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【本編】
3.二人は互いに慰め合う
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落胆気味ではあるが、リュカスは優しくロナリアの手を引きながら、中庭の奥まで案内してくれた。すると目の前に美しい細工が施された扉と壁に囲われたプライベートガーデンのような場所が現れる。
「ここは我が家自慢の特別な花園なんだ……」
そう説明しながらリュカスはそっとロナリアの手を離し、その入り口の扉の鍵を開け始める。カチャカチャと手際よく開錠すると、先にロナリアに入るよう促して来た。
「うわぁ……。素敵な花園……」
ロナリアのしょんぼり気分が一瞬で吹き飛んでしまう程、その花園は見事で美しかった。白とピンクの花で溢れかえっているその花園は、全体的にどこか清楚な印象を与え、ガーデン内に設置されている真っ白なテーブルとイスにもレースの様な繊細で美しいデザインが施されている。
恐らくマーガレット夫人の趣味なのだろう……。
殆どの女性が、この乙女チックに演出された花園に一瞬で魅了されそうな、そんな素敵な花園だった。
もちろん、ロナリアもその一人だ。
しかし、隣では未だに暗い雰囲気をまとっているリュカスがいる。リュカスは地面の方へ視線を落とし、落胆した様子を拗らせていた。
すると、ロナリアもつられるように暗い気持ちが蘇る。同時に黒髪のリュカスが、まとい続ける辛気臭い雰囲気に苛立ちを覚え出す。
この子は黒髪なのだから、絶対に魔力測定は良かったはず……。
二週間前、脆弱な魔法しか使えない所為で、魔法学園へ通う必要性がないと宣告されてしまったロナリアにとって、強力な魔法が使えるであろうリュカスの存在は、羨ましくて仕方がなかった。
そんな心境から、少し意地悪な言葉を掛けてやろうと思い立つ。
「リュカス様は、もしかして魔力が高いのではございませんか?」
相手が伯爵令息なので、自分が知っている中で一番丁寧な話し方をしながらロナリアはリュカスに声を掛けた。
すると、リュカスが一瞬だけロナリアに興味を持った様に空色の瞳を見開くが、それはすぐに落胆した表情へと変わった。
「リュカでいいよ……。あと令嬢風な言葉遣いも無理にしなくてもいいから」
「でも……私よりも身分が高いし……」
「確かに僕は伯爵家の人間だけど……。家を継ぐのは一番上の兄様だし、将来はどこかに婿入りするか、騎士か官職に就いて手柄を上げないと平民落ちするから、子爵家を継ぐ君より身分が低くなっている可能性が高いと思うよ」
僅か6歳の子供とは思えないその言動内容に年相応な精神年齢のロナリアが、一瞬ポカンしながら口を開けた。
だが、リュカスが自分を卑下するような言い方をしている事は、幼いロナリアでも何となく分かる。
そう感じた瞬間、自然と励ませるような言葉がないか一生懸命考え始めた。
「そ、そんな事無いよ! だってリュカスさ……リュカは、魔力が強いはずでしょ!? それならきっと立派な宮廷魔道士とかになれると思う! だってそんなに綺麗な黒髪なんだから、きっと魔力は強いはずだもの!」
すると、何故かリュカスは悲しそうな笑みをロナリアに向けてきた。
「期待を裏切って悪いんだけれど……実は僕、魔法が全く使えないんだ……」
そう言って更に項垂れてしまったリュカスにロナリアの顔色も青くなる。
「ど、どうして!? だって黒髪の人は魔力が強いはずじゃ――――っ!」
