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【別れ話をされる青年】
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【★7000文字程度の短編作品感覚でお読みください★】
イーベル村にある現在は停止している風車小屋で、ある二人の男女が緊迫した様子で向き合っていた。
一人は今にも泣き出しそうな表情で俯いているふわふわなハニーブロンドの小柄な少女。
もう一人は、こげ茶色のサラサラの髪をした長身の青年だ。
二人とも年の頃は10代後半くらいである。
そんな二人の間には重苦しい空気が漂っていた。
すると、その沈黙を破るようにハニーブロンドの少女が意を決して口を開く。
「もう……いい……」
「いいって!! 俺はまだ何も……」
「もういいのっ!!」
青年の言葉を遮るように悲痛な表情を浮かべた少女が叫ぶ。
「私との事は遊びだったのでしょ!? もう分かっているの!!」
「どういう事だよっ!? 俺はそんなつもりは……」
「知っているんだから! 先週アッシュが綺麗な女の人と幸せそうな表情をしながら、城下町の装飾品店で一緒に買い物をしていた事を!」
アッシュと呼ばれた青年が、その言葉でビクリと体を強張らせる。
「好きな人が出来たのなら、そう言ってくれればいいじゃない! そうしたら……すぐに別れてあげたのに……」
感極まったのか、俯き気味だった少女の瞳からポタポタと涙が零れた。
「違うんだ! フェリシア! それは……」
「何が違うのよ! この二か月間、レニー達や村の皆があなたと綺麗な女性が何度もその装飾品店に出入りしている姿を目撃しているのよ!?」
「そ、それは……」
「私はあなたからそういう贈り物を一度もされた事がないのに……。その女性は何度もあなたから素敵な贈り物をされているのでしょう!?」
「だからそれは違っ……」
アッシュがその事を否定しようとした瞬間……。
「おーい! エナっ! ここだ! ここ!」
風車小屋の中で激しく言い争う二人の会話とは全くそぐわない呑気そうな声が、急に二人の会話に乱入してきた。
そのあまりにも空気を読まない声の持ち主の存在を警戒した二人は、そのまま同時に押し黙る。
「うわっ! なんでリクス、こんな変なところで釣りしてんの!?」
「ここ穴場なんだよ。この間、すげーデカい魚釣れてさ!」
「へぇ~。その大きな魚、美味しかった?」
「いや、食ってない。その魚、釣れたけどその後、糸が切れて逃がした……」
「ダメじゃん……。それ、釣れてないじゃん……」
どうやら風車小屋のすぐ下の川べりで、この村の村長の息子でもあるリクスが釣りをしているようだ。
そしてそのリクスに声を掛けられたのは、彼の幼馴染のエナだ。
二人ともアッシュ達とは同世代でもあり、そこそこ親しい友人でもある。
しかしこの二人は、今のアッシュ達にとっては招かれざる客だった。
アッシュにとっては、リクスは気楽に話が出来る飲み仲間だ。
なので後で何か言われそうで、この言い争いをしている状況を知られたくないと思い、無意識に口を閉じる。
同時にフェリシアの方も同じ理由で息を殺すように押し黙った。
つい最近、エナにアッシュの浮気の事を相談したばかりだったからだ。
その際、エナはかなりアッシュに対して怒りを抱き、一緒になって怒ってくれた。
その為、今この状況を知られてしまうと、色々と面倒な事になるとフェリシアは判断したからだ。
しかし、その招かれざる客である二人は、アッシュとフェリシアが自分たちのすぐ真上にある風車小屋で言い争っている事には全く気付かないようで、呑気に雑談をし始めてしまった……。
そしてそのあまりにも呑気な会話が丸聞こえしてくるので、先程まで張り詰めた雰囲気で言い争っていたアッシュとフェリシアは、それを中断せざる得なくなった。
