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4.一日遅れの贈り物
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翌日、疲労感が抜けないアスターは、もそもそしながらベッドから体を起こす。
覚悟はしていたが、やはり誕生パーティーでは、問題視していた三人が揉めに揉めてくれる事態となってしまった。いや、ビオラは被害者という立場だが……。
ただアスターは、昨夜の事で更に面倒な事が発覚した事に気付く。
それはダンスを申し込んだ際、ビオラが浮かべていた表情に関してだ。
アスター自身、兄弟の中では一番目立たないタイプなので、そこまで女性受けがいい訳ではないので、うぬぼれるつもりは全くない。
だが、あの時のビオラの反応からは、まるで自分に対して好意を抱いているかのような……そんな印象を受けてしまったのだ。
そう感じてしまったのは、自分とのダンス中のビオラが、幸せそうな笑みを浮かべて、淡く頬を赤らめていたからだ。それがやけに印象的だった。
この三年間、ビオラに嫌がらせをする婚約者のリアトリスと、過剰に自分の愛情を押し付けようとする次兄ホリホックの事で、罪悪感からビオラをフォローする行動をかなりしていたアスター。
もしかしたらそんな自分の中途半端な優しさから出た行動が、ビオラに気を持たせてしまったのではないかと、薄々後悔し始めていた……。
そんなアスターは幼い頃から周りが大人や年上ばかりだった為、長兄ディアンツ程ではないが、周りの人間の顔色を窺う事や、感情を読み取る事にある程度、長けている方だった。
その為、周りから自分がどういう風に見られているか、何となく分かるのだ。
そんなアスターは、自身に向けられた恋愛感情にも気付くのが早い方だった。
だがビオラに関しては、それにすぐ気付けなかった……。
それはアスターの中で、婚約者であるリアトリスと兄であるホリホックに迷惑行為をされている被害者という認識が強かったからだ。
そもそもリアトリスが、ビオラに過剰な嫉妬心を燃やしている状況を何とかしてやめさせようとする事に必死で、自分の行動がビオラにとって思わせぶりな態度になってしまっていた事にすぐ気付けなかったのだ。
アスターがリアトリスからビオラを庇っていた理由……それはビオラの事を思ってというよりも婚約者であるリアトリスの悪評が、これ以上広がる事を防ぎたいという思いからだった。
その為、ビオラの気持ちに気付いたからと言って、それに応える考えは今のところ一切ない……。アスターにとって、例えどんなに豹変してしまっても自分の婚約者は、物心付いた頃から一緒に過ごしてきたリアトリスだけなのだ。
だからと言って、それがリアトリスへの恋愛感情かと言えば、それもアスターの中では、あまりしっくりこない。
今のアスターが彼女に抱いている感情は、どちらかと言うと保護者的な立場の感覚が近い。昔はしっかり者のリアトリスの方が、自分に対してそういう感覚だったはずなのに……今はそれが逆転してしまっている。
それでも自分の隣にリアトリス以外の女性が立っている状況が、アスターには、どうしても思い浮かばない……。それだけアスターの中でリアトリスは、自分の傍にいるのが当たり前な存在になってしまっている。
例えどんなにビオラが魅力的な女性であり、アスターに対して好意を抱いていたとしても……アスターにとって自分の隣は、リアトリスでなければいけないという考えが、何故か深く根付いていた。
その為、昨夜の誕生パーティーで、ビオラから好意を抱かれている事に気付いてしまったアスターは、頭を抱えたくなった。
今まではビオラがアスターに好意を抱いているという事は、リアトリスの勝手な思い込みだと思っていたのだが……。
実際はそれが事実だった事にアスターは、やっと気づいた。
このままでは更に面倒なホリホックまでもが出張ってくる可能性がある。
この複雑な四角関係のような状況にアスターは、盛大に肩を落す。
幼少期から自分の婚約者であるリアトリス。
そのリアトリスは、アスターを慕うビオラに深い嫉妬心を抱いている。
そのリアトリスの嫉妬対象なビオラは、実際にアスターに好意を抱いている。
そして、そのビオラに執着気味の恋心を抱いているのが次兄ホリホックだ。
これは、もう確実に揉める状況だ……。
「ディアンツ兄上に相談してみるか……」
思わず口から出たその言葉だが、その相談は受けて貰えないであろう事をアスターは、薄々勘づいている。