「魔力が強いのは本当。でも体の中の魔力量が少ない……というか、魔力の出口が普通の人より、かなり大きいらしいんだ。だから、僕は何もしていなくても常にそこから魔力が漏れてしまって、自分の中に魔力を溜めておく事が出来ないんだって……。僕みたいに魔力の出口が大き過ぎると、初級魔法を使おうとしても、どうしても上級レベルの魔法になってしまうみたいで……。でもそれを放てるだけの魔力が常に体の中に溜まらないから、魔法自体が使えない体質だって言われた……」
そこまで説明したリュカスは悔しそうに下を向き、そのまま落胆するようにしゃがみ込んでしまった。その話を聞いたロナリアも何故か同じように悔しい気持ちが湧き起こる。
「それじゃ、私と逆だね……」
「えっ?」
まるで自分の事のように悔しそうに涙目になったロナリアをリュカスが不思議そうに見つめ返す。
「私も二週間前に受けた魔力測定で魔法学園に行く必要が無いって判断されたの……。私の場合、体の中の魔力量は物凄くあるらしいんだけど、魔力の出口が他の人より小さ過ぎて……。思いっきり魔法を使っても出口が小さい所為で、どの属性でも最低レベルの初級魔法になっちゃうの……」
その事を聞いたリュカスは、驚くように大きく目を見開いた。
「そんな事って……あるの?」
「リュカのだって、信じられないよ……。魔力が常に漏れちゃうなんて、そんなの初めて聞いたもん」
魔力の放出口が大きすぎて常に体内の魔力が漏れ続ける体質のリュカスと、体内の魔力は膨大だが、放出口が小さすぎて小量しか放てないロナリア。
真逆な体質を持つ二人だが、『魔法をまともに使えない』という部分では、全く一緒だ。そんな二人は、お互いに同情し合うような視線を送り合った後、盛大にため息をつきながらガクリと項垂れた……。
「僕のこの変な魔力体質と、ロナリア嬢のその特殊な魔力体質を混ぜて、二つに分けたら丁度良くなるのになぁ……」
「ロナでいいよ。私もリュカって呼ばせて貰っているし……」
「それじゃ、ロナも魔法学園には入学出来ないんだね」
「うん……。貴族の子は殆ど通うから、なんか自分が恥ずかしくて……」
「でもロナは初級とは言え、一応魔法は使えるんだよね? 僕なんか水晶に手をかざしたら、しーんとなって何も起こらなかったんだよ? それに比べたら魔法を少しでも使えるだけ、マシだと思う……」
「でもこれっぽっちしか魔法、使えないんだよ?」
そう言ってロナリアが、誰もいない草原に向かって両手をかざすと、掌の先に小さな氷の粒が生まれ始める。
更にロナリアが氷の粒に必死で魔力を注ぐと、その粒は直系5センチ程の円錐型になり、少しずつ長さを伸ばし始めた。
最終的にその円錐型の氷は、5センチ程の長さで三本生成出来たが、そこでロナリアの集中力が限界に達する。そのタイミングでロナリアは、草原に向って氷の円錐を勢いよく放つも飛距離は精々10メートル程で、すぐに溶け消えてしまった。
その情けない威力と飛距離の氷魔法にロナリアは、ガクリと肩を落とす。
「ロナは氷属性が一番使いやすいの?」
「多分……。お母様も氷属性が一番得意だし……。リュカは?」
「僕は魔法が使えたら全属性とも相性はいいみたい。でも常に魔力不足で魔法自体が使えないから、全く意味がないのだけれど……」
「そっか……。リュカも凄く勿体ない体質だね……」
そう言ってロナリアもリュカスの隣にしゃがみ込み、ジッと地面を見つめる。人は落ち込むと下を向きやすいと、ロナリアは僅か6歳で悟った。すると、隣でしゃがみ込んでいたリュカスが何かに気付き、ポツリと呟く。
「あっ、四つ葉のクローバー」
その呟きに急にロナリアが、ぱぁーっと目を輝かせた。
「ええっ!! どこっ!?」
「ほら、ここ」
「本当だ! いいなぁー! 四つ葉!」
「そんなにいいものかな?」
「知らないの? 四つ葉はね、幸運を呼び込むラッキーアイテムなんだよ? リュカ、いいなぁー……」
「へぇ~、そうなんだ。なら、これはロナにあげるよ。僕、興味ないし」
