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293.別れ

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次の日…ローズは寝ているキャシーを起こさないようにベッドから起きると…キャシーのふわふわな髪をそっと撫でる。

ありがとう…

心の中でお礼を言うとメイドさん達に声をかけて自分の部屋へと戻った。


「じゃあローズ、タウンゼントに帰ろうか」

チャートが自宅を終えたローズを迎えに来た。

「お父さん!ずっと何処に行ってたの?この一週間全然見かけなかったけど」

ローズが顔を顰めてチャートを見つめる。

「すまん、すまん!レイン陛下と一緒にレスターとずっと会っててな」

「レスター様と…」

「ああ、あいつ運動不足になってたからみっちりと鍛えてきた!」

「き、鍛えた?慰めたんじゃなくて鍛えたの?」

「ああ!あんな弱気になるのは鍛えが足りないからだ!ついでにスティーブも一緒にやりたいって言うからな…若い奴に合わせてたらついやりすぎて…今は疲れて寝てるんじゃないか?」

「だ、大丈夫かなぁ…レスター様…」

ローズが心配すると

「ああ動けるようになったらタウンゼントに来いと言っておいた。またきたら酒でも飲んで騒ごうってな」

「そうですか…じゃきたら歓迎してあげないとですね!」

「そうしてやってくれ」

チャートが軽く笑うとローズを見つめた。

「お前は大丈夫か?王都に思い残す事は…ないのか?」

「ないよ…なんでそんな事聞くの?」

ローズが笑って誤魔化すと

「いや…何となく寂しそうだと思ってな」

「うん、そりゃ寂しいよ。大切な…友達も出来たし…でも一生の別れじゃないもの」

「お前がいいなら…いいんだ」

チャートはよしよしと幼い子を宥めるようにローズの頭を撫でた。

「もう!子供じゃないんだから」

ローズが恥ずかしがってチャートの手を退けた。

「ローズもクリスもいくつになっても大切な俺の子供だ」

チャートは笑うと陛下に挨拶をしてくると部屋を出て行った。

ローズも荷物を馬車に積みに行こうとスチュアートさんとクレアさんを見る。

「お二人共本当にタウンゼントに来てくれるんですか?」

ローズがこの一週間何度も聞いた事をもう一度と聞く。

「もちろんです。ずっとお世話させていただきますよ」

「私もです、それでも我々が行くのは反対ですか?」

スチュアートさんが悲しそうな顔をすると

「そんな事ないです!私はすごく嬉しいですけど…お二人共王都が長かったようなので…」

「だからこそのんびりとタウンゼントでゆっくりしたいですね」

スチュアートがクレアさんに笑いかけると

「そうですね~ですがローズ様が居ますからね!ゆっくり出来るかどうか」

クレアさんがからかうようにローズを見ると

「だ、大丈夫です!お二人にはのんびりとしてもらいますから!でも…お給料はあんまり出せませんが…」

ローズがしょんぼりとすると

「ああ、それですがクリスさんとご一緒に書類を申請しました。陛下も了承してくださいましたので領地に帰る頃にはちゃんと国境を守る為のお金が支給されますよ」

「ほ、本当ですか!」

「はい、今まであれでよくやってこられましたね…それの方が驚きです」

スチュアートさんが苦笑する。

「よかった…これで少しはみんなに苦労かけないですみそうです」

ローズはほっと胸を撫で下ろした。

「それにロイ様からも今回の婚約者候補決めの時に交わした約束のお礼金も贈られるようですよ」

「え!た、確かにそんな約束したかも…」

「迷惑をかけた気持ちだと仰ってましたよ」

スチュアートさんが優しく微笑んだ。

「ロイ王子…大切に使わせて貰います」

ローズは感謝を込めて目を閉じた。
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