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第11章 天使と悪魔が交わる時
6.3日目は欲求不満の治療 ※R18
しおりを挟む2日目は朝から夜中までシェニカが恥ずかしさなんて感じないほど、こいつの裸と身体の味を堪能した。
『ベッドの上では素直にならないと焦らし続ける』というのを何度も続ければ、夜更けになる頃には俺に従順になった。
「も、もういい加減にして欲しい…」
俺がこいつに色々と教え込もうとすると、こういうセリフを息も絶え絶えに呟くのが何とも可愛く、いじめたくなるから余計に構ってしまった。
そして3日目。
昼近くまで眠り続けるシェニカの上に覆いかぶさって、キスマークを刻みつけていた。こいつは俺が刻んだキスマークを、『身体の節々が痛いから』という理由で治療魔法をかけて消してしまう。
刻んでは消されるという戦いを何度も繰り返しているが、何度消されようが俺は楽しんでやっているし、『こいつは俺のだ』という意思表示のためにも、こうして丹念に全身くまなく刻んでいる。
あいつが簡単には見つけられない背中、うなじ、俺のお気に入りの太ももの内側に刻み、柔らかい二の腕、肩にもしっかりと印をつけた。
「ん~…?何?どうしたの?」
キスマークをつけ終わるとシェニカの隣に身体を横たえ、今度は綺麗な裸身に触れながら舐めていると、シェニカがもぞもぞと動いて目を覚ました。
「慣らしてるんだよ」
「は?慣らす?またするの?もういい加減やめていいんじゃないの?」
俺の言葉が意外だったのか、眠そうに目をこすっていたシェニカは大きな緑色の目を見開いた。
「俺は全然ヤり足らねぇ。お前はもう痛くなさそうだし、今日は俺のやりたいようにさせてもらうからな」
「えっ!?昨日もしたのにまたするの?!」
「当たり前だ。どんだけ待たされたと思ってるんだ。2日で満足するわけねぇだろ」
「待たせたってどういうことっ!きゃあっ!」
シェニカの身体の上に覆いかぶさり、白い首筋にそっと指を添えて、刻んだキスマークを結ぶようにゆっくりと指先を滑らせた。
青とピンクの小さなガラス玉をつけた銀のネームタグを指ですくい、クイッと優しく引っ張ってみた。
「ずっと抱きたくて仕方がなかったんだよ。今まで必死に耐えてきたんだ。礼くらいもらっても構わねぇだろ?」
シェニカの脇から腰にかけて、くすぐるように手を這わせると白い裸身がビクリと震えた。まるでまな板に乗った美味い魚に見えて、思わずゴクリと喉を鳴らした。
「この『性欲の悪魔』っ!」
シェニカはそう言うと、俺の視線から逃げたかったのかクッションを顔に当てて赤らめた顔を隠した。
「新しい二つ名が出来て嬉しいよ。俺は我慢しすぎて欲求不満なんだよ。だからお前がちゃんと治るまで治療しろよ」
「なっ、なにそれ!?欲求不満の治療なんて出来ないっ!」
顔を隠していたクッションを俺の顔めがけて投げつけてきたが、手で受け止めると枕の上の方にちゃんと戻しておいた。
「じゃあ、俺が他の女を抱いて良いのか?」
「そっ…それは…」
シェニカ以外の女を抱くことなんて微塵も考えてないが、俺がそう言うとこいつは困ったような、今にも泣き出しそうな暗い顔になった。その反応を見るだけで、こいつの気持ちが俺に向いていると感じられて満足感を得られた。
「ダメならちゃんとお前が相手になって治療しろよ?分かったな?」
「う…。うん」
シェニカは小さく頷くと、俺の心と身体は嬉しさで満たされて、目の前のご馳走を早速頂くことにした。
「あぁっ!ルクトっ!」
耳元に顔を埋めて耳たぶを食み、舌で首筋から胸元まで舌でなぞり、胸の谷間に来た所で胸の外側に両手を当ててグッと中央に寄せ、顔の両側からその柔らかさを感じた。
ーーあぁ…。柔らかくてたまんねぇ…。すっげぇ気持ちいい。早く挿れたい。
「あっ、あっ!そ、そこダメっ!」
「ダメ?お前、ここをいじくられるのが好きなクセに何言ってんだよ」
「ちっ、ちがっ!!」
両手で胸を揉んで尖端をいじりながら、舌を腹までゆっくりと舐めながら移動させた時、胸から右手を外して蜜壷に指を2本入れれば、そこは既に俺を受け入れられるほど潤っていた。
「随分濡れやすくなったな。そんなに良かったか?」
