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冒険者へ
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しおりを挟む4層から8層まで一気に行って、疲れた。いやもう、魔物とかはパルマがまたやなぎ払い、残った魔物をザシュとファンクが倒したりしていた。二人とも以外と早いので、私は何もしていない…。てか、走って追いつくのにいっぱいです。ディタの体力なめんな?!
キノコが~、薬草が~とちょこちょこ採取しに走ってるせいもあるけど。基本何もしないっていってたじゃん、パルマさんよぅ。
9層についてゼエゼエいってる私たちに、パルマはやっと気づいたようで、すまんすまん、と謝った。
「なんか久しぶりにエネルギーが余ってる感じがしてさ。うまいもん食べるとチャージされるじゃん?怪我はないな?」
今更…ですかね?!幸いだれも怪我などはしていなかった。疲れただけだ。ポシェットからアメをだし口に放り込む。
ダンジョンは下に行くほど魔物が強くなっていく。初心者用といっても油断はしないようにしないと。見たところ珍しい薬草やキノコはなさそう。今までと同じ種類かな。…と思ったらあった。ノコギリ草を『サーチ』で見つけた。さっき図鑑で確認したら、葉がギザギザで思ってたのと同じだった。感覚が同じでわかりやすい。
「さっきから採取ばっかだな。戦えねぇのかよ」
また嫌味を言ってくる。
「魔石拾えないなら意味ないじゃない」
走りっぱなしだからさ。おっと私も嫌味返しみたいになってしまったわ。
「あはは、あたしのせいだな。よし、こっからのんびり行くか」
パルマが剣をしまった。どちらかというと、ここから魔物は強くなると思うんだけど。さっきまでと空気感が違う。こういうのって肌で感じるものなんだね。わかるもんなんだなー。スライムやコボルトは出てこないのだろうな、と。
「おまえ魔法使だろ?杖はどこだよ?」
「ファンク」
あれかな?一人糖分足りなかったのかしら。
杖…は、存在忘れてました。だって持ち歩くの邪魔だからさー。ダンジョンついて早々にしまったんだよ、ポシェットに。誰も何も言わないから気づいてないと思ってた。仕方ないな、ポシェットから杖を出す。これで魔物倒せば納得するのかしら。
「…それ、マジックバックだったのか」
あ。気をつけろ、て言われてた。三人とも目が丸いです。
「内緒でお願いします」
とりあえずアメを三人に握り渡しといた。ファンクに手を払われなかったのは意外だ。
「そのリュックもだよな?」
「…」
視線をずらしといた。まあ、バレるよね。明らかに内容量と外見があってないサイズだもの。
「ニイナさん、やっぱり貴族なんですね」
「いや、違うから」
そこは否定しといた。
「便利グッズに目がない収集家ってことで」
我ながらいい答えだわ。
「…ムリがあるだろ。お、来たぞ」
あれ、だめだった?
奥からバタバタと飛んできたのは、コウモリだった。割と小さい。『サーチ』をかけると10匹。
パルマが剣を抜いた。きついと思われたのかな。ザシュの弓で初めにどれくらい打ち落とせるか、よね。
でもさ。これって焦点合わせて。
「ファイアーボール」
一気に当ててしまえば簡単よ?
ボタ、ボタとコウモリが落ちていく。黒こげ。ま、元が黒いからよくわからないけどー。そして上から杖でダメージを与えれば、魔石を残して消えていく。うん、小さいな魔石。でもせっかくだから取っていこう。全部回収っと。
「「「え」」」
「え?」
なに?三人が唖然とこっちを見ていた。ファイアーボールて初級魔法だよね?
「火を使っちゃいけなかった?」
あたりに燃え移らなければ平気かと思ったんだけど。
「まあ、すすめはしないが。他に被害がでてないからな。今のはなんだ?」
「ファイアーボールですけど」
「「「うそだ」」」
「初級の魔法だよ?」
なぜまた三人同時に同じセリフなのだ?
「普通のファイアーボールなら初級だ。だが、今のは確実に全て当たってたじゃないか」
当たらないファイアーボールってなんだ?
「ど、どうやって当てたのですか?!」
「弓と同じだよ。弓だって数本一気にとばせるでしょ?」
ゲームで見たことあるぞ。
「かなり腕がたつか、伝説の射手くらいだがな。ちなみに未だ見たことがない」
「ザシュ、ガンバッテクダサイ」
「ムリだよー」
「一発一発は魔力くわないときくが、今のは10あったろ?しかも連続うちとか。魔力高くはなかったよな?おかしいな、計測器が間違うはずないし…」
「弱い魔物だから弱いファイアーボールでいけたんですよ、きっと」
そういうことで。ノコギリ草を採りにいく。薬草用の袋に入れる。
「なんで戦えんのに、そんなもんばっか採ってんだよ?」
「薬草はいくらあってもいいし、ノコギリ草はノズにたのまれたもの。キノコはおいしい、て聞いたから。こんな小さな魔石よりお金になるじゃないの」
「それうまいのか?」
まあ、見た目おいしそうには見えないけどね。
「食べたことないので。パルマはありますか?」
「ああ。ダンジョン内で食べるとしたら、な。さっきの携帯食ばかりだと味が欲しくなるだろ」
なるほど。じゃあそんな期待できないか。ダシにしたらおいしそうだけど。干してもいいよね~。
「そういや、ノズと仲いいな。新人だろ?接点なさそうだけど。実は違うのか?」
「新人ですよ。冒険者になって初回に買い取り担当の人がいなかったので、ノズと話すようになって」
「怖くないですか?」
「え?全然。奥さんにメロメロな大きい人だよ」
「へ?」
二人は意味が分からないって顔してたけど、パルマは納得顔だった。
その後は地上の魔物はザシュとファンクが。コウモリは私がファイアーボールで倒しながら進んだ。
ファンクの態度が大分和らいだように感じる。パルマは10層のボス戦まで剣をしまっていた。ちなみにボスはベアだった。長い爪にさえ気をつければ、そう難しくはない。うんうん、連携をとって戦うって楽しいかも。周りを見てタイミングはとらないといけないけど、三倍の戦力だもんね。二人はやっぱり戦い慣れてる気がする、新人にしては。他の人を知らないからそう思うのかなあ。これが普通のレベルなのかしら。パルマは結局一筋だけ助けてくれたけど、あとは手出ししなかった。そこまでできる、と思われてるってことよね。単純に嬉しい。誰かと一緒に戦うって初めてだ、そういえば。手助けとかはあったけど。悪くないな。
ダンジョン最下層にボスがいるので、それを倒すと大きな魔石があらわれ、触れるとダンジョン入り口まで一気に戻れるシステムらしい。なにその転移できる魔石!めっちゃ便利じゃないか。その魔石欲しい!と思ったら、取れるものではなく、ダンジョンの一部という認識らしい。残念ー。
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