貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

三園 七詩

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317.タイミング

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町の郊外でそんな事がおきているとは知らないローズ達は二人の時間を楽しんでいた…

「なんかこんなにのんびりとしたのは久しぶりな気がします」

ローズがカイルに笑いかけると

「嫌だったかな?ローズはやっぱり馬に乗って駆ける方が好きかな?」

カイルが伺うように聞いた。

「それももちろん好きです…剣を打ち合うのも楽しいし…でもどれもカイル様とやるから楽しいんですね」

ローズの言葉にカイルははっと息を飲んだ。

「ローズ…俺も同じだ。君と一緒ならどんな事も楽しいし幸せだと思える」

カイルはそっとローズの手に自分の手を重ねると指を絡めた。

「今日はローズに渡したい物があるんだ…」

カイルはそっとローズの手を掴むとその指にそっと指輪をはめた。

「ちゃんとしたプロポーズはまだだったよね…」

「カイル様…」

ローズは驚いて自分の指にピッタリとハマった指輪を見つめる。

「俺は初めてローズに会った時から君しか見えなかった…女性が怖くなくなったのも、人をまた好きになれたのもローズ…君のおかげだ。こうやってようやく周りからも認められる地位に付けた…どうか俺と改めて一緒になってくれ」

「カイル様…私の気持ちだってカイル様に伝えた時から変わりません」

「それって…?」

カイルが笑って伺うようにローズを覗き込んだ。

「ずっと…好きでした。これからも一緒にいてください」

ローズは頬を染めて微笑んだ。

「ローズ…」

カイルはそんなローズの頬にそっと手を伸ばすと…そのまま顔を近づける…

もうあと少しで触れ合いそうになると…

「この指輪…可愛い…です」

ローズの言葉にカイルがピタリと止まる…見るとローズは嬉しいに指輪を見つめていた。

「そ、それはこの町の店に頼んでずっと作っていたんだ」

カイルはキスのタイミングを逃して苦笑して指輪の事を話した。

「えっ?まさか町に何度も足を運んでいたのって…」

「あれ気がついてたのかい?ああ…指輪の進み具合を確認に行ってたんだ…気が付かれてるなんて…かっこつかないなぁ」

カイルが頭の後ろを気まずそうにかいた。

「そうだったんだ…」

ローズは楽しそうにハルジオンと喋りながら町に行くカイルの姿を思い出した。

「うん。ハルジオンや町のみんなに聞いてローズの話を聞いたり…ローズの事を考えてばかりだったよ」

ローズは自分の中にあったモヤモヤが一気に晴れ渡るのを感じた。

そして一気に顔が赤くなる。

「ん?どうしたのローズ?」

一人何やら悶えるローズにカイルが心配そうにローズを引き寄せると

「な、なんでもないです」

ローズはカイル様の顔が見れずに逸らした。

「えっ?無理かな。そんなローズの顔をみて何もしないなんて出来ないんだけど…」

カイルの言葉に驚いて思わず顔を見てしまった。

するとすかさずにカイルに唇を奪われる。

「ローズって本当に甘いよね…」

離れる間際にぺろっと唇を舐められた。

「カ、カ、カ、…」

ローズが口を両手で隠すと…

「ちょ!ちょっと押さないで!」

「無理です!私もみたい!」

「もう死ぬ…なんなの…甘すぎる…」

遠くで町の皆が騒いでいるのが見えた。

「カ、カイル様!みんな来ましたから!」

思わずカイル様をグイッと押しのけた。

「ふー…ここまでか…まぁローズの可愛い顔も見れたし満足かな。あとは…」

カイルはそっとローズの手を取ると椅子から立たせた。

「屋敷に帰ろうか?」

「は、はい?」

カイルの満足そうな顔や町のみんなの悶える様子にローズは首を傾げながら通り過ぎた。

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