71 / 84
夜会
10
しおりを挟む
「緊張されてまか?」
やってきてしまった、夜会当日。ああ。
「もちろん」
してますよ。こんな緊張感何年ぶりよ?胃が痛い。
こんな豪華な馬車の中で、落ち着くのは無理だ。本当の馬車ってすごいね。すごいわー。
ガーゼイの服装も本気だ。今日はキランキランの貴族だ。星屑の王子様だね。これが本当に普通にかっこいいのよ。
前日のメナードさんのマッサージから仕事は始まっていたわ。気持ちよかった~めっちゃよかった。高級スパのようだった。
フェイスもやってくれたから、ほほえみの練習で口角プルプルしてたのもゆるんだよ。あれ地味にきつい。痙攣する。ひきつるんだよ。
「大丈夫ですよ。とてもおきれいです」
ええ、このドレスとアクセサリーと魔法のような化粧があれば、誰でも美人になれるさ。
鏡を見て驚いたもの。いやいや我ながら化けるものだ、と。価格は聞かないぞ。絶対庶民なら一年は過ごせそうだからね。この光沢となめらかさ。デザインも大人めでシック。メナードさん趣味いいわ~。ドレスの装飾は少なめだけど(たぶん)、その分生地が高そう…。
この世界にクリーニングあるのか?もし汚してしまったら…怖い怖い。そうだ。
『プロテクト』
「な、にを?」
魔法を使ったのを感じたらしい。
「ドレスとアクセサリーが汚れないように、壊れないように。魔法を使いました」
ふー。これで一安心。少し気が楽になった。賠償金額聞いたら倒れそうだよ。
「また、着用していただけると、こちらも嬉しいですんえ。私も意見を出しましたので」
ん?メナードさんが選んだんじゃないの?
「二人で楽しそうでしたね」
とセバンスさん。
「もし魔力が戻ったら、そのアクセサリーは純度の高いものを選びましたので、お役に立つかと」
んん?
ガーゼイは、私が宝石に魔力を込めてたのを知っている。
もしかして。
「これいただいても?」
「勿論です」
まじ?!セバンスさんを見るとにっこり微笑まれた。
いや、本当報酬にお金はいらないでしょうよ。
…貢ぐタイプですか?誰か止めてあげてー。ありがたくこれはいただいておくけども。
夜会なのでネックレスと少し大きめのピアス。このカットが素晴らしいのよ。どこからでもきれいに見える角度。
宝石はいくらあってもいい。魔力の補佐にもなるし、いざとなったら路銀にもなる。
とりあず、さくっと魔力入れておこう。
いやー、昨日知ってたらもっと色々かけてたんだけどなぁ。
ピアスは小粒の石を集めたデザインなので、ばらせそう。ふた周りくらい小さくしたら、普段使いにもつけれるかな。そしてこれ、全部同じ色じゃないのよ。微妙に一つ一つ違う。色の組み合わせもよく考えないと。
ネックレスは、もったいないしデザインがまとまっているからこのままにしておこう。
「ニ…さん?」
ピアスをつなげて使うのもありだなあ。長いデザインは好きだ。
「ニイナさん?」
え?なんか呼ばれた気がした。
「そろそろ着きますので、準備をお願いします」
「す、すいません」
気のせいじゃなかったわ。一人没頭してたー。恥ずかしい。
よし。私はミリベール。今から謎のミリベール夫人よ。仕事はまっとうします。
馬車の速度が落ちた。
セバスンさんが馬車のドアを開けて先に降りる。次にガーゼイ。
ひぃ。なんかざわめきが聞こえる。そしてドアの外がまぶしい。キランキラン。さっき決めたのにもうこのまま帰りたい…。
ふー、落ち着いて。深呼吸を。私は女優。やり遂げてみせよう。
マントのために!そうだ、あの気心地のいい自分では手に入れられないマントがもらえるのだ。がんばれ、私。ご褒美があるのだから、できるはず。
「どうぞ、お手を」
貴公子がいたよ。マンガの世界だね。おばちゃんうっかりときめいちゃうわー。
なんか第三者のように思うと落ち着いてきた。
ガーゼイの手をかりて降りる。やば、ドレスの裾をふみそうになった。
これ、練習しておけばよかった。そうだよね、こんな裾の長いドレス着て馬車なんて乗ったことないし。馬車乗った時はもっと軽装だったわ。
セバンスさんに「いってらっしゃいませ」とにこやかに送り出される。
ふぅー。馬車を降りただけなのに、もうやりきった感がある。これから始まるのに。そう、まだ会は始まってもいない。
メナードさんに教わったように少し頭を下げ、目を伏せる感じで控えめに。
正直、隣にガーゼイの腕があってよかった。杖代わりにしてすみません~。
「景色には慣れましたか?」
灯りなのかドレスや髪飾りなのか、周りがキランキラン。ここはパレードが始まっているのか?
