天使な狼、悪魔な羊

駿馬

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第14章 会いたい人

2.勇気ある少年 ※R18

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翌朝。

町長さんの家の裏にある丸太造りの平屋で治療院を開くと、続々と町の人達が治療院を訪れた。


寒い外で待たせないように、待合室代わりの温かいリビングが満員になったら、町長さんが手伝いに寄越してくれたメイドさんが整理券を渡して一度家に帰らせてくれていた。


どの世代の人もみんな仲が良いようで、待合室がいっぱいでも、子供が待合室で騒いでいても文句を言う人は誰一人居らず、待合室からは穏やかな笑い声がよく聞こえていた。

 




「次の方どうぞ~!」


私が声をかけると、おばさんが物珍しそうにキョロキョロと室内を見渡しながら私の前に座った。


治療部屋に使っている部屋は元は応接間なので、ソファーをベッド代わりにしたりと最初から置かれている物をそのまま代用させてもらっている。

応接間にふさわしい立派な飾り物などもそのままなので、患者はそういう物を物珍しそうに見ながら入ってくるのだ。






「どこを治療しましょうか」

 
「手足のアカギレが酷くて…。年中寒いので良くなるヒマがないんです」

 
おばさんの手を取って見てみると、手の全体が硬く、元々色白の指先にある深いアカギレの赤色が余計に痛々しく見えてしまう。

靴下を脱いでもらって足を見てみると、足も全体が硬くなり、かかとに幾筋も深い溝のようなアカギレが刻まれていた。





「手足が硬くなってますね。アカギレも深いし痛いでしょう。すぐに治りますよ」
 
 

治療魔法をかけると硬くなった手足は柔らかくなり、深いアカギレは綺麗に消えてなくなった。
でも、過酷なこの環境で住み続ける限りはついて回るものなので、この治療の効果は一時的なものでしかない。

この町を出るまでに保湿クリームの作り方を教えてあげなければ。





朝から夕方前まで私は街の人の治療を行ったが、どの人も手には働き者の証のようにアカギレやひび割れ、しもやけがあった。
私はその証をそっと撫でて、彼らがこの不毛の地とされる場所で一生懸命生きていることを実感した。




陽が差さず、年中雪に閉ざされているからか、治療院を訪れる人は老若男女問わずみんな色白だ。
狩りや農作業、木を切る仕事など、力仕事をしている人が多いらしく、男性も女性も筋肉質な人が多かった。私は筋肉なんてないような体型だから、ちょっと羨ましい。





「ルクト。フィラが来てるみたいよ」

 
まだ何となく明るさが残る夕方前には患者は来なくなったので、戸締まりをして宿に戻っていると、ルクトの頭上に茶色に灰色がかったフィラが飛んできた。







「俺に手紙ねぇ…」



「レオン?シューザ?それともエアロス?あ、ファミさんかな?」


立ち止まったルクトが、フィラから受け取った手紙を開いたその瞬間。



彼はグシャリとその手紙を握りつぶして、コートのポケットに押し込むように仕舞ってしまった。







「どうしたの?誰からだったの?」


「気にする必要のない手紙だ」


不機嫌そうな顔をしたルクトに声をかけてみたけど、彼は何もなかったように宿への道を歩き始めた。
何だか話しかけづらい空気を出しているから、気になるけどそっとしておくのがよさそうだ。




無言のまま宿に到着し、時間は少し早いけど食堂であったかな夕食を食べていたが、昨日も今日も、この宿には私達以外に客はいなかった。

この宿は一階建ての宿だから防犯上の危険はあるが、他にお客さんはいないみたいだし、結界もあるし、ルクトもいるから大丈夫だろう。
 






「傭兵はいなかったね」

 
「そうだな。ナンパしてくる面倒くさい奴もいないから楽だ」
 

ルクトと他愛のない話をしていると、ふくよかな女将さんが湯気が立ち上る料理を使い込まれたワゴンに乗せて持ってきてくれた。






「はい、お待ちどうさま。真っ白豆とニャムイモのグラタン、トナカイ肉のステーキ真っ白豆ソースだよ」



昨日の料理にも真っ白豆、ニャムイモ、トナカイ肉が食材として使われていたのだが、真っ白豆はミルキーな味、ニャムイモは繊維質が豊富なのか煮崩れせず、ほんのりと甘い味がする。