口の悪いリクスの声は、かなりよく響く。
「つかエナ、お前なんか食いモン持ってねぇーか?」
「凄い野生の勘だね。ちょうど今まさに野菜ハムサンドを持っているよ」
「マジか!? それ、くれよ! 今日俺、朝飯食いっぱぐれた上に今ボーズで……」
「さっき、ここ穴場って言ってたよね? なんでお魚が一匹も釣れてないの?」
「そんなんどーでもいいだろ!! つかハムサンドくれよ!」
「ええー!? 嫌だよ!! これお父さんのお昼なんだけど! 今届けに行く最中なんだけど!」
「一切れぐらいいいだろ!? 頼む! 腹減って死にそうなんだよ!」
「もうぉ~! 仕方ないなぁ……」
そのままエナがリクスの元まで歩み寄る気配が、風車小屋の窓越しから感じられた。
正直、今は立て込んでいるので早くどこかに行って欲しいと願うアッシュとフェリシア。
だが、そんな二人の思いはどこ吹く風かと言わんばかりに外のリクス達は、風車小屋の窓のすぐ真下辺りで居座りだす。
「おお! このハムサンド、スゲー肉厚じゃん!」
「この間、城下町でいいベーコンハムが売ってて、お父さんが奮発して買ってきてくれたんだー」
「お前の父ちゃん、城下町よく行くのな?」
「うん。お父さん、一応彫金の仕事やってるから、よく城下町の装飾品店に品物卸しに行くんだよねー」
「もしかして……そこってリレイム装飾品店か?」
店名が耳に入ってきた瞬間、アッシュとフェリシアが同時に固まる。
その店は先程、言い争いの最中に出てきた装飾品店の名前だったからだ。
「そうそう。でも何でリクスがお店の名前を知ってるの? 装飾品なんて興味ないでしょ?」
「あー……。実はアッシュの奴が最近そこに頻繁に通っててさー。俺、何度か一緒に行くの付き合わされた事あるんだわー」
「何で食べ物にしか興味がないリクスなんかをそんなお店に……」
「おい! その言い方やめろ! それだと俺が食う事にしか興味ないみてーじゃねぇーか!」
「だって実際にそうじゃない……」
「言い切るなよっ!!」
「というか……何でリクスは、そんなお店に連れて行かれたの?」
「うーん。何かアッシュが男一人だと入りづらいとか言って、一緒に行くの付き合ってくれって」
「面倒臭がり屋のリクスが、よくそんな理由で城下町にあるお店まで、わざわざ一緒に行ったね」
「飯おごってくれるって言われたから付き合った」
「やっぱり結局は、食べ物に釣られたんだね……」
「うるせぇーよっ!!」
一瞬、その装飾品店の話題が逸れたので、アッシュはこっそりと胸を撫でおろす。
しかしエナが再び、その話を蒸し返し始めた。
「でもさ。その店ってアッシュが頻繁に浮気相手の女性と出入りしているお店でしょ?」
「はぁ? 浮気相手? つかあいつ、フェリシアと付き合ってるだろ?」
その二人の会話で小屋の中のアッシュは大きく目を見開き、対するフェリシアは悲痛そうな表情を浮かべながら唇を噛んだ。
「知らないの!? この二か月間、アッシュはその装飾品店にすごく綺麗な女性と一緒に通い詰めているんだよ!? しかもフェリシアと付き合っている状態で!!」
「アッシュがその店に通い詰めている事は知ってる。あいつがフェリシアと付き合ってるのも知ってる。でも綺麗な女と一緒ってのは信じられねぇー」
「でもアッシュのその浮気現場を見た人がたくさんいて、この村でもかなり噂になってるよ? 私のお父さんも商品卸に行った時、アッシュがその綺麗な女性と待ち合わせしてたの見てるもん! フェリシアと付き合ってるくせに……。私、アッシュって最低だと思う!!」
二人の会話を聞いたフェリシアが、そっと俯きながら再び唇を噛む。
その様子に気が付いたアッシュは何か言おうと一瞬だけ口を開くが、外の二人の存在を思い出し、悔しそうに再び口を閉じた。