長兄ディアンツは、神童と呼ばれているだけあって頭の回転が早く、効率重視の考えが強い。その為、相手にするだけ無駄な人間に対しては、あまり関わらない様にするスタイルを貫くタイプなのだ。
その背景からアスターがこの件で、長兄ディアンツに相談しても恐らく助けては貰えない。
「悪いがホリホックに関わるのは、ごめんだ。あいつは面倒過ぎる」
今までそう言われ続け、アスターは何度長兄から次兄ホリホックの宥め役を押し付けられたか分からない。
確かに次兄ホリホックは、感情優先で動くタイプなので扱いが面倒だ。
だからと言って、それを末の弟に丸投げする長兄もかなり酷い。
しかし今回ばかりは、自分だけでは対応出来る自信がないのも事実だ。
午後にでも長兄ディアンツに助言を貰おうと考えたアスターは、15時前までには、本日の公務を終わらせようと早々に取り掛かる。そして、そのまま昼食片手に黙々と14時くらいまで公務をこなしていると、遠慮がちなノック音と共に側近パルドーが部屋にやって来た。
「アスター様、実は先程、リアトリス様がお見えになられまして、昨夜の件を謝罪されたいと客間にて、お待ち頂いている状態なのですが……」
かなり言いづらそうに告げてきたパルドーに向かってアスターが苦笑する。
「パルドー、気を使わせて悪いね。でもこうなる事は何となく予測していたから。リアをここまで案内して貰えるかな?」
「よろしいのですか? 午後はディアンツ殿下に色々と、ご相談されると伺っておりましたが……」
パルドーはアスターよりも二つ年上で、アスターとリアトリスが10歳の頃から二人の護衛を担当していたので、アスターが今の状況に頭を痛めている事を知っている数少ない理解者だ。
そんなパルドーは、鋼の様な色合いの真っ直ぐな髪に切れ長の濃い紫の瞳を持ち、実年齢よりも大人びた雰囲気から、真面目で落ち着いた人間に見られやすい。
実際、性格は堅物と言っていい程、生真面目で忠誠心が高い。
そしてアスターにとっては、一番頼りになる側近だ。
そんなパルドーもアスターと同様に三年前からのリアトリスの豹変ぶりには、疑問を抱いている人間の一人だった。
「それは明日にするよ。それよりもリアが、本当に反省しているかの方が気になる。毎回そう言っては、すぐにビオラへの嫌がらせを再開するからね……」
諦め気味な表情を浮かべてアスターが答えると、パルドーが苦笑する。
「ではリアトリス様をこちらにご案内致しますね」
そう言ってパルドーが出て行くと、アスターは椅子から立ち上がり、窓の外を眺めた。外は気持ちが良いくらいの晴天だ。
しかし、アスターの心は憂鬱な気分で曇っている。
その清々しいくらいの窓の外から視線を外すと、執務机の上に置きっぱなしにしていたビオラからの贈り物の箱が目に入った。
何となく、その箱をゆっくりと開けてみる。
するとリアトリスが贈ろうとしてきたナイフとは、真逆な見た目の金のナイフが姿を現した。鍔がついているので小ぶりの短剣という印象を受けるその金のナイフは、実用性よりも装飾品としての役割が高そうなデザインで、ソードホルダーの付いているベルトに差して身に付ける感じだ。
逆にリアトリスが用意していた鍔のない銀のナイフは、下手をしたら上着の内ポケットに収納できてしまう程、小さくかさばらないデザインだったはず……。
アスターはその金のナイフを手に取り、鞘から抜き出して刃先を確認した。 厚みのある両刃で、切れ味重視というよりも攻撃を受け流したり、何かを突き刺したりする事に向いている感じの刃をしている。
そしてどうやらこのナイフは、実用性よりも装飾品としての需要が高そうだ。
そう感じて刃を鞘に収めると、再び扉がノックされた。
リアトリスが来たと思い、慌てて金のナイフを箱にしまって入室許可を出す。
「失礼致します。アスター様、お忙しい時間を面会に割いて頂き、誠にありがとうございます……」
そう言って深々と頭を下げるリアトリス。
パルドーには目で合図をし、そのまま退室して貰った。
「構わないよ。ところでリア、昨日の件で話があると聞いたのだけれど?」
すると気まずそうな表情で俯き気味なリアトリスが、重そうに口を開く。
「昨夜は醜態を晒しただけでなく、ビオラ様とアスター様に対して大変失礼な振る舞いをしてしまい、本当に申し訳ございませんでした……」
「少しは冷静になれたみたいだね」
「はい。自身の贈り物をアスター様に受け取り拒否され、わたくしの放った言葉で傷つかれたビオラ様のお気持ちが、よく分かりました……」
