家畜少女と盲愛魔王

襟川竜

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HISTOIRE.12

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 詳細を述べても構わないが、天界の住人は荘厳で神秘的ではあるのだが…。なんというか、メインが問答のため派手さがない。見目麗しい住人達に目を奪われる生徒達もいるが、ただじっと対話を見守るのは少々の退屈さがある。デュグディドゥさんは見るものすべてが新鮮なのかずっと目を輝かせていたけれど、ケインはすぐにあくびを噛み殺していた。なので、天界側の召喚試験の内容は割愛させてもらう。
 天界からの召喚試験も無事終了し10分の休憩を挟んだ後、いよいよ前代未聞の魔界からの召喚試験が始まった。デュグディドゥさんは先程と同じように目を輝かせては「本物の○○初めて見た!」「すごいすごい、○○さんだ!」と子どものようにはしゃいでいる。そういえば、外見はわたし達より年上だけれど精神は赤子みたいなものだったわ。見た目と中身が違うと、慣れるまで少し混乱しそう。このままではだめだわ。一応わたしが制御する立場なのだし、早々に順応しなければ。
「次、第6グループ}
 マダム・グラルージュの号令に5名の学生が舞台に出た。それを見てルーカスが席を立つ。
「次のグループだから行ってくる」
「おう、気をつけてな」
「頑張ってね」
「気をつけて」
「ルーカスがんばれー!」
「…行ってきます」
 わたし達と同じようにデュグディドゥさんも声をかける。さすがのルーカスも一瞬返答につまった。気さくと取るか、馴れ馴れしいと取るかは人それぞれだけれど、さすがに魔王を邪険にはしにくい。特に昨日実力の一片を見たばかりなのだ。ルーカスのぎこちない態度に気を悪くした様子はなく、離れた位置からもう一度こちらを振り返ったルーカスは上機嫌なままのデュグディドゥさんをみてほっと胸をなでおろしていた。平常心とまでは行かないかもしれないが、少なくとも落ち着いて試験には望めるだろう。
 デュグディドゥさん曰く「シャトーの友人なら私とも友人」だそう。ケインはかなり打ち解けてはいるけれど、わたし達3人はさすがにまだ気は抜けずにいる。よそよそしくし過ぎるのも良くないという微妙な状態なのだが、今のところは問題なさそう。
「次、第7グループ」
 このあたりはまだ下級~中級寄りの魔獣型だ。実力を示し屈服させるので試験もサクサクと進んでいく。
「いよいよルーカスみたいだぜ」
 召喚に応じて現界したのは、灰色の毛の魔獣。いや、二足歩行かつ衣類も身につけているのを見るに獣人型だ。二足歩行の狼、狼男ルー・ガルー。ルーカスよりも頭一つ分は大きいであろう彼は、ただじっとルーカスを見ている。
「召喚に応じてくれた事に、まずは礼を。そして申し訳ないが、見ての通り僕は前衛タイプではない。君は僕に何を望むだろうか」
「ふむ…。そうだな、では…」
 ルー・ガルーがなにか言いかけたときだった。
「あー!コルトンさんだー!おーい、コルトンさーん!」
 にこにこと笑いながら手をブンブンと振るのは、言わなくてもわかるだろうけれどデュグディドゥさんである。その声にぎょっとしたようにルー・ガルーがこちらを見た。頬が引きつっているのがここからでもわかる。方や嬉しそうな魔王、方や関わり合いになりたくなさそうなルー・ガルー。ここまで対象的な反応はなかなか見ることはないのではなかろうか。
「な、なんでアイツがここに…」
「知り合い?」
「できれば二度と関わりたくないヤツだ」
「ルーカスー!コルトンさんいい人なんだよー!」
「…知り合いか?」
「昨日、友人認定をされて…」
「嘘だろ…」
「デュグディドゥさん、試験中なのでお静かに…」
「あ!ごめん!ついうっかり!二人ともー!私のことは気にしないで続けてねー!」
 事態をもの凄くかき回したことにまったく気づいていないデュグディドゥさんを慌てて止めたけれど、時すでに遅し。
「契約…成立で…」
「わ、わかりました」
 コルトンさんと呼ばれたルー・ガルーは力なくそう呟いた。
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