静まり返った風車小屋の空気が、更に重く張り詰め出す。
しかし、次の瞬間……
「でもなぁー……。アッシュの浮気は絶対にありえないと思うぞ?」
リクスの間の抜けた声が風車小屋の中に響いた。
「リクスはアッシュと仲がいいから庇いたいだけでしょ!?」
「いや、そうじゃなくて……。本当にあいつの場合、浮気とかないから」
「何で言い切れるのよ?」
「いや、だって……」
そこで何故かリクスが少し言い淀む。
「あいつが装飾品店に通ってたのって、フェリシアにプロポーズする為に贈る髪飾り選びの為だし」
その瞬間、俯き気味で必死に涙をせき止めようとしていたフェリシアが大きく目を見開いて、勢いよく顔を上げた。
すると目の前には口を半開きにして、ワナワナと震え出しているアッシュが視界に入る。
イーべル村周辺の地域では、男性が女性に求婚する際に花嫁の誕生日花でデザインされた髪飾りを贈る習慣がある。
「はぁ!? 待って! じゃあ、何? アッシュはフェリシアにプロポーズする時に贈る髪飾り選びを必死にしていたって事!?」
「そうなるな」
「じゃ、じゃあ! 一緒にいた綺麗な女性は!?」
「そんなの俺が知るかよ。でも確か……もう結婚している従妹のねーちゃんに色々アドバイス貰ってるとか、ここ最近言ってたな……」
「ここ最近って……噂が流れだした二か月くらい前?」
「二か月前というか……準備は半年くらい前から?」
「そんなに前からっ!?」
「ほら。あいつ意外と、そういうところで怖気づくチキンな部分あるし……」
「でも半年前からって、準備するのにどんだけ用意周到なのよ!!」
そのエナの鋭いツッコみに今度はアッシュの方が、いたたまれない気持ちになったのか、耳を真っ赤にして俯きながら小刻みに震えだす。
その様子をフェリシアは、呆然としながら見つめていた。
「あいつは用意周到だぞ~。なんせ13歳くらいの時にいきなり『俺は今からフェリシアとの結婚資金を貯める!』とか宣言し出して、本当に去年その資金を貯め切ったからなぁー」
「13歳って……二人はまだ付き合っていなかったよね……?」
「そうだな」
「付き合ってもいないのに先に結婚準備っ!?」
エナの叫びにアッシュが更に深く俯き、小刻みに震えだす。
その様子を見ていたフェリシアの顔も徐々に赤みを増していった。
「だってあいつ、ガキの頃からフェリシアの事好き過ぎて毎日『フェリシアが可愛い』って俺らに言いまくってウザかったし」
「待って! 私の中でのアッシュのイメージが今かなり崩れてるよ!? アッシュってどちらかと言うと、余裕のある大人なイメージだったんだけど!! どちらかというと落ち着いた印象だったんだけど!?」
「そりゃねぇーわ。落ち着いた印象どころか、あいつは昔からフェリシアの一喜一憂で浮かれたり、あるいはこの世の終わりみたいになる男だぞ? 特にフェリシアと喧嘩した時の落ち込み様なんか、もう笑えるくらいのヘコみ方するし! それがフェリシアの前では大人ぶって余裕ある振る舞いするから、毎回笑い堪えるの大変だったわー」
そう言いながらケタケタ笑うリクスの声が、またしても風車小屋に響き渡る……。
するとアッシュが真っ赤な顔で小刻みに震えながら、キッと顔を上げた。
そのままゆっくりと、音を立てないように窓の方へと歩き出す。
「大体、ここ最近のアッシュは酔うと二言目には『フェリシアが可愛すぎて辛い……』『もうフェリシアに触れたくて触れたくてたまらない』『こうなれば早く嫁にするしかない!』とか言って、デカい声で宣言した後、最後にはそのまま潰れて寝ちまうんだよなぁー。あれ、もう絶対に限界が来てるな」
そのリクスの言葉にアッシュはピタリと歩みを止めて、再び真っ赤な顔をしながらワナワナと震え出した。
