貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

連載

361.責任

｢クリス様、何を言ってるんですか？｣

町の人達が納得できないとクリス様を睨みつけている。

｢ご、ごめんなさい！私は平気ですからクリス様はお仕事に行ってください！｣

ハルジオンがクリス様から降りようとすると

｢そんな状態のハルジオンさんを置いて帰ってくるなんて絶対駄目です！｣

｢そうですよ！あんな目にあったのに傷ついた彼女を一人にする気ですか？｣

町の人達はどうやらこちらには帰ってこなくていいと怒っているようだった。

｢いや、スチュアートさんや屋敷の人達がいるから…｣

クリスが大丈夫と言おうとすると…

｢そんな状態のハルジオンさんを他の人に任せられます？｣

クリスはハッとすると腕の中で小さくなっているハルジオンを見つめた。

不安そうな顔に擦り傷だらけの腕、はだけた胸元…

｢そうですね、すみませんが今夜は皆さんだけでお願い出来ますか？｣

｢え？クリス様！何言ってるんですか！？｣

｢ハルジオンは黙ってて、そんな状態で馬にも乗れないし微かに震えてるし、そんな可愛い顔を他の人達に見せられないでしょ｣

クリスに言われてハルジオンはポカンと口を開けてしまう。

固まって口を開けて黙ったハルジオンにクリスは了承と受け取りニコッと笑う。

｢ではお願いします｣

クリスはハルジオンを抱き上げたまま、馬に乗ると町の人達が満足そうに笑顔で見送った。

クリスは相変わらずポカンとしたハルジオンを落とさないようにギュッと抱き寄せて、屋敷まで急いで馬を走らせた。

屋敷に着くとスチュアートさん達が迎えてくれるがハルジオンの様子に目を見開き驚いていた。

｢ハルジオンさんに何があったのですか！？｣

｢詳しい事は町の人達に、今犯人達を捕まえてありますのでスチュアートさんそっちの方頼んでもいいでしょうか？｣

クリスが頼むと、スチュアートは快く承諾してくれる。

｢はい！おまかせ下さい、その代わりハルジオンさんの事よろしくお願いします｣

｢もちろんです！大事な人ですから｣

クリスの言葉にスチュアートさんは嬉しそうに頷き、屋敷の人達を数名連れて町へと向かった。

クリスはハルジオンを自分の部屋に連れていくと、クレアさんとメイド達に任せてハルジオンの怪我の様子など確認してもらった。

｢大きな怪我は無いようですね、この手の痕と草や木で傷付いた擦り傷、あとは胸の引っ掻き傷が少し…｣

｢全くなんて女なのかしら！クリス様！ハルジオンを傷つけた女をちゃんととっちめて下さいね！｣

仲間のメイドさん達がプンプン怒りながら優しく体を拭いてくれた。

｢ああ、もちろんだよ｣

クリス様はベッドに寝るハルジオン達が見えないように周りに衝立を置き見ないように後ろを向いて立っていた。

するとメイドが衝立の向こう側から出てくると声をかけた。

｢はい、もういいですよ。ではクリス様ごゆっくり…私達は他の仕事があるのでここからいっちばーん離れた部屋に居ますから｣

｢ありがとう｣

クリスが苦笑してメイドさん達にお礼を言うと…怖い顔でクレアさんが近づいてきた。

｢クリス様！｣

グイッと顔を近づけてくる。

｢な、なんでしょうクレアさん…｣

｢責任は取れるんですよね？｣

クレアさんの真剣な表情にクリスはクスッと笑うと

｢もちろんです｣

クリスの言葉にクレアさんは満足そうに頷き…

｢ごゆっくり…｣

二人を残してゆっくりと部屋の扉を閉めた。