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前篇:夢の通ひ路
第十三話 其の一
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「結婚…… 私が、結婚?」
駄目だ、全然想像できない。
しかも、相手が兵部卿宮って。
父は私が病み上がりであることを理由に、なんとかのらりくらりと帝の提案をかわしたそうだけど、時間の問題のような気がする。事実、既に私はぴんぴんしているし、いたって健康そのものなのだ。
これで病み上がりがいつまでも通用するわけがないのは明白だった。かといって、私自身、他の策があるわけでもない。
頼みの綱は、大好きな古典文学の作品達。今の私の原点と言っても過言ではない。いつだって困ったときはここへ戻って考える。
過去の知識から探してみても、私がこの結婚から逃げる方法は一つしかなかった。
帝、東宮といった皇族、位の高い貴族からの求婚を退ける術。リスクを伴うけれど、確実である。
尼になるしかない。
髪を切って出家なんてとんでもないことだ。でも、もうこれしか選択肢が残っていない気がするのだ。
「兵部卿宮様と結婚なんかしません」などと、さすがの私も言えるはずはない。だってこれは「帝のお勧め」という命令であって、臣下である父が逆らえるはずもなく、娘の私にいたっては意志の尊重も発言権もないに等しい。しかも兵部卿宮がこちらを気に入っているということであれば、お断りは絶望的だ。下手をしたら不敬になる。親王は皇族という特別な存在なのだ。
三の君の魂が戻った時のことを考えると、いつの間にか好きでもない夫がいることと、尼になっていることのどちらがいいかといえば、おそらく後者であろう。
そもそも三の君は異性に興味がなく、結婚願望もなかった。尼になればいいや、などと思っていたそうなので、出家にさほど抵抗感はないはず。
何度も言っているが、私の一番の目的は自分の世界へ戻ることなのだ。それができなくなることだけは避けたい。三の君の魂には、なんとしてでも、たとえ尼になっていても戻ってきてもらわねば。
尼になれば、きっと今とは違う生活になる。帰る方法を探すことは難航するかもしれないけれど、天狗の言葉を借りれば、三の君の魂が戻ってくるかどうかがまず条件の一つなので、優先するべきはそこだろう。
よし、考えはまとまった。
先ほどの人払いのおかげで、今は小梅しか傍にいない。
父も自室のある寝殿の方へ戻っていった。チャンスは今しかない。あとのことはあとで考えよう。
兵部卿宮には悪いが、他の姫君を北の方として迎えていただくよりほかない。
「もう、やるしかないわ」
「姫様……?」
私の異変を察した小梅が視線で問いかけてくる。「何をなさるつもりなのです」と。
「小梅、ごめんなさい」
「な、何を謝っていらっしゃるのです?」
「私、髪をおろすわ」
「髪を……おろ、す?」と言葉の意味を噛み砕くような呟きが聞こえた。その表情がみるみる青ざめていく。
「ななな、何をおっしゃっているのです!? 姫様!?」
「もうこれしかないの」
「姫様、落ち着いて下さいませ。ど、どうか、落ち着いて」
「私は落ち着いているわ。鋏を用意して」
「姫様!!」
小梅が悲鳴をあげるかのように私を呼んだ。
その白い手がぶるぶると震えている。無理もない。私だって、自分のやろうとしていることは怖い。髪を切ったら後には引けないし、一度切ってしまえば戻すことも勿論できない。それでも、逃げ道がこれしかないのだ。
「そのようなことを殿様と東の方様がお許しになるはずがございませんでしょう!!」
「分かっているわ。私は許されないことをしようとしているわね。だから、自分で髪を切るの。髪さえ切ってしまえば、お父様もお母様も、尼にするしかないでしょう。さあ、鋏を」
「なぜです? なぜ、突然そのような…… 宮様のことでございますか? ご結婚が、それほど姫様のお気に召さないのですか?」
「ええ、そうよ。けれど、断ることなどできないでしょう…… だから、こうするよりほかないんだわ」
「早まらないでください! わ、わたくしから殿様に姫様のお心をお伝えいたします。ですから、どうか! どうかしばしお待ちくださいませ」
「小梅……」
「嫌です、姫様が尼になどと…… お願いいたします、少しだけわたくしにお時間をください。すぐに戻りますから、決してお髪を切ったりはなさいませんよう。よろしいですわね!?」
怯えた目で私を見つめ早口に念を押すと、小梅はくるりと背を向けた。着物がバサリと音を立てる。
父を呼びに行ったのだ。父が来てしまっては強引にでも止められるはずなので出家することはできない。早く、今すぐにでも髪を切らなくては。
鋏でも剃刀でもいい、何か刃物さえあればいいのだ。私は急いで部屋の中を探した。こういうときにやはり邪魔なのが、長い黒髪と重い着物だ。本当に鬱陶しい。その片方とは、もうあと少しでおさらばになる。
そうだ、確か裁縫箱の中に鋏があったはず。
裁縫用なので小ぶりだしすべて切り落とすのに時間はかかるだろうが、刃物の類ならなんでもいい。
兵部卿宮からの文がまた届く前に、ことを終わらせたい。あのまま文のやり取りをし続ければ、通い婚のちの露顕という披露宴があっという間に成立する。そうなれば、三の君は兵部卿宮の北の方という立場から逃れられない。時間はさほど残されていない。
黒塗りの箱の中に、U字型の鋏があった。私は迷わずそれを手にして、髪を引っ張った。
三の君、ごめんなさい。
でも、無理やり結婚するよりはこっちの方がまだマシでしょう?
