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episode1 猫を被るにも一苦労
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あー、昨日も夜更かししちゃった。
隈がすごいから今日はおもいっきり厚化粧したけどバレないかしら。
フィルディアは聖ラリア学園まで向かう馬車の中で自分の顔を鏡で見ながら昨日の夜更かしを後悔していた。
でもアッシュきゅん鑑賞会(もちろん1人)のための夜更かしでできた隈の1つ2つ、なんてことないわ、と思いながらフィルディアはほっそりとした手でコンパクトミラーをパチンと閉じると今度はいそいそとその裏側を開いた。
その中にはこちらに向かって笑いかけている少年の写真がはめ込まれていた。
少年は純真そうなキラキラした目をしている。
彼はフィルディアが推している5人組アイドル「Largo」のメンバーの1人のアッシュであった。無邪気な笑顔を浮かべているアッシュはどこからどう見てもフレッシュ全開である。
フィルディアはジーッと数十秒間眺めてにんまりしてからしっかりとコンパクトミラーの裏側をとじた。
そのすぐ後、耐えきれなくなったのかフィルディアはブヘヘヘとなんとも奇妙な笑いを響かせた。
グデグデに緩んでいる顔はどこからどう見てもとても名門貴族の令嬢とは思えない風貌である。
たとえその現場を普段のフィルディアを知っている人が見たら一瞬で別の人と入れ替わったのだろうと彼女を探し始めることだろう。
不気味なブヘヘヘという笑い声はどこか床軋んでいるのか、はたまた幻聴が聞こえたのかと思うはずだ。
そろそろ学園に到着する時間であることを思い出し、フィルディアは緩んだほっぺたを両手で戻し両頬をパチンと軽く叩いた。
「Largo」のことは一回忘れるのよ。フィルディア。じゃないとニヤニヤしたりして気持ちの悪い笑い声を誰かに見られたらフィルディア・コンツィートは終わりよ。建国時から続く名門コンツィート家は笑いものになってしまう。家族の名誉は何としても守らなければ。
もし、バレてしまったら、、、
1人のしわがれたおばあさんがフィルディアの前に現れ、大声で話し始めた。
「フィルディア・コンツィートだって?あんな猫被りのオタク、わたしゃ見たことないよ。みんなの笑い者だね。」
それに続いて聖ラリア学園の自称フィルディア様を見守る会ファンクラブ代表、ルシア・テレーゼがハンカチを噛みながら半泣きで訴る。
「フィルディア様!ルシア、フィルディア様がこんな気持ちの悪い笑い声を発してるなんて耐えられませんわ!今までルシアたちを騙していらしたのね!」
フィルディアはその後もルシアに肩をがっしりと掴まれぶんぶんと前後に振られながら責め立てられる。揺らされすぎて気持ちが悪くなりそうだ。
次の瞬間、フィルディアのヴァイオリンの先生、Mrs.マイヤーが眼鏡をきらりとさせながらフィルディアをキツく責め立てる。
「コンツィート嬢、私の教え子に相応しくない振る舞いはよしてくれザマス!」
フィルディアは全速力で彼女たちから逃げる。だが彼女たちはものすごい速さで追いかけてくる。Mrs.マイヤーはひたすら眼鏡をキラリとさせてはフィルディアの行手を阻み、お馴染みのザマス口調でフィルディアの行動について注意を促し、ルシアに至ってはフィルディアの胸ぐらを掴み凄い勢いで揺らしている。しわがれたおばあさんは町中に
『
【号外!フィルディア・コンツィート
遂に社交界から転落!!!】
フィルディア嬢の周りの人へ直撃取材!
