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346.つい…

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クリスはハルジオンを部屋へと連れていくとベッドへと寝かせた…しかしやはり掴んだ小さな手が離れることはなかった…

「ハルジオン…離してよ~」

ボソッと呟くが起きる気配も離す気配もない。

どうしたものかとクリスはベッドの上で眠るハルジオンの隣に座った。

ドサッとベッドが揺れるとハルジオンがピクリと動いた。

「う、うん…」

起きたのかと思い顔を覗き込んで見るがその瞳は閉じたままだった。

起きたかと思った

少しほっとしたような残念なような気持ちが湧き上がる。

そのまま気持ち良さそうに眠るハルジオンの顔を眺めていると…

ヘラッ…

不意に笑った。

「なんの夢を見てるんだか…」

クリスは幸せそうなハルジオンの笑顔に笑いを噛み殺していると

「くりしゅしゃま~…」

自分の名前を呼ばれる。

「えっ」

僕の夢を見てる?

クリスはじっとハルジオンを見つめると…

「ハルジオン…?」

そっと耳元で囁いた。

「はい…しゅき…です…」

すると寝言で好きだといって笑った。

クリスはその笑顔に引き寄せられるようにハルジオンの顔に近づいた。

ハルジオンの柔らかい髪に唇が当たると小さな音が部屋に響いた。

その瞬間クリスはハッと我に返った。

「…ぼ、僕…何を…」

ハルジオンを見ていると無性に可愛くてその体に触れたくなった…

先程嗅いだ香りが忘れられずにその髪に近づいた途端キスせずにはいられなかった。

(俺なら耐えられない…)

カイル様が言った言葉が頭に浮かぶ。

「耐えられなかった…」

クリスはガバッと立ち上がるとハルジオンが掴んでいた手が離れた。

そしてその拍子にハルジオンが動き出した…

「う、うん…」

目を覚ましたハルジオンにクリスは慌てて部屋から飛び出した!

「え?クリス…様?」

ハルジオンは目を擦りながら慌てた様子で部屋を出ていったクリス様の後ろ姿を見た気がした。

クリスは慌てて廊下を早足で歩いていると…

「おお!クリス!帰ってたのか!?」

父親のチャートが笑顔で反対側から歩いてきた。

「父さん…」

「なんだ?なんだ?そんな湿気た顔で愛しのお父さんに会えたんだ!もっと嬉しそうな顔をしなさい!」

チャートはニコニコ笑顔でクリスに抱きついた。

「もう!子供扱いして!」

クリスはチャートの手を払うと

「何言ってんだ!クリスはいつまでたっても父さんの子供だぞ!」

「そういう事じゃなくて…あっ!そうだロイ王子とキャシー様も一緒に来てるからよろしくね」

「は?」

チャートはクリスの言葉を聞き返す。

「何言ってるんだ?王子?ロイ王子とキャシー嬢が来てるって?」

クリスが頷くと

「ああ!わかったクリスの冗談だ!なんだクリス~王都でそんな冗談を言う事を覚えてきたのか?」

チャートは嬉しそうにクリスの肩を手を置いた。

「冗談じゃないんだけど…今姉さん達と町の保安の巡回に行ってるよ。父さんに挨拶しようとしたけど留守みたいだったから…どこ行ってたのさ」

「い、いや…ちょっと野暮用で…」

チャートはクリスから目を逸らした。

「はぁ…まぁよろしくね。僕はそれどころじゃないから…」

クリスは大きくため息をついた。
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