「どれだけ相手を傷付ける行為だったか、気付いてくれて良かったよ」
「大変お手数をお掛けして申し訳ございませんでした……。もうビオラ様の贈られたお品については、何も申しません。ですから……」
そこでリアトリスが一度、言葉を切る。
「わたくしからの贈り物をもう一度、受け取って頂けないでしょうか……?」
「昨夜見せてくれたあの銀のナイフを?」
「はい。もちろん、携帯して欲しいなどとは申しません。ですが、せめてアスター様のお側に置いて頂きたいのです」
少し俯き気味なリアトリスが、行儀よく前で重ね組んでいる両手にやや力を込めた事に気付く。どうやら余程、アスターに誕生日プレゼントを受け取って貰えなかった事が堪えたらしい。
「あの時のビオラの気持ち、少しは分かった?」
「はい……」
「ならば君からの誕生日プレゼントもありがたく受け取らせて貰うよ」
「あ、ありがとうございます!」
するとリアトリスの表情がパァッと明るくなり、一礼後に扉へと向かう。
普段は大人っぽい彼女だが、時折子供のような表情を浮かべる事がある。
だが最近、彼女がそういう表情をあまり見せていなかった事にアスターがふと気付く。この三年間のリアトリスは、何故か余裕のない状態が多いからだ。
リアトリスが扉を開けると、その先に人影が見えた。
恐らく贈り物を持たせていた侍女を外に待たせていたのだろう。
再びこちらに戻って来た彼女は、昨夜アスターが受け取らなかった銀のナイフの入った箱を手にしていた。
「アスター様、一日遅れですが、18歳のお誕生日おめでとうございます」
「ありがとう、リア」
お礼を言いアスターが、やっとリアトリスからのプレゼントを受け取る。
そして箱を開け、中身の銀のナイフを改めて確認した。
昨夜も感じたのだが、やはりこちらの方は完全に実用的な作りのナイフだ。
「刃は東の大陸の技巧で打たれた物なので、とても切れ味に優れています。ですが、厚みのない刃なので攻撃を受け流す事には、あまり向いておりません」
「確かに。もし攻撃を受ける場合は、ビオラが贈ってくれたあの金のナイフの方が向いているかな。それにしても……本当に見事な出来のナイフだね」
「かなりこだわって作らせた物なので……。刃物には邪悪な物を退ける効果もあると言われておりますので、お守りとしてお持ち頂けたらと思いまして」
そんな会話をしながらアスターが銀のナイフを手に取り、鞘から抜いてみた。
すると、かなり切れ味の良さそうな見事過ぎる輝きの片刃の刃が姿を現す。
それを感心しながら眺めていると、ふと目の前のリアトリスが、アスターの背後の物に釘付けになっている事に気付いた。
その視線の先は……ビオラから貰った金のナイフが入っている箱だった。
「ビオラから贈られた金のナイフ、やはり気になる?」
苦笑しながらアスターが問うと、リアトリスがビクリとしながら我に返る。
「も、申し訳ございません! その思わず目に入ってしまったもので……」
慌ててその箱から視線を逸らしたリアトリスにアスターが、更に苦笑する。
そしてその箱から、金のナイフを取り出し、リアトリスに差し出した。
すると何故かリアトリスが、ビクリと怯えるような反応をする。
その反応にアスターが違和感を覚えた。
「リア? 凄く気になっている様だから、ビオラから贈られたナイフを君によく見せてあげようと思ったのだけれど……もしかして嫌だったかい?」
「い、いえ。その……お気遣い、ありがとうございます……」
そう答えたリアトリスが、ゆっくりと金のナイフを手に取る。
やや警戒するような婚約者の様子にアスターが、ますます不可解な顔をする。
「やはりこちらは実用性重視と言うよりも装飾品……あるいは儀式などに使われそうなナイフの様ですね……」
「儀式?」
その発想はなかったので、思わずアスターが聞き返すと金のナイフをまじまじと観察していたリアトリスが、何故か慌てる様に一瞬、動きを止めた。
「ええと……こういった華美な装飾がされた短剣やナイフ等は、式典などの儀式用や記念品として用意された物が多いかと思ったので……」
「確かに。骨董のようなくすんだ感じはないけれど、何故か歴史を感じるデザインはしているから、もしかしたら大昔、名のある貴族が所有していた名品かもしれないね」
アスターがそう返すと、ある程度、満足行くまでナイフを観察したリアトリスが、そのナイフに両手を添えてアスターに返却して来た。
それを受け取ったアスターは、再度その金のナイフをまじまじと見る。
