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番外編

〇年後…2

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「そんなわけにいかないよね。はい!お仕事頑張って!」

私は寂しそうにする二人を慰めて、カイルを送り出した。

「うぅ…パァパ…」

セトは顔を埋めながらチラッと仕事に向かっていくカイルの後ろ姿を目で追う。

「セト見て、お仕事に向かうパパってかっこいいね」

「うん…」

「セトもいつかパパみたいにかっこよくなるかな?」

「なる!」

「なら泣いてちゃダメだよ。男の子でしょ?それに…」

私はにっこりと笑うと

「セトはもうすぐお兄ちゃんになるんだよ?」

「おにいちゃん?」

セトは私を見つめて首を傾げた。

セトを下ろして目線を合わせるように屈むと…お腹を撫でた。

「ママのお腹にね…セトの妹か弟がいるんだよ。生まれてきたらセトはお兄ちゃん!下の子を守ってくれるかな?」

「ぼく…おにいちゃん…」

セトは驚くと慌てて涙を拭いた!

「ぼく!もうなかない!おにいちゃんだから」

急にたくましく男の子の顔になった。

「ふふ、パパにそっくりでかっこいいなぁ~」

私は愛おしくてセトを抱きしめる。

「あっセト…パパにはまだ内緒だよ。驚かせるからね」

「うん!」

セトはにっこりと笑った。

そして手を繋ぎ屋敷の中に一緒に戻った…


夕方になりカイルが屋敷に帰ってくると…

「パパおかえり!ごはん!」

セトはカイルを迎えて早く早くと手を引っ張って連れていく。

「おいおい、どうしたんだ?」

手を引かれながらもカイルは嬉しそうにセトの後をついて行く。

「はい!パパすわって!」

するといつもなら私の隣は自分の席なのにカイルに譲った。

「え?ここに座っていいのか?」

「うん!」

カイルは戸惑いながらも席に座ると

「セトはどうしたんだ?」

隣の私にコソッと聞いてくる。

「さぁ…どうしたんだろうね?少し大人になったのかな?」

私はクスクスと笑いながらセトとカイルの様子を眺めていた。

食事も終わり寝る支度を整えてベッドに向かおうとすると…

うつらうつらとセトが頭を傾げている。

「ふふ…今日はたくさんお手伝いをしてくれたから疲れたのね」

私がセトを抱きあげようとすると…

「俺が…」

カイルがサッとセトを抱き上げてくれた。

「大きくなったなぁ…」

しみじみとセトを抱き上げてその重さを噛み締める。

「そうね…毎日本当に色んな成長を見せてくれて…」

その可愛い寝顔を覗き込む。

セトをベッドに寝かせると…

「ローズ…」

部屋を少し暗くしてカイルが手を握りしめた。

優しく手を引かれてソファーへと連れていかれる。

「カイル?セトが起きちゃうよ…」

「あんなにぐっすりなんだ…ローズが声を我慢すれば大丈夫だよ…」

髪を耳にかけられながらじっと顔を見つめられる。

それだけで体が熱くなるのを感じた。

「愛してる…」

カイルはそういいながら唇を押し当てる。

私もそれを待っていたかのように受け止めた…カイルの熱くなる舌先に自分の舌を絡めると…

「ローズ…」

カイルの吐息がおでこにあたる。

火照った体にぎゅっと抱きつくと…

「ごめんなさい…今日はここまで…」

私の言葉にカイルは目を見開いた!

「えっ!?な、なんで!」

少し大きな声に慌てて口に手を押し当てる。

そっと振り返ってベッドを見るがセトが起きた様子はなかった。

ほっと息を吐くと…私はカイルの手を握りしめてその手をお腹へと運ぶ…

そしてお腹を撫でさせると…

「まさか!?」

カイルの驚く顔ににっこりと微笑んだ。

「セトは知ってるのか?」

「ええ」

「だからあんなに張り切ってたのか…」

セトの様子を思い出したのかクスッと笑う。

「ごめんなさい…だからしばらくは…」

私はカイルの思いに答えられないことを謝ると

「何を謝る…こんな嬉しいことを…それに…」

そう言って笑うと私をそっと抱き上げた。

「別にキスはし放題だよな」

「え?ええ…もちろん」

私は笑いながら頷いた。

「なら大丈夫…可愛い我が子のためならなんだって我慢出来る」

カイルはそう言うと頬に優しく手を添えて舐めるようにキスをする…

あんまり甘くしないでほしい…

カイルを見つめて熱くなった体をよじる。

自分の方が我慢できなくなりそうだった…

そのままカイルに抱きしめられながら眠りについた。





「ローズ…ローズ…」

カイル様の声にローズは目を開けた。

「おはよう…」

目覚めてカイル様の笑顔に一瞬自分が何処に居るのかわからなくなった…

「どうした?」

ボーッとする私にカイルは構わずにキスを落としていく。

「あれ…カイル様…セトは?」

「セト?それって誰?」

カイル様が男の人の名前に顔をしかめる。

「セトです…私とカイル様の可愛い子供…」

「ふっ…ローズ気が早いね。まだ俺達には子供はいないよ?」

カイル様がクスクスと笑うと、ようやく頭が晴れてきて今の状況を思い出した。

ああ…そうだ。
私達は結婚したばかりでまだ子供は出来ていない…いつか可愛い子がなんて話をして寝たから夢を見たようだ…

「なんか…すごいリアルな夢を見ました…カイル様にそっくりな可愛い子供がいる夢です」

「へぇ…それがセト?」

「はい…」

ああ…あの可愛い子は夢だったのか…

隣にいないあの温もりが恋しくなる。

「セト…か。すごく可愛い名前だね、本当に男の子が産まれたらそう名ずけようか?」

「え?いいんですか?」

「もちろん…でもその為にはまずは子供を作らないとね…」

カイル様はそう言って笑うと私の服を脱がせる。

「こ、こんな朝から!?」

「だってローズ…早くセトにに会いたくない?」

「会いたい…です」

「なら決まり…今日はゆっくり一日一緒にいよう」

カイル様は嬉しそうに上着を脱ぐと覆いかぶさってきた。

カイル様に似た可愛い子供…

私はカイル様の顔を引き寄せて自分からキスをした…

もう少し待っててね…私達の愛しい子。
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