「姫、やめよ!!」
振り返ると父と小梅、少し後ろに母である東の方がやはり蒼白な顔でそこにいた。
小梅は流れる涙をそのままに、私に「早まらないでくださいませ」と繰り返し、声を掛け続けてくる。東の方は声も出せないのか、ただ言葉にならない泣き声を漏らすばかりだ。
「お父様、申し訳ございません。しかし私は、宮様と結婚はできません。姫は病弱なこの身を嘆いて尼になったとでもお伝えくださいませ」
「馬鹿を申せ! 宮様がありがたくもそなたに文を下さったのに、それを無下にするというか! 何が、何が不満なのじゃ。宮様は穏やかでお優しく、愛妾もまだおらぬ。そなたを北の方に迎えたいとおっしゃっておいでなのに」
「不満などはありませんわ。ただ、ただ私は……」
こんな時なのに鷹衛さんの顔が浮かんだ。
どうして彼を思い出すのだろう。
また会いましょうと約束した証のあの扇は、もう見えないところにしまっておこう。
だって、尼になれば彼にはもう二度と会えないのだから。
「私は、心からお慕い申し上げた方と添い遂げたいと思った…… ただ、それだけなのですわ」
鋏を持つ指に力を込めた。数本の髪が音もなく落ちていった。
今度こそ本当に小梅の悲鳴があがった。何事かといつの間にか周りに集まってきていた女房達も皆、ことの次第に怯え、泣き騒いでいる。父はもう人払いなどをする余裕はなかったのだろう。
更に切り進めようとする私を、父が大声で止める。
「やめよ、わかった、わかったから! 宮様には直接私からお伝え申し上げる。姫は病弱だから結婚などとてもできぬと!」
「………」
「そのような身体では子も成せぬかもしれぬ、ご迷惑がかかるやもしれぬと直接お伝え申し上げる。それでも宮様のお気持ちにお変わりがないのであれば、そなたの尼になる覚悟もお伝えしよう。だから、鋏を捨てなさい」
必死の訴えだった。
駄目だ、全然想像できない。
しかも、相手が兵部卿宮って。
父は私が病み上がりであることを理由に、なんとかのらりくらりと帝の提案をかわしたそうだけど、時間の問題のような気がする。事実、既に私はぴんぴんしているし、いたって健康そのものなのだ。
これで病み上がりがいつまでも通用するわけがないのは明白だった。かといって、私自身、他の策があるわけでもない。
頼みの綱は、大好きな古典文学の作品達。今の私の原点と言っても過言ではない。いつだって困ったときはここへ戻って考える。
過去の知識から探してみても、私がこの結婚から逃げる方法は一つしかなかった。
帝、東宮といった皇族、位の高い貴族からの求婚を退ける術。リスクを伴うけれど、確実である。
尼になるしかない。
髪を切って出家なんてとんでもないことだ。でも、もうこれしか選択肢が残っていない気がするのだ。
「兵部卿宮様と結婚なんかしません」などと、さすがの私も言えるはずはない。だってこれは「帝のお勧め」という命令であって、臣下である父が逆らえるはずもなく、娘の私にいたっては意志の尊重も発言権もないに等しい。しかも兵部卿宮がこちらを気に入っているということであれば、お断りは絶望的だ。下手をしたら不敬になる。親王は皇族という特別な存在なのだ。
三の君の魂が戻った時のことを考えると、いつの間にか好きでもない夫がいることと、尼になっていることのどちらがいいかといえば、おそらく後者であろう。
そもそも三の君は異性に興味がなく、結婚願望もなかった。尼になればいいや、などと思っていたそうなので、出家にさほど抵抗感はないはず。
何度も言っているが、私の一番の目的は自分の世界へ戻ることなのだ。それができなくなることだけは避けたい。三の君の魂には、なんとしてでも、たとえ尼になっていても戻ってきてもらわねば。
尼になれば、きっと今とは違う生活になる。帰る方法を探すことは難航するかもしれないけれど、天狗の言葉を借りれば、三の君の魂が戻ってくるかどうかがまず条件の一つなので、優先するべきはそこだろう。
よし、考えはまとまった。
先ほどの人払いのおかげで、今は小梅しか傍にいない。
父も自室のある寝殿の方へ戻っていった。チャンスは今しかない。あとのことはあとで考えよう。
兵部卿宮には悪いが、他の姫君を北の方として迎えていただくよりほかない。
「もう、やるしかないわ」
「姫様……?」
私の異変を察した小梅が視線で問いかけてくる。「何をなさるつもりなのです」と。
「小梅、ごめんなさい」
「な、何を謝っていらっしゃるのです?」
「私、髪をおろすわ」
「髪を……おろ、す?」と言葉の意味を噛み砕くような呟きが聞こえた。その表情がみるみる青ざめていく。