ガードと呼ばれる鍔の部分に装飾された直径1cm程の質の良いルビー。その周りには黄色の小さなトパーズと緑のアベンチュリンが取り囲むように施されている。
柄の部分に施された細工は、どこかアンティークな雰囲気を感じる。
寒色系の宝石が施されたシンプルなデザインのリアトリスから贈られた銀のナイフとは、まさに真逆な色合いとデザインだ。
それらを観察した後、アスターは金のナイフも箱にしまった。
「二人から贈られたナイフは、それぞれ大切に使わせて貰うよ」
「それぞれとは……どのように使い分けられるのですか?」
「リアの銀のナイフは切れ味が良さそうだから、護身用だけでなく一般的なナイフとして日常的に使うつもりだ。逆にビオラからの金のナイフは携帯すると目立つし、かさばるから寝室に置いて護身用のみとして使うつもりだよ」
「お休み時の護身用……ですか……」
そう呟き、リアトリスが少し考え込む。
「リア? 何か問題でも?」
「いいえ? 確かにビオラ様が贈られたナイフは、携帯するよりも寝室に置かれた方が実用性はありそうですね。ところで今週のアスター様のご公務のご予定をまだ伺っていなかったので、是非教えて頂きたいのですが」
「今週? 今週は……殆どが通常通りの執務室で公務だね。だけど週末にグラジオラス領の視察が入っているかな」
アスターが、執務机の上にあった自分の予定表の書類を見ながら答える。
婚約者であるリアトリスは、アスターに会いによく城を訪れる。
だがアスターも公務で外出する事があるので、その日は避けたいのだろう。
「グラジオラス領とは、二年程前までサラセニア伯爵が治めていた領地でしょうか? 確かその際、新たに発見されたサファイヤの鉱山を故意に申告せずに私腹を肥やし、爵位剥奪後の領地は王家の管理下になったとお聞きしておりますが……。何故、そのような領地視察にアスター様が?」
「一応、そこは僕が臣籍降下した際に公爵として貰い受ける予定になっている領地なんだ。それまではディアンツ兄上が管理して下さっている」
「なるほど。それで二年もの間、領主を立てていなかったのですね?」
他の令嬢なら興味も持たない内容の話でもリアトリスは、しっかりと理解している返答をくれる。そんな反応からもビオラと関わらなければ、リアトリスの王族の婚約者としての淑女ぶりは、かなりレベルが高い。
それを実感してしまった今のやり取りで、またアスターが違和感を抱く。
どうしてビオラを前にした時だけ、あのように暴走してしまうのだろうかと。
「では今週末、わたくしは登城を控える事にいたしますわ」
「あっ、でも僕が不在でも母上と義姉上はいらっしゃるよ。二人共、最近リアと会っていない事に淋しがっていたから、良かったら顔を出してあげて?」
「まぁ……。では近々、お二人のところへ伺いますわね」
そんな会話をしていたアスターが、ふと内ポケットの懐中時計に目をやる。
時計の針は14時半を指していた。そろそろ午後のお茶の時間である。
ちょうど良いタイミングだったので、リアトリスに声を掛けてみた。
「リア、そろそろお茶の時間なのだけれど……折角だから一緒にどう?」
「お気遣い、ありがとうございます。ですが、謝罪に参った立場で、それはかなり図々しいので、本日はこのままお暇させて頂きます」
「そう? なら帰りは気を付けて帰ってね」
「はい。それでは失礼致します」
そう言って丁寧な礼を披露し、リアトリスは部屋を出て行った。
アスターの方は、あと少しで終わりそうな公務の続きを再開させる。
だが15分もしない内にホリホックに内容を確認しなければ処理できない書類が出て来てしまった……。
仕方がないので、次兄の部屋に向かおうと席を立つ。
しかし部屋を出た瞬間、城内を歩くビオラの後ろ姿が目に入った。
「ビオラ! 二日続けて登城だなんて……何か呼び出しでも?」
「アスター様……。実は昨夜のリアトリス様の件を気にされているホリホック様から、お詫びにとお茶のご招待を頂きまして……」
両手を組んで俯きながら、か細い声でビオラが告げてきた内容にアスターが、頭痛を堪える様に左手で両こめかみを抑える。
次兄は何故、ビオラに苦手意識を抱かれている事に全く気付けないのか……。
そして何故、その強引な誘い方で上手く行くと思っているのだろうか。
思わず大きなため息が出てしまったアスターにビオラが、キョトンとする。
「毎回ごめんね、ビオラ……。僕も今、兄上に確認しなければならない件があるから、そのお茶には同席するよ……」
それを聞いたビオラが、あからさまに安心するような表情を浮かべた。