「まだまぶしいですね。あ、この前とは違う門?」
以前来た時とは違う門だ。
「そうです。何か見えますか?」
おかしそうに聞いてくる。ガーゼイはこのまぶしさに慣れているのね。
あ。
「こちらも結界がありますね。ん?かなり薄いですけど。重なってる?3、4重に?あれ」
少し階段を上ると、また結界があった。見上げると、その先にも、その先にも、だ。かなり厳重だけど、ここまでやる必要ある?
「実験らしいですよ」
「実験?
思わず顔をガーゼイに上げて聞き返す。
「どれくらい優雅に結界を重ねることができるか」
結界を重ねる…十二単?
「あの数にはなかなかできない、と苛ついておりました」
クスクス笑ってるけどさ、そんな私欲のために皇宮に結界ってはれるものなの?しかも実験って。
それに、あれは魔力をガツンと持って行かれるからなぁ。キツイよ?
正直二度とやりたくない。
「しばらく静かになりそうでなによりです」
さわやかに言い切ったわ~。
「あれは本当にキツイのでそこそこにしないと」
一応注意はひとこと言ってみた。
「魔力回復薬も併せて開発中だそうです」
まじで?それ欲しいんだけど。またまじまじと見上げてしまった。
「安全なものが開発できたら、差し上げますね」
「あ、りがとうございます?」
仕事だけ、結果だけみてたら、天才職人でいいんだけどね。
やってきてしまった、夜会当日。ああ。
「もちろん」
してますよ。こんな緊張感何年ぶりよ?胃が痛い。
こんな豪華な馬車の中で、落ち着くのは無理だ。本当の馬車ってすごいね。すごいわー。
ガーゼイの服装も本気だ。今日はキランキランの貴族だ。星屑の王子様だね。これが本当に普通にかっこいいのよ。
前日のメナードさんのマッサージから仕事は始まっていたわ。気持ちよかった~めっちゃよかった。高級スパのようだった。
フェイスもやってくれたから、ほほえみの練習で口角プルプルしてたのもゆるんだよ。あれ地味にきつい。痙攣する。ひきつるんだよ。
「大丈夫ですよ。とてもおきれいです」
ええ、このドレスとアクセサリーと魔法のような化粧があれば、誰でも美人になれるさ。
鏡を見て驚いたもの。いやいや我ながら化けるものだ、と。価格は聞かないぞ。絶対庶民なら一年は過ごせそうだからね。この光沢となめらかさ。デザインも大人めでシック。メナードさん趣味いいわ~。ドレスの装飾は少なめだけど(たぶん)、その分生地が高そう…。
この世界にクリーニングあるのか?もし汚してしまったら…怖い怖い。そうだ。
『プロテクト』
「な、にを?」
魔法を使ったのを感じたらしい。
「ドレスとアクセサリーが汚れないように、壊れないように。魔法を使いました」
ふー。これで一安心。少し気が楽になった。賠償金額聞いたら倒れそうだよ。
「また、着用していただけると、こちらも嬉しいですんえ。私も意見を出しましたので」
ん?メナードさんが選んだんじゃないの?
「二人で楽しそうでしたね」
とセバンスさん。
「もし魔力が戻ったら、そのアクセサリーは純度の高いものを選びましたので、お役に立つかと」
んん?
