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「えっと…まずは明日多分王都からの使者が来てまたすぐに王都に帰ることになると思う」
「そうですか」
キャシーは頷く。
本来ならこんな自由な旅ができる身分ではなかった、そんな窮屈な毎日がまたすぐに戻ってくることに残念に思いながらも素直に了承する。
「では自由なのも今夜までですね」
少し寂しそうに笑うと
「ではロイ王子もゆっくり休んで下さい、明日からまた長旅になりますから…」
キャシーが扉に近づくと
「そう、自由にできるのも今夜だけなんだ…」
ロイは離れようとしたキャシーの手をギュッと掴んだ。
「向こうに帰ればこうやって軽々しく君の手も掴むことが出来なくなるかもしれない…もうこの温もりを知ってしまった今ではそんなの耐えられないんだ…」
ロイは真剣な顔でキャシーを見つめた。
そこにはいつも冗談で笑わせようとする笑顔出なく…熱い眼差しのただの自分を求める男がいた。
「ロイ…王子…」
「今夜だけは王子じゃなくただのロイと…君を好きな平凡な男として扱ってくれ…」
「ロ、ロイ…」
「そう…」
「それは…出来ません…」
近づいて来るロイの顔を背けてキャシーはそれを拒否する。
ロイはキャシーの拒絶に固まる、キャシーは少なからず自分に好意を持ってくれているのではないかと思っていたがそれは自分の思い違いだったのかもしれないと気がついた。
今まで好きでも無い相手に求められる事の多かった身としては、自分のこの行為はキャシーにとって嫌がらせになっているのかもしれない…
ロイはキャシーを掴んでいた手の力を緩めようとするとキャシーがじっと顔を覗き込んでいた。
「私は…王子としてのロイ様も…普段のカイル様達と楽しそうにするロイもどちらもお慕い申しあげています…だ、だからただのロイ様なんていないのです」
「キャ、キャシー!!」
ロイは嬉しそうにキャシーを抱きしめた!
「やっと言ってくれた…俺を好きだって…本当に?本当だよな!?」
「ふふ、はい…ロイ様の思いを知ってから…どんどん好きになってしまいました…まさか自分にこんな感情があるとは思いませんでした…」
キャシーの赤くなる頬を撫でながらロイはもう一つ気になっていた事を聞く。
「それは…ローズより好きって事でいいよね?」
「ローズより?」
キャシーの顔に疑問の表情が浮かぶ。
「君の中にはどうもローズがいる気がして…俺はローズに一生勝てないんじゃないかと…」
不安そうなロイ王子の顔にキャシーは驚くと…
えいっ!
キャシーは目をつぶって思い切ってロイの唇に向かって自分からキスをした。
「えっ?」
キャシーのキスは目をつぶった事で少しズレてロイの唇の端にあたった。
しかしキャシーはそんな事に気づかずに顔を真っ赤にして目をそらすと…
「こ、こんな事ローズにはしません…したいと思ったのは…ロイ王子だけです…」
恥ずかし気持ちを抑えてそういうが…ロイ王子からはなんの反応も返事も返ってこなかった。
キャシーは不安になってそっとロイの方を見ると…そこには顔を真っ赤にしたロイが口を覆い隠していた。
「王子?」
キャシーは不安になり伺うように声をかけると
「きゃあ!」
突然ロイはキャシーを抱き上げて広いベッドへと横たえた。
「ロ、ロイ王子?どうしたんですか!?」
キャシーが慌てて起き上がろうとすると、がっちりと両腕をベッドに押し付けられる。
「これは…キャシーが悪いからね…」
ロイはそういうとキャシーの小さな唇に自分の唇を重ねた、最初は軽く触れるだけ…しかしどんどんと強く深くなっていく。
「へ?ん?んん!んー!」
なんでと言いたいがロイ王子のキスで思考が定まらない。
二度目のキスはなんだか前よりも甘く感じた…
ロイ王子が最後まで味わうようにペロッと舐めてようやく唇を離すと力んでいた体が力が抜ける、ハァハァと苦しそうに息を吐くと、キャシーの横にドサッと倒れ込んだ。
「お、王子?大丈夫ですか?」
何故かロイの方が苦しそうでキャシーが心配する。
「無理…だいじょばない…」
ロイ王子は顔を隠して荒く息を吐いていた。
「そ、そんな!い、医者を呼びましょうか!?」
キャシーが離してと手を退かそうとするがロイ王子の繋いでいる片腕は力は強く身動きが取れない。
「無理…これは医者には治せないから…」
「そんな!」
キャシーが絶望的な顔をすると…
「治せるのはキャシーだけだよ…」
「え?わ、私ですか?」
「そう…ねぇお願い、王都に帰ったら結婚して…」
「え?結…婚?」
「そう、結婚…駄目?」
ロイ王子の甘えるような囁きにキャシーは背筋がゾクッとする。
「だ、駄目というか…それを決めるのは…私ではないかと…」
「俺はキャシーの言葉が聞きたい、嫌なら嫌と言ってくれ。王子の伴侶はそれなりにしんどいからね…」
ロイが少し悲しそうにすると…
「私は…あなたの隣にいたい…どうせなら一緒にしんどくなりましょう」
キャシーは何を今更そんなことをと笑った。
「ありがとう…」
