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冒険者へ

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 週2日を休みと決めて、翌日から薬草採取の仕事を続けた。他の人たちよりも遅くギルドへ行き、昼に一度戻って、ノズと話す。もう一人の買い取り担当の人もいたんだけど、なぜかノズが対応で出てくる。とれたて薬草が欲しいらしい。なんでも奥さんが錬金術師で、初日の薬草で錬金したポーションの出来よかったみたいで、気に入ってもらえたらしい。指名依頼をしたいくらいだと言っていたそうだ。ランクの低い指名依頼は例がなく、周りに色々勘ぐられるのも嫌なので断っている。目立ちそうじゃんか。
「錬金術師!かっこいいですね~。ちなみに術を唱える派?釜を使う派ですか?」
「カッコイイだろ。もちろん、錬金釜を使っている。真剣なアナーシャの顔もいいぞ」
 はい、のろけをいただきました。デレデレですよ、顔。もう一人の担当者がひいてますからね。
「アナーシャさんのポーションは質が高いので、ギルドでも人気ですよ。研究第一な方なのであまり出てきませんけど」
 時々スロウが話に混ざる。
 一般にポーションとは、傷を治す薬をさすらしい。魔力回復薬つくってくれないかなあ。マウシャのリンデル水は、あくまで魔力をゼロにしない為のものらしい。なぜかここには売ってないんだよ。これまたジンガに予備をもらってるけどね。ラッキー。
「魔力を回復するポーションを依頼したら、作ってもらえるものですか?」
「うーん、どうだろうなぁ。難しいらしい。前に一度挑戦して出来なくて大荒れしたからなぁ」
 なんと試したことがあるらしい。まったくない事を思えば、そういう考えを持っている人がいて、作ろうとした人がこの国にもいたなんてさい先いいんじゃない?!
「そもそも効果を試す被験者が、いないですからね」
「え、安く手に入るならやりたい、て人いないんですか?」
「きかねぇな」
「魔力回復できたらもっと冒険できるのに?」
「そこまでしなくてもいいだろ?てのがフツーらしいぜ、魔法使には」
 冒険心ないなぁ。ここだけなのか、この世界の普通なのか。
「ニイナさんは、なぜ魔力回復ポーションを?」
 スロウが質問してきた。
「あー、私、前に魔力使いすぎちゃったことがありまして。たまたま作れる人がいたらしく、それのおすそわけで大分回復したんですよ」
 大分回復で水晶玉あの色ですよ?アピールをしておく。魔法使だからゼロじゃなければ少し回復する。
「そりゃ何年もつらかったなあ」
 へ?とても気の毒そうに見られている。
「失礼ですが、だからこと今登録なんですね。納得しました」
 …もしかしてゼロからの回復ってそんなに年月かかるもの?!一ヶ月もたってないなんて言えないわ、絶対。
 失った魔力は戻らないのがこの世界の常識だった。髪に魔力を蓄積するよりも、まず体に魔力をためるために髪を切ったと思われてる?
 こういう時は、笑ってごまかして流そう。社会人になって身に染みた処世訓。
「しかし、賢者みたいな存在の人物がいたんだなぁ」
 賢者?!…魔力バカて言われてましたけど?
「数年前といえばランドン様がまだいらした?」
 こんな土地まで知られている。有名人なんだなー。
「いえいえ、この国じゃありませんよ」
「そりゃ残念だな。確かに魔法使にとって回復できりゃ保険になる。その後回復が早ければ、その分現場復帰も早まるしな。リスクが小さけりゃ先に進もうとするしなぁ」
「実際アナーシャさんは、どこまで進まれたのですか?」
 スロウが聞くと、ノズは眉をしかめた。
「さぁ。聞いてもわからんし、あの時は聞ける空気じゃなかった。とりあえず機嫌がいい時ちょこっと言ってはみるが、期待するなよ?」
「はーい」
 夫婦喧嘩とかはやめて下さいね?何気なくさらっと聞いてみて下さい。
「あ、ニイナさん。今度は違う種類の依頼も受けてみませんか?」
 違う種類?いつも受けているのは採取だ。
「上のランクに上がるには一種類ではなく、二種類以上必要なのは前に説明しましたよね?」
 え…と、はい。正直忘れていたが。思いだそう。
「採取と魔物討伐と掃除でしたっけ?」
「ええ、まあ大きく分けると。子供なら手伝い、もすすめるんですけどね」
 アルバイト的な。皿洗いから荷物運び、おつかいなど。冒険者関係ある?と説明聞いたとき思ったものだ。
「新鮮な肉もってこい」
「ホーンラビットおいしいですか?」
「まぁ、普通だな。どちらかというと淡泊。ランク上げてボア狩ってこい」
「ノズ。ニイナさんは初心者なのですから。慎重に言って下さいね」
 スロウがノズをにらむ。初心者、ではないですが、まずはホーンラビットにしよう。こちとらラオンもリヴァイアサンとも戦ってますから、えっへん。
「屋台で売っているたれがついた串焼きの肉は、何ですか?甘辛いやつ」
「串焼きはオークだな」
 ほほう。豚肉ですか。鶏も食べたいところだな。
「ついでに薬草もな。月光草が足りないらしい」
「了解ー」
 採取の仕事はついでになったが、狩りもやり方は同じだ。サーチで狙いをつけて『ウィンドカッター』で首スパン。ラオンの時のように水球でもよかったんだけど、目立ちそうだったのでやめた。絶対聞かれそうだし、面倒そう。
 薬草用の袋を大きくして『フレッシュキープ』で魔物も新鮮なまま収納。マジックバッグだと目立つからね。ギルドに持ち帰るだけな、これで充分だ。

「はい、お願いしまーす」
「はえぇよ!」
 つっこみをもらいつつ、解体してもらう。あの額の角を取るのはムリ。頭を触らなくちゃいけないってことでしょ。死んでるのはちょっと。
 一度、やってみるか?と言われて試そうとしたんだけど、ダメだった。お金払ってやってもらった方がいい。時間効率と精神力のためにも。疲労感が違う。
 ゴブリン討伐の印である耳を切ることだって、おそるおそるだった。一部を切るとかはぎ取るとかさー、抵抗あります。その点、スライムは魔石だけだから気が楽だ。魔核と呼ばれる魔石を覆っている膜を壊すだけだから。クルミみたいに中をとりだして終わり。
 一度、ボアに出会った。イノシシだね、あれ。一直線に突進してくるから、慌ててよけた。そしたら、追いかけてきた。木にぶつかってもまた、こっち向かってくるんだよ。パニックになって、ウィンドカッターかけまくったら、スパンスパンと手足バラバラになって、拾って回収するのに泣いた。放っておくのももったいないし。杖を物理的に使ったのは秘密にしよう。そのあと杖は買い換えた。
 そのままノズのとこへ行って、袋ごとカウンターに出した。
「なんだ、これ。え?なんのために切り刻んだよ?」
 なんのため…?
「怖かったので」
「は?やりやすいのかやりづれえのか、わかんねぇな」
 そんなこと言われてもさ、あれが精一杯の形なんだって。
「魔法使なら、木に登って上から魔法打ち込むのが、定番な戦い方だろ」
「そうなの?そもそも木登りできないけど」
 あきれた視線はやめて下さい。できないものはできないんだよ。
 よし、次は『グラビティ』かけてから、対策練ろう。重力でおさえつければ、なんとななりそうな気がするわ。
 冒険者用に防具作ってみようかな。ブーツにスピードアップの魔石入れよう。
「いつものように魔石は抜くとして。肉はどうする?」
「半分下さい。うわ、以外と血なまぐさい」
「そりゃそうだろ。ラビットよりでかいしな。血抜きできるならしてきた方がうまいぜ?」
 なんだって?早く言ってよー。でも、血抜きってロープで木からぶら下げたりするやつ?体力使うな。そもそも私一人ではムリだ。困った時の魔法頼み~。血を抜くといえば、吸血鬼。『ブラッドドロー』でいけるかな?あまりピンとこない。イメージが弱い。おそらく『ヴァンパイア』てかけた方がうまくいく気がするな。試してみないことにはわからないけど。頭に思い浮かべるイメージが大事なのだ。
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