もはやそれは怒りからなのか、はたまた羞恥心からなのかアッシュ自身にも分からない。
対してフェリシアの方は、先程から真っ赤な顔を両手で覆い、俯いていた……。
「それって絶対、リクスがアッシュの事を酔いつぶしたんでしょ!!」
「ちげーよ! 毎回酔い潰すのは俺じゃなくてコール達だ! 俺はただ温かくその様子を見守ってただけだ!」
「それを止めなかったのなら、リクスも同罪だよ……」
エナに白い目で見られ、リクスがやや不貞腐れたような声でぼそりと呟く。
「だって……あいつ酔い潰すと、すぐにフェリシアの事でノロケ出すから面白……」
「リクスゥゥゥゥゥゥゥゥー!!!!!」
ガタンと大きな音と共に名指しされたリクスと、その声に驚いたエナがビクリとしながら同時に自分たちの後ろにある風車小屋の窓へと目を向けた。
すると真っ赤な顔をしながら、ものすごい剣幕で怒鳴ってきたアッシュの姿が目に入る。
「お前、何勝手にベラベラしゃべってんだよっ!! お前のデカい声だと全部丸聞こえなんだよっ!! ふざけんなぁぁぁぁーっ!!」
「うわぁ!! なんでアッシュがこんな所にいんだよ!?」
「うるさいっ!! さっきから人のプライベートをデカい声でベラベラと……。しかも今までかなり俺の事をバカにして、おちょくっていただろう!!」
「ああぁ!? 酔いつぶれてノロケばっか言ってる奴は、バカ以外に何だって言うんだよ!! 大体、毎回毎回……飲む度にノロケ話聞かされるこっちの身にもなれやっ!!」
「そのノロケ話のネタになる相手すらいないお前に言われる筋合いはないっ!!」
「んだとぉぉぉー!! 半年間プロポーズも出来ないでウダウダしてる間に浮気の疑い掛けられてるバカにこっちも言われたかねぇーわっ!! 何なら今の話、俺がフェリシアの前で全部暴露してや……って、何だよ!! エナっ!!」
急に隣のエナに服の袖口を引っ張られ、リクスは苛立ちながらエナを見やる。
するとエナはやや青い顔をしながら、何故かアッシュの後ろの方を見るように目で促してきた。
仕方なく不機嫌そうにリクスは促された先に目線を向け、そして大きく目を見開いた。
そこには……両手で顔を覆ったフェリシアがいたのだ……。
その瞬間、顔を見合わせた二人は、ほぼ同時に真顔となる。
そして急に無言のまま、もの凄いスピードで釣り道具を二人で片付け始めた。
「お、おい……。お前ら一体……」
そしてあっという間に釣り道具を片付けた二人は、アッシュ達に向かってキリッとした表情を向ける。
その素早すぎる程の息の合った二人の行動を見せつけられた後、気合の入ったスッキリした表情を二人から向けられたアッシュは、呆然としながら静かに見つめ返した。
するとリクスがキリッとした表情のまま、そっと親指を立てる。
「アッシュ! グッド・ラック!!」
そしてそのまま……もの凄い勢いで二人は脱兎のごとく、その場から逃げ去った。
「なっ!! ちょっ……お前ら、待てやぁぁぁぁー!! ふざけんなよっ!! このまま放置かっ!? この落とし前、どう付けてくれんだよっ!!」
アッシュがそう叫ぶも二人の姿は、すでに豆粒程度になっており、その抗議の声は二人には一切届いてはいなかった……。
翌日、イーベル村はある男女の結婚話に花を咲かせていた。
この二か月間、恋人の浮気を心配されていたフェリシアだが、実はその浮気と疑われていたアッシュの行動が、フェリシアへのプロポーズの準備だった事が判明したのだ。
その為、村全体がお祝いムードになり、当事者でもあるフェリシアは二か月前の思い詰めていた表情がまるで嘘だったかのように幸せそうな笑みを浮かべていた。
しかし……もう一人の当事者でもあるアッシュの方は、その日から一か月くらい、ある人物を必死で探しながら、鬼の形相で村中を徘徊するようになる……。
