旦那様がいるあなたのことが僕はどうしても諦めきれない

サドラ

文字の大きさ
上 下
1 / 1

旦那様がいるあなたのことが僕はどうしても諦めきれない

しおりを挟む
働き始めて、2年。僕の会社は起業のレベルで言う大企業だ。社員数も700人を超えていて、オフィスも立派である。しかし、社長のワンマン経営で僕達には不満が募るばかりであった。そんな会社だが、社長から直々に呼び出しをくらった。何事かと思えば、営業成績が下がっているではないかというのだ。
まあ実際そうだ。僕の部下はみんな優秀だから業績は上がっているのだが、社長の目が行き届いていないところがあるのだろう。
「お前は何をしているんだ?俺の期待に応えないのか?」
社長はそう言った。僕は少しイラついたが冷静さを保った。
自分のデスクに帰ってきた僕はため息をついた。
「どうしたんですか?」
声をかけてきたのは部下の一人だった。
「いやー……ちょっとね……」
「なんかあったら相談してくださいよ」
彼女は優しい言葉をかけてくれた。僕は彼女に対して特別な感情を抱いていた。
「うん……ありがとう……」
「ところで、これ見て下さい!」
彼女は嬉しそうな顔をしながら1枚の紙を差し出してきた。
「なんだい?これは……」
彼女が考えた新しい企画のようだ。たまにこういう新しい企画を考えてくれる。とても助かる。
「実はですね!これを来週までにプレゼンしていただきたいのです!!」
「えっ!?」
思わず大きな声を出してしまった。
「私、頑張って考えたんですよ!!この企画!!」
彼女の目は輝いていた。しかし、その反面不安もあった。この企画はまだ完成していない。未完成の企画をクライアントに提出するわけにもいかないだろう。それに、こんな中途半端な状態ではプレゼンしても無駄だ。
「ごめん……まだ出来上がっていないよね……」
「あっ……すいません……つい興奮してしまいました……」彼女はしゅんとした表情になった。僕は彼女になんて声を掛ければいいかわからなかった。すると、そこに部長が入ってきた。
「おい!何をしているんだ!?早く仕事に取り掛かれ!!」
部長は怒鳴りつけてきた。僕達は急いで仕事に戻った。
それから数日後、彼女はまた眩しい笑顔で語りかけてくる。嬉しい。だけど、この笑顔を壊したくない。僕には出来ない。そう思っていた。
「ねえ、この企画って今どのくらい進んでる?」
僕は聞いた。本当は聞きたくなかったが、聞かないと先に進めないと思ったからだ。
「今は、半分くらいですかね~」彼女はさらっと答えてきた。すごいと思うと同時に、やっぱり無理だよとも思った。
「でも、私は頑張りますよ!」
「どうしてそこまでできるの?」
「だって、私は先輩のこと尊敬していますもん!!」
「へぇ~それはありがたいね」「はい!!先輩は本当に素晴らしい方ですよ!!」
彼女はそう言ってくれた。僕が彼女を好きになってしまったのはこういうところなんだ。
「そろそろ帰るかなぁ……」時計を見ると22時を過ぎていた。今日も残業してしまった。最近いつもこうだ。早く帰りたい。疲れた。そう思いながら歩いていると目の前に彼女が立っていた。
「あ!おつかれさまです!!」
彼女は元気よく挨拶をしてくれた。僕は、その姿を見て安心した。
「あれ?もう帰ったんじゃなかったのかい?」
「はい!あの……一緒に帰ろうと思いまして……」
「あー……じゃあ帰ろうか」僕は彼女と一緒に歩き出した。彼女と話すのはとても楽しい。癒される。だけど、今の僕の心は曇っていた。
「そういえばさ、このあいだ話していた企画についてなんだけど……」
「ああ!あれですか!もう少し待っていてくださいね!」
「いや、別に急がないけど……」
「いえいえ!私がやりたいことなので!!気にしないでください!!」
「そうか……ならいいんだけど……」
彼女はすごく楽しそうな顔をしている。そんな彼女の横顔を見てると、こちらまで楽しくなってきてしまう。
「そうだ……君に伝えなくちゃいけないことがあるんだ」僕は立ち止まって言った。そして、ポケットから一枚の紙を取り出した。
「これはなんでしょうか?」彼女は首を傾げている。
「企画書だよ」
