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246.初期化

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「父上!何を笑っているのですか!マデリンが一人で逃げ出すなど納得いかない!」

ロイが声を荒らげると

「当たり前だ、逃す気など無い。ただ彼女が逃げた方角に覚えがあってな…まぁ大丈夫だ。きっと逃げられまい…」

愉快そうに笑う。

「どういうことですか?」

「ガブリエル王子から聞いてないか?隣国からこちらに来る時に何処を通るか…」

「あっ…」

ロイとカイルはローズを見る。

「え?ああ!うちの領土を通るんですね。なら父達に早く知らせた方が…」

「我らも行って挟み撃ちにしましょうか?」

カイルが聞くと

「大丈夫だ、もうこちらに向かっていると言っていたからな…あの者がそんな怪しい馬車を通すわけない」

レイン国王の自信たっぷりな態度にロイとカイルは顔を見合わせた。

すると従者がレイン国王に耳打ちすると、コクリと頷きみんなを見回した。

「今王都に昔馴染みが到着したようだ。そのままここまで通してくれ」

レイン国王は従者と兵士に言うと彼らは慌ててその人を迎えに行った。

「えっ…まさか…」

クリスはそっとローズのそばに行くと…

「姉さん…大丈夫?」

心配そうに姉の怪我の様子をみる。

「クリス!大丈夫よあなたは?何もされてない?」

ローズがクリスに手を伸ばすと、クリスはジュリアを殴り赤くなったローズの手をそっと包んだ。

「ごめん…僕が殴れば良かったよ…」

悲しそうに顔を歪めると弟にローズはいい子いい子と頭を撫でる。

「何…?」

急に子供扱いされてクリスはローズを軽く睨む。

「お姉ちゃんを心配してくれる優しい子にはこれでしょ?小さい頃はすごく喜んでくれたじゃない」

クスクスとローズが笑うと

「あれは!小さかったからで…まぁ今も嫌じゃないけど…」

クリスがゴニョニョと恥ずかしそうに呟くと

「クリスの気持ちだけで嬉しいわ、でも私がやるのが一番問題なくすむからね!それにスカッとしたし!」

「もう…でも姉さん少し力落ちたんじゃない?いつもならあの女ぐらい後ろにもっと吹き飛ばせただろ?」

クリスが聞くと

「そうなのよね、ここに来て鍛錬の時間や見回りとかも無くなったから少し衰えたかも…帰ったら鍛え直さないとかしら…」

ローズが頬に手を当てため息をつく。

「怪我もありましたからね…でもやるならしっかりと治ってからにしてください」

スチュアートさんから横から注意されはい、と小さくなって頷く。

「それと、さっきの陛下の話ってまさかとは思うけど…父さんの事じゃないよね?」

「うーん…私もそう思ったけど…お父さん王都に来るかしら?王都に行くのいつも理由をつけては断ってたよね」

ローズが考え込む。

「でも…父さんだとして、僕も姉さんも王都だよ。向こうは大丈夫かな?」

クリスが領土を心配すると

「確かに…まぁでもみんなが居れば1ヶ月くらいならどうにかなるでしょ」

ローズとクリスの会話に話を聞いていたロイ達が堪らず声をかける。

「おい、ローズ。お前の所はどうなってるんだ…それとその怪我の足!もう本当に無理しないでくれよ」

「すみません…」

ローズが謝ると

「本当に…ちょっと目を離すとすぐにこれだ、だからそばにいないと安心出来ないんだ」

カイルも心配そうにそばに寄る。

「大丈夫ですよぉあと一発くらい打てる力は残してますから!」

「「そういう事じゃない…」」

ロイとカイルがため息をつくと…スチュアートはローズの様子に首を傾げた。

そっとローズに耳打ちすると…

「ローズ様…ロイ様とカイル様と普通に話してますが…もう大丈夫なのですか?」

二人のアピール攻撃に撃沈して気を失ったローズだったが二人と話していてそんな素振りは見えなかった。

「え?なんの事ですか?」

ローズはスチュアートさんを見ると眉を顰めた…

これは…スチュアートは驚いて何か言おうとして言葉を飲み込んだ。

どうもローズ様はあまりのキャパオーバーに気絶して先程のロイ王子達の行為を初期化したようだ…

折角お二人の思いが届いたと思ったのに…まぁわざわざ思い出させてもローズ様が耐えられそうにないからな…

スチュアートは軽くため息をつくと哀れそうにロイ王子とカイル様を見つめた。

ローズは二人が楽しそうに自分の前で話す姿を見て胸をそっと押さえる。

なんでだろ…なんかあの二人見ると胸の奥が熱くなる気がする?

「姉さん大丈夫?」

クリスが胸を押さえるローズを心配そうに声をかけると

「え?うん大丈夫よ」

ローズはニコッと笑って見せた。
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