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2章
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お湯から出るとジョアンくんの体を綺麗に拭いてあげる。
髪にタオルを被せて扇風機の前で待つように言うと自分の支度をササッとすませた。
「ジョアンくん髪を乾かしてあげるからその間にコーヒー牛乳飲んでてね」
「で、でもぼくコーヒー牛乳のお金は用意してないよ」
「私の分を半分あげるよ、全部飲めないからさ」
「わかった!」
ジョアンくんは嬉しそうにちょびちょび飲みながらきっちり半分を測ろうと気をつけながら飲んでいた。
その様子に笑いながら髪を乾かしてあげる。
「はい!OKだよ、そろそろお父さんも帰ってるかな」
私は番台に上がって男湯を確認する。
「あっ!マキさんジョアンは!?」
するとマルコスさんがお父さんと待っていた。
「あっ今出ましたよー、そちらに連れていきますね」
ジョアンくんを連れて男湯に移動すると、私は番台に戻った。
「すみません、息子がご迷惑をおかけしました」
マルコスさんが謝るとジョアンを睨んだ。
「ジョアン!ほらお前も謝れ」
「ごめんなさい…」
ジョアンくんはなぜ怒られたのかわからずに泣きそうな顔で謝っていた。
「まぁまぁマルコスさん、ジョアンくんはちゃんと自分で薪を用意して自分のお金で入ったんですよ」
「自分で?ジョアン、なぜそんな事を…」
「だって、ぼく…」
マルコスさんはしょんぼりとするジョアンくんをみて何もいえなくなってしまった。
「よかったら銭湯に二人で入ってきたらどうですか?今日はサービスしますよ」
「でも…」
「裸になれば言いたい事も言えるかも知れません」
私達はマルコスさんとジョアンくんを二人っきりにしてあげた。
ゆっくりと久しぶりに親子でお湯につかりジョアンくんは顔を真っ赤にして出てきた。
「ジョアンくん!麦茶飲んで!」
私はすぐにジョアンくんに麦茶を飲ませてあげると一気に飲み干していた。
マルコスさんにも渡すとスッキリとした顔をして麦茶を受け取る。
「ありがとうございます」
「それでお話出来ました?」
「はい、ジョアンは銭湯に行きたいのに私がダメと言ったから自分だけで来たと…お金がかかるなら毎日薪を集めるからとまで言われてしまいました」
「マルコスさん…なぜ上司がダメと言ってるかお聞きしても?」
「それは…多分この前のブルード伯爵のせいだと思います」
「え?あの…」
この前はあっさり身を引いてもう興味が無くなったのかと思っていた。
「私の職場は町の商会の下請けなんですが、どうもその商会から通達がきて銭湯に行くなと…だから商会関係の人達はみんなここを使用禁止になっていると思います」
「その商会とブルード伯爵になんの関係が?」
「その商会の支援者がブルード伯爵なんです、他にも支援者がいますがどうもブルード伯爵に何か言われたらしくてみんな賛同しているようでした」
「それってこの前の仕返しって言うか嫌がらせってこと」
私は呆れてお父さんと顔を見合わせた。
「ジョアンも気に入っていただけにすごく残念で…でもすみません、仕事を無くなる訳にはいかないのです」
マルコスさんが頭を下げると私はほっとして床に腰を下ろした。
「よ、よかった~皆さんここが嫌になって来なくなった訳じゃないんですね」
「え?な、何を言って…そんな理由で来なくなった事を怒ってないんですか」
マルコスさんが驚いて座り込んだ私にあたふたしている。
「そんな理不尽な事を言われたら仕方ないですよ、マルコスさんはジョアンくんっていう大切な人がいるなら尚更ですよ。ねぇお父さん」
私はお父さんに顔を向けた。
「そうだな、私も家族の事を言われたら同じ事をしますよ。マルコスさんは気にしないで下さい」
「そうですよ、マルコスさんは来れなくて残念ですがジョアンくんは関係ないですよね?」
「え?」