「企画書??」
「うん。これが出来たら社長に提出しようと思っているんだ」「え……?それってもしかして……」
「うん。君の考えている通りだよ」
「やったー!!!」彼女は飛び跳ねて喜んだ。
「喜んでくれてよかった」
「はい!!ありがとうございます!!」彼女は満面の笑みを浮かべていた。「ところで……企画の内容はどんな感じになっているんですか?」彼女は目を輝かせながら聞いてきた。
「そうだねぇ……まずは……」僕は説明を始めた。彼女は真剣に聞いていた。その姿はまるで先生に質問する生徒のように見えてしまった。
一年後ー
僕たちは出世した。課長補佐になっていた。もちろん彼女も同じだ。業績は右肩上がりだった。社長も満足そうな表情をしていた。
「いやー……君のおかげでここまで来れたよ」
僕は感謝の言葉を述べた。
「いえいえ、私達だけの力で成し遂げられたわけではありません。あなたがいたからこそ、ここまでこれたんです」
彼女は謙遜した様子を見せたが、僕は彼女の言葉に救われたような気がした。
「いやいや、君は本当に優秀だよ」
「ふふっ、ありがとうございます」
僕達は笑い合った。そろそろ僕は彼女に告げてしまおうか。この気持ちを……。
「あのさ……」
「あの……」
同時に声が出てしまった。
「どうぞ……」
「どうぞ……」
「「どうぞ……」」
「ハハッ……」
「フッ……」
僕と彼女はまた吹き出してしまった。「はははははっ」
「アハハハハっ」
「あははっ……」
「ふぅ~……」
「……」
「あー!私、先に言わせてください!」
「あ、はい!ど、どうぞ!」
「結婚しました!」
「…え?」「結婚しました!」
彼女は左手の薬指を見せてきた。
そこには指輪が光っていた。
「おめでとう……」
僕は彼女に拍手を送った。
彼女は照れくさそうにしている。
「それで……相手の方は誰なのかな?」
「大学の先輩で…ずっとお付き合いしていたんですけど。」「へぇー……知らなかったなぁ……」
「言ってませんでしたからね……」
「そっかぁ……まあ、幸せになってね」
「はい!先輩も頑張って下さいね!!」
「うん……頑張るよ」
僕は少し泣きそうになった。
さらに四年後ー
僕は今、彼女とベッドにいる。不倫だ。僕達は今、愛し合っている。
「はぁ……はぁ……」
彼女の息遣いが荒くなっている。僕達はお互いに求め合っていた。
「ねえ……」
「ん?なに?」
「好き……」
「僕も好きだよ……」僕は彼女を強く抱きしめた。彼女もそれに応えるように強く抱き締め返してきた。僕達はそのままキスをした。お互いの舌が絡み合い、唾液が混ざり合う。僕達は唇を離すと銀糸を引いた。そしてまた口づけを交わす。
互いの太ももが交差する。彼女は僕の首筋に噛み付いてくる。僕の全身に電流が流れる。僕は彼女を優しく押し倒した。そして腰を動かす。
「あっ!あぁん!」
僕たちは…堕ちた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

シチュボ(女性向け)

身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。 アドリブ、改変、なんでもOKです。 他人を害することだけはお止め下さい。 使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。 Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ

男性向け(女声)シチュエーションボイス台本

しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。 関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください ご自由にお使いください。 イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

仮の彼女

詩織
恋愛
恋人に振られ仕事一本で必死に頑張ったら33歳だった。 周りも結婚してて、完全に乗り遅れてしまった。

処理中です...