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23.嘘つきな婚約者
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「アイリス!!」
ちょうど劇場裏に下がって来たアイリスの姿を見つけ、アレクシスが駆け寄る。
かなり大雨を降らせたアイリスは、全身びしょ濡れで体のいたるところからポタポタと水を滴らせていた。
「アレク……何?」
「何じゃないよ! 君、何を考えているんだい!? 僕の婚約者としてのお披露目の場であんな歌を歌うなんて……」
するとアイリスが、いつもアレクシスを挑発する時に見せる綺麗な笑みを浮かべる。
びしょ濡れのせいかアレクシスにはその笑みが、いつもより妖艶に見えた。
「あら、古代語の歌なら建国記念日にはピッタリじゃない」
「言語じゃない!! 歌詞の方だ!!」
珍しく声を荒げたアレクシスにアイリスが一瞬だけ目を見開く。
しかし、すぐに先程の綺麗過ぎる笑みを浮かべ直した。
「どうせあの歌詞の意味を分かる人間なんてこの会場には一握りくらいしかいないのだから、特に問題にはならないと思うのだけれど?」
「でも僕は、あの歌詞の意味を十分理解出来た……。あの歌は『拒絶』という言葉を彷彿させるさせる歌だ。君は今日、僕になりきって僕の気持ちで歌い上げると言っていたけれど……。でも僕は、君を拒絶した事なんて一度もないはずだ!!」
珍しく怒りの感情を表にしているアレクシスに少し驚くが、それで怯むアイリスではない。
フイっと目線を逸らしたかと思うと、不機嫌そうな顔で吐き捨ているようにポツリと呟く。
「そうね。あなたは今まで一度も私を拒絶した事なんてなかったわね……。拒絶するのは、いつも私の方だけ」
「だったら……」
すると、急にアイリスがアレクシスに向かって嘲笑する様な表情を向ける。
「だから私が代弁してあげたの。受け入れたくもない私を王族という立場の所為で、受け入なくてはないらない状況を誰にも訴えられない不幸なあなたの代わりに!」
その瞬間、今度はアレクシスが目を見開いた。
「受け入れたくないなんて……僕はそんな事は一度も言っていないじゃないか!」
「ええ! あなたは絶対にそんな事を言わないわ! 例え心の中でそう思っていても絶対に本音は言わない……そういう人だもの!」
そう言い放ったアイリスは、アレクシスの事を睨みつける。
そんなアイリスの訴えの意味が分からなかったアレクシスは怪訝な表情を返す。
「君は一体、何に怒っているんだ? 仮に僕が君を拒絶したがっているという事に怒っているのであれば、それはお互い様だろ!? 君だって10年も僕の事を拒絶してきたのだから……。それなのにどうして僕だけ責められなければならない!?」
自分ばかり理不尽だと訴えるアレクシスをアイリスは思い切り鼻で笑う。
「そうよ。私は10年間あなたを拒絶してきたわ。その内の4年間はあなたの事を徹底的に無視し、更に3年間はあなたに嫌味ばかりを綴った手紙のやり取りしかしなかった……。残りの三年間は、やっと顔を会わせるようにはなったけれどそれは極稀で、会ったら会ったで嫌味の応酬。でもね……私はしっかりとあなたに対して自分は『拒絶している』という態度を正直にし続けたわ!」
そこまで言い切ると、アイリスが両手でドレスをぎゅっと握り締める。
「でもあなたはどう? あなたはそんな私に何をしてきた? 10年間も無視し続けた私に凝りもせず、何度も家に来ては関係醸成を図ろうとし、その所為で広まってしまった不仲説を払拭する為にしたくもない過剰な愛情表現を周りに披露し、挙句の果てに自分の大切な人の為に手に入れた護衛を私なんかに付けざるを得ない状況になったのよ!? いくら膨大な力を持った巫女の力を生涯かけて成業する事が王族の務めだと言っても、それを無理矢理押し付けらた今の状況は悔しくないの!?」
拒絶するどころか、すんなりその状況を受け入れているアレクシスを非難する様に叫んだアイリスは、唇を軽く噛み閉めながら急に俯き出す。その悲痛そうな様子がアレクシスの心に罪悪感を抱かせる。
