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358.走馬灯

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「何を言っているの…クリス様がそんな事喜ぶわけない!それに好きならその人の幸せを願うものじゃないの!?」

「何言ってるのよ…一番に願うのは自分の幸せに決まってるでしょ?私が幸せなら相手も幸せに決まってる。私はこんなところで終わる気はない、絶対に幸せになるんだから…」

そう言ってハルジオンの服を掴み脱がせようとする。

「やめて!そんな事したら大変な事になるのよ!私は知ってる…そういう人を見てきたから!」

「そんなのバレなきゃ大丈夫よ!」

「私の前に仕えていた方も同じ事を言ってい破滅した…あなたはまだ間に合う!こんな事はやめて!」

「うるさいのよ!」

イブはハルジオンはの胸ぐらを掴むと思いっきり引っ張った!

ビリッ!!

服の避ける音がしてハルジオンはバランスを崩して真後ろの崖に吸い込まれるようによろめく…

足がもつれて体制が…そのまま後ろに倒れたら確実に落ちる!

わかっているのに体が言う事をきかない。

すると周りがゆっくりと流れていくのを感じた。

目の前には悪びれる様子のないイブの不適な笑顔が見える、落ちそうになっている私を嬉しそうに見下ろしている。

あーあ、死ぬ前にちゃんとクリス様に気持ちを伝えればよかった。

もう一度だけ会いたかったな…

ハルジオンはゆっくり目を閉じようとすると…

「ハルジオン!!手を伸ばせ!」

もう一度聞きたいと思っていた人の叫び声が聞こえた。

今回は夢じゃない!

ハルジオンは目を見開くと横から崖道に沿ってクリス様が手を伸ばして駆け寄ってくる姿が見えた!

「クリス様!」

ハルジオンは目一杯手を伸ばした。

もう一度クリス様に触りたい!どうせならちゃんと起きてる時に抱きしめて欲しかった!

クリス様はそんな私の手を掴むが…

「えっ?」

そのままハルジオンが落ちる向きは変わらない、そこにクリス様が加わった形となってしまった。

「嘘…」

クリス様を巻き込んでしまった事にハルジオンは恐ろしくなると…

「レディオ!!」

クリス様が叫ぶと馬がクリス様の服を噛んで私達が落ちるのをくい止めた。

しかしクリス様に抱かれたまま、二人で崖の上で止まり真下を見つめる。

下には岩がゴロゴロと転がり落ちれば怪我だけではすみそうもなかった。

「ク、クリスさまぁ…助けていただいてすごく嬉しいですが…ここからどうするんですか…」

恐ろしさのあまりクリス様にギュッと抱きつく。

するとクリス様の抱きしめる力も強くなった。

「クリス様?」

反応のないクリス様に声をかけると

「あっ!わ、悪い…レディオ、ゆっくり引き上げてくれ」

クリス様の馬は脚をパカパカと踏みながら私達を引き上げてくれた。

ドサッ!

そのままクリス様を下にして私達は倒れ込む

「こ、怖かった…」

全身が震えて力が出ない…退かないもいけないと思うのに体が動かない…

それでもクリス様を下敷きにしたままにはできなくてグッと上半身を持ち上げると…

「ハルジオン…」

クリス様が逆に引き寄せ抱きしめた。

「えっ!?」

クリス様の力に抵抗できる訳もなくハルジオンはわけのわからないままクリス様に抱かれていた。
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