恐らく今、次兄のもとに行けば嫌な顔をされる事は確実だろう。
しかしアスターは、不安そうなビオラを放っておく事が出来なかった。
覚悟はしていたが、やはり誕生パーティーでは、問題視していた三人が揉めに揉めてくれる事態となってしまった。いや、ビオラは被害者という立場だが……。
ただアスターは、昨夜の事で更に面倒な事が発覚した事に気付く。
それはダンスを申し込んだ際、ビオラが浮かべていた表情に関してだ。
アスター自身、兄弟の中では一番目立たないタイプなので、そこまで女性受けがいい訳ではないので、うぬぼれるつもりは全くない。
だが、あの時のビオラの反応からは、まるで自分に対して好意を抱いているかのような……そんな印象を受けてしまったのだ。
そう感じてしまったのは、自分とのダンス中のビオラが、幸せそうな笑みを浮かべて、淡く頬を赤らめていたからだ。それがやけに印象的だった。
この三年間、ビオラに嫌がらせをする婚約者のリアトリスと、過剰に自分の愛情を押し付けようとする次兄ホリホックの事で、罪悪感からビオラをフォローする行動をかなりしていたアスター。
もしかしたらそんな自分の中途半端な優しさから出た行動が、ビオラに気を持たせてしまったのではないかと、薄々後悔し始めていた……。
そんなアスターは幼い頃から周りが大人や年上ばかりだった為、長兄ディアンツ程ではないが、周りの人間の顔色を窺う事や、感情を読み取る事にある程度、長けている方だった。
その為、周りから自分がどういう風に見られているか、何となく分かるのだ。
そんなアスターは、自身に向けられた恋愛感情にも気付くのが早い方だった。
だがビオラに関しては、それにすぐ気付けなかった……。
それはアスターの中で、婚約者であるリアトリスと兄であるホリホックに迷惑行為をされている被害者という認識が強かったからだ。
そもそもリアトリスが、ビオラに過剰な嫉妬心を燃やしている状況を何とかしてやめさせようとする事に必死で、自分の行動がビオラにとって思わせぶりな態度になってしまっていた事にすぐ気付けなかったのだ。
アスターがリアトリスからビオラを庇っていた理由……それはビオラの事を思ってというよりも婚約者であるリアトリスの悪評が、これ以上広がる事を防ぎたいという思いからだった。
その為、ビオラの気持ちに気付いたからと言って、それに応える考えは今のところ一切ない……。アスターにとって、例えどんなに豹変してしまっても自分の婚約者は、物心付いた頃から一緒に過ごしてきたリアトリスだけなのだ。
だからと言って、それがリアトリスへの恋愛感情かと言えば、それもアスターの中では、あまりしっくりこない。
今のアスターが彼女に抱いている感情は、どちらかと言うと保護者的な立場の感覚が近い。昔はしっかり者のリアトリスの方が、自分に対してそういう感覚だったはずなのに……今はそれが逆転してしまっている。
それでも自分の隣にリアトリス以外の女性が立っている状況が、アスターには、どうしても思い浮かばない……。それだけアスターの中でリアトリスは、自分の傍にいるのが当たり前な存在になってしまっている。
例えどんなにビオラが魅力的な女性であり、アスターに対して好意を抱いていたとしても……アスターにとって自分の隣は、リアトリスでなければいけないという考えが、何故か深く根付いていた。
その為、昨夜の誕生パーティーで、ビオラから好意を抱かれている事に気付いてしまったアスターは、頭を抱えたくなった。
今まではビオラがアスターに好意を抱いているという事は、リアトリスの勝手な思い込みだと思っていたのだが……。
実際はそれが事実だった事にアスターは、やっと気づいた。
このままでは更に面倒なホリホックまでもが出張ってくる可能性がある。
この複雑な四角関係のような状況にアスターは、盛大に肩を落す。
幼少期から自分の婚約者であるリアトリス。
そのリアトリスは、アスターを慕うビオラに深い嫉妬心を抱いている。
そのリアトリスの嫉妬対象なビオラは、実際にアスターに好意を抱いている。
そして、そのビオラに執着気味の恋心を抱いているのが次兄ホリホックだ。
これは、もう確実に揉める状況だ……。
「ディアンツ兄上に相談してみるか……」
思わず口から出たその言葉だが、その相談は受けて貰えないであろう事をアスターは、薄々勘づいている。
長兄ディアンツは、神童と呼ばれているだけあって頭の回転が早く、効率重視の考えが強い。その為、相手にするだけ無駄な人間に対しては、あまり関わらない様にするスタイルを貫くタイプなのだ。