その2つはチーズとの相性が良いらしく、昨日食べたミルクスープも、今日のグラタンにも少し酸味のある濃厚なチーズが入っていてとても美味しい。


真っ白豆もニャムイモもねっとりしているので、食べ終わるまであったかさを保っていて、身体が芯からあったまる。



トナカイのステーキはクセのない味で、上にかかっている荒く潰された真っ白豆のミルキーなソースが美味しくてパクパク食べられる。



この土地ならではの料理と食材だけど、太陽や肥沃な土といった大地の恵みを享受している場所で食べる料理に引けを取らないくらい、とっても美味しい料理で私はホクホクと幸せな気分になった。






「はい、ミントティーだよ」


食事を終えた頃、女将さんがティーポットとカップを持ってきてくれた。





「女将さん、ここのお料理は美味しいですね!真っ白豆とニャムイモってここで初めて食べたんですけど、ねっとりして美味しいんですね!」




「気に入ってくれたかい? 」


私が料理の感想を言うと、女将さんはティーポットからカップにお茶を注ぎながら嬉しそうな笑顔を見せてくれた。






「はい!トナカイ肉もクセがなくて美味しいです。昨日のビーフシチューも今日のステーキも絶品ですね」



「うちは家庭料理しか出せないけど、そう言ってくれて嬉しいよ。先生はこの辺は初めてだろ?何もないから驚いたんじゃないかい?」



ミントティーを私達の前に出してくれた女将さんは、私達の隣の席に「よっこらしょ」と言って腰掛けた。







「初めて来ましたけど、真っ白豆もニャムイモも美味しいし、どの人もみんな一生懸命に生きてるのが伝わってきてなんだか凄く励まされました」





「そうかい!この国はずっと雪に閉ざされた場所だから、旅人が来ることも珍しいが、こうして『白い渡り鳥』様が来るのはもっと珍しいんだよ」
 



「どうしてアビテードはこんなに外からの人が少ないんでしょう?」
 


「年中雪に閉ざされて作物も育ちにくいから、生活しにくいもんねぇ。暖かい季候の土地で生活してた人がこの場所で生計を立てようとすると、上手くいかない事が多くてかなり辛いみたいだよ」
 




「この国の人は他所に移住したりしないんですか?」
 



「あっはははは!」


私がそう言うと、女将さんは鳩が豆鉄砲を食ったように驚いた後、大笑いし始めた。







「厳しい環境だからこそ、色んな人たちが協力して生きていくんだ。だから子供から爺ちゃん、婆ちゃんまで仲良しでね。土地にも人にも愛着が湧いて、他の所に行こうと思わなくなるんだ」




 
「そうなんですか。なんか素敵ですね」

 
女将さんの嬉しそうに話す顔を見ていると、この土地と環境の上で生きていくことを誇りに思っていることが伝わってくる。
 



 
「それに、町の中に兵士や傭兵はいないだろ?それは、兵士がいなくても治安は保たれているからなんだよ。
軍の拠点は街道から少し離れた場所にあるけど、何かあった時、町長さんがフィラを飛ばせばすぐにかけつけてくれるんだよ。

この国は他の国に攻め込むことはしないし、滅多に他国も侵攻してこないから傭兵を雇う必要もない。仮に他国から侵攻して来たとしても、この過酷な地で逞しく育った住人が必死で抵抗するから傭兵を雇う必要はないんだよ」



 
「へぇ。この地の人間は傭兵並みの強さがあるのか?」

 
『住人が必死に抵抗するから傭兵を雇う必要がない』と聞いたルクトは、女将さんに意地悪そうな顔をして食いついた。




「傭兵といえばドルトネアが有名らしいけど、この地の人間も強いと自負しているよ」
 


「一度手合わせしてみたくなるな」

 
胸を張ってそう断言した女将さんに、ルクトが一瞬『悪魔』特有の邪悪な笑顔を浮かべたのを見逃さなかった。
流石に女将さんに『手合わせしよう』とは言わないけど、町を歩いている強そうな男の人にそうやって挑発しないかと心配になった。