マルコスさんは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
髪にタオルを被せて扇風機の前で待つように言うと自分の支度をササッとすませた。
「ジョアンくん髪を乾かしてあげるからその間にコーヒー牛乳飲んでてね」
「で、でもぼくコーヒー牛乳のお金は用意してないよ」
「私の分を半分あげるよ、全部飲めないからさ」
「わかった!」
ジョアンくんは嬉しそうにちょびちょび飲みながらきっちり半分を測ろうと気をつけながら飲んでいた。
その様子に笑いながら髪を乾かしてあげる。
「はい!OKだよ、そろそろお父さんも帰ってるかな」
私は番台に上がって男湯を確認する。
「あっ!マキさんジョアンは!?」
するとマルコスさんがお父さんと待っていた。
「あっ今出ましたよー、そちらに連れていきますね」
ジョアンくんを連れて男湯に移動すると、私は番台に戻った。
「すみません、息子がご迷惑をおかけしました」
マルコスさんが謝るとジョアンを睨んだ。
「ジョアン!ほらお前も謝れ」
「ごめんなさい…」
ジョアンくんはなぜ怒られたのかわからずに泣きそうな顔で謝っていた。
「まぁまぁマルコスさん、ジョアンくんはちゃんと自分で薪を用意して自分のお金で入ったんですよ」
「自分で?ジョアン、なぜそんな事を…」
「だって、ぼく…」
マルコスさんはしょんぼりとするジョアンくんをみて何もいえなくなってしまった。
「よかったら銭湯に二人で入ってきたらどうですか?今日はサービスしますよ」
「でも…」
「裸になれば言いたい事も言えるかも知れません」
私達はマルコスさんとジョアンくんを二人っきりにしてあげた。
ゆっくりと久しぶりに親子でお湯につかりジョアンくんは顔を真っ赤にして出てきた。
「ジョアンくん!麦茶飲んで!」
私はすぐにジョアンくんに麦茶を飲ませてあげると一気に飲み干していた。
マルコスさんにも渡すとスッキリとした顔をして麦茶を受け取る。
「ありがとうございます」
「それでお話出来ました?」
「はい、ジョアンは銭湯に行きたいのに私がダメと言ったから自分だけで来たと…お金がかかるなら毎日薪を集めるからとまで言われてしまいました」
「マルコスさん…なぜ上司がダメと言ってるかお聞きしても?」
「それは…多分この前のブルード伯爵のせいだと思います」
「え?あの…」
この前はあっさり身を引いてもう興味が無くなったのかと思っていた。
「私の職場は町の商会の下請けなんですが、どうもその商会から通達がきて銭湯に行くなと…だから商会関係の人達はみんなここを使用禁止になっていると思います」
「その商会とブルード伯爵になんの関係が?」
「その商会の支援者がブルード伯爵なんです、他にも支援者がいますがどうもブルード伯爵に何か言われたらしくてみんな賛同しているようでした」
「それってこの前の仕返しって言うか嫌がらせってこと」
私は呆れてお父さんと顔を見合わせた。
「ジョアンも気に入っていただけにすごく残念で…でもすみません、仕事を無くなる訳にはいかないのです」
マルコスさんが頭を下げると私はほっとして床に腰を下ろした。
「よ、よかった~皆さんここが嫌になって来なくなった訳じゃないんですね」
「え?な、何を言って…そんな理由で来なくなった事を怒ってないんですか」
マルコスさんが驚いて座り込んだ私にあたふたしている。
「そんな理不尽な事を言われたら仕方ないですよ、マルコスさんはジョアンくんっていう大切な人がいるなら尚更ですよ。ねぇお父さん」
私はお父さんに顔を向けた。
「そうだな、私も家族の事を言われたら同じ事をしますよ。マルコスさんは気にしないで下さい」
「そうですよ、マルコスさんは来れなくて残念ですがジョアンくんは関係ないですよね?」
「え?」
マルコスさんは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
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