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352.嘘

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「イブさんですね!それでクリス様の事をご存知ですか?」

「はい、確か…町の端の方で見かけましたよ。あの端正な顔立ちはクリス様だったと思います…あっでも内密に…」

イブさんが声を落として私にだけ聞こえるように話してくれた。

「端の方…馬が外にありましたけど…」

しかし外の馬を思い出しおかしいなと首を傾げる。

「あれはただ置いただけでは?まぁ信じなくてもいいですが…しかし親切で教えたのに疑われるとは気持ちの良くないものですね」

イブさんは面白くなさそうに顔を背けてしまった。

「すみません!そういう訳では…クリス様が馬をここに繋いだまま何処か行くとは考えられなくて…」

私はせっかく教えてくれたのにと自分の失礼な態度にしゅんと肩を落とした。

「別に馬なんて何頭でもいますよね?それこそ使い捨てにしても…」

イブさんの言葉に耳を疑う。

「いえ、クリス様はそんな事は絶対にしません」

クリス様は今乗ってる馬を凄く大切に扱っている。

前に手紙でローズ様からもらったと言っていた。
だからとても大切な宝物だと…それを使い捨てなど…そんな事言って欲しくなかった。

すると顔が強ばっていたのか、イブさんが怯えだした。

「こ、怖い…そんなに怒らなくても…私はただ見た事を言っただけなのに…」

イブさんは顔を手で覆うと声をあげて泣き出した。

「え?す、すみません」

慌てて謝るがイブさんは泣き止んでくれない。

「なんだ?喧嘩か?」

騒ぎ出した私達に店の客達から注目が集まる。

泣き出し顔を隠すイブに私は居心地の悪さを感じていると

「で、ですからここにはいないと思います。それとも店の人全員に聞きますか?」

イブさんは涙を拭きながら伺うようにこちらを見つめた。

「い、いえ…他を探して見ます。教えてただきありがとうございました」

私のはイブさんにお礼を言うと店主に挨拶をして店をでていった。



イブはそんなにハルジオンの姿を涙を拭うふりをしながら見つめていた。

ハルジオンが店を出るのをしっかりと確認するとイブはスっと真顔になって自分の席へと戻った。


「遅かったね、騒がしかったけど何かあったのかい?」

クリスが席に戻ったイブに話しかけた。

「いえ、なんでもありません!それより料理を注文してきました。たくさん食べて下さいね!」

「それは…私はお茶を一杯飲んだら帰るっと言いましたよね」

クリスさんがじっとイブを睨むように見つめた。

その反応にイブは頬を赤らめてサッと横を向いた。

「すみません…母と父もいないしこんなところで一人では…クリス様が一緒に食べてくれると嬉しいのですが…」

チラチラと伺うようにこちらのようすをうかがっている。

クリスはため息を着くと

「少しだけですよ…」

時間を確認して仕方なく頷いた。
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