その背景からアスターがこの件で、長兄ディアンツに相談しても恐らく助けては貰えない。
「悪いがホリホックに関わるのは、ごめんだ。あいつは面倒過ぎる」
今までそう言われ続け、アスターは何度長兄から次兄ホリホックの宥め役を押し付けられたか分からない。
確かに次兄ホリホックは、感情優先で動くタイプなので扱いが面倒だ。
だからと言って、それを末の弟に丸投げする長兄もかなり酷い。
しかし今回ばかりは、自分だけでは対応出来る自信がないのも事実だ。
午後にでも長兄ディアンツに助言を貰おうと考えたアスターは、15時前までには、本日の公務を終わらせようと早々に取り掛かる。そして、そのまま昼食片手に黙々と14時くらいまで公務をこなしていると、遠慮がちなノック音と共に側近パルドーが部屋にやって来た。
「アスター様、実は先程、リアトリス様がお見えになられまして、昨夜の件を謝罪されたいと客間にて、お待ち頂いている状態なのですが……」
かなり言いづらそうに告げてきたパルドーに向かってアスターが苦笑する。
「パルドー、気を使わせて悪いね。でもこうなる事は何となく予測していたから。リアをここまで案内して貰えるかな?」
「よろしいのですか? 午後はディアンツ殿下に色々と、ご相談されると伺っておりましたが……」
パルドーはアスターよりも二つ年上で、アスターとリアトリスが10歳の頃から二人の護衛を担当していたので、アスターが今の状況に頭を痛めている事を知っている数少ない理解者だ。
そんなパルドーは、鋼の様な色合いの真っ直ぐな髪に切れ長の濃い紫の瞳を持ち、実年齢よりも大人びた雰囲気から、真面目で落ち着いた人間に見られやすい。
実際、性格は堅物と言っていい程、生真面目で忠誠心が高い。
そしてアスターにとっては、一番頼りになる側近だ。
そんなパルドーもアスターと同様に三年前からのリアトリスの豹変ぶりには、疑問を抱いている人間の一人だった。
「それは明日にするよ。それよりもリアが、本当に反省しているかの方が気になる。毎回そう言っては、すぐにビオラへの嫌がらせを再開するからね……」
諦め気味な表情を浮かべてアスターが答えると、パルドーが苦笑する。
「ではリアトリス様をこちらにご案内致しますね」
そう言ってパルドーが出て行くと、アスターは椅子から立ち上がり、窓の外を眺めた。外は気持ちが良いくらいの晴天だ。
しかし、アスターの心は憂鬱な気分で曇っている。
その清々しいくらいの窓の外から視線を外すと、執務机の上に置きっぱなしにしていたビオラからの贈り物の箱が目に入った。
何となく、その箱をゆっくりと開けてみる。
するとリアトリスが贈ろうとしてきたナイフとは、真逆な見た目の金のナイフが姿を現した。鍔がついているので小ぶりの短剣という印象を受けるその金のナイフは、実用性よりも装飾品としての役割が高そうなデザインで、ソードホルダーの付いているベルトに差して身に付ける感じだ。
逆にリアトリスが用意していた鍔のない銀のナイフは、下手をしたら上着の内ポケットに収納できてしまう程、小さくかさばらないデザインだったはず……。
アスターはその金のナイフを手に取り、鞘から抜き出して刃先を確認した。 厚みのある両刃で、切れ味重視というよりも攻撃を受け流したり、何かを突き刺したりする事に向いている感じの刃をしている。
そしてどうやらこのナイフは、実用性よりも装飾品としての需要が高そうだ。
そう感じて刃を鞘に収めると、再び扉がノックされた。
リアトリスが来たと思い、慌てて金のナイフを箱にしまって入室許可を出す。
「失礼致します。アスター様、お忙しい時間を面会に割いて頂き、誠にありがとうございます……」
そう言って深々と頭を下げるリアトリス。
パルドーには目で合図をし、そのまま退室して貰った。
「構わないよ。ところでリア、昨日の件で話があると聞いたのだけれど?」
すると気まずそうな表情で俯き気味なリアトリスが、重そうに口を開く。
「昨夜は醜態を晒しただけでなく、ビオラ様とアスター様に対して大変失礼な振る舞いをしてしまい、本当に申し訳ございませんでした……」
「少しは冷静になれたみたいだね」
「はい。自身の贈り物をアスター様に受け取り拒否され、わたくしの放った言葉で傷つかれたビオラ様のお気持ちが、よく分かりました……」
「どれだけ相手を傷付ける行為だったか、気付いてくれて良かったよ」
「大変お手数をお掛けして申し訳ございませんでした……。もうビオラ様の贈られたお品については、何も申しません。ですから……」
そこでリアトリスが一度、言葉を切る。
「わたくしからの贈り物をもう一度、受け取って頂けないでしょうか……?」
「昨夜見せてくれたあの銀のナイフを?」
「はい。もちろん、携帯して欲しいなどとは申しません。ですが、せめてアスター様のお側に置いて頂きたいのです」
少し俯き気味なリアトリスが、行儀よく前で重ね組んでいる両手にやや力を込めた事に気付く。どうやら余程、アスターに誕生日プレゼントを受け取って貰えなかった事が堪えたらしい。
「あの時のビオラの気持ち、少しは分かった?」
「はい……」
「ならば君からの誕生日プレゼントもありがたく受け取らせて貰うよ」
「あ、ありがとうございます!」
するとリアトリスの表情がパァッと明るくなり、一礼後に扉へと向かう。
普段は大人っぽい彼女だが、時折子供のような表情を浮かべる事がある。
だが最近、彼女がそういう表情をあまり見せていなかった事にアスターがふと気付く。この三年間のリアトリスは、何故か余裕のない状態が多いからだ。
リアトリスが扉を開けると、その先に人影が見えた。
恐らく贈り物を持たせていた侍女を外に待たせていたのだろう。
再びこちらに戻って来た彼女は、昨夜アスターが受け取らなかった銀のナイフの入った箱を手にしていた。
「アスター様、一日遅れですが、18歳のお誕生日おめでとうございます」
「ありがとう、リア」
お礼を言いアスターが、やっとリアトリスからのプレゼントを受け取る。
そして箱を開け、中身の銀のナイフを改めて確認した。
昨夜も感じたのだが、やはりこちらの方は完全に実用的な作りのナイフだ。
「刃は東の大陸の技巧で打たれた物なので、とても切れ味に優れています。ですが、厚みのない刃なので攻撃を受け流す事には、あまり向いておりません」
「確かに。もし攻撃を受ける場合は、ビオラが贈ってくれたあの金のナイフの方が向いているかな。それにしても……本当に見事な出来のナイフだね」
「かなりこだわって作らせた物なので……。刃物には邪悪な物を退ける効果もあると言われておりますので、お守りとしてお持ち頂けたらと思いまして」
そんな会話をしながらアスターが銀のナイフを手に取り、鞘から抜いてみた。
すると、かなり切れ味の良さそうな見事過ぎる輝きの片刃の刃が姿を現す。
それを感心しながら眺めていると、ふと目の前のリアトリスが、アスターの背後の物に釘付けになっている事に気付いた。
その視線の先は……ビオラから貰った金のナイフが入っている箱だった。
「ビオラから贈られた金のナイフ、やはり気になる?」
苦笑しながらアスターが問うと、リアトリスがビクリとしながら我に返る。
「も、申し訳ございません! その思わず目に入ってしまったもので……」
慌ててその箱から視線を逸らしたリアトリスにアスターが、更に苦笑する。
そしてその箱から、金のナイフを取り出し、リアトリスに差し出した。
すると何故かリアトリスが、ビクリと怯えるような反応をする。
その反応にアスターが違和感を覚えた。
「リア? 凄く気になっている様だから、ビオラから贈られたナイフを君によく見せてあげようと思ったのだけれど……もしかして嫌だったかい?」
「い、いえ。その……お気遣い、ありがとうございます……」
そう答えたリアトリスが、ゆっくりと金のナイフを手に取る。
やや警戒するような婚約者の様子にアスターが、ますます不可解な顔をする。
「やはりこちらは実用性重視と言うよりも装飾品……あるいは儀式などに使われそうなナイフの様ですね……」
「儀式?」
その発想はなかったので、思わずアスターが聞き返すと金のナイフをまじまじと観察していたリアトリスが、何故か慌てる様に一瞬、動きを止めた。
「ええと……こういった華美な装飾がされた短剣やナイフ等は、式典などの儀式用や記念品として用意された物が多いかと思ったので……」
「確かに。骨董のようなくすんだ感じはないけれど、何故か歴史を感じるデザインはしているから、もしかしたら大昔、名のある貴族が所有していた名品かもしれないね」
アスターがそう返すと、ある程度、満足行くまでナイフを観察したリアトリスが、そのナイフに両手を添えてアスターに返却して来た。
それを受け取ったアスターは、再度その金のナイフをまじまじと見る。
ガードと呼ばれる鍔の部分に装飾された直径1cm程の質の良いルビー。その周りには黄色の小さなトパーズと緑のアベンチュリンが取り囲むように施されている。
柄の部分に施された細工は、どこかアンティークな雰囲気を感じる。
