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新しく描き直す? あと二週間で? そんなの、ムリに決まってる。
私は、ふらふらと凛ちゃんのもとへ近づいた。
「凛ちゃん。今の聞いてた? どうすればいいと思う?」
「さあ。わからないわ」
そっけない返事。
「菜月さんはいいじゃない。手直しをすれば、出品できるんだから」
「え?」
よく見ると、凛ちゃんのキャンバスは真っ白だ。
「凛ちゃん? このあいだまで描いてた絵はどうしたの?」
「薄っぺらいんですって。さっき、日向先生からコンクールには出せないって言われたわ」
「そんな」
「次期部長は、あなたになるかもね」
凛ちゃんの表情は、すごくかたい。
「でも、私は手直しなんかしたくなくて……」
「それは、神山くんと付き合ってるから?」
「おい、凛。いきなり何を言うんだ」
見かねたように、辻先輩が凛ちゃんと私の間にはいってくれた。
「どうなの、菜月さん?」
「神山くんは、私なんて興味ないよ。私とじゃ、住む世界が違いすぎるっていうか」
「あたしは好きよ。小学生の頃から、ずっとあいつが好きだった」
凛ちゃんは、はっきりと私に向かって言った。
その声は力強くて、レッスンスタジオで演技をしていた神山くんみたいだ。
でも、目の前にいる凛ちゃんは演技なんてしていない。正真正銘、凛ちゃんの本音。
「菜月さんも、神山くんのことが好きなんじゃないの?」
辻先輩も、戸惑ったように私たちの顔を交互に見やる。
「ちがうよ」
「じゃあ、その絵はなに?」
「コンクールのテーマは『友だち』なんだよ? もしも神山くんのことが好きなら、『友だち』なんてテーマで描かないよ」
「でも」
「神山くんは、大事な友だち。それだけだよ」
「本当に?」
こくりとうなずく。だけど、のどに砂が詰まったみたい。
でも、それを無理やり飲み込むように、私はわざと明るい声を出した。
「私は、凛ちゃんと神山くんならお似合いだと思ってる」
「えっ?」
「凛ちゃんはすごくかわいいし、勉強もできるし。クラスでも一番の人気者でしょ? 私の友だちになってくれたのが不思議なくらいパーフェクトなんだもん。神山くんみたいなすごい人には、凛ちゃんがぴったりだよ」
「菜月さん」
「次の部長も、凛ちゃんに決まってるしね! 今回はたまたまだよ。私なんか、足元にも及ばないし! だから、友だちとして凛ちゃんのこと応援する! がんばって!」
なんでだろう? 言葉が勝手にぼろぼろとこぼれていく。
本当のことを言っているはずなのに、苦しくてたまらない。
凛ちゃんは、私の大切な友だちだから、絵も恋愛も、全部うまくいってほしい。
その気持ちはうそじゃないのに。
どうして、こんなにひきさかれそうな気持ちになるの?
「それが、菜月さんの本心なの?」
「もちろん」
「そう。よくわかったわ」
凛ちゃんの目は、ぞくっとするほど冷ややかだった。
私は、ふらふらと凛ちゃんのもとへ近づいた。
「凛ちゃん。今の聞いてた? どうすればいいと思う?」
「さあ。わからないわ」
そっけない返事。
「菜月さんはいいじゃない。手直しをすれば、出品できるんだから」
「え?」
よく見ると、凛ちゃんのキャンバスは真っ白だ。
「凛ちゃん? このあいだまで描いてた絵はどうしたの?」
「薄っぺらいんですって。さっき、日向先生からコンクールには出せないって言われたわ」
「そんな」
「次期部長は、あなたになるかもね」
凛ちゃんの表情は、すごくかたい。
「でも、私は手直しなんかしたくなくて……」
「それは、神山くんと付き合ってるから?」
「おい、凛。いきなり何を言うんだ」
見かねたように、辻先輩が凛ちゃんと私の間にはいってくれた。
「どうなの、菜月さん?」
「神山くんは、私なんて興味ないよ。私とじゃ、住む世界が違いすぎるっていうか」
「あたしは好きよ。小学生の頃から、ずっとあいつが好きだった」
凛ちゃんは、はっきりと私に向かって言った。
その声は力強くて、レッスンスタジオで演技をしていた神山くんみたいだ。
でも、目の前にいる凛ちゃんは演技なんてしていない。正真正銘、凛ちゃんの本音。
「菜月さんも、神山くんのことが好きなんじゃないの?」
辻先輩も、戸惑ったように私たちの顔を交互に見やる。
「ちがうよ」
「じゃあ、その絵はなに?」
「コンクールのテーマは『友だち』なんだよ? もしも神山くんのことが好きなら、『友だち』なんてテーマで描かないよ」
「でも」
「神山くんは、大事な友だち。それだけだよ」
「本当に?」
こくりとうなずく。だけど、のどに砂が詰まったみたい。
でも、それを無理やり飲み込むように、私はわざと明るい声を出した。
「私は、凛ちゃんと神山くんならお似合いだと思ってる」
「えっ?」
「凛ちゃんはすごくかわいいし、勉強もできるし。クラスでも一番の人気者でしょ? 私の友だちになってくれたのが不思議なくらいパーフェクトなんだもん。神山くんみたいなすごい人には、凛ちゃんがぴったりだよ」
「菜月さん」
「次の部長も、凛ちゃんに決まってるしね! 今回はたまたまだよ。私なんか、足元にも及ばないし! だから、友だちとして凛ちゃんのこと応援する! がんばって!」
なんでだろう? 言葉が勝手にぼろぼろとこぼれていく。
本当のことを言っているはずなのに、苦しくてたまらない。
凛ちゃんは、私の大切な友だちだから、絵も恋愛も、全部うまくいってほしい。
その気持ちはうそじゃないのに。
どうして、こんなにひきさかれそうな気持ちになるの?
「それが、菜月さんの本心なの?」
「もちろん」
「そう。よくわかったわ」
凛ちゃんの目は、ぞくっとするほど冷ややかだった。
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