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生存ポイント

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眩しい。もう朝か。

ん、朝?…
ハッ!やばい。もう仕事行かなくちゃ。太陽がこんなに出てるということはとっくのとうに始発は逃しただろう。部長に叱られる!

俺は柔らかなベットから飛び起きた。

あれ?なんだこの部屋。目の前に大理石で作られたであろうテーブルに見るからに上質なウォーミングチェアが目に入る。見覚えのない部屋だ。広くて大きな部屋には見るからに高級そうなソファが数個置いてある。ベッドは言うまでもなくふわふわで天蓋が付いているしシーツなんてシルクのような触り心地だ。ここの部屋はどこかの王宮の一室だと言われても信じるだろう。

とにかく仕事場に行かなければ。

急いで身支度をしようと鏡を見る。

するとなんと別人がいた。
ふわふわとしたクリーム色の髪は横髪が一房だけ長く、まだ眠たげなエメラルド色の瞳は冷たい視線を帯びていた。

所謂イケメンというやつだ。

そうだった。

神様の気まぐれで意味のわからない状態になってるんだった。なんだか泣けてくる。

恐ろしくイケメンな男すぎて涙が一筋流れている様も美しい光景である。

それから数十分間ほど思考し、部屋を漁ってみたあと再びベッドへダイブした。

すると急に今までの記憶が溢れ出す。どうやら記憶が混乱しているらしい。今までのこの体の主の記憶と藤堂奏としての記憶がごちゃ混ぜになる。


この体の主はレイ・アステリオンという名前で昨日18歳の誕生日を迎えたばかりであった。彼は隠された青い薔薇の世界でも5本の指に入るほど強く、俺様系主人公ルカ・エルミールの家庭教師を務めた人物である。しかし、自分よりも強くなりはじめた幼いルカをレイのプライドが許せず虐待してしまう。その後レイの虐待を耐え続け無事強くなったルカはレイを殺し、そこから物語は本格的に始まるのである。

まずいまずい。このままだと主人公に殺されるぞ。どうすりゃいいんだ。

お、そうだ!そもそも主人公の家庭教師なんか務めるところから間違ってるんだ。生死が関わってるのに家庭教師なんてやってられるか!


「失礼します。レイ様。朝食の準備が整いました。」


この話し方は確かアステリオン家総括執事のじいやさんだな。名前は確か…セドリックさんか。

「あ、はい。只今向かいます。」


   _ピコン!マイナス2ポイント!


「な、なんですぞ。レイ様!どうかされました!?このじいやめに敬語を使うなんて!アステリオン家に勤めてかれこれ50年になりますが、こんなことは執事人生で一度も……も、もしかしてこのじいやめを解雇されるのですか!?レイ様ー!!!!!!」

セドリックさんによった扉がバーンと開け放たれ凄い勢いでおいおいと泣きつかれた。

ん、?さっき変な音がしなかったか?


するとぱちんっと指を鳴らした音がする。

「ちょっとちょっと~。だめだよ~。レイ・アステリオンは公爵家の人間でしょ。使用人に敬語なんて使わないよ~。」

声が聞こえた方を見るとブサクマが宙に浮いていた。優雅にポップコーンを食べてやがる。

とっさにじいやさんを見ると指一本動いてない。どうやら時が止まっているらしい。

「このままだと生存ポイントがマイナスになっちゃうよー。」

「生存ポイント?何なんだそれ?」

その言葉を聞くや否や急に慌て出した。

「え、?僕説明しなかったっけ?アッチャー。まずいまずい。神様に叱られちゃうところだった。セーフセーフ。」


俺は全然セーフじゃないんだが。


「君は神様がお戯れに…じゃなかった、神様の慈悲の心で憑依したって言ったよね?つまり、神様は君の生活を気にしているわけだ。それでなんやかんやで君がこの世界にふさわしくない行動や、キャラクターの関係を無視した行動をしたら生存ポイントが引かれるってルールなわけ。簡単に言えばレイ・アステリオンらしくない行動をしたらさっきみたいにポイントが引かれるってこと。さっきは普段のレイは使用人に敬語を使っていなかったのにいきなり敬語を使い出したレイらしからぬ発言ってことで生存ポイントが2ポイント引かれたってわけだよ。逆に言うとこの世界で馴染んだ行動をする、つまりレイだと見なされたら生存ポイントは引かれず無事生きることができるってわけ。逆になんかいいことをしたらプラスで獲得できるらしいよ。面白いでしょ?神様が2分間で一生懸命考えたシステムだよっ。」

「なんやかんやでってことは面白くなるようにしたってことだろ!しかも2分間ってまじで適当に考えすぎだろ!」

神様のやつあまりにも適当すぎやしないか。

「ちなみに生存ポイントがマイナス0になったらに達した場合から君は徐々に体をうまく動かすことができなくなってマイナス10では呼吸困難、マイナス20になったら大気圏に放り出されてそのままばらばらになるってことなんでそこんとこ4649!!!!」

グットポーズをつくるブサクマの首を今すぐ絞めてやりたい。

「それ1番重要な情報じゃねーか!!!!!」

「きゃ~!怒られた。僕は父親にも怒られたことないのに~。しくしく。しくしく。」

悲しそうに泣きまねをしてる姿をみるとさらに頭が痛くなってきた。てかコイツの父親って誰だ?神様のことか?

「でも安心して!僕はサポートするから。まぁあくまでもサポート役だからね!サポート役!期待はしないでくれよなっ!」

はぁ。先が思いやられる。

「それにね、生存ポイントを貯めるといいことだらけだよ。こうして時間を止めるアイテムとか相手の好感度を上げるアイテムとか新技を習得するためのアイテムとか便利なものが買えるんだ。今こうして時間をとめているのも貴重な瞬間だってことさ。」

「へー。それはいいな。時間を止めるアイテムか、使い勝手良さそうだな。………もしかしてだけど今使っている時間を止めるアイテムはもちろんお前のモノだよな。自腹だよな?そうだよな?そうであってくれ!」

「……。」

「………。」

「…………テヘペロ☆」

「このクソグマァァァァァァァァ!!!」 






そのあと拳で公平に話し合った結果、今回は説明不足だったブサクマに非があったとのことで和解し、一連の様子はチュートリアル的なものとして報告するのでアイテム代はチャラにするとのことでまとまった。





「君、結構過激ボーイなんだね。僕のキュートなボタンが取れちゃったじゃないか。」

「ふんっ。引っ掻き技が得意なお前に言われたくないね。こちとら命かかってんじゃボケ。」



こうして無事タイムストップアイテムの効果は切れ、じいやさんをなだめたあとさっそく朝食へ向かった。




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