シェニカの羞恥心を煽るために、ズブズブと水音を立てるように激しく指を動かせば耳を塞ぎ始めた。
「あっ!はっ!ば、ばかっ!そんなこと知らないわよっ!」
「素直になれって教え込んだのに、まだ分かんねぇのか?焦らされるのが好きなのか?」
俺がシェニカの手を外して耳元でそう囁けば、シェニカは快感に蕩けた顔をしていたのに、急に焦った表情に変化した。
よほど焦らされるのが嫌な様子が伝わってきて、思わず笑いが出そうになる。
「もう焦らさなくていいっ!分かったから!気持ちが良かったのっ!」
「今日は俺の欲求不満の治療だ。だから俺が満足する番だからな」
シェニカの足を左右に大きく広げ、まだ硬さの残る壁を押し広げながら一気に再奥へと押し込んだ。
「んんんっ!」
「まだ痛むか?」
昨晩は数をこなしたし、痛いと言わなくなったから遠慮なく押し込んだが、苦しそうな顔をしているからまだ痛むのだろうか。
「う…。痛くないけど、苦しい」
「待っててやるから、ちゃんと息を整えろ」
俺がそう言うと、シェニカは何度か大きく深呼吸をして、目を潤ませながら俺を見上げてきた。縋るような目を見れば、とても可愛くて愛おしくて触れるだけのキスをした。
「ちゃんと呼吸をするのは忘れるなよ」
「え?それ、どういう意味っ!…っんぁっ!ちょ、ちょっと待っ…!」
シェニカの両脇に手をついて、全身を使って激しく抽送を始めた。こいつの中を思いっきり突き上げれば、悲鳴のような声が出て身体が上に押し上げられる。
「あっ!は、ぁっ!は、激しっ…いっ!」
シーツを握りしめ、顔を歪めるシェニカに微かな罪悪感を抱くが、それ以上にこいつの全てを手に入れたと達成感が身体を満たす。
ーー今まで俺がどんだけ我慢してきたか思い知れば良い。夜はこうして俺の好きなように抱いているところを想像して1人で抜くハメになった。レオンといる時は手の甲を抓りまくり、風呂場で抜かないといけなくなったんだ。
いい年してライバルのレオンに笑われるという状況になったんだぞ。もっともっと俺を好きになって、俺から離れられないようにしてやるよ。
「あっ!あぁぁっ!ちょ、ちょっと落ち着いて…っ!あぁっ!」
「どんだけ欲求不満だったか分かるか?お前が鈍いせいでこうなったんだから、なっ!」
俺の中に燻り続ける激情を乗せて何度も激しく突き上げていると、シェニカの身体はベッドの上へ上へと押しやられ、とうとうベッドの上部にある飾りが施された柵の所までシェニカは追い込まれた。
「あ、頭が…」
追い込まれて頭を柵にぶつけ始めたこいつを見かねて、俺は一度動きを止めてシェニカの身体を抱きしめて下にずらした。
「これ以上頭をぶつけたくなかったら、ちゃんと上に手をついてろ」
シェニカは俺の言う通りに両手を上に伸ばして柵を掴み、上に押し上げられないようにした。
「はっ、はっ、ルクト…。ルクト…」
俺も柵に右手をつき、左手でシェニカの丸い尻を少し持ち上げて深く突き上げると、シェニカは息を荒げて涙を流し始めた。
「うっ、あっ、はっ!ルクトっ、ゆっくりしてぇっ!」
「ちゃんと呼吸しろって言ったろ?まだこんなんで満足しないからな」
涙を流し、苦しそうに喘ぐシェニカを見ると、守るべき存在を汚しているかのような背徳感が俺を更に興奮させた。
その興奮に任せて何度も穿つように突き上げると、その度に柔らかい胸がフルリと揺れる。首筋から胸元にかけて噛みつくように強くキスマークをつけ、揺れる膨らみに舌を這わせて尖端を甘噛みした。
「あっ!はっ!あああぁっ!」
その瞬間、シェニカは弓なりに身体を反らせて絶頂を迎え、俺をキュッと強く締め付けてきた。
耐えきれなかった俺も絶頂を迎え、荒い息を整えるために身体の下にいるシェニカを抱き締めてから身体を離し、ゴロリとベッドに横になった。
「はぁ、はぁ。ルクト、いくら治療と言っても初心者に対して激し過ぎじゃないの…?」
「そんなことねぇよ。ほら、こっち向け」
「ん…。ルクト…」
呼吸がまだ整いきれてないシェニカの身体を抱き寄せてキスをすると、まるで俺を欲しがっているように俺の首に腕を回してきた。
「お前からキスを強請られると、もっとお前が欲しくなるな」
「も、もう休ませて。お願いだから…」
