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【我が家の元愛犬】

53.我が家の元愛犬はデリカシーがない②

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ロアルドに促され部屋を出た三人は、そのまま各自が眠る部屋の方へと向かい始める。
だが、アルスに関しては、そのまま自室に戻るわけにはいかなかったので、とりあえず自身の部屋をアルスに勧めてきた。

「とりあえずフィーは自室でいいとして……。アルスはしばらく僕と同室で寝泊まりだな」
「何故だ?」
「だってお前の部屋、襲撃されたばかりじゃないか。それなのに自室に戻るつもりなのか?」
「そうじゃない。何故、フィーだけ別なのだ? だったら今までのように三人一緒に固まっていればいいじゃないか。そもそも俺は、今後もフィーと別々の部屋で過ごすつもりはない!」

 そう言い切ったアルスにロアルドが盛大に呆れる。

「アルス……あのな? お前が今までフィーと同じ部屋で寝起き出来たのは、お前が犬だったからなんだぞ?」
「犬の姿じゃなければダメなのか? だが、今の俺の方が犬だった頃よりも完璧にフィーを守り切る事が出来るぞ?」
「いや、守る以前に……。まずアルスがフィーにとって、危険な存在になる可能性があるだろう? お前、送り狼でも狙っているのか?」
「送り狼? 何だ、それは……。俺は狼じゃなくて犬だったぞ?」

 そんなアルスの切り返しにロアルドが片手を額に当て、頭痛を堪えるような仕草をする。

「そうではなくて……。年頃の男女が同じ部屋に寝泊まりしたら、あらぬ噂が立つだろうって事だ! お前は、嫁入り前のフィーが世間的に傷物令嬢と噂をされてもいいのか!?」
「何故そうなる!? 俺はフィーを傷付ける事などしない! フィーが嫌がる事は絶対にしない!」
「思春期の男なんて、いつ理性のたがが外れてもおかしくない状態なのだから、どうなるか分からないだろう!? とにかく! フィーは自室で! アルスは僕の部屋で休む事!」
「ふざけるな! もしその間にまたフィーが襲われたらどうするんだ!  俺はもう絶対にフィーから離れない! フィーの安全が確定するまでは、部屋も今までどおり同室で寝泊りするからな!」
「あ~~~もぉ~~~!! フィー! お前からも何とか言っ――――」

 だが、ふと妹の手元に視線をやると、何故か追い縋るようにアルスの袖を控えに掴んでいる様子が目に入る。

「フィー……」
「兄様の言っている事は正しいって分かっているの……。でも、でもね? もしさっきみたいに襲撃されて、またアルスがあんな目に遭ったら……」
「フィー、安心しろ。今の俺は、もう魔法は封じられていないし、体術も使えるから先程のような醜態は絶対にさらさない!」
「魔法はともかく……。ずっと犬だったのにお前は、一体いつ体術なんてマスターしたんだ?」
「この邸の騎士団連中の訓練風景を見て学んだ」
「それ、実際に使えるかどうか分からないじゃないか!」
「問題ない。俺も兄上と同じで一度目にした物事は、すぐに自身に取り込める。だから社交マナー関連もフィーとロアの練習風景をずっと見ていたから、問題なくこなせるぞ?」
「何だよ、それ……。王族に与えられた特殊能力か?」
「さぁな。だが兄上やクリスもそうだから皆、普通に出来る事だと思っていた」
「それ、普通じゃないからな! 明らかに特殊能力だからな!」

 そう叫んだロアルドは、一度気を落ち着かせるように深呼吸をする。
 そして自身の部屋の方には向わず、フィリアナの部屋の方へと歩き出した。

「兄様?」
「今日だけだぞ、三人一緒の部屋で寝るのは……」
「兄様!」
「ロア!」

 半ば諦め気味なロアルドの言葉にフィリアナとアルスが瞳を輝かせる。
 だがその後にロアルドは、しっかりと二人に釘を刺す。

「だが、明日以降はダメだ! そもそもこんな事、父上に知られたらアルスだけでなく僕も父上に消されてしまう……」
「大丈夫だ! もしフィリックスがロアを消そうとしたら、その前に俺がフィリックスを消してやる!」
「アルス、それ冗談に聞こえないぞ……?」

 ロアルドがブツブツ言いながら、二人を引率するようにフィリアナの部屋へと向かう。すると、何処からともなくレイが現れ、アルスの横にピタリと引っ付いてきた。

「そういえば……レイって、やけにアルスに懐いているよね?」
「ああ。レイは俺の聖魔獣だからな」

 そのアルスの爆弾発言にロアルドとフィリアナの思考が一瞬、停止する。

「はぁ!?」
「ええっ!?」
「なんだ。二人共、気付いていなかったのか? そもそもレイが俺の居場所を正確に分かるのは、俺と聖魔獣契約済みだからだぞ?」
「いつ、そんな契約したんだ!」
「いつ、そんな契約したの!?」
「いつって……レイを密猟者から助けた直後だが……」

 次から次へと衝撃的な事実が判明する展開にロアルドとフィリアナがぐったりしていると、いつの間にか三人はフィリアナの部屋の前に到着していた。だが、部屋に入ろうとするフィリアナをロアルドが一度、止める。そしてそっと扉を開け、室内の安全を確認した。

