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244.一撃

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「よかった、クレアさんは厳しいですから頑張って下さいね」

「は、はい!」

「て事で私の服を破いた件は水に流しますからハルジオンさんからその罪は消しておいて下さいね」

ローズはロイに笑いかける。

「まぁ被害者本人がそう言うなら…」

ロイがレイン国王を見ると、それでいいと頷かれる。

「な、なら私の罪も…」

ジュリアが声をかけると

「それは無理です。だってジュリアさん裁縫なんてできませんよね?」

ローズが聞くと

「だ、誰かにやらせるわ!全く同じものを作って弁償するから!」

ローズは首を横に振る。

「あれと全く同じ物なんて作れません。あれはクレアさんが手作りしてくれた物なんですから…だからこそ許せない!」

ローズがジュリアを睨みつける。

「な、ならあの女も同じでしょ!私と同じ様に裁きなさいよ!」

「ハルジオンさんはその時の事を後悔して謝って下さいました…それにドレスも自分の手で直してくださいます。それに比べてあなたは?人の手を借りて直すだのほざくだけで、謝罪の言葉も一度もない!」

「あ、謝ればいいならいくらでも謝るわ!ごめんなさい!」

投げやりに謝るジュリアに嫌気がする。

「そんな上っ面の謝罪になんの意味が?」

「ならどうすればいいのよ!」

ジュリアが叫んだ!

ローズはジュリアをじっと見つめると静かに声を発した。

「なら一発殴らせて下さい」

「えっ…」

ジュリアはローズの言葉を聞き返す。

なかなか令嬢から聞かない言葉に耳をうたがった。

「い、今殴らせろって言いました?」

「はい、どうしても私の手でけりをつけたいので…」

「そ、そうすれば罪は消えるのね!」

「どうですか?ロイ王子?」

ローズが聞くと

「ローズが構わないのなら…でも本当にいいのか?普通にもっと重い罰を与えられるぞ」

「そうですけど…どうしても私の手で罰を与えたいです」

ローズはギュッと拳を握りしめた。

「どうしましょう…」

ロイ王子は国王達を見ると

「被害者の彼女がそれでその件を取り下げると言うなら私らは何も言うまい…ローズ嬢、本当にいいんだね?」

「はい」

「ではジュリア、ローズ嬢からの一発で破衣の件は取り下げよう」

よし!

ジュリアはそっとガッツポーズをした…

ローズは何故か知らないが足に怪我をしているらしい。
先程立っているのもやっとだと言っていた…ならそんなに力も入らないだろう…そんな女性の一発で罪が消えるなら…かなり屈辱的だがそのくらい我慢しよう。

ジュリアは下を向いて嘆く振りをしながらほくそ笑んだ…

ジュリアのそばに兵士が付くと…

「もしローズ嬢に何かしてみろ…その場でその足と手を切断する」

兵士達は柄に入った剣の柄を握りしめるといつでも出せるように身構えた。

ジュリアはそんな事はしないと鼻息荒くする。

ローズはスチュアートさんに支えられてジュリアのそばまでくると…

「バルトのことも…クレアさんの事も…カイル様の事も…どれも聞いた時にこの拳を何度我慢して下ろしたか…」

ローズは自分の拳を見つめる。

「そんな事知らないわよ…さっさとやって…」

ジュリアはボソッと呟くと

「では失礼します…」

ローズは足の怪我など構わずに思いっきり怪我した足を踏み込んだ!

渾身の力でジュリアの綺麗な頬をぶん殴った!!

ボキッ!

常日頃 鍛えていたローズの拳はジュリア嬢の顎を簡単に砕いた!

バタンッ!

ジュリアはあまりの衝撃に後ろに吹き飛びそのまま意識を失った…

「いったーい!」

ローズは片足でぴょんぴょんと跳ねて怪我した足を押さえる。

「ローズ様…無理はしないと約束致しましたよね?」

「あっ…」

スチュアートさんはローズを抱き上げて椅子に戻すとダンテ先生を呼んだ。

「ダンテ先生!」

「はい」

既に控えていたダンテ先生は治療薬を持ってローズに駆け寄る。

「待機してて良かったよ、あーあこりゃまた無理したね」

また腫れ上がった足に急いで回復薬をかけると痛みが引いてきた。

「ありがとうございます…痛みが引きました」

ローズが笑ってお礼を言うがダンテ先生の後ろで見下ろすスチュアートさんの顔を見ると笑ってはいなかった…
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