上 下
264 / 318
連載

325.逃げた盗賊

しおりを挟む
「ひっ…」

娘は盗賊達に睨まれてすくみ上がる。

ガタガタと震えて目に涙を溜める、逃げようとするが体が動かない…

そんな怯える娘の様子に盗賊達はニヤついた。

「これだよこれ!この反応を待ってたんだ…」

「へへへ…やっと俺達にも運が回ってきた…」

娘にじわじわと近づいて行くと…

「次から次へと…なんなんだ一体!」

馬のひづめの音と共にクリスが飛び出してきた!

そして盗賊を睨みつけると娘と盗賊の間に割り込んだ!

「こんなところに盗賊だと…お前ら何処からきた!」

クリスが剣を抜いて盗賊達に剣先を向けながら問いかける。

「何処から…だと…」

盗賊達は一瞬嫌な顔をすると…

「お、俺たちは隣国からだ…」

「そ、そうだ!変な町なんか行った事もないぞ!」

「ば、ばか!余計な事を言うな!」

ボソッと注意するがクリスにはバッチリと聞こえていた。

「隣国だと…そうするとタウンゼントを通らないと来れないはずだが?」

クリスの顔付きが変わった…

「ひっ…な、なんかこいつもおかしくないか」

盗賊の一人が顔色を悪くした。

「な、なにビビってる!こいつは一人だ!何も出来やしねえよ!」

「しかもよく見りゃ可愛い顔をしてるぞ…」

盗賊の1人がクリスをじっくりと見つめた。

その視線にクリスは背筋に悪寒が走る。

「僕は男だ!」

「見りゃわかるが…そんな綺麗な顔なら…男でも…」

ゴクリと盗賊が喉を鳴らした。

「周りは可愛くて綺麗な女の人と楽しくしてるのに…僕に向けられるのはこんな汚い盗賊達の熱い視線……やってられるか!!」

クリスは盗賊達を睨みつけた!

「この鬱憤…お前らで晴らさせてもらおうかな…」

「一人で何ができる!こっちは五人もいるんだぞ!」

「それが?五人程度でやられるようじゃ僕の村なら町民にどやされるよ」

「ちょ、町民!!」

盗賊達がビクッと硬直する。

「ま、待て…俺達何もしてない…なぁ?」

盗賊達が頷き合うと…

「今目の前でこの人達を襲おうとしてたのは誰かな?」

後ろで怯えている人達を指さすと…

「だからまだしてねぇぞ!」

「そうだ!手を出す前だった!」

開き直る盗賊達…クリスは呆れて思わずため息が漏れる。

「もういいや…早く王…いやロイさんのところに戻らないとだし、さっさと寝てもらおうかな?」

クリスは盗賊達にゾクッとするようないい笑顔で微笑んだ。



「ありがとうございました!」

助けられた親子の父親がクリスに深々と頭を下げる。

その後ろには腕や足が変な方向に曲がり呻き声をあげる盗賊達が縄で縛られていた。

「いえ、怪我はないですか?」

クリスが三人を見るが特段怪我などないように見える。

「はい。ですが馬車が…」

聞けば家族で町に物を売りに行こうとするところ盗賊に襲われてしまったらしい…

「隣町と言うと…」

「タウンゼントですね、最近あの町は潤ってるらしいので!領主に新しくできる側近が付いたとか何とか…」

父さん…

クリスが自分の不甲斐なさに肩を落とす…

スチュアートさんのおかげで普通の町として機能するようになったんだな…

「でもタウンゼントは前からいい話しか聞きませんからいつかは行きたいと思ってました」

「そ、そうですか!えっと…私もそこに向かってて…でも、どうしよう」

王子達と行くのに一般人を同行させるのはよくない…しかしまた盗賊が出たりしたら…

「とりあえずこの近くにも町がありますからそこまで送ります」

「何から何までありがとうございます!」

三人はクリスに揃って頭を下げた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

王太子の子を孕まされてました

杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。 ※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。