「ななな、何をおっしゃっているのです!? 姫様!?」
「もうこれしかないの」
「姫様、落ち着いて下さいませ。ど、どうか、落ち着いて」
「私は落ち着いているわ。鋏を用意して」
「姫様!!」
小梅が悲鳴をあげるかのように私を呼んだ。
その白い手がぶるぶると震えている。無理もない。私だって、自分のやろうとしていることは怖い。髪を切ったら後には引けないし、一度切ってしまえば戻すことも勿論できない。それでも、逃げ道がこれしかないのだ。
「そのようなことを殿様と東の方様がお許しになるはずがございませんでしょう!!」
「分かっているわ。私は許されないことをしようとしているわね。だから、自分で髪を切るの。髪さえ切ってしまえば、お父様もお母様も、尼にするしかないでしょう。さあ、鋏を」
「なぜです? なぜ、突然そのような…… 宮様のことでございますか? ご結婚が、それほど姫様のお気に召さないのですか?」
「ええ、そうよ。けれど、断ることなどできないでしょう…… だから、こうするよりほかないんだわ」
「早まらないでください! わ、わたくしから殿様に姫様のお心をお伝えいたします。ですから、どうか! どうかしばしお待ちくださいませ」
「小梅……」
「嫌です、姫様が尼になどと…… お願いいたします、少しだけわたくしにお時間をください。すぐに戻りますから、決してお髪を切ったりはなさいませんよう。よろしいですわね!?」
怯えた目で私を見つめ早口に念を押すと、小梅はくるりと背を向けた。着物がバサリと音を立てる。
父を呼びに行ったのだ。父が来てしまっては強引にでも止められるはずなので出家することはできない。早く、今すぐにでも髪を切らなくては。
鋏でも剃刀でもいい、何か刃物さえあればいいのだ。私は急いで部屋の中を探した。こういうときにやはり邪魔なのが、長い黒髪と重い着物だ。本当に鬱陶しい。その片方とは、もうあと少しでおさらばになる。
そうだ、確か裁縫箱の中に鋏があったはず。
裁縫用なので小ぶりだしすべて切り落とすのに時間はかかるだろうが、刃物の類ならなんでもいい。
兵部卿宮からの文がまた届く前に、ことを終わらせたい。あのまま文のやり取りをし続ければ、通い婚のちの露顕という披露宴があっという間に成立する。そうなれば、三の君は兵部卿宮の北の方という立場から逃れられない。時間はさほど残されていない。
黒塗りの箱の中に、U字型の鋏があった。私は迷わずそれを手にして、髪を引っ張った。
三の君、ごめんなさい。
でも、無理やり結婚するよりはこっちの方がまだマシでしょう?
「姫、やめよ!!」
振り返ると父と小梅、少し後ろに母である東の方がやはり蒼白な顔でそこにいた。
小梅は流れる涙をそのままに、私に「早まらないでくださいませ」と繰り返し、声を掛け続けてくる。東の方は声も出せないのか、ただ言葉にならない泣き声を漏らすばかりだ。
「お父様、申し訳ございません。しかし私は、宮様と結婚はできません。姫は病弱なこの身を嘆いて尼になったとでもお伝えくださいませ」
「馬鹿を申せ! 宮様がありがたくもそなたに文を下さったのに、それを無下にするというか! 何が、何が不満なのじゃ。宮様は穏やかでお優しく、愛妾もまだおらぬ。そなたを北の方に迎えたいとおっしゃっておいでなのに」
「不満などはありませんわ。ただ、ただ私は……」
こんな時なのに鷹衛さんの顔が浮かんだ。
どうして彼を思い出すのだろう。
また会いましょうと約束した証のあの扇は、もう見えないところにしまっておこう。
だって、尼になれば彼にはもう二度と会えないのだから。
「私は、心からお慕い申し上げた方と添い遂げたいと思った…… ただ、それだけなのですわ」
鋏を持つ指に力を込めた。数本の髪が音もなく落ちていった。
今度こそ本当に小梅の悲鳴があがった。何事かといつの間にか周りに集まってきていた女房達も皆、ことの次第に怯え、泣き騒いでいる。父はもう人払いなどをする余裕はなかったのだろう。
更に切り進めようとする私を、父が大声で止める。
「やめよ、わかった、わかったから! 宮様には直接私からお伝え申し上げる。姫は病弱だから結婚などとてもできぬと!」
「………」
「そのような身体では子も成せぬかもしれぬ、ご迷惑がかかるやもしれぬと直接お伝え申し上げる。それでも宮様のお気持ちにお変わりがないのであれば、そなたの尼になる覚悟もお伝えしよう。だから、鋏を捨てなさい」
必死の訴えだった。
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