俺のセリフに慌てたシェニカは、俺の首から腕を放しシーツを頭まで被った。
「今から休んでも良いぞ。その代わり、夜にまたやるからな。今度は後ろからにするかな、いや、対面座位も良いな」
シーツ越しに俺の独り言を聞いたシェニカは、顔を少し出して真顔で俺を見た。
「ねぇ、聞きたいんだけど、みんなこんなに毎日してるものなの?」
「若い男なら誰だってこれくらいしてるはずだ。お前は俺とするのは嫌なのか?」
俺だって性欲旺盛な若い男なんだ。俺に限らず、こうして仕事を忘れて1日中好きな女と居れば、誰だって寝る間を惜しんでヤってるに決まっている。
「い、嫌じゃないけど。ちょっとついていけないっていうか、体力が保たないっていうか…」
「安心しろ。これから慣れる」
「慣れるものなの?」
「毎日やるから体力も付くし、苦しくもなくなる。それに今以上に快感を感じて気持ち良くなる。物は試しに今からもう1回やるか?」
「けっ、けっこーです!」
そう言ってまたシーツを被ったシェニカは、俺に背を向けてしまった。
子供っぽい態度が可愛くて、シーツから少しはみ出た頭を撫でていると、本当に疲れていたのかすぐにスースーと規則的な寝息が聞こえてきた。
「今は休ませてやるよ。起きたら今度は後ろからやるから、しっかり寝とけ」
シェニカが目を覚ますまで、俺はソファでビンテージものの酒を楽しむことにした。
ーーーーーーーーー
「ん~!!」
「目ぇ覚めたか?」
私が目を開けて背伸びをすると、どこからかルクトの声が聞こえてきた。
「うん…?」
反射的に返事は返したものの、ハッと我に返って隣を見てもベッドには私しか居ないことに気付き、慌ててシーツで身体を隠して身体を起こした。
カーテンが引かれた窓の前のソファに座ったルクトは、バスローブを身につけてお酒を飲んでいた。カーテンの隙間からはもう陽の光は入ってきていないから、すっかり夜になってしまっているらしい。
私、1日何食食べているのだろう。下手したら朝食か昼食の1回だけだったりするような気がする。
美味しいご飯なのに、なぜかルクトが『性欲の悪魔』になってしまって、美肌の湯も美味しいご飯も全然堪能出来てない…。
「なら、もう疲れも取れただろ?俺に付き合ってくれるよな?」
「う…。もうするのは決定なの?」
「当たり前だ。何のためにここに来たと思ってるんだ」
ーーえ?ギルキアに行こうってリクエストしたのはルクトだよ?その時、仕事ばっかりだから休ませたいって言ってなかった?
「も、もしかしてギルキアに行きたいって言ったのは、こういうことをするため?」
「お前を休ませたい気持ちもあるが、恋人になって同じ部屋にいて手を出さないなんて、どこの聖人君子か童貞かよって話だ。俺はそんな聖人君子じゃねぇって知ってるだろ?」
「う…うん。ルクト『性欲の悪魔』だもん」
「ほら、こっち来い」
有無を言わさない空気に諦め、渋々バスローブを身につけてベッドから下りると、ルクトはソファから立ち上がって、カーテンをザッと音を立てて勢いよく開けた。
窓の外は真っ暗の世界が広がっているが、部屋の中のぼんやりとした魔力の光で窓の近くは仄かに明るくなっている。
「窓に手をついて後ろ向け」
「えっ!?やだ!」
カーテンを開けて何をするか分からないが、この様子じゃ絶対ロクなことじゃない。
私の目の前にいる『性欲の悪魔』は、とてもじゃないがその言動には注意を払わねばならない危険人物だ。危険人物なのに、逃げられないという厄介極まりない人だ。
「なんで嫌なんだよ」
「当たり前じゃない!なんでカーテンを開ける必要があるのよ」
「今日のお前は俺を満足させるのが役目だ。言う通りにしろよ。また焦らされたいか?」
「うっ…。そ、それは…。嫌だ」
もう、焦らされるのはごめんだ。焦らされると体力も精神力もどっぷりと疲れ果ててしまうから、どうせするのならパッと終わってくれた方が助かる気がする。
「なら、こっちに来い。後ろからやってやるよ」
私は仕方なくルクトの言う通りにカーテンが開かれた大きな窓に手をつくと、ルクトにバスローブを剥ぎ取られた。そして、ルクトは後ろから私の胸を両手で掴んで尖端を弄りだした。
「あっ!はぁんっ!ルクトっ!イイっ!」