「アイリス……それは……」
「私は悔しかったわ……。望んでもいない巫女力の所為でって……。だから無駄だと分かってても全力で抗った! それをあなたは子供っぽい行動だと言うかもしれないけれど……。でも私は、自分の気持ちを押し殺してまで我慢なんかしたくはなかった! たとえどう頑張っても回避出来ない事だとしても最後まで足掻いて、自分の気持ちに正直でいたかった!」
「アイリス……」
まるで訴えるようにアレクシスを捲し立てたアイリスが、更に俯き小さく震え出す。
そのアイリスの様子からが泣く事を堪えているように見えてしまったアレクシスは、同情と罪悪感から思わずアイリスの顔へと手を伸ばしかけた。だが、急に顔を上げたアイリスは、アレクシスを鋭く睨みつけ、その伸ばされてきたアレクシスの手を思いっきり平手打ちで振り払った。すると、二人しかいない裏通路で、その音が反響する。
「私に触らないでっ!!」
物凄い剣幕で手を振り払われてしまったアレクシスが、傷つく様な表情を浮かべる。
だが次の瞬間、アイリスの様子を見てそれはすぐに驚きの表情へと変わった。
手を振り払ったアイリスが、アレクシスを睨みつけながらボロボロと大粒の涙を溢していたからだ。
「どうしてあなたは、私に対して平然とそういう触れ方が出来るの!? ここは人目が無いのよ!? 演技なんてする必要ないじゃないっ!!」
「アイリス……違うんだ!! それは……っ!」
「あなたは演技だと割り切って、平然と私に対して甘い接し方が出来るのだろうけれど……。触れられている私は平気じゃない!! あなたのその演技は完璧過ぎるのよ!!」
物凄い剣幕で泣きながら叫ぶアイリスは、その後すぐに悔しそうに腕で涙を拭った。
「最初に二人で参加した夜会の時、あなたの甘い接し方はそこまで過剰ではなかったから我慢も出来たわ……。でも巫女会合の後くらいから、あなたは悪ノリし出して必要以上に私を大切な物のように優しく触れてきた……。しかもそれは社交界での私達の不仲説を払拭する為だと言いながら、明らかに私の反応を楽しむ事を目的にして! その事を私が気付かなかったとでも思っていたの!? その度に私は不要な自己嫌悪に陥って、どれだけ惨めな思いをしていたと思う!?」
「だからアイリス、それは違っ――――!!」
再び伸ばされたアレクシスの腕から逃げるように、アイリスはアレクシスを睨みつけたまま、後ろに数歩下がる。そのアイリスの反応にアレクシスが傷つくように悲しい表情を浮かべた。だがアイリスは、自分の気持ちを爆発させる事に夢中になっており、アレクシスの声は一切耳に入ってこない状態らしい……。
更に興奮しながら、今まで溜まっていたアレクシスに対する不満を訴え続ける。
「もう二度とそんな風に私に触らないでっ!! たとえあなたのその触れ方が演技だと分かっていても……その触れ方は、私にとって脅威でしかないのよっ!!」
最後は叫びながら不満を訴えたアイリスは、そのまま瞳をぎゅっと閉じ、更にボロボロと大粒の涙を零し始める。
アレクシスの行動で動揺してしまう自分を認める事が悔しくて、触れられる事に心が惑わされる恐怖を感じてしまう弱い自分が情けなくて、何よりもアレクシスの前でこんなに大粒の涙を零している自分自身に腹が立って……。
この二カ月間、ずっと虚勢を張り続けて我慢していた思いが一気に爆発した。
そんなアイリスに憐れむ様な目を向けたアレクシスだが……。
次の瞬間、アイリが耳を疑う様な事を言い放つ。
「ごめん……アイリス。その要望だけは絶対に受け入れられない……」
その言葉を聞いたアイリスは、怒りを宿しながら瞳を大きく見開いた。
「どうしてよっ!! 過剰な触れ方ではなく、普通に女性をエスコートする時と同じような触れ方をすればいいだけの事でしょう!?」
「ごめん……。本当に無理なんだ……」
「何で――――っ」
泣き叫ぶ様にアイリスが抗議の声を上げた次の瞬間、アレクシスはもの凄い勢いでアイリスの腕を引っ張り、自分の方へと引き寄せる。そしてそのまま身動きがとれない程、アイリスの事を深く抱きしめた。