悪気がなかったとはいえ、アッシュが隠したかったかっこ悪い部分を雑談という形で洗いざらいフェリシアに暴露してしまい、プロポーズの機会を良い意味で、ぶち壊したこの村の長の息子リクスの事を……。
そして一か月後、アッシュとフェリシアは村人全員からの祝福を受けながら、幸せな表情を浮かべて挙式する事になるのだが……。
その日が来るまでアッシュの怒りは収まらず……。
リクスは二人の挙式までの一か月間、鬼の形相で追い回してくるアッシュの追撃を何とか躱し、かろうじて逃げ切ったそうだ……。
イーベル村にある現在は停止している風車小屋で、ある二人の男女が緊迫した様子で向き合っていた。
一人は今にも泣き出しそうな表情で俯いているふわふわなハニーブロンドの小柄な少女。
もう一人は、こげ茶色のサラサラの髪をした長身の青年だ。
二人とも年の頃は10代後半くらいである。
そんな二人の間には重苦しい空気が漂っていた。
すると、その沈黙を破るようにハニーブロンドの少女が意を決して口を開く。
「もう……いい……」
「いいって!! 俺はまだ何も……」
「もういいのっ!!」
青年の言葉を遮るように悲痛な表情を浮かべた少女が叫ぶ。
「私との事は遊びだったのでしょ!? もう分かっているの!!」
「どういう事だよっ!? 俺はそんなつもりは……」
「知っているんだから! 先週アッシュが綺麗な女の人と幸せそうな表情をしながら、城下町の装飾品店で一緒に買い物をしていた事を!」
アッシュと呼ばれた青年が、その言葉でビクリと体を強張らせる。
「好きな人が出来たのなら、そう言ってくれればいいじゃない! そうしたら……すぐに別れてあげたのに……」
感極まったのか、俯き気味だった少女の瞳からポタポタと涙が零れた。
「違うんだ! フェリシア! それは……」
「何が違うのよ! この二か月間、レニー達や村の皆があなたと綺麗な女性が何度もその装飾品店に出入りしている姿を目撃しているのよ!?」
「そ、それは……」
「私はあなたからそういう贈り物を一度もされた事がないのに……。その女性は何度もあなたから素敵な贈り物をされているのでしょう!?」
「だからそれは違っ……」
アッシュがその事を否定しようとした瞬間……。
「おーい! エナっ! ここだ! ここ!」
風車小屋の中で激しく言い争う二人の会話とは全くそぐわない呑気そうな声が、急に二人の会話に乱入してきた。
そのあまりにも空気を読まない声の持ち主の存在を警戒した二人は、そのまま同時に押し黙る。
「うわっ! なんでリクス、こんな変なところで釣りしてんの!?」
「ここ穴場なんだよ。この間、すげーデカい魚釣れてさ!」
「へぇ~。その大きな魚、美味しかった?」
「いや、食ってない。その魚、釣れたけどその後、糸が切れて逃がした……」
「ダメじゃん……。それ、釣れてないじゃん……」
どうやら風車小屋のすぐ下の川べりで、この村の村長の息子でもあるリクスが釣りをしているようだ。
そしてそのリクスに声を掛けられたのは、彼の幼馴染のエナだ。
二人ともアッシュ達とは同世代でもあり、そこそこ親しい友人でもある。
しかしこの二人は、今のアッシュ達にとっては招かれざる客だった。
アッシュにとっては、リクスは気楽に話が出来る飲み仲間だ。
なので後で何か言われそうで、この言い争いをしている状況を知られたくないと思い、無意識に口を閉じる。
同時にフェリシアの方も同じ理由で息を殺すように押し黙った。
つい最近、エナにアッシュの浮気の事を相談したばかりだったからだ。
その際、エナはかなりアッシュに対して怒りを抱き、一緒になって怒ってくれた。
その為、今この状況を知られてしまうと、色々と面倒な事になるとフェリシアは判断したからだ。
しかし、その招かれざる客である二人は、アッシュとフェリシアが自分たちのすぐ真上にある風車小屋で言い争っている事には全く気付かないようで、呑気に雑談をし始めてしまった……。