窓の外に誰か来たらどうしよう、誰かに見られたらどうしようと気が気じゃないのに、ルクトに散々教え込まれた刺激に弱い場所を責められると、私ははしたなく声を上げた。
「外からも見えるが、お前の感じてる顔がガラスに映って俺にも丸見えだな。俺もたまんねぇくらいイイよ。何回ヤッても足りねぇ」
ルクトは耳元でそう呟くと、探るように秘所に指を這わせて、割れ目を指で開いて敏感な部分に触れてきた。
「あああん!」
「一気に濡れたな。これならもう入れられるな」
ルクトは私の背中をグッと下に押さえつけてお尻を突き出すような体勢にさせると、硬く張り詰めた熱いものが迷うことなく胎内に入ってきた。
「あああああっ!」
ルクトは窓についた私の左手にルクトの左手を被せ、右手で私の腰を掴むと、確認するようにゆっくり大きく抽送を始めた。
「あっ!はっ!ルクトっ!」
私にその大きな存在を覚えさせるように執拗に動かれる。奥まで押し込まれた時は、なぜか串刺しにされた焼かれる前のイカ焼きになったような気持ちになった。
「窓の側で誰に見られてもおかしくない状況でやるのも興奮するだろ?」
ルクトは私の腰を掴んでガタガタと激しく揺さぶりながら、そのリズムに従って揺れ動く胸を揉んで尖端を捻った。
「ひゃあああんっ!」
「足がガクガク言ってるぞ。そんなに気持ちが良いか?」
ルクトが両手で腰を掴んで力任せに大きく突き上げると、私は窓についていた両手が外れ、力なく前のめりになりながら倒れそうになった。
「はっ、あぁ…。もう、立ってらんないよ…」
かろうじてもう一度窓に手をつけたし、ルクトが腰を掴んでいるから床に頭からぶつけることはなかったが、低い位置で窓に手をついているから、彼にお尻を晒す体勢になってしまい、一気に恥ずかしさがこみ上げてきた。
「もっと深く突いて欲しいのか?随分と積極的になったなぁ」
そんな私の気持ちが分かっているのか、ルクトはからかうようにそう言って、何度も奥まで激しく押し込んできた。
「あっ!あっ!ちっ、違っ!」
「違わねぇだろ?こんなに濡らしてるから、太ももまで垂れてきてるだろうが。そんなに気持ち良いか?」
今度は緩慢な動作で抽送を続け、ルクトが片手を腰から外すと私の太ももの内側を指でツーッと下から上にゆっくりと撫で上げた。
「ほら、こうして俺とお前は繋がってる。こんなに濡らしてよっぽど気持ちが良いんだな。もっと気持ちよくなりたいだろ?」
そしてルクトを受け入れている部分を確認するように一回りなぞられ、最後に私の一番弱い突起を指で摘み上げられた。
「やめてっ!あぁぁぁぁーー!!」
「ーーっ!」
その瞬間に絶頂を迎え、私の身体から完全に力が抜けた。
ルクトは咄嗟に私の胸元に大きな手のひらを当てて支えてくれたが、ルクトも辛い体勢だったからか、ゆっくりと2人とも床へとへたり込んだ。
へたり込む瞬間、私とルクトが繋がっていた部分が外れ、ボタボタと白濁した液体が床に落ちていくのをぼんやりと見た。
「はぁ、はぁ。急に締め付けんなよ」
「ルクトが…ルクトが悪いんでしょ」
「俺じゃねぇよ。お前が急にイくからだろうが」
「ひ、人のせいにしないでよ」
ーー人のせいにしないで欲しい。初心者マークの私を、ほとんど自由にコントロールしてるのはルクトなんだから、絶対彼が悪いと思う。
「とりあえずベッドまで運んでやるよ。ほらカーテン閉めとけ」
へたり込んで動けない私を抱き上げたルクトは、私にカーテンを閉めさせるとベッドまで運んでくれた。
「イッたのはお前だろ?」
ベッドに横になった私の隣に彼も横になると、ルクトは意地悪そうな表情を浮かべて、肘を立てて私を見た。
「そうさせたのはルクトじゃない」
「まぁ、そうだが。まさかあれだけでイクとは思わなかったからなぁ。まぁ、いいや。今イッたから、今度は俺がイくまで時間かかるからその分楽しめるな」
ルクトの言葉に、もう嫌な予感しかしなかった。
「な、何よ楽しめるって…」
「お前はイッて敏感になってるから、俺が次にイくまでもっと鳴かせてやるよ」
「も、もうやだ!ここに来てからずっとしてるんだよ?もう、まったり過ごそうよ」
ーー私は温泉に入りたい!美味しいご飯も食べたい!こうしてルクトと愛し合うのは嫌いじゃないけど、頑張ってここに来た甲斐というものを堪能したいの!