だがそこから逃れようと、アイリスが必死になって暴れ出す。
「何すんのよっ!! あなた、さっきの私の訴えを聞いてなかっ――――」
「演技じゃない……」
「何……?」
「僕はこの二カ月間……君に触れる際は演技なんて一度もした事はない!!」
その言葉にアイリスの怒りが再び沸き上がってくる。
「信じられない……。どうしてこの状況でも平気で嘘が付けるの!? もうあなたの嘘にはウンザリなのよっ!! いいから放してよ!! 放しなさいっ!!」
アレクシスの腕の中から逃れようと、アイリスは泣きながら更に暴れ出す。
だが、アレクシスは更に両腕に力を込めて更にアイリスを深く抱きしめた。そして懺悔するかのように悲痛な表情を浮かべて、アイリスのうなじ辺りに顔を埋め出す。
「ごめん……アイリス。本当にごめん……。こんな風に君を追い詰めるつもりじゃなかったんだ……」
そう言ってアレクシスが、アイリスのうなじ辺りの髪に更に深く顔を埋めた。
それに抗う様にアイリスは、全力でアレクシスから自分の体を引き離そうと両手で突っぱねる。
「何が『追い詰めるつもりはなかった』よ! 明らかに私の反応を見て面白がってたじゃない! ふざけた事言わないでっ!!」
アイリスが必死に腕から逃れようと、ボロボロ泣きながら更に暴れ出す。
だが、アレクシスは暴れるアイリスを抑え込むように更に深く抱きしめた。
「確かに最初はそうだった……。でも君が巫女会合の時に僕の目の前で歌ってくれてからは違う。やっと……10年経ってやっと君が歌を聴かせてくれたから……」
アレクシスのその言葉にアイリスの動きが止まる。
10年間、辛辣な態度を取り続けていた自分をアレクシスは、ずっと見守り続けてくれた事をアイリスは、もう知ってしまっていたからだ……。その罪悪感から、アイリスは急に抵抗出来なくなってしまう。
「だからもう少し君に踏み込んでもいいと思ったんだ……。でも踏み込んだら踏み込んだで、今度は自分の抑えが利かなくなった……。以前はあまり会ってくれなかった君が、今では部屋を訪れれば文句を言いながらも対応してくれる事に自分でも気づかない内に過度に絡んでしまった……。不仲説の払拭を口実に簡単に君に触れられる様になった事に夢中になり過ぎて、君の気持ちにまで配慮が出来なかった……」
そしてアレクシスは、更にアイリスを深く自分の方へと引き寄せる。
「本当に、ごめん……」
アレクシスのその言い分を聞いて暴れるのをやめたアイリスだが……その反動なのか、更にボロボロと涙を零し出す。
「嘘つき……。触れるのは、不仲説を払拭させる為って言ってた癖に……」
「そうでも言わなければ、君は僕が触れる事を許してはくれなかっただろ?」
「だからって……そんなの卑怯だわ……」
「例え卑怯な手を使ってでも、どうしても君に触れたかったんだ……」
するとアレクシスが、やっと腕を緩め、左手をアイリスの頬に添えた。
「だから先程の君の要望には絶対に応えられない。僕が君に触れる時は、どうしてもああいう風な触れ方しか出来ないから……」
そう言ってアレクシスがアイリスの涙を掬い上げる。
しかしアイリスの涙は全く止まらず、次から次へと溢れ出す。
「だったら……そういう触れ方にならない様に少しは自重しなさいよ……」
「そんなの無理だよ。それが出来ていたら、ここまで君を追いつめてはいないよ?」
アイリスはボロボロと零れ落ちる涙を何とか止めようと、ぎゅっと目を閉じた。
するとアレクシスが困った様な笑みを浮かべて、アイリスの顔を覗き込む。
「だから……『もう二度と触れないで』なんて言わないでくれ……」
そのままアレクシスが自分の額をアイリスの額にくっ付ける。
そして添えていた左手で俯き気味だったアイリスの顔を上に持ち上げた。
「アイリス……ごめんね? 自重出来なくて……」
そう呟くとアレクシスは、ゆっくりとアイリスに顔を近づけた。
それをアイリスは、拒みもせずにボロボロと涙を零したまま受け入れる。
初めはそっと……二度目は深く。
何度も何度も口付けを繰り返される度にアイリスは、ボロボロ涙を零した。
そして泣かれれば泣かれる程、アレクシスのタガは外れていく。