ガーゼイは、私が宝石に魔力を込めてたのを知っている。
もしかして。
「これいただいても?」
「勿論です」
まじ?!セバンスさんを見るとにっこり微笑まれた。
いや、本当報酬にお金はいらないでしょうよ。
…貢ぐタイプですか?誰か止めてあげてー。ありがたくこれはいただいておくけども。
夜会なのでネックレスと少し大きめのピアス。このカットが素晴らしいのよ。どこからでもきれいに見える角度。
宝石はいくらあってもいい。魔力の補佐にもなるし、いざとなったら路銀にもなる。
とりあず、さくっと魔力入れておこう。
いやー、昨日知ってたらもっと色々かけてたんだけどなぁ。
ピアスは小粒の石を集めたデザインなので、ばらせそう。ふた周りくらい小さくしたら、普段使いにもつけれるかな。そしてこれ、全部同じ色じゃないのよ。微妙に一つ一つ違う。色の組み合わせもよく考えないと。
ネックレスは、もったいないしデザインがまとまっているからこのままにしておこう。
「ニ…さん?」
ピアスをつなげて使うのもありだなあ。長いデザインは好きだ。
「ニイナさん?」
え?なんか呼ばれた気がした。
「そろそろ着きますので、準備をお願いします」
「す、すいません」
気のせいじゃなかったわ。一人没頭してたー。恥ずかしい。
よし。私はミリベール。今から謎のミリベール夫人よ。仕事はまっとうします。
馬車の速度が落ちた。
セバスンさんが馬車のドアを開けて先に降りる。次にガーゼイ。
ひぃ。なんかざわめきが聞こえる。そしてドアの外がまぶしい。キランキラン。さっき決めたのにもうこのまま帰りたい…。
ふー、落ち着いて。深呼吸を。私は女優。やり遂げてみせよう。
マントのために!そうだ、あの気心地のいい自分では手に入れられないマントがもらえるのだ。がんばれ、私。ご褒美があるのだから、できるはず。
「どうぞ、お手を」
貴公子がいたよ。マンガの世界だね。おばちゃんうっかりときめいちゃうわー。
なんか第三者のように思うと落ち着いてきた。
ガーゼイの手をかりて降りる。やば、ドレスの裾をふみそうになった。
これ、練習しておけばよかった。そうだよね、こんな裾の長いドレス着て馬車なんて乗ったことないし。馬車乗った時はもっと軽装だったわ。
セバンスさんに「いってらっしゃいませ」とにこやかに送り出される。
ふぅー。馬車を降りただけなのに、もうやりきった感がある。これから始まるのに。そう、まだ会は始まってもいない。
メナードさんに教わったように少し頭を下げ、目を伏せる感じで控えめに。
正直、隣にガーゼイの腕があってよかった。杖代わりにしてすみません~。
「景色には慣れましたか?」
灯りなのかドレスや髪飾りなのか、周りがキランキラン。ここはパレードが始まっているのか?
「まだまぶしいですね。あ、この前とは違う門?」
以前来た時とは違う門だ。
「そうです。何か見えますか?」
おかしそうに聞いてくる。ガーゼイはこのまぶしさに慣れているのね。
あ。
「こちらも結界がありますね。ん?かなり薄いですけど。重なってる?3、4重に?あれ」
少し階段を上ると、また結界があった。見上げると、その先にも、その先にも、だ。かなり厳重だけど、ここまでやる必要ある?
「実験らしいですよ」
「実験?
思わず顔をガーゼイに上げて聞き返す。
「どれくらい優雅に結界を重ねることができるか」
結界を重ねる…十二単?
「あの数にはなかなかできない、と苛ついておりました」
クスクス笑ってるけどさ、そんな私欲のために皇宮に結界ってはれるものなの?しかも実験って。
それに、あれは魔力をガツンと持って行かれるからなぁ。キツイよ?
正直二度とやりたくない。
「しばらく静かになりそうでなによりです」
さわやかに言い切ったわ~。
「あれは本当にキツイのでそこそこにしないと」
一応注意はひとこと言ってみた。
「魔力回復薬も併せて開発中だそうです」
まじで?それ欲しいんだけど。またまじまじと見上げてしまった。
「安全なものが開発できたら、差し上げますね」
「あ、りがとうございます?」
仕事だけ、結果だけみてたら、天才職人でいいんだけどね。
43
お気に入りに追加
170
あなたにおすすめの小説
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!
宇水涼麻
ファンタジー
貴族達が会する場で、四人の青年が高らかに婚約解消を宣った。
そこに国王陛下が登場し、有無を言わさずそれを認めた。
慌てて否定した青年たちの親に、国王陛下は騒ぎを起こした責任として罰金を課した。その金額があまりに高額で、親たちは青年たちの廃嫡することで免れようとする。
貴族家として、これまで後継者として育ててきた者を廃嫡するのは大変な決断である。
しかし、国王陛下はそれを意味なしと袖にした。それは今回の集会に理由がある。
〰️ 〰️ 〰️
中世ヨーロッパ風の婚約破棄物語です。
完結しました。いつもありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる