貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

連載

312.親の気持ち

｢町の方達が向かったのなら大丈夫でしょう。一応この事はチャート様に報告して私も向かいます…まぁする事は何もないかと思いますが｣

スチュアートさんが笑ってそう言った事にハルジオンは驚きを隠せない。

｢えっ？｣

｢それよりもハルジオンさん、ローズ様の様子はどうでしょうか？少しは素直になっておりましたか？｣

スチュアートさんとクレアさんが心配そうに聞いてきた…もう盗賊の事など頭にはないように…

｢は、はい、向こうは順調でした。だからこそ邪魔した盗賊に町の人は怒っていたようで…｣

｢なるほど…それは納得ですね。皆さんローズ様の事を本当に心配しておりましたから｣

｢えっ？そうなんですか？｣

ハルジオンは町の人達からは喜んでいる様子しかわからなかった。

｢ずっと見守ってきた娘の様な存在なのでしょう。ローズ様が気になさらないように決してそのような事は口にはしませんが…｣

｢そうですね。そんな娘の幸せを邪魔されたら…私も怒りでいっぱいです！スチュアートさん！しっかりとおしおきしてきて下さいね！｣

クレアさんも町の人達のように鼻息荒く怒っている。

｢もちろんです｣

スチュアートさんは不敵に笑うと数秒で支度を整えチャート様の書斎に向かった。


トントン！

｢失礼します｣

｢ああ…｣

スチュアートさんが声をかけると中から元気のない返事が帰ってきた…

スチュアートさんが扉を開くといつも座っている机にチャート様の姿は無かった。

｢チャート様？｣

スチュアートさんが部屋を見回して声をかけると…

｢ここだ…｣

ベッドの方から声がする。

スチュアートさんが近づくとそこにはふて寝しているチャート様がいた。

｢どうされましたか？お加減でも？｣

声をかけるが返事がない。

スチュアートさんはため息をつくと

｢仕方ない事です。娘はいつか嫁に行くものですよ。ほら元気を出して下さい。そんな姿をローズ様が見たら悲しみますよ｣

布団をばっと捲り上げた。

｢ローズの前では笑顔でいる…だが今は…｣

はぁ…と寂しそうにため息をついた。

｢カイル様はローズ様を大切にされる好青年ですよ、そんなに心配する事など…｣

｢だからだ！少しはあらがあれば文句も言えるのに！あの男…何をやらせても無難にこなしやがる…｣

忌々しげに吐き捨てた！

｢しかも素直で可愛い所もある奴なんだ！俺の事をキラキラした目で見やがってチャート様と慕っている…｣

｢えっと…｣

スチュアートさんが言葉に詰まっていると

｢だからまぁローズの相手としては合格点なのだが…うぅ…｣

涙を拭った。

｢よかったではないですか、可愛がる二人が結ばれる。チャート様は周りから反対される辛さを一番わかっているのではないですか？｣

｢そうだな…こんな時は親ぐらいは笑顔で祝福して欲しいよな…でないとクラウディアに怒られそうだ｣

チャートは部屋に飾られたクラウディアの写真を見て仕方なさそうに笑った。

｢そんな幸せな二人の邪魔をしようとする盗賊があらわれたそうですよ。カイル様は今はローズ様とお出かけです…町民達がもう既に向かっておりますが私も一応加勢に行ってきますが…チャート様はどうされますか？｣

｢行く！｣

チャートはガバッと立ち上がった！

｢このモヤモヤとした気持ち…ふふふ！盗賊共いい時に来てくれたもんだ！｣

チャートはマントを羽織ると部屋を飛び出した！

｢スチュアート！行くぞ！｣

｢はい、お供致します｣

スチュアートは苦笑してチャートの後をすぐに追った。