ちょうどその時。



「兄ちゃん傭兵だろ?なら俺と手合わせしてみるか?」


厨房に続く扉の前で、私よりも背の低い、焦げ茶色の巻き毛の男の子がルクトに果敢に話しかけて来た。
 

ルクトを見た子供なんて真っ先に逃げて行くのに、この子は怖がっている様子を見せないことに私はすごく驚いた。
 




 
「こらセジル!お客さんだよ、大人しく奥に引っ込んでおきなさい」
 



「だって母ちゃん。滅多に来ない客だし、話しかけたって良いじゃん」
 

女将さんが強い口調で咎めたけど、少年は女将さんに喧嘩腰で反論した。すると女将さんは、「はぁ~」と長いため息をついて私達の方を向いた。






「すみませんねぇ。この子まだ子供のくせに大人ぶってて…」

 

「子供じゃねぇ!もう14だ!」
 


女将さんの言葉を聞いた少年は、外まで聞こえるんじゃないだろうか?と思えるほどの大きな声を張り上げていた。
一生懸命に声を張り上げる様子を見ていると、エアロスとは違った子供っぽさを感じてとても可愛らしい。






「まだ14だよ。成人するまでは子供なんだよ」
 


「あんた傭兵だろ?俺が手合わせしてやるって言ってるんだ。かかってこいよ!」
 


「セジル!いい加減にしなさいっ!」


制止しても一歩も引かない少年に業を煮やしたのか、女将さんは椅子から立ち上がり、少年の前まで歩くと頭をバシン!と叩いた。
痛そうな音がしたのに、少年は慣れた様子で頭を擦りながら女将さんを睨みつけた。





「やだ!俺は手合わせするんだ!」

 

「そういう聞き分けのないところが、まだまだ子供なんだよ」


女将さんが少年の腕を掴んで厨房の方に連れて行こうとしているが、少年も負けじと踏ん張っていて膠着状態になった。
 


 





「いいよ、手合わせ願おうか」
 

そんな膠着状態を変えたのは驚いたことにルクトだった。

思わず目の前に座る彼を見ると、余裕たっぷりな仕草でミントティーを飲んでいた。ぶっきらぼうな彼のその仕草が、今は何だか上品な仕草に見えてしまったから不思議だ。
 





 
「ル、ルクト?相手は子供だよ?」


 
「子供じゃないんだろ?男に二言はねぇよな?」
 


ルクトは悪戯っぽい顔をして少年を見ると、呆気に取られていた少年はハッとした顔になって女将さんの手を振り払った。
 
 




「当たり前だ!」
 



「だそうだ。もし怪我してもお前がいれば安心だろ?」
 



「そうだけど…」





「付き合わせてすみませんねぇ。言い出したら聞かない子だから、適度にお願いします。でも魔法は禁止だからね!」
 

 
 

「分かってるよ!じゃあ裏の空き地で待ってるからすぐに来いよな!逃げるなよっ!」


少年は嬉しそうな顔をして、厨房の奥へと引っ込んでいった。その姿が見えなくなると、ため息をついた女将さんが申し訳無さそうな顔をしてこちらを向いた。





「女将さん、いいんですか…?」
 


「お客さんが良いのなら、うちは構いませんよ。ここには娯楽もないから、14歳になっても友達同士で傭兵の真似事して遊んでいるから、本物の傭兵を見て興奮しちゃってるんでしょう。世の中のレベルを感じれば、あの子も少し成長して大人しくなるでしょ」
 



「ちゃんと手加減するから安心しろ。ほら行くぞ」


お茶を飲み干したルクトが静かに椅子から立ち上がると、外に出る扉へとスタスタと歩いていった。

ルクトの後ろを小走りで追いかけて宿の外に出て裏に回ると、ちょうど私達が泊まっている部屋の窓から見えたひらけた場所だった。





先にそこに来ていた少年が、使い込んだのが一目で分かる木刀の切先をルクトに向けた。多分、その格好は相手に喧嘩を売るような動作だと思うけど、ルクトは口元だけで面白そうに笑った。