そしてそのあまりにも呑気な会話が丸聞こえしてくるので、先程まで張り詰めた雰囲気で言い争っていたアッシュとフェリシアは、それを中断せざる得なくなった。
口の悪いリクスの声は、かなりよく響く。
「つかエナ、お前なんか食いモン持ってねぇーか?」
「凄い野生の勘だね。ちょうど今まさに野菜ハムサンドを持っているよ」
「マジか!? それ、くれよ! 今日俺、朝飯食いっぱぐれた上に今ボーズで……」
「さっき、ここ穴場って言ってたよね? なんでお魚が一匹も釣れてないの?」
「そんなんどーでもいいだろ!! つかハムサンドくれよ!」
「ええー!? 嫌だよ!! これお父さんのお昼なんだけど! 今届けに行く最中なんだけど!」
「一切れぐらいいいだろ!? 頼む! 腹減って死にそうなんだよ!」
「もうぉ~! 仕方ないなぁ……」
そのままエナがリクスの元まで歩み寄る気配が、風車小屋の窓越しから感じられた。
正直、今は立て込んでいるので早くどこかに行って欲しいと願うアッシュとフェリシア。
だが、そんな二人の思いはどこ吹く風かと言わんばかりに外のリクス達は、風車小屋の窓のすぐ真下辺りで居座りだす。
「おお! このハムサンド、スゲー肉厚じゃん!」
「この間、城下町でいいベーコンハムが売ってて、お父さんが奮発して買ってきてくれたんだー」
「お前の父ちゃん、城下町よく行くのな?」
「うん。お父さん、一応彫金の仕事やってるから、よく城下町の装飾品店に品物卸しに行くんだよねー」
「もしかして……そこってリレイム装飾品店か?」
店名が耳に入ってきた瞬間、アッシュとフェリシアが同時に固まる。
その店は先程、言い争いの最中に出てきた装飾品店の名前だったからだ。
「そうそう。でも何でリクスがお店の名前を知ってるの? 装飾品なんて興味ないでしょ?」
「あー……。実はアッシュの奴が最近そこに頻繁に通っててさー。俺、何度か一緒に行くの付き合わされた事あるんだわー」
「何で食べ物にしか興味がないリクスなんかをそんなお店に……」
「おい! その言い方やめろ! それだと俺が食う事にしか興味ないみてーじゃねぇーか!」
「だって実際にそうじゃない……」
「言い切るなよっ!!」
「というか……何でリクスは、そんなお店に連れて行かれたの?」
「うーん。何かアッシュが男一人だと入りづらいとか言って、一緒に行くの付き合ってくれって」
「面倒臭がり屋のリクスが、よくそんな理由で城下町にあるお店まで、わざわざ一緒に行ったね」
「飯おごってくれるって言われたから付き合った」
「やっぱり結局は、食べ物に釣られたんだね……」
「うるせぇーよっ!!」
一瞬、その装飾品店の話題が逸れたので、アッシュはこっそりと胸を撫でおろす。
しかしエナが再び、その話を蒸し返し始めた。
「でもさ。その店ってアッシュが頻繁に浮気相手の女性と出入りしているお店でしょ?」
「はぁ? 浮気相手? つかあいつ、フェリシアと付き合ってるだろ?」
その二人の会話で小屋の中のアッシュは大きく目を見開き、対するフェリシアは悲痛そうな表情を浮かべながら唇を噛んだ。
「知らないの!? この二か月間、アッシュはその装飾品店にすごく綺麗な女性と一緒に通い詰めているんだよ!? しかもフェリシアと付き合っている状態で!!」
「アッシュがその店に通い詰めている事は知ってる。あいつがフェリシアと付き合ってるのも知ってる。でも綺麗な女と一緒ってのは信じられねぇー」
「でもアッシュのその浮気現場を見た人がたくさんいて、この村でもかなり噂になってるよ? 私のお父さんも商品卸に行った時、アッシュがその綺麗な女性と待ち合わせしてたの見てるもん! フェリシアと付き合ってるくせに……。私、アッシュって最低だと思う!!」
