貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

連載

284.カイルとデート

トントン…トン…

ノックからも緊張の伝わる音にスチュアートは笑いながら扉を開ける…するとそこには強ばった顔のカイルが立っていた。

｢おはようございますカイル様、今日はローズ様とデート…ですよね？なぜそんな顔を？｣

スチュアートが笑うと

｢い、いや…何処に行こうかとか何を食べようかと考えていたら眠れなくなって…夜中に体を動かしたら尚更寝付けなくなり…もう寝るのは諦めようと思ったら今度はデート中眠くなったらどうしようかと不安になって…｣

｢まぁまぁ、カイル様折角の女性とのデートですよ。もっと楽しんで来てくださいませ！しかも相手はローズ様です。何を気負う事が？｣

クレアさんが呆れると

｢カイル様お待たせしました｣

支度を整えたローズがカイルの元に歩いてきた…ローズの服はカイルの髪に合わせた色でシンプルで清楚な装いだった。

｢ロ、ローズ…似合ってる…｣

カイルはローズを見つめる…さっきまでの緊張が何処かに飛んでいき嬉しくて頬が緩んだ。

｢その色…とても素敵だ｣

｢ありがとうございます。クレアさんと相談して決めました。この色…素敵ですよね｣

ローズがヒラっとスカートを広げると足元からバルトが顔を出した。

｢ローズ、気をつけて。カイルしっかりとローズを守れよ。今日はさすがに武器は持ってないからな｣

｢バ、バルト｣

ローズが顔を赤くすると

｢なんだ？バルトは来ないのか？てっきり一緒かと思っていたのに｣

カイルがバルトを見ると

｢さすがについて行くは悪いからな…｣

バルトがつぶやくと

｢私も今回はついて行って見守るなど野暮な事は致しません…カイル様信頼しておりますよ｣

スチュアートが頼むと

｢もちろんです。どんな奴でも指一本触れさせません｣

カイルが頷くと

｢それはさすがに無理じゃ…｣

ローズが苦笑した。

ローズとカイルはスチュアートさん、クレアさん、バルトに手を振って部屋を出ると城下へと向かう…途中門番のカールの所を通ると驚いた顔でほうけながら二人を見つめ見送った。

｢カールさん大丈夫かしら？｣

先程の凄い顔を思い出しローズが心配そうにしていると

｢大丈夫、カールはいつもあんなものだよ｣

カイルが笑うがローズはそうかな？と首を傾げた。

門を抜けて城下に出ると…

｢何処か行きたいところはあるか？｣

カイルが聞くと

｢いつもカイル様が行ってるところに行ってみたいです｣

｢お、俺が？いや…そんなつまらないところより美味しいスイーツの店はどうかな？部下に聞いたら美味しいしデザインも可愛らしいそうだよ｣

｢へー！美味しい…｣

ローズの顔がパッと明るくなると

｢カイル様も食べたことがあるんですか？｣

カイルの顔を覗き込んで聞いてくる。

｢い、いや俺はない…すまないな…そういう店には疎くて…｣

｢ならいつもはどんなところに？｣

｢いつも…は女の人が寄らなそうな店に…｣

カイルが気まずそうにこたえると

｢ならそこには行きましょうよ！｣

ローズはそこに行ってみたいとカイルに笑いかけた。