「やっと来たな!俺がギャフンと言わせてやるから覚悟しとけよ!」



「楽しみだな」





上から落ちてきた雪が残る白い地面を勢い良く蹴って、少年はルクトに早速斬りかかったけど、ルクトは微動だにしない。

いよいよ木刀が身体に当たりそうになると、ルクトは片足を少し動かして身体をズラすだけで見事に躱した。



相手がまだまだ子供の少年といえど、私に彼と同じように避けるなんて出来そうにない。







「くっそ!!なんで当たらねぇんだよ!」


ルクトはその攻撃をヒョイヒョイとかわし続け、たまに鞘に収めた剣で一撃を受け止める。攻撃が全て躱される状況に少年は次第に苛立ち始めた。
 




 
「躱してばっかじゃなくて、攻撃してみろよ!この臆病者っ!」
 

少年の挑発にルクトは面白そうに笑うだけで、攻撃は一切しなかった。
何度も木刀を振り上げてはルクトに襲いかかる少年だったが、ついにルクトが足を引っ掛けて転ばせた。





「くそっ!」


雪が薄く積もる地面を握りしめ、悔しそうにその拳を振り上げて冷たい地面を殴りつけた。




 
「その年でそれくらいの力が出るなら、将来はもっと強い力が使える。その頃には俺なんて力押しで負けるかもしれないな。もっと頑張れば強い男になるだろ。頑張れ」
 


ルクトがそう言うと少年は顔を上げたが、その目は今にも零れ落ちそうな涙が溜まっていた。ルクトが手を伸ばすと、少年は一瞬戸惑ったものの同じように手を伸ばし、ルクトが軽々と引っ張り起こしてあげていた。






「……うっ。ひっく」


立ち上がった少年は身体についた雪と土を払うこともせず、とうとう悔しそうに泣き始めて、宿の中へと走って行った。その姿を見た女将さんだったが、少年を追いかけることなくその後ろ姿を目を細め、閉まった扉をジッと見続けていた。
 








「あの。何だかすみませんでした」


ルクトも少年が去った扉を面白そうに見たままだったけど、私が無言の空気に耐えられずとりあえず女将さんに謝った。




 
「いやいや、謝るどころかこちらがお礼を言う方ですよ。うちはあの子が5歳くらいの時に父ちゃんが病気で死んでしまってねぇ。
兄姉は嫁に行った娘達だけで、男兄弟はいないし父ちゃんもいないから、寂しい思いをさせているとは分かっていたんですけど、最近は難しい年頃になってきたのか素直じゃなくてへそ曲がりで。
全然言うことを聞いてくれなくて困ってたんですけど、今回のことで何か変わってくれるでしょう」
 







 
部屋に戻りお風呂を済ませると、ルクトはカーテンを開けて窓の外を見た後、ソファーに座って鞄の中の整理を始めた。
 
 



「ルクト、あの子は怪我してない?」
 



「してない」
 


ベッドの端に座って髪を乾かしながらルクトに話しかけると、彼は鞄から視線を外さずに短く答えた。






「ちゃんと大人な態度取ってて、えらいわ」
 


「ガキ相手に本気で喧嘩するわけねぇだろ」
 

鞄から視線を私に移した彼の顔は、とっても呆れた表情をしていた。

ルクトはそう言うけど、エアロスにはいつも喧嘩腰だった。胸ぐらを掴み合ったりして、いつ殴り合いだったり、剣や魔法を使った喧嘩に発展するのではないかと、私は気が気じゃなかった。 




 
「ルクトならやりかねないって、ちょっと思った」
 


「あのなぁ…」
 


「でも、ルクトに物怖じせずに話しかけてきたあの子は凄いと思うよ?」
 

心の中で『エアロスは可愛くてどう見ても子供だけど、一応私よりも年上の強い傭兵だから例外ね』と付け加えておいた。





「まぁ、ガキに喧嘩売られるなんて滅多にねぇな」
 


ルクトは少年に喧嘩を売られたのが嬉しかったのか、レオンと居た時によく見せてくれていた楽しそうな笑顔を浮かべた。

子供に怖がられて逃げられてばかりだけど、本当は子供に近寄られるのは嫌じゃないのかもしれない。






「あの子、大物になりそうだね」
 


「そうだな。ガキであれだけ肝が座っていれば、どっかの国に侵攻されても町の連中だけで軍が来るまで十分戦力になるだろうな」
 

ルクトは今まで数回しか見たことのない、穏やかで面白そうな含み笑いをした。子供相手にこんな風に穏やかに笑う事があるんだと、少し驚いた。
 
 






