貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

連載

357.本性

イブはハルジオンの腕を掴むと凄い力で引っ張った！

「い、痛いです！」

ハルジオンはあまりの力に顔を顰めるがお構い無しでイブはハルジオンを引っ張り人気のない森の方へと連れていく。

「離して下さい！」

ハルジオンが振り払おうとするがイブはブツブツとつぶやきハルジオンの声が届いていないようだった。

「貴方、先程私がお店でクリス様がいるか聞いた時に知らないと言いましたよね！？あれは嘘だったんですか！」

「だったらなんなのよ！」

イブは悪びれる様子もなく怒鳴りつけてくる。

「やっぱりあの店にいたんだ…」

ハルジオンは本当ならすぐ傍にいたかもしれないクリス様の事を思った。

「別にあなたのことクリス様はなんとも言ってなかったわ、なんで探していたのか知らないけどあなたじゃクリス様とは釣り合わない！」

一番気にしていたことをスバっと言われてハルジオンはイブの手を思いっきり振り払いその歩みを止めた。

「そんなの…わかってる…」

ハルジオンは顔を伏せて小さい声で呟いた。

「はっ？なに？小さくてなんにも聞こえないわ！」

イブが鼻で笑うと

「そんな事は自分が一番わかってる！クリス様に釣り合ってないことくらい！でも…でも好きになるくらいいいでしょ！」

ハルジオンは言いたかった事をようやく言葉に出来た。

この人にはこの気持ちを言わなきゃいけないと強く感じた。

「私の方が…好きなのに…」

イブはハルジオンはを睨みつけると再びその手を伸ばしハルジオンの髪を掴んだ！

「い、痛い！」

ハルジオンは髪の毛を鷲掴みにされて顔を顰めた。

ブチブチと何本か髪が切れれる音が聞こえる。

しかしここで痛いと言ったら負けな気がした…そしてこの人には負けたくないとハルジオンはキッと睨みつけた。

「その目…生意気なのよ…」

イブはハルジオンの力強い瞳にさらにイラつくとその頬を叩いた！

バチンッ！

ハルジオンは口を開いていたのもあり衝撃で自分の舌を噛んでしまう…

思いっきり叩かれたハルジオンの頬は赤く腫れ、口からは血が流れた。

「こんな事をしていいと思っているんですか」

怯えたくない！

ハルジオンは痛みを堪えてイブを見つめ続ける。

以前、私の弱さでローズ様に迷惑をかけてしまった、だからもう怯えたくない！

間違った事に同意したくない！

「その目…一目見たときから嫌いだった…いいから来なさいよ！」

イブはハルジオンの髪を掴んだまま引きずる様に奥へ奥へと歩き出す。

そして森の崖まで連れてくると…

「な、何する気ですか…」

ハルジオンは瞳孔の開いたイブの瞳に正気ではないと震えた。

「何する？そりゃあなたをここから落とすのよ。あなたさえ居なければクリス様はこっちを見てくれる…あなたの代わりに私がクリス様のメイドになってもいい」

イブは自分の考えにクスッと笑う。

「そうだ！それがいい、私ならずっと商売をしてきた、客からの評判もよくてこんなに可愛いんだもの、その服だってあなたより似合う自信があるわ」

イブはハルジオンの服をじっと見つめた。