「ダメだよ! 四つ葉はね、自分で見つけないと意味が無いの! それに私にくれたら、リュカの幸運が減っちゃうかもしれないでしょ!?」
「そんな事は無いと思うけれど……」
「私も自分で四つ葉、見つける!」
そう言ってロナリアは、三つ葉のクローバーが生い茂っている箇所を凝視し、必死で四つ葉探しを始めた。
だが、その様子を眺めていたリュカスは何とも言えない微妙な表情を浮かべる。
何故なら、ロナリアの右足付近と、しゃがみ込んでいるお尻付近に見事な四つ葉が三つも生えているのだ……。
だが、ロナリアは全く気付かない。
その近辺に目を向けたと思っても、何故か四つ葉を見落としている。
どうやらロナリアは、四つ葉探しが下手なようだ……。
「うー……。見つからないなぁー」
必死で探す努力も虚しく、ロナリアは全く四つ葉の存在に気付かない……。
「ああ! そこ! そこの足元! そこにあるのに!」と思わず声をあげそうになったリュカスだが、先程のロナリアの話では自分で見つけなければ意味がないようなので、下手に口出しが出来ない……。
そんなもどかしい思いをリュカスがしていると、やっとロナリアが自分のお尻付近に生えていた四つ葉に気付く。
「あっ! あった! 見て見て! リュカ、私も四つ葉、見つけたよ!」
そう言ってプチンと四つ葉を摘んだロナリアが、歓喜に満ちた表情でサッと立ち上がりながら、リュカスの方へと振り返る。
しかし……それとほぼ同時に大きな地響きと共にロナリアの真後ろで、かなり激しい突風が巻き起こった。
ちょうど、ロナリアを見上げる様な姿勢で座り込んでいたリュカスは、ロナリアの背後に突然現れたその存在を確認した瞬間、ヒュっと息を呑む。
同時に驚きから体を強張らせていたロナリアが、壊れた水車のようにギギギっと首を動かし、リュカスの視線の先でもある背後へとゆっくり視線を移す。
するとそこには――――。
中型のドラゴンらしき魔獣がグルグルと喉を鳴らしながら、まるで値踏みするかのように恐ろしい瞳で、二人を凝視していた……。
「ここは我が家自慢の特別な花園なんだ……」
そう説明しながらリュカスはそっとロナリアの手を離し、その入り口の扉の鍵を開け始める。カチャカチャと手際よく開錠すると、先にロナリアに入るよう促して来た。
「うわぁ……。素敵な花園……」
ロナリアのしょんぼり気分が一瞬で吹き飛んでしまう程、その花園は見事で美しかった。白とピンクの花で溢れかえっているその花園は、全体的にどこか清楚な印象を与え、ガーデン内に設置されている真っ白なテーブルとイスにもレースの様な繊細で美しいデザインが施されている。
恐らくマーガレット夫人の趣味なのだろう……。
殆どの女性が、この乙女チックに演出された花園に一瞬で魅了されそうな、そんな素敵な花園だった。
もちろん、ロナリアもその一人だ。
しかし、隣では未だに暗い雰囲気をまとっているリュカスがいる。リュカスは地面の方へ視線を落とし、落胆した様子を拗らせていた。
すると、ロナリアもつられるように暗い気持ちが蘇る。同時に黒髪のリュカスが、まとい続ける辛気臭い雰囲気に苛立ちを覚え出す。
この子は黒髪なのだから、絶対に魔力測定は良かったはず……。
二週間前、脆弱な魔法しか使えない所為で、魔法学園へ通う必要性がないと宣告されてしまったロナリアにとって、強力な魔法が使えるであろうリュカスの存在は、羨ましくて仕方がなかった。
そんな心境から、少し意地悪な言葉を掛けてやろうと思い立つ。
「リュカス様は、もしかして魔力が高いのではございませんか?」
相手が伯爵令息なので、自分が知っている中で一番丁寧な話し方をしながらロナリアはリュカスに声を掛けた。