「なに俺の顔見てボーッとしてんだよ。誘ってんのか?それにしちゃあ色気のない呆け顔だな。色気のある顔させてやろうか」





「えっ!?ちょっと…!」


ソファから立ち上がったルクトは、ベッドの縁に座っていたままの私の両手を取って大きな手を重ねると、強く握り締めてベッドに押し倒した。

ボスン!とベッドが弾んだと思うと、私は口元を面白そうに弧を描かせたルクトに見下ろされていた。
 
 




ーーーーーーーーー
 


 
シェニカをベッドに押し倒して噛みつくように首に口を寄せ、首筋にキスマークをつけながら手早くボタンを外してパジャマを脱がせた。


露わになった白い肌が、俺に触れて欲しいと誘惑してくる。
その誘惑に抗うことなく、首筋から胸元にかけて舌を這わせてキスマークをそこかしこにつけた。






シェニカは俺のものだと刻むように、前につけたキスマークの上から強く吸い上げれば、前よりも大きく紅い華が咲いた。
 
 
胸を覆う下着も剥ぎ取れば、すでに硬く立ちあがった尖端も、俺に触って欲しいと主張しているようだった。
 




「あ!ああっ!ああっんっ!」


吸い寄せられるように乳首を口に含んで舌先で転がし、もう片方の胸は手で揉んで指先で尖端をつまんで遊べば甘い声が聞こえた。





「ひゃああ!」

 
シェニカは胸が敏感で、刺激を与えるたびに身体は跳ね上がって悲鳴のような声が漏れる。
自分の良いように出来ることが楽しくて、空いた片手でシェニカのズボンと下着も一気に脱がせて生まれたままの姿にした。
 
 




「あ…!ルクトっ!ダメっ!ああああっ!!」
 

片方の乳首は甘噛みし、秘所に這わせた指で花芯を引っ掻くように刺激すると、シェニカの身体は弓なりに反って軽く絶頂を迎えたようだった。
 
 




「イキやすくなったな」


「やぁ!恥ずかしいよ…」
 

シェニカは荒い呼吸を繰り返し、恥ずかしそうにプイッと顔をそむけると、俺の目の前にはピンク色の頬が晒された。
 



身体全体の肌もピンク色になり、全身が火照って熱く、絶頂の余韻で色っぽい表情になっている。その可愛い痴態に思わず笑みが零れた。
 

愛おしさが込み上げてきて、早く繋がりたくて、俺も服を全て脱ぎ去ってシェニカの中に硬くなったモノを一気に奥まで突き入れた。
 




 
「あっ!はぁっ!あぁっ!」
 

腰を横に揺らして奥の壁をグリグリと擦れば、シェニカはシーツを握り締めて気持ちが良いと喘ぎ始めた。こいつは本当にこうされるのが好きだ。






「次はどうして欲しい?」
 


「あっ!ああっ!う、動いてぇ!」
 

シェニカはギュッと目を閉じて俺に懇願してくる。この時のシェニカは素直で俺だけを考えて求めてくる。
昨日は先にこいつが寝てしまっていて出来なかった分、もっと俺を求めて欲しい。


身体を倒して密着させ、何度か額飾りに口付けて、全身で感じる快感が欲しくて夢中で腰を動かし始めた。
 




赤、青、黄、緑、黒の5つの小さな宝珠がついた額飾りは、宝石店で扱っている同じ色の宝石よりも透明度が高いのか綺麗な澄んだ色をしている。

今までは気にもしていなかったし、黒はその暗い色のせいで今まで分からなかったが、こいつのピアスのように光の加減で色合いが変わる気がする。



でも今はそんなことどうでも良い。今は、シェニカを自分の募る愛おしさで満たしたくて堪らない。
だから、こうして一つになって快楽を共有していることだけを考えよう。







「あっ!あっ!ルクトっ!」
 
 