しかし何度も繰り返されるその優しい行為にアイリスの呼吸が限界を感じた。
それに気付かず続けようとするアレクシスをアイリスが両手で突き放した。
「いい加減にしてよ! 息が出来ないじゃない!」
「ごめん……」
今日何度目かになるか分からない謝罪の言葉を呟き、アレクシスが苦笑する。
そして自分が着ていた上着をアイリスの肩にそっと掛けた。
しかしいつの間にか涙が止まっていたアイリスが、それを辞退する。
「いらないわ……。だって、あなたの上着が濡れてしまうもの」
「構わないよ。それにもうこのなりじゃ、どのみち着替えないとダメそうだし」
そう言ってアレクシスは両手を広げ、つい先程までアイリスを閉じ込めていた部分を見せる。びしょ濡れだったアイリスを抱きしめた所為で、アレクシスの体の前側の衣類が濡れてしまっていた。
そんなアレクシスにまだ瞳の縁に残った涙を拭いながら、アイリスが愚痴る。
「だから言ったのよ……。少し自重しろって……」
「自重するくらいなら、僕は喜んで服が濡れる方を選ぶよ」
「あなたねぇ……」
呆れながらアレクシスを咎めようとしたアイリスだが、ふと遠くの方から誰かの声が聞こえ、言葉を止めた。
「誰か……僕の事を呼んでいるね? 誰だろ? ここだ! ここにいる!」
その呼び掛けに応える様にアレクシスが大声で自分の居場所を示す。
すると、慌てたような足音が段々とこちらに近づいてきた。
「アレクシス様!! この様な場所にいらっしゃったのですか!?」
「ヒース……? 君は何をそんなに慌てているんだ?」
現れたのはアレクシスの側近の一人ヒースだった。
余程、アレクシスを探し回ったのか、額から汗をダラダラと垂らしている。
「慌てるに決まってるじゃないですかっ!! 今、外はアイリス様が降らせた大雨が全く止まなくて、大騒ぎになっているんですよっ!?」
そう捲し立てるヒースにアレクシスが何かを思い出す。
「あっ……しまった……。アイリスが歌った歌が衝撃的過ぎて、今回晴天の力を発動させる事をすっかり忘れていた……」
「ええっ!? 何やってくれちゃってんですかっ!!」
「いや、だって……あんな歌詞で歌われたら婚約者としては動揺するだろ?」
アレクシスの言い分にアイリスが、責任逃れする様にフイっとそっぽを向く。
「歌詞の言語は全く分かりませんでしたが……あのような素晴らしい歌声に何を動揺するってんですかっ!!」
「ヒースは分からなくて良かったねー。もし理解出来たら顔面蒼白物だよ?」
「ど、どういう事ですか……?」
先程から間接的にチクチクとアレクシスに嫌味を言われているアイリスが、無理矢理話題を元に戻す。
「それよりも何故大変なの? だって会場にはエクリプス陛下とジェダイト様がいらっしゃるじゃない。晴天の力を扱える方がお二人もいらっしゃるのだから、私の降らせた雨なんてすぐに抑え込められるでしょ?」
そのアイリスの言葉にアレクシスとヒースが、盛大に息を吐く。
「アイリス……。君、自分の化け物じみた巫女力を相当、侮っているね?」
「な、何でそうなるのよ!? だって今までだって、ずっとお二人が抑えて……」
そこまで口に出してから、アイリスは先程アレクシスが言った言葉を思い出す。
『今回晴天の力を発動させる事をすっかり忘れていた』
先程アレクシスは確かにそう言った。
「アレクシス様! お急ぎください!! もうお二人共、限界です!!」
「分かった、分かった」
「待って! アレク、あなたまだ私に隠してる事があるでしょっ!」
アイリスのその呼びかけにアレクシスが、にっこりと微笑む。
「アイリス、ごめんね? 早く行かないと父上達が倒れちゃうから。その話は後日ゆっくり説明するから、ちょっと待ってて貰えるかな?」
「本当に説明してくれるんでしょうね……」
「もちろん。もう今回の事で君に嘘を付くと大変な事になるって学習したし」
「アレクシス様! お急ぎください!」
「はいはい。分かったよ。それじゃアイリス、僕は戻るけど、君は風邪引かない様に早く着替えてね?」
そう言ってヒースに引っ張られる様に去って行ったアレクシス。