「大丈夫そうだな。二人共、入ってもいいぞ?」

 すると、フィリアナよりもアルスが先に入室し、真っ先にフィリアナの寝台へと突進していく。そんなアルスにロアルドが叫んだ。

「アルス、待て!!」

 ロアルドに一喝されたアルスが、犬だった頃の癖でお行儀よくピタリと動きを止める。だが、すぐに不機嫌そうな表情でロアルドを睨みつけた。

「何だ……。正直なところ、俺は早く休みたい……」
「だからって、何でお前は堂々とフィーの寝台で寝ようとしているんだ!」
「何でって……。俺とフィーは、ここ最近一緒に寄り添って眠って……」
「それは犬の姿だった時だろう!? お前はこっち! 僕と一緒にこの長椅子のどちらかで寝るんだ!」
「長椅子だと体が痛くなる……。俺もフィーと同じ寝台で寝たい……」
「絶対にダメだ!」
「何故だ!?」
「万が一、何か間違いがあったら困るだろう!?」
「それは婚前交渉の事を言っているのか? 俺はフィーの同意も無しにそんな最低な真似など絶対にしない!」
「フィーの同意があったらするのかよ!? そもそも……何故7歳以降、犬だったお前がそういう知識を持っているんだ!」
「ロアが閨の座学を受けている際、俺も一緒に引っ付いて聞いていた」

 確かにロアルドが家督を継ぐ為に必要な知識を指導されている時は、やたらとアルスが引っ付いてきた時期があった。その際、ちゃっかり閨の講義も一緒に受けてしまっていたのだろう。
 その時の記憶をロアルドが遡っていると、妹のフィリアナから何とも言えない微妙な視線を向けられている事に気付く。

「待て、フィー。兄様で変な想像をするな……」
「ごめん、私もしたくない……。というか、兄様のそういう話は聞きたくなかった……」
「そうだよな……。ごめんな……。って、全部アルスの所為だからな!」
「何故、怒る? 家督を継ぐ者や王族男児にとって子孫を残す為の閨の講義は必須で重要な事なのだから、別に恥ずかしがる事ではないだろう?」
「お前は、もう少し羞恥心とかデリカシーという言葉を学べよ!」
「俺は間違った事は言っていない!」

 すると、やや不貞腐れた様子のアルスが、フィリアナの寝台に近い方の長椅子に寝転がろうとした。それを再びロアルドが止めに入る。

「アルス、お前が寝るのはこっちの長椅子だ」
「嫌だ! そっちだとフィーから遠い!」
「だからだよ!! 兄の俺が妹の近くに第二成長期を終えた男が寝ようとしている状況を許すとでも思っているのか!?」
「すぐにそういう事に繋げて考えるな! 俺はロアと違って純情な人間なのだぞ!?」
「純情な奴が人の妹の頬を平然と舐めるのか!? お前……あれ、うっかりじゃなくて絶対に確信犯だっただろう!」
「…………いや、ついうっかりだ」
「今の間はなんだ! ちゃんと僕の目を見てから、もう一度言ってみろ!」

 何やら品位の無い内容で二人が言い争いをし出したので、その隙にフィリアナはそっと浴室に行き、用意されていた寝間着に着替えに行く。ちなみにレイは、何故かさっさとフィリアナの寝台の上で丸くなっていた。その間、室内の方からは二人が下らない事で言い争いをしている内容が聞こえてきたが、それが返ってアルスが犬だった頃と変わらないやり取りに感じられ、少しだけフィリアナに安堵感を与えた。

 だが、着替え終わったフィリアナが室内に戻った際、ロアルドがこぼしたある一言で、その賑やかな空気は一変する。

「大体……アルスは一体、誰に犬にされる呪術を掛けられたんだよ……」

 その瞬間、アルスが珍しく怯えるように表情を強張らせたのだ。

「アルス……?」
「悪い……。もしかして、あまり深く聞いてはいけない事だったか?」

 流石のロアルドも珍しい反応を見せたアルスに口調が柔らかめになる。

「いや……。二人には話すべき事だと思っていたから別に構わない……」
「でも……アルス、凄く話すのが辛そうに見えるのだけれど……」
「もし嫌なら、今は無理に話す必要はないぞ?」

 どうも犬だった頃の接し方が抜けない二人は、急に静かになってしまったアルスを甘やかし出す。だが、アルスの方はそれに甘んじなかった。

「大丈夫だ。むしろ二人には聞いて欲しい事だから……」

 そうこぼしたアルスが、一瞬だけ気持ちを落ち着けるように息を吐く。

「俺を犬の姿にした人物は……4年間、俺の側使いとして仕え、俺よりも一回りも年上だった侍従の青年だ……」

 その話から、まだアルスが邸に来たばかりの頃に父が口にしていた事を二人が思い出す。

 『アルスの世話係をしていた人間が、いきなりアルスを傷付けようとした』
 『その者は、取り押さえられたと同時に自ら舌を噛み切って自害してしまった』

 その瞬間、フィリアナは瞳に涙を溜めながら、思わずアルスに抱き付いていた。
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