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「あ、暑い…」
ライリーさんは鎧を脱ぎたそうにしながらお父さんとおじいちゃんの仕事を少し離れて見ていた。
「ライリーさん、その暑そうな服を脱いだらどうだい?まだまだ熱くなるよ」
おじいちゃんが呆れて声をかけるとライリーさんはまだ熱くなるのかと絶望的な顔をする。
「しかし…勤務中ですし…」
ライリーさんは真面目なのか悩んでいるようだった。
「私達逃げたりしませんよ、それに服を脱いでもその物騒な槍みたいの持ってればいいじゃないですか?」
私は冷たい麦茶を持って三人に手渡した。
お父さんとおじいちゃんは慣れた様子でゴクッと一飲みするとライリーさんはそれは何かと不安そうな顔をしている。
「これは麦茶ですよ、美味しいし飲まないと倒れちゃいますよ」
カランッ!と氷がコップの中で音を立てるとライリーさんがゴクリと唾を飲んだ。
熱いこの部屋にいて喉が乾いて限界なのだろう、しかし初めてみる麦茶にどうしようかと悩んでいるようだった。
「要らんのか?ならワシが飲むかな…」
おじいちゃんがライリーさんの麦茶に手を伸ばそうとするとライリーさんが慌ててそれを拒否した。
「い、いえ!いただきます!」
もう限界のようで覚悟を決めたようにゴクッと一口飲むと美味しかったのなゴクゴクと残りを無言で飲み干した。
「う、うまい…」
「もう一杯いかがですか?」
「いいんですか!?」
ライリーさんは嬉しそうに顔を輝かせる。
「ええ、沢山ありますし、お父さん達もまだ飲むでしょ?」
「ああ、もらおう」
お父さん達にもお代わりを注ぐとライリーさんは今度はゆっくりと味わうように飲んでいた。
「麦茶でそんな美味しそうな顔をするならコーヒー牛乳飲んだらもっと驚きそうだね」
「こーひー牛乳とはなんですか?」
「お風呂の後に飲む物ですよ、甘くて冷たくてこれが美味しいんだ」
「これよりもですか?」
「まぁ人それぞれですけど私はコーヒー牛乳の方が好きですね!」
「普通ん時なら麦茶が美味いが…風呂上がりはコーヒー牛乳だな」
おじいちゃんがこっちを見ないで呟いた。
「それは…飲んで見たいものだ!」
「お風呂の後にお出ししますね!私達が安全だって証明する為にね!」
笑ってそう言うと、ライリーさんは申し訳なさそうに頭を下げた。
「すみません!」
「え?いきなりなんですか?」
急に謝ってきて困惑する。
いつもなら火をつけたら絶対に目を離さないおじいちゃんまで驚いてチラッとこっちの様子をうかがっていた。
「あなた達の事を誤解してました…この数時間一緒にいてあなた達が酷い人達では無いと確信しました」
ライリーさんは頭を下げて武器を下ろした。
「な、なんで急に?私達まだ何もしてませんよ」
「いえ、こんな過酷な環境で働き美味しいお茶までご馳走になりました…何より誰一人怠けずにずっと動き働いてます。そんな人達が悪い方だとは思えません!私が領主様にキチンと説明致します」
「そ、それはありがとうございます…じゃあお風呂はやめます?」
せっかく火を起こしたのにもったいないなと思っていると…
「あっ…出来ればお願いします。その後のこーひー牛乳も…」
ライリーさんは腰を低くしてお願いしてきた。
「ふふ、わかりました。私達だって入って欲しいもんね」
「そうだな、是非とも銭湯の良さを知って欲しいです」
お父さんがおじいちゃんを見ると当たり前のように手を止める気は無いようだった。
「なら、その硬っ苦しいのを脱いどきな」
「はい」
ライリーさんは迷うことなく鎧を脱ぎ出してその近くに槍も置いた。
そのあとはお父さん達に興味深げにボイラー室の事を質問したりしている。
私は嬉しそうに説明するお父さんとおじいちゃんをみて笑いながらそっと部屋を出ていった。
