貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

連載

256.挨拶

ロイとカイル、スチュアート達はチャートとレイン国王の元に再度報告に戻った。

マデリン、ボストンから聞いた大臣や貴族の名前を聞くと兵士達に指示を出し各々確保に向かわせた。

｢これで裏切り者を一掃出来たな…ガブリエル王子も国の方は大丈夫かな？｣

レイン国王がガブリエルに聞くと

｢はい、先程早馬を出しました。言われた通りに刻印を使わせて頂いたのですんなりと国境は越えられるかと…｣

チャート様をチラッと伺うように見ると

｢ああ、この国の刻印を見せれば大丈夫だ｣

コクリと頷く。

その顔にほっと息を吐くと

｢これで私達の国も裏切り者を簡単に割り出すことが出来ました…協力感謝致します。父に報告しに私は一度国に帰らせていただきます｣

ガブリエルが頭を下げると

｢ああ、お父上によろしく。落ち着いたら一度お会いしたいとお伝えしてくれるかな？｣

｢はい…それと…｣

ガブリエルは伺うようにレイン国王を見つめると…

｢何か他にもあったかな？｣

何か言いたそうなガブリエルに声をかけると…

｢最後にローズ嬢に挨拶をさせて頂いてもよろしいでしょうか？｣

ガブリエルの発言にロイとカイルがピクリと反応する。

｢私の娘に何かようかな？内容次第では私が話を聞くが…｣

チャートがニコリとガブリエルに微笑む。

｢あっ…いえ…ただの挨拶だけです…この度演技とはいえ迷惑をおかけしたので一言謝りたいと…｣

ガブリエルは変な汗をかきながら頭を下げると

｢ふむ…まぁそういう事なら、ローズがいいなら構わない｣

｢えっ！チャート様！？｣

｢どうかと思いますよ！ローズと隣国の王子を二人にするなど！｣

カイルとロイが慌てて反対する。

｢二人？そんな事するわけないだろうが。もちろん私も同席するに決まってるだろ｣

チャートが当たり前のように言うと

｢もちろん私も…｣

スチュアートさんが当然のように頭を下げる。

｢あっ…左様ですか…｣

ガブリエルは引き攣る顔を必死に抑えてどうにか笑った…

｢父親からの承諾も得たようだしこちらとしては構わない、だが！彼女は今回の事件の被害者だ、これ以上変な負担だけは増やさないでくれたまえ｣

｢はい…｣

ガブリエルは深々と頭を下げた。

｢父上、私はガブリエル王子を見送りに行ってきます｣

ロイがレイン国王に声をかけると

｢ああ、わかった｣

レインは苦笑して頷いた。

｢チャートも娘達との再会を終えたらこちらにも付き合えよ｣

レインが声をかけるとチャートはわかったと頷きスチュアートさんに連れられ、ガブリエルやロイ、カイル達とローズの部屋へと向かった。

スチュアートさんがローズの部屋の前でノックすると…しばらくしてクレアさんが顔を出した。

｢クレアさん、こちら…｣

スチュアートさんがローズの父親とガブリエル王子を紹介しようとすると…

バタンッ…

話を遮るように扉を閉めて廊下に出てきた…

｢えっ…｣

皆が戸惑うなか顔をあげるとキッ！と男達を睨みつける。

ビクッ！

全員が殺気に肩を揺らした。

｢あなた方は何をしていたのですか！ローズ様が…ローズ様が…｣

クレアさんが低い声を出しながらワナワナと震え出すと男共を睨みつける！

｢いいですか！今後しばらくは男性はローズ様の元に近づけさせません！｣

クレアさんの恐ろしい形相に全員固まると…

｢あっ…いや、クレア？落ち着いてくれ…｣

ロイがそっと伺うように声をかけると

｢なんでしょうか？｣

クレアさんが冷たい眼差しでロイ王子を睨みつける。

｢えっと…あの…｣

ロイはなんと言えばクレアの怒りが収まるかと言葉を選んでいると…

｢私はロイ様とカイル様にはガッカリ致しました…お二人共しばらくは顔も見たくございません！とっととご自分のお仕事にお戻りください！｣

｢は、はい！｣

ロイとカイルがクレアさんに敬礼をすると…

｢ま、まぁまぁ…すみませんレディ、私は隣国の…｣

ガブリエルが自己紹介をしてクレアさんをなだめようとすると

キッ！

ロイ達以上に厳しい眼差しを送る！

｢ひっ！｣

ガブリエルはロイの後ろに隠れると…

｢どちらの殿方か知りませんが今はローズ様にはお会い出来ません。おかえり下さい｣

ぺこりと頭を下げると

｢そうだな！さぁお前らは帰れ！｣

愉快そうにチャートが笑うとロイ達にシッシッと手を振る。

｢では私は…失礼して…｣

扉に手を伸ばそうとすると…

バンッ！

手を叩かれる。

｢申し訳ございません…先程の話を聞いておりましたか？ローズ様は今お休みになっておりますので皆様お引取りを…そうですね一週間後にまたお越しください｣

クレアさんは有無を言わせぬ顔で笑いかけた。