寒色系の宝石が施されたシンプルなデザインのリアトリスから贈られた銀のナイフとは、まさに真逆な色合いとデザインだ。
それらを観察した後、アスターは金のナイフも箱にしまった。
「二人から贈られたナイフは、それぞれ大切に使わせて貰うよ」
「それぞれとは……どのように使い分けられるのですか?」
「リアの銀のナイフは切れ味が良さそうだから、護身用だけでなく一般的なナイフとして日常的に使うつもりだ。逆にビオラからの金のナイフは携帯すると目立つし、かさばるから寝室に置いて護身用のみとして使うつもりだよ」
「お休み時の護身用……ですか……」
そう呟き、リアトリスが少し考え込む。
「リア? 何か問題でも?」
「いいえ? 確かにビオラ様が贈られたナイフは、携帯するよりも寝室に置かれた方が実用性はありそうですね。ところで今週のアスター様のご公務のご予定をまだ伺っていなかったので、是非教えて頂きたいのですが」
「今週? 今週は……殆どが通常通りの執務室で公務だね。だけど週末にグラジオラス領の視察が入っているかな」
アスターが、執務机の上にあった自分の予定表の書類を見ながら答える。
婚約者であるリアトリスは、アスターに会いによく城を訪れる。
だがアスターも公務で外出する事があるので、その日は避けたいのだろう。
「グラジオラス領とは、二年程前までサラセニア伯爵が治めていた領地でしょうか? 確かその際、新たに発見されたサファイヤの鉱山を故意に申告せずに私腹を肥やし、爵位剥奪後の領地は王家の管理下になったとお聞きしておりますが……。何故、そのような領地視察にアスター様が?」
「一応、そこは僕が臣籍降下した際に公爵として貰い受ける予定になっている領地なんだ。それまではディアンツ兄上が管理して下さっている」
「なるほど。それで二年もの間、領主を立てていなかったのですね?」
他の令嬢なら興味も持たない内容の話でもリアトリスは、しっかりと理解している返答をくれる。そんな反応からもビオラと関わらなければ、リアトリスの王族の婚約者としての淑女ぶりは、かなりレベルが高い。
それを実感してしまった今のやり取りで、またアスターが違和感を抱く。
どうしてビオラを前にした時だけ、あのように暴走してしまうのだろうかと。
「では今週末、わたくしは登城を控える事にいたしますわ」
「あっ、でも僕が不在でも母上と義姉上はいらっしゃるよ。二人共、最近リアと会っていない事に淋しがっていたから、良かったら顔を出してあげて?」
「まぁ……。では近々、お二人のところへ伺いますわね」
そんな会話をしていたアスターが、ふと内ポケットの懐中時計に目をやる。
時計の針は14時半を指していた。そろそろ午後のお茶の時間である。
ちょうど良いタイミングだったので、リアトリスに声を掛けてみた。
「リア、そろそろお茶の時間なのだけれど……折角だから一緒にどう?」
「お気遣い、ありがとうございます。ですが、謝罪に参った立場で、それはかなり図々しいので、本日はこのままお暇させて頂きます」
「そう? なら帰りは気を付けて帰ってね」
「はい。それでは失礼致します」
そう言って丁寧な礼を披露し、リアトリスは部屋を出て行った。
アスターの方は、あと少しで終わりそうな公務の続きを再開させる。
だが15分もしない内にホリホックに内容を確認しなければ処理できない書類が出て来てしまった……。
仕方がないので、次兄の部屋に向かおうと席を立つ。
しかし部屋を出た瞬間、城内を歩くビオラの後ろ姿が目に入った。
「ビオラ! 二日続けて登城だなんて……何か呼び出しでも?」
「アスター様……。実は昨夜のリアトリス様の件を気にされているホリホック様から、お詫びにとお茶のご招待を頂きまして……」
両手を組んで俯きながら、か細い声でビオラが告げてきた内容にアスターが、頭痛を堪える様に左手で両こめかみを抑える。
次兄は何故、ビオラに苦手意識を抱かれている事に全く気付けないのか……。
そして何故、その強引な誘い方で上手く行くと思っているのだろうか。
思わず大きなため息が出てしまったアスターにビオラが、キョトンとする。
「毎回ごめんね、ビオラ……。僕も今、兄上に確認しなければならない件があるから、そのお茶には同席するよ……」
それを聞いたビオラが、あからさまに安心するような表情を浮かべた。
恐らく今、次兄のもとに行けば嫌な顔をされる事は確実だろう。
しかしアスターは、不安そうなビオラを放っておく事が出来なかった。
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