位もある男はな、お前らが足元にも及ばないような見た目の良い女も、金持ちの女も寄ってくる。選び放題なんだよ。お前らみたいな中身のない奴なんて、選んで何の得になるんだ? 相手にされるわけねぇだろ」
「はぁ?! 何よ!さっきから言いたい放題!」
「中身がないのはあんた達でしょ」
「男の僻みって痛いわぁ」
「言い返す時間と元気があれば、親元に帰って節約の勉強でもしてこい。浪費癖のある女も嫌われるぞ。嬢ちゃん、こんなつまんねぇ奴を相手にするのは時間の無駄だ。ほら行くぞ」
そう言って歩き出したレオンの横にくっついて、彼女たちの横を通り抜けた。彼女たちは何か叫んでいたけど、私達が道を曲がった辺りで声も聞こえなくなった。
「レオン、ありがとう」
「事実を言ったまでで、大したことは言ってないぞ。俺はな、中身の詰まった熟れた女が好きなんだ。
あ~いう奴らの戯言なんて、料理中に横から口を出し、勝手に調味料をぶっこもうとしてくる自称料理上手、自称料理評論家みたいな奴と同じだ。嬢ちゃんの味付けは、嬢ちゃん自身がやるんだ。
みんなに美味いと言われる味付けじゃなくたって良い。俺が懲りたあのくっせぇ食いモンでも、分かる人が食べりゃクセになるくらい美味いんだ。嬢ちゃんの味付けはこれからだ。どんな味付けになろうと、自信を持つんだぞ」
レオンはそう言うと、私の頭にポンと手をおいた。すぐにその手は離れたけど、なんとなく小さい頃のお父さんの記憶と重なって、胸がじんわり温かくなった。
「私、芯までしっかり味がついた、かみ続けても味が出る美味しい熟女になる!」
「お、いい目標だ。じっくり時間をかけて、こういう美味い逸品になるんだぞ。はははは!」
レオンはポケットから袋を取り出すと、私に小さく裂いたクラゲの干物を数個渡して豪快に笑った。レオンと同じように口に入れて噛めば、甘じょっぱい味が広がった。目を閉じ、美味しそうに味わうレオンの姿を見て、彼はお兄ちゃんじゃなくてお父さんみたいだなと思った。
■■■後書き■■■
早いもので、気付いたら連載7年目に突入していました。
これからも頑張って更新していきますので、どうぞよろしくお願いします。m(_ _)m
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レオンが言う『あの酒』というのは、『ワルキューレ』という度数の高いお酒のことだ。結構出回っているお酒らしいけど、店に出すとすぐ売り切れてしまう人気なお酒らしい。実際、店主が『ワルキューレ1樽仕入れてきたぞ!』と叫ぶと、その場にいた人たちが次々に注文していたくらいだ。私も一口飲んでみたけど、度数が高すぎるし、舌がピリピリして全然飲めなかった。
酒に強いと豪語する人も一杯で満足するお酒の話とか、悪酔いしやすいお酒のことなど、レオンから色々なことを教えてもらう間、クラゲの干物を飲み込むのに時間がかかるからか、彼は5杯もワルキューレを飲んでいた。
レオンは「宿に戻ったら、これを食べながらまた飲む」と言って、クラゲの干物をテイクアウトした。彼はこの干物をすごく気に入ったらしく、タバコを一切吸わなかった。
本当にお酒が好きなんだな~と思いながら、生み出した光で照らしながら誰もいない路地裏を歩いていると、1軒先の建物の裏口がガチャリと開いた。その中は酒場のようで、ドアが開いた瞬間大きな笑い声や話し声が聞こえてきた。
出てきた女性の3人組は、ドアを閉めた次の瞬間、私を指差して「あ!!」という大きな声を上げた。
「イモ娘っ!!!」
その言葉に思わず足を止めると、隣を歩いていたレオンも立ち止まった。面倒なことになりそうだと思いながら彼を見ると、その目は今にも閉じて眠ってしまいそうだ。お酒が入っているのか、顔が赤い彼女たちはドカドカと大きな足音を立てながら近付いてきた。
「ねぇあんた!どうしてディスコーニ様と一緒にいるの? どういう関係なわけ?!」
「今は他の男と一緒なわけ~?」
「大した顔でもないのに、なんで男がいるのよ」
大柄なレオンが横にいるからか、彼女たちは少し距離を開けた場所で立ち止まっているけど…。喧嘩腰の相手に何を言ってもダメそうだし、横を通り過ぎようにも素直に見逃してくれなさそうだし。どうしようかと黙っていると、それが余計に彼女たちの怒りを刺激してしまったようで、綺麗な顔がどんどん怖くなってきた。
「黙ってないで答えなさいよ!」
「英雄を独り占めなんて許されないのよ」
「ほらほら、どうやって取り入ったのか教えなさい」
お酒が入っているし、怒っているし、何を言っても面倒な状態は変わらないだろうな、と対応に困っていると。彼女たちは足先から頭の先まで眺めて、私を値踏みし始めた。
「服はまぁまぁだけど、田舎臭さが滲んだ冴えない顔ね。こんな地味な女が好きなのかしら」
「あんたはキレイな花にたかるハエみたいなもんなのよ。ディスコーニ様の前から消えて頂戴」
「痛い目に遭いたくなかったら、さっさと引いたほうが身のためよ?」
女性たちの目が鋭くなって怖さが増した時。
「おいブス」
レオンが怒ったような低い声を出した。短い言葉だったけど、場を圧倒するような空気に彼女たちの動きが止まった。
「お前らの今の顔、鏡で見てみろよ。すっげー醜悪だぞ」
「何言ってんのよ。あんたのほうが醜悪よ!」
「そうよ、そうよ!図体でかいばっかりのオッサン!」
「あんたとそのイモ娘、すっごくお似合いよ~!」
「特技は自慢と悪口ばっかりか? お前らは日に日に衰え醜くなるばっかりの顔だから、毎日厚化粧で仮面作ってんだろ?
