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いい加減な案内人

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____やっぱり死んだのか。

まわりは真っ白な眩い光に包まれている。
まさか自分がビール瓶に躓いて滑って転ぶなんて思わなかった。ま、それも一つの人生だな。
それにしてもどこまで歩けばいいんだ。


「やぁ!君は奏君だね?」


何だこいつ。おれやっぱり頭おかしくなったのか。

不細工なクマのぬいぐるみがパっと現れたかと思ったらこっちに向かって喋りかけてきた。

死んだとしても面倒ごとはたくさんだ。無視しよう。


「いや~、見事な転びようだったね~。よ!転び上手!あっぱれあっぱれ!」


なんだこのクマ。無性にイラっとするな。

不細工なクマでブサクマと名付けよう。

無視だ。無視。俺は何もみてない。聞いてない。


「ねぇ、無視しないでよ。てかさっき絶対目あったよね!?君すっごい顔だったよ。というかどこに行くの?そっちの光の方向へ向かってるみたいだけど今君が何もわかってない状況で言ったらさらにめんどくさい状況になると思うけどな~。」


「…」


「そうそう!止まるのが正解だよ。というかやっぱり聞こえてたんじゃないか!一瞬焦ったよ。僕のプリティーな声が君の耳に届いていなかったらどうしようって。やっぱり僕があまりに可愛いせいで直視できないみたいだね。最初からそう言ってくれればいいのに~。君って小さい頃は好きな子無視するタイプでしょ。そんなんじゃ振り向いてもらえないよ~。このこの~。なんて言ったってこの可愛さは全人類が認める可愛さだからね。」


そう大きな声でいってるブサクマはうんうんと1人頷いた。

…コイツ、俺の苦手な「うるさい上に自意識過剰で関わると100%面倒」なタイプだ。

今更無視しても歩みを止めたことで声が聞こえていることはバレただろう。


「一ミリも思ってないから。俺あれから死んだんだろ?それなら無駄口叩いてないで死神ならさっさと連れていってくれないか?」


そんなこと言わずに~。と笑いながらブサクマは続ける。


「僕は死神なんかじゃないよ。こんなにプリティーな死神なんていないでしょ?まぁ言うなればサポート役?監視役?ってところかなぁ~。」


てへっと頭を軽く叩いて見せるブサクマに対する苛立ちを抑える。


「何をサポートするだ?それに死神じゃないなら何なんだよ。」


「よくぞ聞いてくれましたぁ~!どんどんぱふぱふ!藤堂奏くん!君は青い薔薇のエトランゼの憑依者に選ばれました~!いえ~い。」


「はっ…何だそれ。意味わかんないんだけど。俺に分かるように言ってくれ。」


「しょうがないな~。僕は優しいからもう一回いってあげるよ。君は隠された青い薔薇の主人公ルカの家庭教師の憑依者に選ばれたんだ。」

「まぁそんなしかめっ面しないでくれよー。詳しく説明すると、確かに君はあの時瓶に躓いて頭打ってあっけらかんと死んでしまったんだ。ぷぷっ瓶に躓いて死ぬって。面白すぎでしょ君~。でも大丈夫!それをたまたま見ていた神様が君が死ぬ前に散々文句を言っていた隠された青い薔薇の世界の登場人物に憑依させることにしたのさ!なんせ神様も暇でさ~。そろそろ新しいおもちゃを…じゃなかった、神様は君の短き悲しい人生を大層憐れんで熟考した上で決めたのさ!」


ちゃっかり本音言っちゃってるじゃねーか!なんだその適当な理由!つまり俺は神様のお戯れに選ばれたってわけか!


「はぁ。なんとなくだけど気まぐれでそうなったってことはわかった。」


「お、さっすが~。君のその適応能力はピカイチだね!」


バチコーン☆とヘタクソなウィンクをしてきた。今すぐ殴りてぇ。


「理解したところ悪いんだけどそろそろ見たいドラマが始まる時間なんだよね~。だから説明はまた今度!とりあえず光の方向へ歩いていけばわかるから!君は隠された青い薔薇の内容を知ってるからある程度のことはわかるでしょ。あ、もう時間がない!あとのことは頼むよ。」

ボンッと小さな爆発したかと思ったらブサクマは跡形もなく消えていった。全然説明されてない上に消えるとか無責任なやつだ。次会った時は右ストレート決めてやる。

生まれてから死ぬまで貧乏くじをひくタイプだったけど死んでからもこんなことになるなんて。自分の運命を呪いたくなった。

でも愚痴愚痴言ってても仕方がない。俺は小説を初期から読んでたし何も知らないやつよりは有利だろう。社畜サラリーマンの馬鹿力なめるなよ!ブサクマ!

俺は謎に気合を入れて光の方へ歩いて行った。
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