上 下
253 / 318
連載

314.愚か者

しおりを挟む
「はぁ、はぁ…やっと着いた…馬鹿な盗賊はまだいるかしら…」

盗賊とお姉さん達が睨み合っていると横から八百屋のおばさんを筆頭に今度は町のおば様方が姿を現した。

「げっ…今度は、ばばあかよ。こっちは要らねぇな…」

盗賊達が興味なさげにおばさんを値踏みする。

「いや…結構若いのもいるぞ!」

「馬鹿だなぁそいつら人妻だろ?そんな使い古しに興味はねぇよ、それよりもこっちの若いのから捕まえよう…」

盗賊がニヤニヤと笑ってチラチラと武器をチラつかせる。

そんな舐めきった盗賊達の様子におば様達がピタリと止まる。

「は?」

「誰がばばあだって?」

「使い古し…」

おば様達の顔色が変わった。

「ひっ!」

町の男達がサッと視線を逸らした。

「あの馬鹿共…何を余計な事を…」

町の男達は被害が及ばないようにそっと後ろに隠れた。

「それって最低!!うちの町のお母さん達はよその町よりみんな綺麗で若いって評判なんですけど!!」

「本当に!それにみんな強くて優しくて私達の憧れなんです!訂正して貰えます?」

「その女を舐めきった態度…本当に不愉快…」

町の女達は各々の武器を手に取りじわじわと盗賊達を囲んで行く…

「な、なんだ!たかが女に何が出来る!」

「お前らみんなひん剥いてヒィヒィ言わせてやるぞ!」

女性達の迫力に若干押されながらも盗賊達が襲いかかっていった!

バコンッ!!

凄い重い音と共に何かの汁が飛び散った!

見ると八百屋のおばさんが大根を手に男の頭に叩きつけたようだ、大根は無座に折れて男の頭は…凹んでいた。

「「「え?」」」

盗賊達は頭が変形してピクピクと痙攣する仲間を見下ろした。

「大根?」

「大根って人が殺せるのか?」

唖然としていると…

「あー!うちの大根が!どんだけ石頭なのよ!」

八百屋の奥さんが折られた大根を残念そうに拾い上げた。

「ユリさん力が入りすぎよ、もっと瞬時に叩かないと…ほらこうやって…」

隣にいた魚屋の奥さんが大きな魚を手に目の前で唖然とする男の頬に叩きつけた。

バチンッ!!

という音と共に男の首がグルンと回る。

「さすがアヤさん!駄目ね、怒りのあまり力が入りすぎちゃったわ」

おばさん達が井戸端会議の様に楽しそうにぺちゃくちゃと話し出す。

「な、なんなんだ…こいつら…」

目の前でありえないもので仲間が二人倒され盗賊達もさすがに警戒する。

「おい、とりあえずここの奴らは殺せ!」

「あ、ああ!」

盗賊達は笑っていた顔を引き締め一人一人に狙いを定めた。

「俺はこの大根ばばあだ、お前は魚の奴をやれ」

「わかった」

他の盗賊達も各々標的に飛びかかると…

「ちょっと!私達もいるんですけど!」

武器を持つお姉さん達が盗賊たちの前に飛び出して剣を受け止めた。

「くっ!お前らは後で相手してやる!大人しく待っとけ!」

盗賊がお姉さんの脇腹目掛けて蹴りを繰り出すと

「汚い!」

お姉さんは華麗にその足を避けた。

「くっそ!これを避けるのかよ…」

「あーよかった…服が汚れるかと思ったわ…」

お姉さんは汚れはないかと自分の服を確認すると脇の所がかすったようでほつれてしまっていた…

「あっ…」

それを見つけてわなわなと震える。

「はっ!今頃怖くなって震えて来たのか?泣いて謝って俺に尽くすと言うなら可愛がってやらない事もないぜ?」

盗賊の男はお姉さんの大きな胸に話しかけると…

「このゴミ虫が!何してくれとんじゃ!!」

さっきまでの優しそうなお姉さんが豹変して男の顔を拳で殴った!

男は顎の骨が砕ける音を聞きながら視界がスーッと暗くなった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。

真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。 親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。 そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。 (しかも私にだけ!!) 社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。 最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。 (((こんな仕打ち、あんまりよーー!!))) 旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。