しかしその後、三日経ってもアレクシスは、アイリスの許に姿を現さなかった。
ちょうど劇場裏に下がって来たアイリスの姿を見つけ、アレクシスが駆け寄る。
かなり大雨を降らせたアイリスは、全身びしょ濡れで体のいたるところからポタポタと水を滴らせていた。
「アレク……何?」
「何じゃないよ! 君、何を考えているんだい!? 僕の婚約者としてのお披露目の場であんな歌を歌うなんて……」
するとアイリスが、いつもアレクシスを挑発する時に見せる綺麗な笑みを浮かべる。
びしょ濡れのせいかアレクシスにはその笑みが、いつもより妖艶に見えた。
「あら、古代語の歌なら建国記念日にはピッタリじゃない」
「言語じゃない!! 歌詞の方だ!!」
珍しく声を荒げたアレクシスにアイリスが一瞬だけ目を見開く。
しかし、すぐに先程の綺麗過ぎる笑みを浮かべ直した。
「どうせあの歌詞の意味を分かる人間なんてこの会場には一握りくらいしかいないのだから、特に問題にはならないと思うのだけれど?」
「でも僕は、あの歌詞の意味を十分理解出来た……。あの歌は『拒絶』という言葉を彷彿させるさせる歌だ。君は今日、僕になりきって僕の気持ちで歌い上げると言っていたけれど……。でも僕は、君を拒絶した事なんて一度もないはずだ!!」
珍しく怒りの感情を表にしているアレクシスに少し驚くが、それで怯むアイリスではない。
フイっと目線を逸らしたかと思うと、不機嫌そうな顔で吐き捨ているようにポツリと呟く。
「そうね。あなたは今まで一度も私を拒絶した事なんてなかったわね……。拒絶するのは、いつも私の方だけ」
「だったら……」
すると、急にアイリスがアレクシスに向かって嘲笑する様な表情を向ける。
「だから私が代弁してあげたの。受け入れたくもない私を王族という立場の所為で、受け入なくてはないらない状況を誰にも訴えられない不幸なあなたの代わりに!」
その瞬間、今度はアレクシスが目を見開いた。
「受け入れたくないなんて……僕はそんな事は一度も言っていないじゃないか!」
「ええ! あなたは絶対にそんな事を言わないわ! 例え心の中でそう思っていても絶対に本音は言わない……そういう人だもの!」
そう言い放ったアイリスは、アレクシスの事を睨みつける。
そんなアイリスの訴えの意味が分からなかったアレクシスは怪訝な表情を返す。
「君は一体、何に怒っているんだ? 仮に僕が君を拒絶したがっているという事に怒っているのであれば、それはお互い様だろ!? 君だって10年も僕の事を拒絶してきたのだから……。それなのにどうして僕だけ責められなければならない!?」
自分ばかり理不尽だと訴えるアレクシスをアイリスは思い切り鼻で笑う。
「そうよ。私は10年間あなたを拒絶してきたわ。その内の4年間はあなたの事を徹底的に無視し、更に3年間はあなたに嫌味ばかりを綴った手紙のやり取りしかしなかった……。残りの三年間は、やっと顔を会わせるようにはなったけれどそれは極稀で、会ったら会ったで嫌味の応酬。でもね……私はしっかりとあなたに対して自分は『拒絶している』という態度を正直にし続けたわ!」
そこまで言い切ると、アイリスが両手でドレスをぎゅっと握り締める。
「でもあなたはどう? あなたはそんな私に何をしてきた? 10年間も無視し続けた私に凝りもせず、何度も家に来ては関係醸成を図ろうとし、その所為で広まってしまった不仲説を払拭する為にしたくもない過剰な愛情表現を周りに披露し、挙句の果てに自分の大切な人の為に手に入れた護衛を私なんかに付けざるを得ない状況になったのよ!? いくら膨大な力を持った巫女の力を生涯かけて成業する事が王族の務めだと言っても、それを無理矢理押し付けらた今の状況は悔しくないの!?」
拒絶するどころか、すんなりその状況を受け入れているアレクシスを非難する様に叫んだアイリスは、唇を軽く噛み閉めながら急に俯き出す。その悲痛そうな様子がアレクシスの心に罪悪感を抱かせる。
「アイリス……それは……」
