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342.可愛い事

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「きゃぁぁぁ!」

ハルジオンはただ叫ぶ事しか出来ずに馬にしがみついていた…

クリス様を馬から突き落としてしまった…これはきっと罰だ!

こんな素晴らしいところで働かせてくれて、酷いところから助けてくれた恩人に酷い事をしてしまったのだ…当然の事だろう…

ハルジオンはそう考えると恐怖心も薄れてきた。

「ハルジオン!」

はぁ…死ぬ前にもクリス様の声が聞こえるなんて…どんだけ好きなんだ。

ハルジオンは自分の事ながら笑ってしまう。

「ハルジオン!」

「あはっ、また聞こえた…」

自分に呆れて目を開くと…

「よかった!ハルジオン!こっちに手を伸ばせ」

すぐ隣に併走して走るクリス様が見えた。

「あれ?クリス様…なんでいるんですか?」

「なんでもクソもない!ほら早く手を伸ばせ!」

「え?手?クリス様…私と手が繋ぎたいんですか?」

「何言ってるんだよ!」

「はいはい、手ですね…私だってずっと手を繋いでみたかったですよ…それがこんな夢でしか叶わないなんて…」

ハルジオンは仕方なしに手を伸ばした。

「よし!」

クリスは伸ばされたハルジオンの手をガシッと掴むと「ふんっ!」と力一杯ハルジオンを自分の方へと引き寄せた!

ハルジオンはふわっとその体が浮いたと思うと固いクリスの胸に抱き寄せられていた…

「これが夢じゃなかったら…」

ハルジオンはそのまま意識を失った…

「ふぅ…」

クリスはハルジオンを抱きしめたまま馬のスピードをゆっくりと落とす。

ハルジオンを乗せた馬はそのまま何処かに行ってしまったが…まぁそのうちに帰ってくるだろうと諦めた。

それよりもハルジオンの無事を確認しようと顔を覗き込むと…

ハルジオンは気を失っていた。

「全く…心配させて…」

落ちてはいけないとしっかりと抱き寄せた。

「クリスー!」

「大丈夫か!?」

すると姉さんを前に乗せたカイル様が追いついた。

「はい、馬は行ってしまいましたがハルジオンは無事です」

「よかった~」

ローズがハルジオンの顔を覗きこんで確認すると

「うん、怪我はなさそうね。でも気を失ってるし今日はこのまま帰りましょう」

「でも巡回がまだですよ…」

「ならクリスとハルジオンだけ先に戻るんだ、あとは俺達が見てくるよ」

カイルがそう言うと

「では…お願いします」

クリスが素直に頷いた。

「クリス、ハルジオンを頼むわね」

「間違っても襲うなよ」

カイルが笑ってそう言うと

「そんな事しませんよ!カイル様やロイ様じゃあるまいし!」

クリスが顔をしかめて否定すると…

「そんな可愛い事をされても平気なのか?俺がローズにされたら無理だな…絶対に起こしてキs…」

「カイル様!クリスに何を言うつもりですか!?」

ローズが慌ててカイルの口を押さえつけた!

「ひふふふっへ」

ローズが慌ててクリスを見るが…クリスはそれよりもカイルに言われた可愛い事と言う事に目を向けていた…

そこにはクリスの服にギュッと掴まり顔を自分の胸にピタリと付けて眠るハルジオンがいた。



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