二人の会話を聞いたフェリシアが、そっと俯きながら再び唇を噛む。
その様子に気が付いたアッシュは何か言おうと一瞬だけ口を開くが、外の二人の存在を思い出し、悔しそうに再び口を閉じた。
静まり返った風車小屋の空気が、更に重く張り詰め出す。
しかし、次の瞬間……
「でもなぁー……。アッシュの浮気は絶対にありえないと思うぞ?」
リクスの間の抜けた声が風車小屋の中に響いた。
「リクスはアッシュと仲がいいから庇いたいだけでしょ!?」
「いや、そうじゃなくて……。本当にあいつの場合、浮気とかないから」
「何で言い切れるのよ?」
「いや、だって……」
そこで何故かリクスが少し言い淀む。
「あいつが装飾品店に通ってたのって、フェリシアにプロポーズする為に贈る髪飾り選びの為だし」
その瞬間、俯き気味で必死に涙をせき止めようとしていたフェリシアが大きく目を見開いて、勢いよく顔を上げた。
すると目の前には口を半開きにして、ワナワナと震え出しているアッシュが視界に入る。
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その様子をフェリシアは、呆然としながら見つめていた。
「あいつは用意周到だぞ~。なんせ13歳くらいの時にいきなり『俺は今からフェリシアとの結婚資金を貯める!』とか宣言し出して、本当に去年その資金を貯め切ったからなぁー」
「13歳って……二人はまだ付き合っていなかったよね……?」
「そうだな」
「付き合ってもいないのに先に結婚準備っ!?」
エナの叫びにアッシュが更に深く俯き、小刻みに震えだす。
その様子を見ていたフェリシアの顔も徐々に赤みを増していった。
「だってあいつ、ガキの頃からフェリシアの事好き過ぎて毎日『フェリシアが可愛い』って俺らに言いまくってウザかったし」
「待って! 私の中でのアッシュのイメージが今かなり崩れてるよ!? アッシュってどちらかと言うと、余裕のある大人なイメージだったんだけど!! どちらかというと落ち着いた印象だったんだけど!?」
「そりゃねぇーわ。落ち着いた印象どころか、あいつは昔からフェリシアの一喜一憂で浮かれたり、あるいはこの世の終わりみたいになる男だぞ? 特にフェリシアと喧嘩した時の落ち込み様なんか、もう笑えるくらいのヘコみ方するし! それがフェリシアの前では大人ぶって余裕ある振る舞いするから、毎回笑い堪えるの大変だったわー」
そう言いながらケタケタ笑うリクスの声が、またしても風車小屋に響き渡る……。
するとアッシュが真っ赤な顔で小刻みに震えながら、キッと顔を上げた。
そのままゆっくりと、音を立てないように窓の方へと歩き出す。
「大体、ここ最近のアッシュは酔うと二言目には『フェリシアが可愛すぎて辛い……』『もうフェリシアに触れたくて触れたくてたまらない』『こうなれば早く嫁にするしかない!』とか言って、デカい声で宣言した後、最後にはそのまま潰れて寝ちまうんだよなぁー。あれ、もう絶対に限界が来てるな」
そのリクスの言葉にアッシュはピタリと歩みを止めて、再び真っ赤な顔をしながらワナワナと震え出した。
もはやそれは怒りからなのか、はたまた羞恥心からなのかアッシュ自身にも分からない。
対してフェリシアの方は、先程から真っ赤な顔を両手で覆い、俯いていた……。
「それって絶対、リクスがアッシュの事を酔いつぶしたんでしょ!!」
「ちげーよ! 毎回酔い潰すのは俺じゃなくてコール達だ! 俺はただ温かくその様子を見守ってただけだ!」
「それを止めなかったのなら、リクスも同罪だよ……」
エナに白い目で見られ、リクスがやや不貞腐れたような声でぼそりと呟く。
「だって……あいつ酔い潰すと、すぐにフェリシアの事でノロケ出すから面白……」
「リクスゥゥゥゥゥゥゥゥー!!!!!」