「私は悔しかったわ……。望んでもいない巫女力の所為でって……。だから無駄だと分かってても全力で抗った! それをあなたは子供っぽい行動だと言うかもしれないけれど……。でも私は、自分の気持ちを押し殺してまで我慢なんかしたくはなかった! たとえどう頑張っても回避出来ない事だとしても最後まで足掻いて、自分の気持ちに正直でいたかった!」
「アイリス……」
まるで訴えるようにアレクシスを捲し立てたアイリスが、更に俯き小さく震え出す。
そのアイリスの様子からが泣く事を堪えているように見えてしまったアレクシスは、同情と罪悪感から思わずアイリスの顔へと手を伸ばしかけた。だが、急に顔を上げたアイリスは、アレクシスを鋭く睨みつけ、その伸ばされてきたアレクシスの手を思いっきり平手打ちで振り払った。すると、二人しかいない裏通路で、その音が反響する。
「私に触らないでっ!!」
物凄い剣幕で手を振り払われてしまったアレクシスが、傷つく様な表情を浮かべる。
だが次の瞬間、アイリスの様子を見てそれはすぐに驚きの表情へと変わった。
手を振り払ったアイリスが、アレクシスを睨みつけながらボロボロと大粒の涙を溢していたからだ。
「どうしてあなたは、私に対して平然とそういう触れ方が出来るの!? ここは人目が無いのよ!? 演技なんてする必要ないじゃないっ!!」
「アイリス……違うんだ!! それは……っ!」
「あなたは演技だと割り切って、平然と私に対して甘い接し方が出来るのだろうけれど……。触れられている私は平気じゃない!! あなたのその演技は完璧過ぎるのよ!!」
物凄い剣幕で泣きながら叫ぶアイリスは、その後すぐに悔しそうに腕で涙を拭った。
「最初に二人で参加した夜会の時、あなたの甘い接し方はそこまで過剰ではなかったから我慢も出来たわ……。でも巫女会合の後くらいから、あなたは悪ノリし出して必要以上に私を大切な物のように優しく触れてきた……。しかもそれは社交界での私達の不仲説を払拭する為だと言いながら、明らかに私の反応を楽しむ事を目的にして! その事を私が気付かなかったとでも思っていたの!? その度に私は不要な自己嫌悪に陥って、どれだけ惨めな思いをしていたと思う!?」
「だからアイリス、それは違っ――――!!」
再び伸ばされたアレクシスの腕から逃げるように、アイリスはアレクシスを睨みつけたまま、後ろに数歩下がる。そのアイリスの反応にアレクシスが傷つくように悲しい表情を浮かべた。だがアイリスは、自分の気持ちを爆発させる事に夢中になっており、アレクシスの声は一切耳に入ってこない状態らしい……。
更に興奮しながら、今まで溜まっていたアレクシスに対する不満を訴え続ける。
「もう二度とそんな風に私に触らないでっ!! たとえあなたのその触れ方が演技だと分かっていても……その触れ方は、私にとって脅威でしかないのよっ!!」
最後は叫びながら不満を訴えたアイリスは、そのまま瞳をぎゅっと閉じ、更にボロボロと大粒の涙を零し始める。
アレクシスの行動で動揺してしまう自分を認める事が悔しくて、触れられる事に心が惑わされる恐怖を感じてしまう弱い自分が情けなくて、何よりもアレクシスの前でこんなに大粒の涙を零している自分自身に腹が立って……。
この二カ月間、ずっと虚勢を張り続けて我慢していた思いが一気に爆発した。
そんなアイリスに憐れむ様な目を向けたアレクシスだが……。
次の瞬間、アイリが耳を疑う様な事を言い放つ。
「ごめん……アイリス。その要望だけは絶対に受け入れられない……」
その言葉を聞いたアイリスは、怒りを宿しながら瞳を大きく見開いた。
「どうしてよっ!! 過剰な触れ方ではなく、普通に女性をエスコートする時と同じような触れ方をすればいいだけの事でしょう!?」
「ごめん……。本当に無理なんだ……」
「何で――――っ」
泣き叫ぶ様にアイリスが抗議の声を上げた次の瞬間、アレクシスはもの凄い勢いでアイリスの腕を引っ張り、自分の方へと引き寄せる。そしてそのまま身動きがとれない程、アイリスの事を深く抱きしめた。
だがそこから逃れようと、アイリスが必死になって暴れ出す。
「何すんのよっ!! あなた、さっきの私の訴えを聞いてなかっ――――」
「演技じゃない……」
「何……?」
