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「一体何がそんなにも引っかかるの?」

「そ、それは…」

ハルジオンは二人には秘密にしておけないともう一度背中をさらして傷を見せた。

「酷い…」

「ねぇ、私の大事な妹にこんな酷い事をした人は誰かしら?」

ローズが指をポキポキと鳴らす。

「こ、これはメイドの時にあの方にやられて…」

思い出しても体が震える。

「ハルジオンにこんな酷いことをしていたのね…これはまた会ったら一言言ってやらないと!」

「いえ!それはもういいのですが…こんな体ではもう誰かと一緒になるのは諦めていました。でも私あろう事かクリス様を好きになってしまった…」

「ハルジオンの憂いはその傷痕だけなの?」

ローズが優しく語りかけるとハルジオンは力なくコクっと頷いた。

「なら良かった!バルト!」

「ハイハイ、全く人使いならぬカーバンクル使い荒いご主人様だな!」

部屋のすみで寝てたバルトが出番かと起き上がった。

「どれどれ?んーこのくらいなら綺麗に消えるだろ」

バルトは可愛い肉球でハルジオンの背中をぷにっと触った。

「きゃあ!」

ハルジオンはくすぐったさに声をあげるとクリスにキスされた事を思い出すと、耳を真っ赤にしてしまった。

「あら?ハルジオンどうしたの?」

急に顔を俯かせたハルジオンにローズとキャシーが横から覗き込んだ。

「な、なんでもないです!決してクリス様の事を思い出していた訳では!」

慌てて否定するとローズとキャシーか顔を見合わせてニコッと笑いハルジオンに詰め寄った。

「あら、うちの弟ハルジオンに何したんだろ?」

「ハルジオンさん!是非とも勉強させてください!わ、私もその…ロイ様に…」

キャシーがモジモジしながらハルジオンと同じように頬を染めた。

「なになに!?ハルジオンもキャシーもそんな事になってるの!?」

ローズが驚くと

「ここは既にカイル様とラブラブなローズ様にご教授願おうかしら、ねぇハルジオンさん」

キャシーがローズに微笑んだ。

「そ、そんな!だから私は…」

ハルジオンが断ろうとすると…

「もう傷なんてないのに?」

ローズが優しい声で語りかけた。

「え?」

ハルジオンが驚いているといつも間にかバルトがローズの膝で寝ていた。

「ありがとうバルト、ゆっくり休んでね」

愛おしそうにバルトの頭を撫でるとバルトが気持ちよさそうに目を瞑った。

「鏡の前に…」

キャシー様に促されてハルジオンは鏡の前に立つ。

あの傷が消えない時から鏡を見ることが嫌いだった…

そっと自分の背中を鏡に映す。

「嘘…」

ハルジオンは手を顔に覆って床に膝をついた。

そこにはクリス様に見せた傷が綺麗に無くなっていた。

泣き出すハルジオンをローズとキャシーは優しく抱きしめてあげた。
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