22 / 50
22
しおりを挟む
私は番台に立つと男湯の方を覗き込んだ。
するとちょっどお父さんがいたので声をかける。
「お父さん、私達先に上がって家で休んでるね。リザちゃんが疲れて寝ちゃったのよ」
「わかった、ジムさん達に伝えておくよ」
お父さんが浴槽へと入っていくのを確認して私は今度こそお茶を飲もうと家へと戻る。
「おかえり、みんなはまだ入ってた?」
お母さんが振り返り確認してくると、その手には私の湯呑みをしっかりと握っていた。
「言ってきた、向こうはまだ出てきてなかったよ」
「男の人は長風呂だからね~」
お母さんがのんびりとお茶をすすった。
私はお湯を沸かす間にリザちゃんの様子を見てくることにした。
「お母さん、お湯沸いたら止めてね」
「はーい?」
お母さん達は話が弾んでいるのか振り向かずに返事をしてきた。
私は怖いから一度火を止めてリザちゃんの様子を見に行くことにした。
階段を登るとまる達が鳴く声が聞こえる。
部屋へと急ぐと中ではリザちゃんが目覚めてベッドの上でまるとふくを笑顔で撫でていた。
二匹は気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らして寝転んでいる。
「リザちゃん起きたのね、もう少し寝ててもいいよ」
私が声をかけるとハッとして手を止めてしまった。
「こ、ここは…どこ?」
「ここは私の部屋だよ。リザちゃんが寝ちゃったから急遽休ませてたの」
「それは…ありがとうございます」
リザちゃんは眉を下げて頭も下げた。
そしてどうしたらいいのかとキョロキョロとしている。
「下にエミリアさん達がいるよ、一緒に行く?」
「えっと…」
下にお母さんが居ると聞いてほっとすると立ち上がりながら部屋の様子を見ていた。
その顔は銭湯に入った時の様に目が輝いている。
「何か気になる?見てもいいよ」
私は視線の先にあった机を指さした。
「べ、別に気になってなんか…」
リザちゃんはパァと顔を輝かせた後に気にならないと済ました顔をした。
「プッ…まぁ好きにしていいよ」
「銭湯の許可の為にちょっと確認させてもらうわ!」
「はい、どーぞ」
私は場所をゆずって机を明け渡した。
リザちゃんは机に向かうと置いてあったノートとシャーペンを掴む。
「これは何かしら?」
ペラペラとめくり紙を撫でたりして何かと確認していた。
「これは字を書く物なんだよ」
違うノートを取り出してサラサラとまるとふくの絵を描いて下に名前を書いた。
「すごい!」
喜ぶリザちゃんにノートを破って絵を渡した。
「良かったらどうぞ」
「いいの!?」
「何枚もあるからね、欲しいならノートもあげるよ」
使ってないノートを一冊リザちゃんに渡した。
しかしリザちゃんはそれを掴んで神妙な顔をしている。
そして真剣な顔を向けた。
「こんな高価な物をそんな簡単に貰えないわ」
「高価…いや五冊セットの安い物なんだけどな」
「そんな綺麗な紙は見た事無いもの」
そうか、この世界だとこういう物は高価になるのか…
ならどうしようかと迷っていると
「でもこれは破いてしまったから頂こうかしら」
私が落書きした紙を大事そうに握りしめた。
「この子達も可愛いし、これはなんて生き物なの?」
「え!猫をしらないの?」
「見た事ないわ、でもすごく可愛い」
また頭を撫でて笑顔を見せる。
「この茶色で縞模様の子がまるで三色模様の子がふくって言うのよ」
「まるにふく…ねこって可愛いな」
リザちゃんはお湯につかった時のように笑った。
するとちょっどお父さんがいたので声をかける。
「お父さん、私達先に上がって家で休んでるね。リザちゃんが疲れて寝ちゃったのよ」
「わかった、ジムさん達に伝えておくよ」
お父さんが浴槽へと入っていくのを確認して私は今度こそお茶を飲もうと家へと戻る。
「おかえり、みんなはまだ入ってた?」
お母さんが振り返り確認してくると、その手には私の湯呑みをしっかりと握っていた。
「言ってきた、向こうはまだ出てきてなかったよ」
「男の人は長風呂だからね~」
お母さんがのんびりとお茶をすすった。
私はお湯を沸かす間にリザちゃんの様子を見てくることにした。
「お母さん、お湯沸いたら止めてね」
「はーい?」
お母さん達は話が弾んでいるのか振り向かずに返事をしてきた。
私は怖いから一度火を止めてリザちゃんの様子を見に行くことにした。
階段を登るとまる達が鳴く声が聞こえる。
部屋へと急ぐと中ではリザちゃんが目覚めてベッドの上でまるとふくを笑顔で撫でていた。
二匹は気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らして寝転んでいる。
「リザちゃん起きたのね、もう少し寝ててもいいよ」
私が声をかけるとハッとして手を止めてしまった。
「こ、ここは…どこ?」
「ここは私の部屋だよ。リザちゃんが寝ちゃったから急遽休ませてたの」
「それは…ありがとうございます」
リザちゃんは眉を下げて頭も下げた。
そしてどうしたらいいのかとキョロキョロとしている。
「下にエミリアさん達がいるよ、一緒に行く?」
「えっと…」
下にお母さんが居ると聞いてほっとすると立ち上がりながら部屋の様子を見ていた。
その顔は銭湯に入った時の様に目が輝いている。
「何か気になる?見てもいいよ」