ライリーさんは鎧を脱ぎたそうにしながらお父さんとおじいちゃんの仕事を少し離れて見ていた。
「ライリーさん、その暑そうな服を脱いだらどうだい?まだまだ熱くなるよ」
おじいちゃんが呆れて声をかけるとライリーさんはまだ熱くなるのかと絶望的な顔をする。
「しかし…勤務中ですし…」
ライリーさんは真面目なのか悩んでいるようだった。
「私達逃げたりしませんよ、それに服を脱いでもその物騒な槍みたいの持ってればいいじゃないですか?」
私は冷たい麦茶を持って三人に手渡した。
お父さんとおじいちゃんは慣れた様子でゴクッと一飲みするとライリーさんはそれは何かと不安そうな顔をしている。
「これは麦茶ですよ、美味しいし飲まないと倒れちゃいますよ」
カランッ!と氷がコップの中で音を立てるとライリーさんがゴクリと唾を飲んだ。
熱いこの部屋にいて喉が乾いて限界なのだろう、しかし初めてみる麦茶にどうしようかと悩んでいるようだった。
「要らんのか?ならワシが飲むかな…」
おじいちゃんがライリーさんの麦茶に手を伸ばそうとするとライリーさんが慌ててそれを拒否した。
「い、いえ!いただきます!」
もう限界のようで覚悟を決めたようにゴクッと一口飲むと美味しかったのなゴクゴクと残りを無言で飲み干した。
「う、うまい…」
「もう一杯いかがですか?」
「いいんですか!?」
ライリーさんは嬉しそうに顔を輝かせる。
「ええ、沢山ありますし、お父さん達もまだ飲むでしょ?」
「ああ、もらおう」
お父さん達にもお代わりを注ぐとライリーさんは今度はゆっくりと味わうように飲んでいた。
「麦茶でそんな美味しそうな顔をするならコーヒー牛乳飲んだらもっと驚きそうだね」
「こーひー牛乳とはなんですか?」
「お風呂の後に飲む物ですよ、甘くて冷たくてこれが美味しいんだ」
「これよりもですか?」
「まぁ人それぞれですけど私はコーヒー牛乳の方が好きですね!」
「普通ん時なら麦茶が美味いが…風呂上がりはコーヒー牛乳だな」
おじいちゃんがこっちを見ないで呟いた。
「それは…飲んで見たいものだ!」
「お風呂の後にお出ししますね!私達が安全だって証明する為にね!」
笑ってそう言うと、ライリーさんは申し訳なさそうに頭を下げた。
「すみません!」
「え?いきなりなんですか?」
急に謝ってきて困惑する。
いつもなら火をつけたら絶対に目を離さないおじいちゃんまで驚いてチラッとこっちの様子をうかがっていた。
「あなた達の事を誤解してました…この数時間一緒にいてあなた達が酷い人達では無いと確信しました」
ライリーさんは頭を下げて武器を下ろした。
「な、なんで急に?私達まだ何もしてませんよ」
「いえ、こんな過酷な環境で働き美味しいお茶までご馳走になりました…何より誰一人怠けずにずっと動き働いてます。そんな人達が悪い方だとは思えません!私が領主様にキチンと説明致します」
「そ、それはありがとうございます…じゃあお風呂はやめます?」
せっかく火を起こしたのにもったいないなと思っていると…
「あっ…出来ればお願いします。その後のこーひー牛乳も…」
ライリーさんは腰を低くしてお願いしてきた。
「ふふ、わかりました。私達だって入って欲しいもんね」
「そうだな、是非とも銭湯の良さを知って欲しいです」
お父さんがおじいちゃんを見ると当たり前のように手を止める気は無いようだった。
「なら、その硬っ苦しいのを脱いどきな」
「はい」
ライリーさんは迷うことなく鎧を脱ぎ出してその近くに槍も置いた。
そのあとはお父さん達に興味深げにボイラー室の事を質問したりしている。
私は嬉しそうに説明するお父さんとおじいちゃんをみて笑いながらそっと部屋を出ていった。
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