後輩生徒A「先輩に声を掛けようとしたらどこからかブヘヘヘへって声が聞こえたことが4、5回あったんです!今思えば先輩の声だったんですね…」
マダムB「まさか、フィルディアちゃんがアイドルオタクだったなんて…誰しも裏の顔があるってものね」
』
と書かれたビラを何百枚も配っている。
もうやめてぇぇぇぇぇぇぇ
………。
今の一連の出来事が全て自分の妄想だったことにすぐに気がつくと、丁寧にアイロンのかかってある花柄のハンカチをジャケットのポケットから取り出して次々に吹き出る汗を急いで拭いた。
いかんいかん。つい妄想してしまった。
さて、これから学校だ。そろそろ戦闘モードにならなければ。
フィルディアは長い睫毛に縁取られた夕空の瞳を閉じて深呼吸する。それから一息ついてゆっくり開ける。
すると先程の変な笑い声を響かせ妄想を繰り広げていた少女はもういない。代わりに清廉な雰囲気を纏う可憐な少女がそこにいた。
その様子はどこからどう見ても立派なレディであり、皆が褒め称える"妖精姫"が儚げに佇んでいたのである。
隈がすごいから今日はおもいっきり厚化粧したけどバレないかしら。
フィルディアは聖ラリア学園まで向かう馬車の中で自分の顔を鏡で見ながら昨日の夜更かしを後悔していた。
でもアッシュきゅん鑑賞会(もちろん1人)のための夜更かしでできた隈の1つ2つ、なんてことないわ、と思いながらフィルディアはほっそりとした手でコンパクトミラーをパチンと閉じると今度はいそいそとその裏側を開いた。
その中にはこちらに向かって笑いかけている少年の写真がはめ込まれていた。
少年は純真そうなキラキラした目をしている。
彼はフィルディアが推している5人組アイドル「Largo」のメンバーの1人のアッシュであった。無邪気な笑顔を浮かべているアッシュはどこからどう見てもフレッシュ全開である。
フィルディアはジーッと数十秒間眺めてにんまりしてからしっかりとコンパクトミラーの裏側をとじた。
そのすぐ後、耐えきれなくなったのかフィルディアはブヘヘヘとなんとも奇妙な笑いを響かせた。
グデグデに緩んでいる顔はどこからどう見てもとても名門貴族の令嬢とは思えない風貌である。
たとえその現場を普段のフィルディアを知っている人が見たら一瞬で別の人と入れ替わったのだろうと彼女を探し始めることだろう。
不気味なブヘヘヘという笑い声はどこか床軋んでいるのか、はたまた幻聴が聞こえたのかと思うはずだ。
そろそろ学園に到着する時間であることを思い出し、フィルディアは緩んだほっぺたを両手で戻し両頬をパチンと軽く叩いた。
「Largo」のことは一回忘れるのよ。フィルディア。じゃないとニヤニヤしたりして気持ちの悪い笑い声を誰かに見られたらフィルディア・コンツィートは終わりよ。建国時から続く名門コンツィート家は笑いものになってしまう。家族の名誉は何としても守らなければ。
もし、バレてしまったら、、、
1人のしわがれたおばあさんがフィルディアの前に現れ、大声で話し始めた。
「フィルディア・コンツィートだって?あんな猫被りのオタク、わたしゃ見たことないよ。みんなの笑い者だね。」
それに続いて聖ラリア学園の自称フィルディア様を見守る会ファンクラブ代表、ルシア・テレーゼがハンカチを噛みながら半泣きで訴る。
「フィルディア様!ルシア、フィルディア様がこんな気持ちの悪い笑い声を発してるなんて耐えられませんわ!今までルシアたちを騙していらしたのね!」
フィルディアはその後もルシアに肩をがっしりと掴まれぶんぶんと前後に振られながら責め立てられる。揺らされすぎて気持ちが悪くなりそうだ。
次の瞬間、フィルディアのヴァイオリンの先生、Mrs.マイヤーが眼鏡をきらりとさせながらフィルディアをキツく責め立てる。
「コンツィート嬢、私の教え子に相応しくない振る舞いはよしてくれザマス!」
フィルディアは全速力で彼女たちから逃げる。だが彼女たちはものすごい速さで追いかけてくる。Mrs.マイヤーはひたすら眼鏡をキラリとさせてはフィルディアの行手を阻み、お馴染みのザマス口調でフィルディアの行動について注意を促し、ルシアに至ってはフィルディアの胸ぐらを掴み凄い勢いで揺らしている。しわがれたおばあさんは町中に
『
【号外!フィルディア・コンツィート
遂に社交界から転落!!!】
フィルディア嬢の周りの人へ直撃取材!
後輩生徒A「先輩に声を掛けようとしたらどこからかブヘヘヘへって声が聞こえたことが4、5回あったんです!今思えば先輩の声だったんですね…」
マダムB「まさか、フィルディアちゃんがアイドルオタクだったなんて…誰しも裏の顔があるってものね」
』
と書かれたビラを何百枚も配っている。
もうやめてぇぇぇぇぇぇぇ
………。
今の一連の出来事が全て自分の妄想だったことにすぐに気がつくと、丁寧にアイロンのかかってある花柄のハンカチをジャケットのポケットから取り出して次々に吹き出る汗を急いで拭いた。
いかんいかん。つい妄想してしまった。
さて、これから学校だ。そろそろ戦闘モードにならなければ。
フィルディアは長い睫毛に縁取られた夕空の瞳を閉じて深呼吸する。それから一息ついてゆっくり開ける。
すると先程の変な笑い声を響かせ妄想を繰り広げていた少女はもういない。代わりに清廉な雰囲気を纏う可憐な少女がそこにいた。
その様子はどこからどう見ても立派なレディであり、皆が褒め称える"妖精姫"が儚げに佇んでいたのである。
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