すると、リュカスが一瞬だけロナリアに興味を持った様に空色の瞳を見開くが、それはすぐに落胆した表情へと変わった。
「リュカでいいよ……。あと令嬢風な言葉遣いも無理にしなくてもいいから」
「でも……私よりも身分が高いし……」
「確かに僕は伯爵家の人間だけど……。家を継ぐのは一番上の兄様だし、将来はどこかに婿入りするか、騎士か官職に就いて手柄を上げないと平民落ちするから、子爵家を継ぐ君より身分が低くなっている可能性が高いと思うよ」
僅か6歳の子供とは思えないその言動内容に年相応な精神年齢のロナリアが、一瞬ポカンしながら口を開けた。
だが、リュカスが自分を卑下するような言い方をしている事は、幼いロナリアでも何となく分かる。
そう感じた瞬間、自然と励ませるような言葉がないか一生懸命考え始めた。
「そ、そんな事無いよ! だってリュカスさ……リュカは、魔力が強いはずでしょ!? それならきっと立派な宮廷魔道士とかになれると思う! だってそんなに綺麗な黒髪なんだから、きっと魔力は強いはずだもの!」
すると、何故かリュカスは悲しそうな笑みをロナリアに向けてきた。
「期待を裏切って悪いんだけれど……実は僕、魔法が全く使えないんだ……」
そう言って更に項垂れてしまったリュカスにロナリアの顔色も青くなる。
「ど、どうして!? だって黒髪の人は魔力が強いはずじゃ――――っ!」
「魔力が強いのは本当。でも体の中の魔力量が少ない……というか、魔力の出口が普通の人より、かなり大きいらしいんだ。だから、僕は何もしていなくても常にそこから魔力が漏れてしまって、自分の中に魔力を溜めておく事が出来ないんだって……。僕みたいに魔力の出口が大き過ぎると、初級魔法を使おうとしても、どうしても上級レベルの魔法になってしまうみたいで……。でもそれを放てるだけの魔力が常に体の中に溜まらないから、魔法自体が使えない体質だって言われた……」
そこまで説明したリュカスは悔しそうに下を向き、そのまま落胆するようにしゃがみ込んでしまった。その話を聞いたロナリアも何故か同じように悔しい気持ちが湧き起こる。
「それじゃ、私と逆だね……」
「えっ?」
まるで自分の事のように悔しそうに涙目になったロナリアをリュカスが不思議そうに見つめ返す。
「私も二週間前に受けた魔力測定で魔法学園に行く必要が無いって判断されたの……。私の場合、体の中の魔力量は物凄くあるらしいんだけど、魔力の出口が他の人より小さ過ぎて……。思いっきり魔法を使っても出口が小さい所為で、どの属性でも最低レベルの初級魔法になっちゃうの……」
その事を聞いたリュカスは、驚くように大きく目を見開いた。
「そんな事って……あるの?」
「リュカのだって、信じられないよ……。魔力が常に漏れちゃうなんて、そんなの初めて聞いたもん」
魔力の放出口が大きすぎて常に体内の魔力が漏れ続ける体質のリュカスと、体内の魔力は膨大だが、放出口が小さすぎて小量しか放てないロナリア。
真逆な体質を持つ二人だが、『魔法をまともに使えない』という部分では、全く一緒だ。そんな二人は、お互いに同情し合うような視線を送り合った後、盛大にため息をつきながらガクリと項垂れた……。
「僕のこの変な魔力体質と、ロナリア嬢のその特殊な魔力体質を混ぜて、二つに分けたら丁度良くなるのになぁ……」
「ロナでいいよ。私もリュカって呼ばせて貰っているし……」
「それじゃ、ロナも魔法学園には入学出来ないんだね」
「うん……。貴族の子は殆ど通うから、なんか自分が恥ずかしくて……」
「でもロナは初級とは言え、一応魔法は使えるんだよね? 僕なんか水晶に手をかざしたら、しーんとなって何も起こらなかったんだよ? それに比べたら魔法を少しでも使えるだけ、マシだと思う……」
「でもこれっぽっちしか魔法、使えないんだよ?」