「僕はこの二カ月間……君に触れる際は演技なんて一度もした事はない!!」
その言葉にアイリスの怒りが再び沸き上がってくる。
「信じられない……。どうしてこの状況でも平気で嘘が付けるの!? もうあなたの嘘にはウンザリなのよっ!! いいから放してよ!! 放しなさいっ!!」
アレクシスの腕の中から逃れようと、アイリスは泣きながら更に暴れ出す。
だが、アレクシスは更に両腕に力を込めて更にアイリスを深く抱きしめた。そして懺悔するかのように悲痛な表情を浮かべて、アイリスのうなじ辺りに顔を埋め出す。
「ごめん……アイリス。本当にごめん……。こんな風に君を追い詰めるつもりじゃなかったんだ……」
そう言ってアレクシスが、アイリスのうなじ辺りの髪に更に深く顔を埋めた。
それに抗う様にアイリスは、全力でアレクシスから自分の体を引き離そうと両手で突っぱねる。
「何が『追い詰めるつもりはなかった』よ! 明らかに私の反応を見て面白がってたじゃない! ふざけた事言わないでっ!!」
アイリスが必死に腕から逃れようと、ボロボロ泣きながら更に暴れ出す。
だが、アレクシスは暴れるアイリスを抑え込むように更に深く抱きしめた。
「確かに最初はそうだった……。でも君が巫女会合の時に僕の目の前で歌ってくれてからは違う。やっと……10年経ってやっと君が歌を聴かせてくれたから……」
アレクシスのその言葉にアイリスの動きが止まる。
10年間、辛辣な態度を取り続けていた自分をアレクシスは、ずっと見守り続けてくれた事をアイリスは、もう知ってしまっていたからだ……。その罪悪感から、アイリスは急に抵抗出来なくなってしまう。
「だからもう少し君に踏み込んでもいいと思ったんだ……。でも踏み込んだら踏み込んだで、今度は自分の抑えが利かなくなった……。以前はあまり会ってくれなかった君が、今では部屋を訪れれば文句を言いながらも対応してくれる事に自分でも気づかない内に過度に絡んでしまった……。不仲説の払拭を口実に簡単に君に触れられる様になった事に夢中になり過ぎて、君の気持ちにまで配慮が出来なかった……」
そしてアレクシスは、更にアイリスを深く自分の方へと引き寄せる。
「本当に、ごめん……」
アレクシスのその言い分を聞いて暴れるのをやめたアイリスだが……その反動なのか、更にボロボロと涙を零し出す。
「嘘つき……。触れるのは、不仲説を払拭させる為って言ってた癖に……」
「そうでも言わなければ、君は僕が触れる事を許してはくれなかっただろ?」
「だからって……そんなの卑怯だわ……」
「例え卑怯な手を使ってでも、どうしても君に触れたかったんだ……」
するとアレクシスが、やっと腕を緩め、左手をアイリスの頬に添えた。
「だから先程の君の要望には絶対に応えられない。僕が君に触れる時は、どうしてもああいう風な触れ方しか出来ないから……」
そう言ってアレクシスがアイリスの涙を掬い上げる。
しかしアイリスの涙は全く止まらず、次から次へと溢れ出す。
「だったら……そういう触れ方にならない様に少しは自重しなさいよ……」
「そんなの無理だよ。それが出来ていたら、ここまで君を追いつめてはいないよ?」
アイリスはボロボロと零れ落ちる涙を何とか止めようと、ぎゅっと目を閉じた。
するとアレクシスが困った様な笑みを浮かべて、アイリスの顔を覗き込む。
「だから……『もう二度と触れないで』なんて言わないでくれ……」
そのままアレクシスが自分の額をアイリスの額にくっ付ける。
そして添えていた左手で俯き気味だったアイリスの顔を上に持ち上げた。
「アイリス……ごめんね? 自重出来なくて……」
そう呟くとアレクシスは、ゆっくりとアイリスに顔を近づけた。
それをアイリスは、拒みもせずにボロボロと涙を零したまま受け入れる。
初めはそっと……二度目は深く。
何度も何度も口付けを繰り返される度にアイリスは、ボロボロ涙を零した。
そして泣かれれば泣かれる程、アレクシスのタガは外れていく。
しかし何度も繰り返されるその優しい行為にアイリスの呼吸が限界を感じた。
それに気付かず続けようとするアレクシスをアイリスが両手で突き放した。
