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295.エンド

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「カイル様…その格好は一体…」

ローズはカイルの庶民のような姿に疑問を持って聞くと

「俺は貴族をやめてきた」

カイルが清々しい笑顔でニコッと笑った。

彼の服装はそこら辺の庶民のように見えるがその笑った顔はいつものカイル様だった…

「やめた?どういう事ですか!」

ローズは嫌な予感に顔を顰めてカイルに詰め寄る!

「俺はローウェルの家を出てきた、まぁ勘当だな…今はただのカイルだ」

「それは…公爵家を出たと…」

「ああ、そして近衛兵も部隊長もやめた!これで文無し家無しの庶民のカイルになったよ」

カイルは爽やかに笑うがローズは驚いて言葉を無くす…

「これでローズとの身分の差が逆になったな」

何か言いたげにニヤッと笑う。

「なんてことを…カイル様!今すぐ王都に戻ってロイ王子に説明して元に戻してもらって下さい!」

ローズが必死に頼むと

「そんなかっこ悪いことは出来ないよ」

カイルは首を横に振り困った様に笑う。

するとローズの足元にひざまついてその手をそっと掴んだ。

「ローズ、俺は今は何もない…肩書きも地位も職も…でもここから頑張って君の隣に並びたい…だからどうかこの手を掴んでくれ」

「だ、だって…カイル様は…」

「もう様をつけるような身分じゃ無いよ」

「なんで…」

「それよりも欲しいものがあったから…それともローズは身分が低い者は嫌いかい?」

「……」

「俺とローズでは身分の差ができてしまった…俺は今は君に相応しくない…よな…」

カイルが顔を俯かせると…

「そ、そんな事関係ないです!」

ローズは違うとカイルの手を握ると

「俺だってあの時同じ気持ちだったんだよ…」

カイルはローズの手を上から握りしめた。

「まさか、カイル様がそんな事するなんて…」

「俺に気持ちを舐めてもらっては困る。俺はどうなったって君を追いかけるよ。そうだなぁタウンゼント家の使用人になってもいいよ」

「カイル様…」

「カイルって呼んで頂けませんか?ローズ様」

カイルはクスッと笑うとローズの手にそっとキスをする。

「カイル…」

ローズはふっと肩の力を抜くと…

「でもやっぱりカイル様です。だって私…好きな人を呼び捨てになんてできませんから」

カイルはローズの言葉に顔をあげてローズを見つめると…そこには花が咲くようなローズの笑顔があった。

「カイル様…お金も住む所もないんですよね?それなら是非私の領地に来てください」

ローズはグイッと引っ張ってカイルを立たせると

「そしたらタウンゼントの姓を名乗って見ませんか?」

「それって…」

カイルが驚いた顔を見せたあときまり悪そうに頭をかいた。

その様子にローズは首を傾げると

「嫌…でしたか?」

カイルの顔を覗き込む…

「なんだってローズの方が先にプロポーズするんだよ!それは俺に言わせてくれよ」

カイルは全く…と苦笑いすると

「すみません…もう離したくなくて…」

ローズはカイルの手を強く握りしめた。

「やっぱりローズにはかなわないなぁ…」

カイルは笑うとグイッとローズを抱き寄せた。

「でも少し待って…すぐにチャート様に認めて貰えるように追いつくから…そしたら今の続きを俺から言わせてくれ」

カイルはそう言ってローズの赤く火照った頬にサッとキスをする。

「カイル様!」

ローズはキスをされた場所を押さえるとじわじわと熱くなる。

カイルはローズの唇に指を当てるとシッ…っとローズの言葉を止めた。

「今は怖い人達が見てるからね…この続きは後でゆっくりと…」

カイルの言葉にローズの顔はますます赤く染る…

「さぁチャート様に同行する許可を貰わないと…もし…殺されそうになったらローズ止めてくれよ」

カイルはローズの手を取ってソワソワと待つチャートの元に駆け出した。

「お父さんがそんな事する訳ないじゃない」

ローズがカイルの冗談にクスクスと笑いながらついて行くと

「だといいけどね…」

カイルはゴクッと唾を飲み込んで死ぬ気持ちでチャートの前に膝をついた。

そして案の定剣を抜かれてそれをローズが慌てて止めることになり、チャートはローズにこっぴどく叱られた。

どうにか同行の許可をもらいカイルはローズと共に馬車に乗せてもらった。

「いいか…誰も見ていないからと手を出したらどうなるかわかっているよな…」

馬車に乗り込もうとするカイルにチャートがニッコリ笑って耳元で呟くと…

「もちろんです!それはちゃんとローズにプロポーズしてからゆっくりとやりますから!チャート様…では他人行儀ですね…これからはお義父さんと呼ばせて下さい」

カイルは笑うとローズの待つ馬車へと乗りこむ。

「お!お義父さん…」

チャートはまだ父では無いと叫びたかったが馬車の中では二人が幸せそうに寄り添い座っている…その姿を見ると力が抜けて何も言わずに馬へと向かった。

肩を落とすチャートにスチュアートは苦笑して近づくと…

「覚悟はしていたがこんなにも寂しいものだとは…」

「そうですね…でも今は娘の、ローズ様の顔を見てください。昨日まで何処か元気が無かったのが嘘のようですよ」

チャートは振り返る…確かにローズの顔は生き生きとしていた。

「あの顔を見せられるのはカイル様だけなのですよ」

「そう…だな」

チャートはふっと息を吐き小さく笑った…そしてそっと空を見上げた。


―完―


maro様ありがとうございます!
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