ロイはキャシーに微笑むと…どちらからともなく近づいて誓うようなキスをした。
「そうですか」
キャシーは頷く。
本来ならこんな自由な旅ができる身分ではなかった、そんな窮屈な毎日がまたすぐに戻ってくることに残念に思いながらも素直に了承する。
「では自由なのも今夜までですね」
少し寂しそうに笑うと
「ではロイ王子もゆっくり休んで下さい、明日からまた長旅になりますから…」
キャシーが扉に近づくと
「そう、自由にできるのも今夜だけなんだ…」
ロイは離れようとしたキャシーの手をギュッと掴んだ。
「向こうに帰ればこうやって軽々しく君の手も掴むことが出来なくなるかもしれない…もうこの温もりを知ってしまった今ではそんなの耐えられないんだ…」
ロイは真剣な顔でキャシーを見つめた。
そこにはいつも冗談で笑わせようとする笑顔出なく…熱い眼差しのただの自分を求める男がいた。
「ロイ…王子…」
「今夜だけは王子じゃなくただのロイと…君を好きな平凡な男として扱ってくれ…」
「ロ、ロイ…」
「そう…」
「それは…出来ません…」
近づいて来るロイの顔を背けてキャシーはそれを拒否する。
ロイはキャシーの拒絶に固まる、キャシーは少なからず自分に好意を持ってくれているのではないかと思っていたがそれは自分の思い違いだったのかもしれないと気がついた。
今まで好きでも無い相手に求められる事の多かった身としては、自分のこの行為はキャシーにとって嫌がらせになっているのかもしれない…
ロイはキャシーを掴んでいた手の力を緩めようとするとキャシーがじっと顔を覗き込んでいた。
「私は…王子としてのロイ様も…普段のカイル様達と楽しそうにするロイもどちらもお慕い申しあげています…だ、だからただのロイ様なんていないのです」
「キャ、キャシー!!」
ロイは嬉しそうにキャシーを抱きしめた!
「やっと言ってくれた…俺を好きだって…本当に?本当だよな!?」
「ふふ、はい…ロイ様の思いを知ってから…どんどん好きになってしまいました…まさか自分にこんな感情があるとは思いませんでした…」
キャシーの赤くなる頬を撫でながらロイはもう一つ気になっていた事を聞く。
「それは…ローズより好きって事でいいよね?」
「ローズより?」
キャシーの顔に疑問の表情が浮かぶ。
「君の中にはどうもローズがいる気がして…俺はローズに一生勝てないんじゃないかと…」
不安そうなロイ王子の顔にキャシーは驚くと…
えいっ!
キャシーは目をつぶって思い切ってロイの唇に向かって自分からキスをした。
「えっ?」
キャシーのキスは目をつぶった事で少しズレてロイの唇の端にあたった。
しかしキャシーはそんな事に気づかずに顔を真っ赤にして目をそらすと…
「こ、こんな事ローズにはしません…したいと思ったのは…ロイ王子だけです…」
恥ずかし気持ちを抑えてそういうが…ロイ王子からはなんの反応も返事も返ってこなかった。
キャシーは不安になってそっとロイの方を見ると…そこには顔を真っ赤にしたロイが口を覆い隠していた。
「王子?」
キャシーは不安になり伺うように声をかけると
「きゃあ!」
突然ロイはキャシーを抱き上げて広いベッドへと横たえた。
「ロ、ロイ王子?どうしたんですか!?」
キャシーが慌てて起き上がろうとすると、がっちりと両腕をベッドに押し付けられる。
「これは…キャシーが悪いからね…」
ロイはそういうとキャシーの小さな唇に自分の唇を重ねた、最初は軽く触れるだけ…しかしどんどんと強く深くなっていく。
「へ?ん?んん!んー!」
なんでと言いたいがロイ王子のキスで思考が定まらない。
二度目のキスはなんだか前よりも甘く感じた…
ロイ王子が最後まで味わうようにペロッと舐めてようやく唇を離すと力んでいた体が力が抜ける、ハァハァと苦しそうに息を吐くと、キャシーの横にドサッと倒れ込んだ。
「お、王子?大丈夫ですか?」
何故かロイの方が苦しそうでキャシーが心配する。
「無理…だいじょばない…」
ロイ王子は顔を隠して荒く息を吐いていた。
「そ、そんな!い、医者を呼びましょうか!?」
キャシーが離してと手を退かそうとするがロイ王子の繋いでいる片腕は力は強く身動きが取れない。
「無理…これは医者には治せないから…」
「そんな!」
キャシーが絶望的な顔をすると…
「治せるのはキャシーだけだよ…」
「え?わ、私ですか?」
「そう…ねぇお願い、王都に帰ったら結婚して…」
「え?結…婚?」
「そう、結婚…駄目?」
ロイ王子の甘えるような囁きにキャシーは背筋がゾクッとする。
「だ、駄目というか…それを決めるのは…私ではないかと…」
「俺はキャシーの言葉が聞きたい、嫌なら嫌と言ってくれ。王子の伴侶はそれなりにしんどいからね…」
ロイが少し悲しそうにすると…
「私は…あなたの隣にいたい…どうせなら一緒にしんどくなりましょう」
キャシーは何を今更そんなことをと笑った。
「ありがとう…」
ロイはキャシーに微笑むと…どちらからともなく近づいて誓うようなキスをした。
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