「いい加減にしてよ! 息が出来ないじゃない!」
「ごめん……」
今日何度目かになるか分からない謝罪の言葉を呟き、アレクシスが苦笑する。
そして自分が着ていた上着をアイリスの肩にそっと掛けた。
しかしいつの間にか涙が止まっていたアイリスが、それを辞退する。
「いらないわ……。だって、あなたの上着が濡れてしまうもの」
「構わないよ。それにもうこのなりじゃ、どのみち着替えないとダメそうだし」
そう言ってアレクシスは両手を広げ、つい先程までアイリスを閉じ込めていた部分を見せる。びしょ濡れだったアイリスを抱きしめた所為で、アレクシスの体の前側の衣類が濡れてしまっていた。
そんなアレクシスにまだ瞳の縁に残った涙を拭いながら、アイリスが愚痴る。
「だから言ったのよ……。少し自重しろって……」
「自重するくらいなら、僕は喜んで服が濡れる方を選ぶよ」
「あなたねぇ……」
呆れながらアレクシスを咎めようとしたアイリスだが、ふと遠くの方から誰かの声が聞こえ、言葉を止めた。
「誰か……僕の事を呼んでいるね? 誰だろ? ここだ! ここにいる!」
その呼び掛けに応える様にアレクシスが大声で自分の居場所を示す。
すると、慌てたような足音が段々とこちらに近づいてきた。
「アレクシス様!! この様な場所にいらっしゃったのですか!?」
「ヒース……? 君は何をそんなに慌てているんだ?」
現れたのはアレクシスの側近の一人ヒースだった。
余程、アレクシスを探し回ったのか、額から汗をダラダラと垂らしている。
「慌てるに決まってるじゃないですかっ!! 今、外はアイリス様が降らせた大雨が全く止まなくて、大騒ぎになっているんですよっ!?」
そう捲し立てるヒースにアレクシスが何かを思い出す。
「あっ……しまった……。アイリスが歌った歌が衝撃的過ぎて、今回晴天の力を発動させる事をすっかり忘れていた……」
「ええっ!? 何やってくれちゃってんですかっ!!」
「いや、だって……あんな歌詞で歌われたら婚約者としては動揺するだろ?」
アレクシスの言い分にアイリスが、責任逃れする様にフイっとそっぽを向く。
「歌詞の言語は全く分かりませんでしたが……あのような素晴らしい歌声に何を動揺するってんですかっ!!」
「ヒースは分からなくて良かったねー。もし理解出来たら顔面蒼白物だよ?」
「ど、どういう事ですか……?」
先程から間接的にチクチクとアレクシスに嫌味を言われているアイリスが、無理矢理話題を元に戻す。
「それよりも何故大変なの? だって会場にはエクリプス陛下とジェダイト様がいらっしゃるじゃない。晴天の力を扱える方がお二人もいらっしゃるのだから、私の降らせた雨なんてすぐに抑え込められるでしょ?」
そのアイリスの言葉にアレクシスとヒースが、盛大に息を吐く。
「アイリス……。君、自分の化け物じみた巫女力を相当、侮っているね?」
「な、何でそうなるのよ!? だって今までだって、ずっとお二人が抑えて……」
そこまで口に出してから、アイリスは先程アレクシスが言った言葉を思い出す。
『今回晴天の力を発動させる事をすっかり忘れていた』
先程アレクシスは確かにそう言った。
「アレクシス様! お急ぎください!! もうお二人共、限界です!!」
「分かった、分かった」
「待って! アレク、あなたまだ私に隠してる事があるでしょっ!」
アイリスのその呼びかけにアレクシスが、にっこりと微笑む。
「アイリス、ごめんね? 早く行かないと父上達が倒れちゃうから。その話は後日ゆっくり説明するから、ちょっと待ってて貰えるかな?」
「本当に説明してくれるんでしょうね……」
「もちろん。もう今回の事で君に嘘を付くと大変な事になるって学習したし」
「アレクシス様! お急ぎください!」
「はいはい。分かったよ。それじゃアイリス、僕は戻るけど、君は風邪引かない様に早く着替えてね?」
そう言ってヒースに引っ張られる様に去って行ったアレクシス。
しかしその後、三日経ってもアレクシスは、アイリスの許に姿を現さなかった。
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