俺はシェニカの片足を高く持ち上げて激しく抽送を繰り返すと、シェニカはシーツを力一杯握り締めて、絶頂が近いと暗に訴え始めた。
 
今日はあまり苛めずに自分もシェニカの中で気持ち良く果てたい。
 
 



「あっ!は!きゃあっ!あん!あ、ダメっ!そこダメっ!あああーーっっ!!」


「…っぅ!」
 

絶頂を迎える前に一度身体を離してシェニカをひっくり返して四つん這いにさせ、後ろから何度か勢いよく突いてシェニカと同時に絶頂を迎えた。
 




 
「はっ…あっ…ルクト…キスして」
 

ベッドに倒れ込んだシェニカは、身体をゴロンと転がして俺を見上げると、赤く上気した色っぽい顔で腕を伸ばしてキスを強請ってきた。
 


俺が身体を倒して唇を合わせると、俺の背中に腕を回して甘えてきた。何度も角度を変え、舌を絡ませながらキスをしていると近くに気配を感じた。






キスをやめて気配のする方に目を向ければ、さっき自分がカーテンを開けっぱなしにしていたベッドの横の窓の外に、顔を真っ赤にしたセジルが木刀を片手に固まっているのが見えた。
 
 


ーーあ…。カーテン閉め忘れてたな。あの様子じゃ裸でベッドの上にいるだけで刺激が強かったかな。まぁ、これも大人になるには必要なことだろう。
 
 
本当はガキだろうがシェニカの裸を見られるのは許せないが、泣くほど悔しさを感じ、夜中に剣の練習をしようとした褒美だ。
 






「ルクト…?まだするの?」


「もう一回な。今度はじっくりやってやるよ」
 

俺は珍しくサービス精神を出して、シェニカにもう一度身体を密着させて窓の外にいる少年に手本を見せる様に丁寧に前戯をしながらシェニカを抱いた。




防音の結界で声は聞こえないはずだが、14歳の少年にはかなり刺激が強かっただろうから、今夜からしばらくの間、あの少年はグッスリ眠れない悶々とした日が続くだろう。その様子を想像するだけで、思わず笑みがこぼれた。





 
 
 
 
翌朝、恥ずかしいのか顔を真っ赤にして物陰に隠れるように立っているセジルに近寄って、耳元で囁いてやった。



「昨日の夜は頑張った褒美だ。目に焼き付けたか?」


「なっ!!」


俺の囁きに飛び跳ねるように顔を上げたセジルは顔が赤く、やっぱり眠れなかったらしく目が赤く充血していた。



 
「治療院が終わったら剣の稽古をしてやろうか?」



「えっ!いいの?!」


俺の言葉が嬉しかったのか、パッと明るい顔をして俺を期待に満ちた目で見上げてきた。
14歳といえば、大人と子供の過渡期。父親のいないこの少年にとってみれば、一緒に何かをしてくれる大人の男は貴重な存在だろう。


環境が違うとはいえ、『居て欲しい時に父親がいない』という事実が同じ自分には、この少年の気持ちが多少なりとも分かる。





自分に果敢に喧嘩を売ってくるし、完膚なきまでに負けた悔しさ、この少年の一生懸命さに何か影響を受けたのか、柄にもないことを言っているとは思うが、こういうことをするのも悪い気はしなかった。





「剣の練習を頑張ったら、夜は褒美にまた見せてやっても良いぞ。そっちの勉強もしたいか?」



「ーーっ!」
 


セジルは顔を茹でダコのように真っ赤にしながらしばらく目を泳がせていたが、最後にはコクンと小さく頷いた。





「そのかわり、夜の勉強は絶対に誰にも言うなよ」



「う、うん!」



「俺は滅多にこんなことしない。でもお前は特別な」


俺は笑ってセジルのクルクルの巻き毛頭をポンと叩き、シェニカに『治療院の後の時間は、セジルの稽古に付き合ってやる』と言った。

 



「へぇ!ルクトが誰かの面倒を見るなんて珍しい!その内、木々が耐えられない程の大雪が降るかもしれないね!」


シェニカはそんなことを言いながら、嬉しそうに笑った。

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