そう言ってロナリアが、誰もいない草原に向かって両手をかざすと、掌の先に小さな氷の粒が生まれ始める。
更にロナリアが氷の粒に必死で魔力を注ぐと、その粒は直系5センチ程の円錐型になり、少しずつ長さを伸ばし始めた。
最終的にその円錐型の氷は、5センチ程の長さで三本生成出来たが、そこでロナリアの集中力が限界に達する。そのタイミングでロナリアは、草原に向って氷の円錐を勢いよく放つも飛距離は精々10メートル程で、すぐに溶け消えてしまった。
その情けない威力と飛距離の氷魔法にロナリアは、ガクリと肩を落とす。
「ロナは氷属性が一番使いやすいの?」
「多分……。お母様も氷属性が一番得意だし……。リュカは?」
「僕は魔法が使えたら全属性とも相性はいいみたい。でも常に魔力不足で魔法自体が使えないから、全く意味がないのだけれど……」
「そっか……。リュカも凄く勿体ない体質だね……」
そう言ってロナリアもリュカスの隣にしゃがみ込み、ジッと地面を見つめる。人は落ち込むと下を向きやすいと、ロナリアは僅か6歳で悟った。すると、隣でしゃがみ込んでいたリュカスが何かに気付き、ポツリと呟く。
「あっ、四つ葉のクローバー」
その呟きに急にロナリアが、ぱぁーっと目を輝かせた。
「ええっ!! どこっ!?」
「ほら、ここ」
「本当だ! いいなぁー! 四つ葉!」
「そんなにいいものかな?」
「知らないの? 四つ葉はね、幸運を呼び込むラッキーアイテムなんだよ? リュカ、いいなぁー……」
「へぇ~、そうなんだ。なら、これはロナにあげるよ。僕、興味ないし」
「ダメだよ! 四つ葉はね、自分で見つけないと意味が無いの! それに私にくれたら、リュカの幸運が減っちゃうかもしれないでしょ!?」
「そんな事は無いと思うけれど……」
「私も自分で四つ葉、見つける!」
そう言ってロナリアは、三つ葉のクローバーが生い茂っている箇所を凝視し、必死で四つ葉探しを始めた。
だが、その様子を眺めていたリュカスは何とも言えない微妙な表情を浮かべる。
何故なら、ロナリアの右足付近と、しゃがみ込んでいるお尻付近に見事な四つ葉が三つも生えているのだ……。
だが、ロナリアは全く気付かない。
その近辺に目を向けたと思っても、何故か四つ葉を見落としている。
どうやらロナリアは、四つ葉探しが下手なようだ……。
「うー……。見つからないなぁー」
必死で探す努力も虚しく、ロナリアは全く四つ葉の存在に気付かない……。
「ああ! そこ! そこの足元! そこにあるのに!」と思わず声をあげそうになったリュカスだが、先程のロナリアの話では自分で見つけなければ意味がないようなので、下手に口出しが出来ない……。
そんなもどかしい思いをリュカスがしていると、やっとロナリアが自分のお尻付近に生えていた四つ葉に気付く。
「あっ! あった! 見て見て! リュカ、私も四つ葉、見つけたよ!」
そう言ってプチンと四つ葉を摘んだロナリアが、歓喜に満ちた表情でサッと立ち上がりながら、リュカスの方へと振り返る。
しかし……それとほぼ同時に大きな地響きと共にロナリアの真後ろで、かなり激しい突風が巻き起こった。
ちょうど、ロナリアを見上げる様な姿勢で座り込んでいたリュカスは、ロナリアの背後に突然現れたその存在を確認した瞬間、ヒュっと息を呑む。
同時に驚きから体を強張らせていたロナリアが、壊れた水車のようにギギギっと首を動かし、リュカスの視線の先でもある背後へとゆっくり視線を移す。
するとそこには――――。
中型のドラゴンらしき魔獣がグルグルと喉を鳴らしながら、まるで値踏みするかのように恐ろしい瞳で、二人を凝視していた……。
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