私は視線の先にあった机を指さした。
「べ、別に気になってなんか…」
リザちゃんはパァと顔を輝かせた後に気にならないと済ました顔をした。
「プッ…まぁ好きにしていいよ」
「銭湯の許可の為にちょっと確認させてもらうわ!」
「はい、どーぞ」
私は場所をゆずって机を明け渡した。
リザちゃんは机に向かうと置いてあったノートとシャーペンを掴む。
「これは何かしら?」
ペラペラとめくり紙を撫でたりして何かと確認していた。
「これは字を書く物なんだよ」
違うノートを取り出してサラサラとまるとふくの絵を描いて下に名前を書いた。
「すごい!」
喜ぶリザちゃんにノートを破って絵を渡した。
「良かったらどうぞ」
「いいの!?」
「何枚もあるからね、欲しいならノートもあげるよ」
使ってないノートを一冊リザちゃんに渡した。
しかしリザちゃんはそれを掴んで神妙な顔をしている。
そして真剣な顔を向けた。
「こんな高価な物をそんな簡単に貰えないわ」
「高価…いや五冊セットの安い物なんだけどな」
「そんな綺麗な紙は見た事無いもの」
そうか、この世界だとこういう物は高価になるのか…
ならどうしようかと迷っていると
「でもこれは破いてしまったから頂こうかしら」
私が落書きした紙を大事そうに握りしめた。
「この子達も可愛いし、これはなんて生き物なの?」
「え!猫をしらないの?」
「見た事ないわ、でもすごく可愛い」
また頭を撫でて笑顔を見せる。
「この茶色で縞模様の子がまるで三色模様の子がふくって言うのよ」
「まるにふく…ねこって可愛いな」
リザちゃんはお湯につかった時のように笑った。
1
お気に入りに追加
410
あなたにおすすめの小説
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
異世界で俺はチーター
田中 歩
ファンタジー
とある高校に通う普通の高校生だが、クラスメイトからはバイトなどもせずゲームやアニメばかり見て学校以外ではあまり家から出ないため「ヒキニート」呼ばわりされている。
そんな彼が子供のころ入ったことがあるはずなのに思い出せない祖父の家の蔵に友達に話したのを機にもう一度入ってみることを決意する。
蔵に入って気がつくとそこは異世界だった?!
しかも、おじさんや爺ちゃんも異世界に行ったことがあるらしい?
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
群青の軌跡
花影
ファンタジー
ルークとオリガを主人公とした「群青の空の下で」の外伝。2人の過去や本編のその後……基本ほのぼのとした日常プラスちょっとした事件を描いていきます。
『第1章ルークの物語』後にタランテラの悪夢と呼ばれる内乱が終結し、ルークは恋人のオリガを伴い故郷のアジュガで10日間の休暇を過ごすことになった。家族や幼馴染に歓迎されるも、町長のクラインにはあからさまな敵意を向けられる。軋轢の発端となったルークの過去の物語。
『第2章オリガの物語』即位式を半月後に控え、忙しくも充実した毎日を送っていたオリガは2カ月ぶりに恋人のルークと再会する。小さな恋を育みだしたコリンシアとティムに複雑な思いを抱いていたが、ルークの一言で見守っていこうと決意する。
『第3章2人の物語』内乱終結から2年。平和を謳歌する中、カルネイロ商会の残党による陰謀が発覚する。狙われたゲオルグの身代わりで敵地に乗り込んだルークはそこで思わぬ再会をする。
『第4章夫婦の物語』ルークとオリガが結婚して1年。忙しいながらも公私共に充実した生活を送っていた2人がアジュガに帰郷すると驚きの事実が判明する。一方、ルークの領主就任で発展していくアジュガとミステル。それを羨む者により、喜びに沸くビレア家に思いがけない不幸が降りかかる。
『第5章家族の物語』皇子誕生の祝賀に沸く皇都で開催された夏至祭でティムが華々しく活躍した一方で、そんな彼に嫉妬したレオナルトが事件を起こしてミムラス家から勘当さる。そんな彼を雷光隊で預かることになったが、激化したミムラス家でのお家騒動にルーク達も否応なしに巻き込まれていく。「小さな恋の行方」のネタバレを含みますので、未読の方はご注意下さい。
『第6章親子の物語』エルニアの内乱鎮圧に助力して無事に帰国したルークは、穏やかな生活を取り戻していた。しかし、ミムラス家からあらぬ疑いで訴えられてしまう。
小説家になろう、カクヨムでも掲載
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた
ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで先行投稿中。
遊戯遊太(25)は会社帰りにふらっとゲームセンターに入った。昔遊んだユーフォーキャッチャーを見つめながらつぶやく。
「遊んで暮らしたい」その瞬間に頭に声が響き時間が止まる。
「異世界転生に興味はありますか?」
こうして遊太は異世界転生を選択する。
異世界に転生すると最弱と言われるジョブ、遊び人に転生していた。
「最弱なんだから努力は必要だよな!」
こうして雄太は修行を開始するのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる