貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

三園 七詩

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「えっと…これは?」

「何があったんでしょう?」

三人で手を握りめながら笑い合うローズ達をロイとクリスは眉をひそめて見つめる。

「キャシー?一体何があったんだ?」

ロイが声をかけると…

「い、いえなんでも…」

「本当にハルジオン?」

クリスもハルジオンを見つめた。

「ええ、ロイ王子もクリスも安心して。大事な二人はなんともないわよ」

ローズは起き上がると二人を掴んで抱き起こした。

そんなローズにキャシーとハルジオンはぽっと赤くなる。

「「はぁ…」」

そんな男前なローズにクリス達はため息をつくと

「やっぱり一番のライバルはローズか…」

「姉さん…さすがと言うべきかなんと言うか…」

二人は苦笑すると

「はい、二人共。私の大事な友達を泣かしたら許さないわよ」

ローズは二人の手を引いてロイとクリスに手渡した。

「ローズ」

「ローズ様…」

「カイル様はお仕事かしら?」

ローズがクリスに聞くと

「は、はい!罪人の手続きをスチュアートさんと…」

「わかったわ、私も手伝いに行ってきます。クリスはこのままこの部屋を使って、ハルジオンとしっかりと話すのよ。キャシーとロイ王子には客室へご案内します」

ローズが出ていこうとすると…

「ね、姉さん!」

クリスが頬を赤らめた。

「クリス、私はあなたの姉としてあなたには一番に幸せになって欲しいと思ってる。それができるのはハルジオンだけよね?」

クリスはコクっと頷いた。

「それでこそ私の自慢の弟だわ!男としてしっかりとね!」

ローズはクリスを強く抱きしめるとキャシーとロイ王子を連れて部屋を出ていった。

部屋に二人きりになると…沈黙が流れる。

「ハルジオン、け、怪我は大丈夫?」

クリスが落ち着かない様子でハルジオンに声をかけた。

「は、はい!すっかり良くなりました!」

ハルジオンが慌てて答えると

「そ、そっか…それなら、よかった。 それと僕はまた王都にすぐに戻らないと行けなくて…」

「えっ…」

ハルジオンの顔が悲しそうに曇った。

「ごめん…だからさっきの話だけど…もう少し待っててくれる?ハルジオンも考える時間が欲しいんだよね…」

クリスが眉を下げて笑った。
ローズの大人としての態度にクリスは反省していた…自分の気持ちを押し付け過ぎてハルジオンを困らせていたのではないかと…

「ちょっと僕、急ぎすぎたみたいだよね…姉さんみたいに落ち着いた態度を取らないと…駄目だよね」

フーっと深く息を吐くと…

「じゃあ今日はゆっくり休んで」

クリスはハルジオンにこの部屋を使うように言うと部屋を出ていこうとする。

クリスが背を向けて部屋の扉に手をかけると…

バッ!

ハルジオンはクリスの背中に抱きついていた。

「クリス様…行かないで…」

ハルジオンの消え入りそうな声にクリスはクラクラと理性が飛びそうになる。

「ハ、ハルジオン!?どうしたのさぁ」

クリスは声が裏返った。

「そのまま、後ろを向いたまま聞いてください」

ハルジオンはクリスの背中に語りかけた。
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