ガタンと大きな音と共に名指しされたリクスと、その声に驚いたエナがビクリとしながら同時に自分たちの後ろにある風車小屋の窓へと目を向けた。
すると真っ赤な顔をしながら、ものすごい剣幕で怒鳴ってきたアッシュの姿が目に入る。
「お前、何勝手にベラベラしゃべってんだよっ!! お前のデカい声だと全部丸聞こえなんだよっ!! ふざけんなぁぁぁぁーっ!!」
「うわぁ!! なんでアッシュがこんな所にいんだよ!?」
「うるさいっ!! さっきから人のプライベートをデカい声でベラベラと……。しかも今までかなり俺の事をバカにして、おちょくっていただろう!!」
「ああぁ!? 酔いつぶれてノロケばっか言ってる奴は、バカ以外に何だって言うんだよ!! 大体、毎回毎回……飲む度にノロケ話聞かされるこっちの身にもなれやっ!!」
「そのノロケ話のネタになる相手すらいないお前に言われる筋合いはないっ!!」
「んだとぉぉぉー!! 半年間プロポーズも出来ないでウダウダしてる間に浮気の疑い掛けられてるバカにこっちも言われたかねぇーわっ!! 何なら今の話、俺がフェリシアの前で全部暴露してや……って、何だよ!! エナっ!!」
急に隣のエナに服の袖口を引っ張られ、リクスは苛立ちながらエナを見やる。
するとエナはやや青い顔をしながら、何故かアッシュの後ろの方を見るように目で促してきた。
仕方なく不機嫌そうにリクスは促された先に目線を向け、そして大きく目を見開いた。
そこには……両手で顔を覆ったフェリシアがいたのだ……。
その瞬間、顔を見合わせた二人は、ほぼ同時に真顔となる。
そして急に無言のまま、もの凄いスピードで釣り道具を二人で片付け始めた。
「お、おい……。お前ら一体……」
そしてあっという間に釣り道具を片付けた二人は、アッシュ達に向かってキリッとした表情を向ける。
その素早すぎる程の息の合った二人の行動を見せつけられた後、気合の入ったスッキリした表情を二人から向けられたアッシュは、呆然としながら静かに見つめ返した。
するとリクスがキリッとした表情のまま、そっと親指を立てる。
「アッシュ! グッド・ラック!!」
そしてそのまま……もの凄い勢いで二人は脱兎のごとく、その場から逃げ去った。
「なっ!! ちょっ……お前ら、待てやぁぁぁぁー!! ふざけんなよっ!! このまま放置かっ!? この落とし前、どう付けてくれんだよっ!!」
アッシュがそう叫ぶも二人の姿は、すでに豆粒程度になっており、その抗議の声は二人には一切届いてはいなかった……。
翌日、イーベル村はある男女の結婚話に花を咲かせていた。
この二か月間、恋人の浮気を心配されていたフェリシアだが、実はその浮気と疑われていたアッシュの行動が、フェリシアへのプロポーズの準備だった事が判明したのだ。
その為、村全体がお祝いムードになり、当事者でもあるフェリシアは二か月前の思い詰めていた表情がまるで嘘だったかのように幸せそうな笑みを浮かべていた。
しかし……もう一人の当事者でもあるアッシュの方は、その日から一か月くらい、ある人物を必死で探しながら、鬼の形相で村中を徘徊するようになる……。
悪気がなかったとはいえ、アッシュが隠したかったかっこ悪い部分を雑談という形で洗いざらいフェリシアに暴露してしまい、プロポーズの機会を良い意味で、ぶち壊したこの村の長の息子リクスの事を……。
そして一か月後、アッシュとフェリシアは村人全員からの祝福を受けながら、幸せな表情を浮かべて挙式する事になるのだが……。
その日が来るまでアッシュの怒りは収まらず……。
リクスは二人の挙式までの一か月間、鬼の形相で追い回してくるアッシュの追撃を何とか躱し、かろうじて逃げ切ったそうだ……。
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