「まったり過ごしてるだろ?一日中ヤることが俺にはまったりだ」
「わ、私は違うっ!こういうことじゃなくて、もっとこうお風呂とか…。ん~!」
ルクトは私に覆いかぶさってキスをすると、舌を苦しくなる奥まで差し込んで、私の舌を絡みとるようにしてきた。そんな風にされると、上手く呼吸が出来なくて、苦しくて涙が溢れて、あっという間に力が抜けてくる。
「気持ちよくしてやるよ」
「ちょ、ちょっと待って!お願いだから一度落ち着こう!私がしたいのは、お風呂とか…」
私は力の抜けた手を一生懸命に持ち上げ、ルクトを落ち着かせようと力強い肩を撫でたが、私のそんな気持ちと行動は彼には伝わった様子はなかった。
「俺はお前とヤりたい。良いだろ?」
「あっ!ちょ、ちょっと…ぉっ!」
ルクト改め『性欲の悪魔』は私の胸の尖端を指先でピンと弾くと、その鋭く強い刺激に、身体がビクリと大きく跳ね上がった。
「今度は正常位が良いか。いや、寝たまま後ろからしようか。お前の治療魔法のおかげでどんだけ鳴かせても元通りになるんだから、ヤり放題だな」
私をギラギラした目で見下ろすルクトを見ると、彼の果のない性欲に段々ムカムカしてきた。
ーーふざけんじゃないわよ!治療魔法で喉は治せても体力は回復しないの!体力馬鹿のルクトについていけるわけないじゃない!
こうして愛し合うのもいいけど、私はもっと手を繋いだりとか、恋人らしく腕を組んでみたりとか、ほっぺにチューしてみたりとか、そういうところから始めたかったのっ!
流された私も馬鹿かもしれないけど、ルクトの方がもっと馬鹿!デリカシー無し男!煩悩悪魔っ!
私の美味しいご飯を食べる機会と美肌の湯に浸かる機会を奪った不満も加算して、私は右手に湧き上がってきた渾身の気持ちを握りしめた。
「もっと俺を欲しがらせてやるからな」
「いい加減にしろぉぉぉぉ!!!!!」
バキィィィィ!!!!
ルクトの左頬に私の握りしめた拳がめり込むように入ったのが自分でも分かった。
「あ…。えっと…。ルクト、ルクト~?」
落ちるか落ちないかギリギリのベッドの端まで飛ばされてしまったルクトを見て、慌てて身体を起こしてルクトの状況を確認した。
「怪我はないし、ただ気絶してるだけか。良かった。何か今ので身体に力が入ったから、今のうちにお風呂にたっぷり浸かってこよっ♪」
ルクトの身体をゴロンと転がすようにしてベッドの中央に移動させた私は、この好機を逃さないように遠慮なくお風呂へと向かった。
「あぁ~!良いお湯だった。お肌も何だかツルツルになった♪
あれ、ルクトはまだ寝てるのか。じゃ、今のうちにご飯も頼んじゃお!ご飯の支度が出来るまで寝室に結界を張れば大丈夫だよね」
たっぷりと美肌の湯を堪能し、お風呂から上がって来たのだがルクトはまだ気絶していた。
私は一度防音の結界を解いて、廊下の少し先まで侵入不可の結界を張り、ご飯を持ってきてもらうための鈴を鳴らした。
「はぁ~。お腹いっぱいで幸せっ!ルクト、いつになったら起きるのかなぁ。ま、いっか。どんなに煩悩悪魔でも疲れてるだろうし、このまま寝かしておこう」
ご飯を食べた後も起きないルクトを心配したが、彼を起こすのはやめた。
私は2日目の朝食以降、食いっぱぐれたご飯があるのだ。彼にも是非食いっぱぐれた悔しさを分かって欲しい。
「おやすみ、ルクト」
私はルクトの隣で横になって、数日ぶりに平穏な睡眠を取ることが出来てとても幸せを感じた。
応援ありがとうございます!
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