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353.疑念

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ハルジオンは店を出るとクリス様の馬に近づく。

「私は君を置いてクリス様が遠くに行くなんて考えられないんだけどなぁ~」

馬を撫でると他を探してから迎えにこようと決めてその場を離れると…

「ぐえっ!」

クリス様の馬に首根っこをつままれて首がしまった。

「ちょっと!苦しいよ」

文句を言うとすぐに離してくれる。

「ん?」

なんだ、からかっただけかな?

ハルジオンは服を整えると再び歩き出そうとしたら…

「ぐえっ!!」

やはり首根っこを噛まれた。

「もう!なんなの?」

ハルジオンが怒って振り返ると何か言いたげに瞳を揺らしてクリス様の馬が見つめてくる。

「なぁに?何か言いたいことがあるのかな?」

ハルジオンはクリス様の馬に向き合うとじっと様子を確認する。

すると馬は興奮した様に首を振り出した。

「ど、どうしたの?」

落ち着かせようとするがどうする事も出来ずにアワアワしていると…

「どうしたの?」

騒ぎに町の人達が集まってきてくれた。

そして慣れた様子で馬を落ち着かせると…

「なんか店が気になってるみたいだね」

馬を撫でながら先程入った店を見つめている。

「店を?やっぱりそこにクリス様がいるのかな…」

ハルジオンは顔を顰めた…でもさっき言われた町の端も気になるし…

「町をぐるっと見てきたらもう一度お店を探して見よう。だから待っててね」

馬に向かってそういうと仕方なさそうに馬は用意されていた干し草を食べだした。

「おっ、落ち着いたみたいだな。しかしハルジオンちゃんどうしたのこんなところで…」

「あっそれがクリス様が帰ってきてまして…町に行ったようなので探しに来たのですが…」

「あー、クリス様帰ってきたんだよね。なんか話を合わせてって言伝が回ってきたよ」

「話?」

ハルジオンが首を傾げると

「なんでも面倒な人達が来てるから王子のことは内密にってね」

「そうなんですか…」

面倒な人達…

そう聞いてハルジオンは先程のイブさんの姿が浮かんできたが失礼だと慌ててその考えを打ち消す。

「私、もう少し町の中を探して見ます。もし見かけたらここに戻ってくると伝えて貰えますか?」

そう言って馬が繋がれた場所を示した。

「わかったよ、俺も他の奴らに伝えておくよ!そうすりゃすぐに見つかるだろ」

町のおじさんの言葉をハルジオンはありがたく甘える事にした。


「ん…今なにか…」

クリスは騒がしい店内を見た後に外の様子を気にし出す。

クリスの反応にイブは咄嗟にクリス隣に席を移動した。

「何か…物音でもしましたか?…私怖いです」

上目遣いにクリスを見上げてその裾をギュッと握った。

その手は微かに震えていると…

「寒いですか?なら何かかけるものでも借りてきましょう」

クリスはイブの手を払うと席を立とうとする。

「ま、待ってください!」

イブは離れるクリスの腕を掴んでじっとその目を見つめた。
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