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344.精一杯

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「キャシー…さっきの事だけど…」

ロイは自分の気持ちを落ち着かせると顔をあげてキャシーに話しかけた。

「すみません!お待たせしました」

するとカイルがローズをしっかりと支えながら戻ってきた。

「チッ…いつもタイミングの悪い…」

ロイはあからさまに不機嫌になると

「大丈夫、全然待ってないぞ。もういっそこのまま巡回に行ってきてくれてもいいくらいだ」

ロイが笑って答えると

「何怒ってるんだよ、遅れて悪かったよ。ハルジオンが大変で…」

「え?ハルジオンさん怪我でも?」

キャシーが心配そうに聞くと

「いや、怪我はないけど驚いて気を失ってしまって…今クリスが屋敷に連れて帰りました」

「そうですか…無事ならよかった」

キャシーがほっとすると

「ですのでこのまま私達だけで巡回に行こうと思ってましたが…ロイ達はどうする?」

「うーん…このまま帰ろうか?」

ロイがキャシーに笑いかけると

「い、いえ…タウンゼントの領地の事も気になりますし、出来れば同行したいと…王子もきっと今後の為になると思いますよ」

「まさかキャシー、俺達の今後を考えて…よし!カイル案内してくれ!馬はこのままでいいよな」

「ああもちろん、お前と相乗りとかごめんだわ」

「こっちのセリフだ!」

「私達は一緒でもいいんですけどね!」

ローズは頬を膨らませながらカイルを睨みつけた。

「あれ?ローズ…顔が赤いけど大丈夫?」

キャシーがローズの様子に顔をじっと見つめると

「え?嘘…うん大丈夫…」

ローズは口を隠した。

「赤いのは頬だぞ…なんで口を隠すんだよ…」

ロイはじっとカイルを睨みつけると

「さぁ?それよりも早く行こう、日が暮れるぞ」

カイルは笑うと馬の手網を引いて走らせた!

「はぁ…キャシー…話は帰ってからな」

ロイはボソッとキャシーの耳元に囁くと

「ヒャ!」

キャシーが耳にかかった息に声を上げた!

「おい…そんな声出されたら…」

ロイはグッと手に力を入れると…

「許せ…」

キャシーの頬に軽くキスをする。

「ロ、ロイ様!」

「シッ!カイル達に気づかれるぞ…」

その言葉にキャシーははっと口を押さえた。

「も、もういきなりなんですか…しかもローズ達の前で…」

「本当ならその可愛く動く口にしたかったけど…それはキャシーの返事を聞いてからな…ほらちゃんと掴まってないとクリスみたいに落ちるぞ!」

ロイがスピードをあげると

「キャッ!」

キャシーが馬のたてがみにしがみついた。

するとその手を上から掴んで自分の腕へと回す。

「持つ場所が違う」

「は、はい…」

キャシーはこれはしょうがないから…と自分に言い聞かせてロイの自分を抱きしめる腕にしがみついた。

違う…このドキドキは馬が速くて驚いてるから…

いやに早い鼓動にキャシーはそっとロイを伺うようにチラッと見上げる。

「なに?」

ロイは視線は前にキャシーに声をかけると

「な、なんでもありません…」

ばっと前を向いた。

そしてさらに早くなる鼓動に落ち着けとそっと胸を押さえた。
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