てめぇらみたいな外見にしか取り柄のない奴は、年食ったら何にも残んねぇんだよ。いつまで経っても飲み込めねぇ、味のない不味いホルモンと同じだ」
「はぁ?!」
「お前らみたいな奴は、熟れた時には意地汚ねぇ顔になってて、誰も構ってくれねぇ。そしたら過去の自分はどうだったとか言い出し、不満を口汚く喚くだけ。そんな腐った奴は、金を積まれてもだ~れも見向きもしねぇんだよ。
嬢ちゃん良いか。他人の悪口ばっかり言ってる奴はな、自分に自信がない上に、常に誰かのせいにしてぇんだよ。そういう奴の戯言なんざ、なーんにも身にならないから、耳を傾ける必要なんてないぞ。
こういう連中は、悪口を言うしか能がないから、遅かれ早かれ中身がスッカラカンの人間になる。干物やドライフルーツは熟成されて美味いだろ? だから嬢ちゃんは芯までしっかり味がついた、かみ続けても味が出る美味い熟女になるんだぞ」
「はぁ?!何様のつもり!!」
「ふざけんじゃないわよっ!」
「若くてキレイな女に相手にされないから、ひがんじゃって。寂しい男!」
「お前らは自分が男を選べる立場と思ってるかもしれねぇがな、選ばれてないから今付き合ってくれる男がいないんだろ? 現実見ろよ」
「なっ!」
「お前らの周りにも1人や2人、なんでモテるんだって奴いるだろ? そういう奴は、お前らが悪口叩いたり、見かけに金と時間をかけてる間に、自分の内側に味付けしてるんだよ。年取るとな、そういう味付けが熟成されて唯一無二の味になるんだ。そうなったら、どんだけ噛んでも味が出続けて美味いんだよ。
外だけ上等でも味が悪けりゃ、誰も食べやしねぇ。それがお前らだ」
「なによ!そういうあんたも独り身でしょうが。大口叩いてんじゃないわよ!」
「モテない男の言い訳なんて見苦しいわ!」
「私達はあんた達と違って、引く手数多なのよ。一目瞭然なのにそれが分からないなんて、ほんと見る目ないわね」
「金も地位もある男はな、お前らが足元にも及ばないような見た目の良い女も、金持ちの女も寄ってくる。選び放題なんだよ。お前らみたいな中身のない奴なんて、選んで何の得になるんだ? 相手にされるわけねぇだろ」
「はぁ?! 何よ!さっきから言いたい放題!」
「中身がないのはあんた達でしょ」
「男の僻みって痛いわぁ」
「言い返す時間と元気があれば、親元に帰って節約の勉強でもしてこい。浪費癖のある女も嫌われるぞ。嬢ちゃん、こんなつまんねぇ奴を相手にするのは時間の無駄だ。ほら行くぞ」
そう言って歩き出したレオンの横にくっついて、彼女たちの横を通り抜けた。彼女たちは何か叫んでいたけど、私達が道を曲がった辺りで声も聞こえなくなった。
「レオン、ありがとう」
「事実を言ったまでで、大したことは言ってないぞ。俺はな、中身の詰まった熟れた女が好きなんだ。
あ~いう奴らの戯言なんて、料理中に横から口を出し、勝手に調味料をぶっこもうとしてくる自称料理上手、自称料理評論家みたいな奴と同じだ。嬢ちゃんの味付けは、嬢ちゃん自身がやるんだ。
みんなに美味いと言われる味付けじゃなくたって良い。俺が懲りたあのくっせぇ食いモンでも、分かる人が食べりゃクセになるくらい美味いんだ。嬢ちゃんの味付けはこれからだ。どんな味付けになろうと、自信を持つんだぞ」
レオンはそう言うと、私の頭にポンと手をおいた。すぐにその手は離れたけど、なんとなく小さい頃のお父さんの記憶と重なって、胸がじんわり温かくなった。
「私、芯までしっかり味がついた、かみ続けても味が出る美味しい熟女になる!」
「お、いい目標だ。じっくり時間をかけて、こういう美味い逸品になるんだぞ。はははは!」
レオンはポケットから袋を取り出すと、私に小さく裂いたクラゲの干物を数個渡して豪快に笑った。レオンと同じように口に入れて噛めば、甘じょっぱい味が広がった。目を閉じ、美味しそうに味わうレオンの姿を見て、彼はお兄ちゃんじゃなくてお父さんみたいだなと思った。
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